「本当に大丈夫なんだろうな?」
1ラウンドが終了し、自コーナーに帰還した彼女に問いかけた。摩擦による裂傷を防ぐため、再度ワセリンをむっちりとした体に塗りこみながら確認する。
「大丈夫だって。様子見た感じあいつたいしたことないよ。前回7ラウンドで倒した子の方が断然強いね。」
相手の様子も気になるが、それよりも心配なことがあった。
「俺が聞きたいのはお前が当日になって持ってきたそのグローブのことだよ。」
こいつは試合前、グローブを装着したあとのウォーミングアップでこっそり俺だけに教えてくれた。
【これで殴られるとすごい気持ちいいんだって。詳しいことはよくわからないけど!】
催淫グローブ。
淫紋とやらがナックルに刻まれたグローブ。
どうせインチキだろうが、なんだか心が落ち着かない。嫌な予感がする。第一、よくわからないものをなぜこの土壇場で衝動的に使おうと思うのだろうか。長年付き合っているのにイマイチ理解できない。まあ、そういう天真爛漫なところが好きなところなのだが。
「ねー。楽しみだねぇ。セックスみたいにイっちゃったりするのかな?
勃起したら浮気だぞ笑」
しねーよ、と笑いつつ彼女の胸にワセリンを塗りこむ。正直に言えば今が股間に辛い。
平然を装っているが彼女のむっちりとした弾力のある胸が近くにあるだけではちきれそうだ。
夜の営みで何度も見ている、大きめの乳輪に陥没した乳首。
このリングに立った当初はコンプレックスに感じていたようだが今はすっかり克服したらしい。
「言っとくけどタオルは投げないからな。いつも通り勝ってこい。」
「当たり前じゃん。投げたら今晩殺すから。」
彼女は笑顔をのぞかせる。いつもの試合どうりだ。安心する。
きっとまた相手を倒して会場を沸かせてくれるだろう。
そう信じていた。
第6ラウンド
『あーー!挑戦者のボディフックがチャンピオンをえぐった!これは鳥肌ものだぁぁぁ!』
「お゛っっ!!♡♡」
明らかに苦痛によるものではない声が彼女のマウスピースの隙間から覗いた。
彼女は腹を抱えてその場でリングに突っ伏す。背中はのけぞり、身悶える姿は練習風景では見たことがない。それはまるで、、
俺は動揺していた。
カウント10の前に彼女は立ち、試合が再開される。しかしその動きは明らかに普段とは違う消極さが目立つものだ。彼女らしくない。
防戦を強いられたまま6ラウンドが終わり、彼女がふらふらした足取りで戻ってくる。
倒れるように、コーナーの椅子にぐったりと、力なくもたれかかった。その目は遠くを見るように朦朧としている。
陥没乳首は見たことのないほど勃起し、時折ビクリと痙攣が走った。
間違いなくこのバカげたグローブのせいだ。
しかし、相手からの抗議でもない限りこちらからグローブの変更を申し出ることはできない。焦りで混乱しそうになる。
「おい!しっかりしろ!次は回復にあてて、最後の反撃につなげるんだ。いいか?」
大きく息をする彼女は俺を潤んだ眼で見つめるだけだ。何も聞こえていないかのように。その目の奥に二人だけの夜にしか見せない光が見えて俺はドキリとした。これは劣情ではないと自分に言い聞かせる。
「だいじょうだよ、、絶対勝ってくるから、、。
絶対タオル投げないで。」
呂律の回らない舌でかすかに彼女がつぶやく。
俺はわかっていた。おそらく次のラウンドで試合は終わる。
タオルを強く握りしめるた。
せめて彼女が絶頂を迎える前に試合を止めてやりたい。それが彼女の名誉を守る俺の使命だと感じた。
7ラウンドが始まると彼女は俺の作戦を無視し打ち合いに出た。やはり俺の声は聞こえていなかったのか。体幹のないパンチにスピードもキレもあるはずがない。すぐにカウンターを合わされ、彼女のピンクの髪が激しく踊り、汗が舞った。
身体を激しく震わせながら後退した彼女は俺の目の前でコーナーに磔にされた。
ガードの上からでもお構いなしに相手が激しくパンチを叩きつける。
『チャンピオン、自らの仲間の目の前で亀にされるー!今夜ついに無敵の女王が敗れるのかー!?』
「それでいい!顔を上げるなよ!」
リングの下から声をかける。届いてくれ。
その声が聞こえたのかはわからない、が、突然彼女は俺の指示とは真逆にガードを解き、打ち合いにかかった。意地を張る性格だけはこの状況でも変わらなかった。
「ば、ばかやろう」
瞬間ワンツーが顎にぶち込まれる。
パン!パン!
「あ゛っっ! お゛っっ♡♡」
オーガズム寸前の一際大きい嬌声が漏れた。まずい。このままじゃ、、
タオルを投げ込もうとする俺。
しかし、、手は動かなかった。
そう、俺は瞬間思ってしまったのだ。
俺は自分でも気づかない程に、目の前の状況に興奮していたから。
相手の腰が存分に乗ったフックが彼女の鼻先をぶっ飛ばした。
交通事故のような、ドッジボールやサッカーでボールが顔面にぶち当たるような音。
試合を終わらせる一発であることは瞭然だった。
勃起した乳首が跳ね踊る。
「~~~~~~っっっッッッッ!!!!」
声にならない絶叫で彼女が絶頂を迎えたことがはっきりと分かった。声を出さないことが癖になっていたから。
コーナーにたたきつけられ、ずるずるとマットに滑るように倒れこんだ。激しく痙攣した彼女を見て、俺は思い出したように白いタオルをリングに放り込む。
カンカンカンカン!
会場がドッと湧き上がった。
『衝撃的なKO!!チャンピオン完膚なきまでに打ちのめされたーーー!!!今夜新女王誕生!第7ラウンド59秒です!!!』
急いでリングに上がって彼女を抱き寄せた。ぐったりと、重く熱い。
試合前の強気が微塵も感じられない、小さい背中だった。微かに震えている。
急いでマウスピースを外してやる。ねっとりと血と唾液が糸を引いた。
彼女がうっすら涙を貯めて俺を見上げる。痛々しい表情が激戦を物語っていた。彼女がか細く、声を振り絞る。
「ごめんね、、負けちゃった。最後までタオル我慢してくれてありがとう。」
罪悪感が俺を支配した。
彼女は医務室に運ばれていく。俺は黙って付き添うことしかできない。
彼女の血がついたマウスピースを握りしめたまま、アリーナの喧騒が遠くに消えてゆく。
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グローブの効果はもう一つあって、装着者の被ダメージを快感に変えます。
ただ、この試合は普通に挑戦者が強いので、一概にグローブのせいで負けたとも言えないですね
ありがとうございました。
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sakata
2022-08-23 22:58:17 +0000 UTCtarupo789
2021-08-01 14:29:31 +0000 UTCさく
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