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小説 逆転主従 魔導士令嬢と守護メイドの歪んだ関係 前編

 魔導士エメリー・フロリーヌは、剣士レア・マガリの女主人《ドミナ》である。  剣士レア・マガリは、魔導士エメリー・フロリーヌの下婢《サーヴァントガール》である。  のちに王国最高の魔導士と称されるようになるエメリーと、生涯にわたって彼女の前衛を務めた最強剣士レアが出逢ったのは、ふたりが18歳を迎えた年。エメリーが、王立女子学園の魔導士科への進学を決めたときだった。  王国全土の貴族令嬢が集う全寮制の王立女子学園では、学生は入学および入寮に際し、世話係の女性をひとり帯同することが認められている。  たいていの女学生は、幼少期から仕えていた専属メイドとともに入寮する。  対して、卒業後は士官として王立魔道軍に入隊する者が大半の魔導士科では、将来の前衛役たる剣士や戦士を、守護メイドに仕立てて同行させるのが一般的になっていた。  それを見越して、王都の貴族の家では、魔導士としての才能を発露させた娘に、年若い頃から守護メイドをつけることが多い。  とはいえ、エメリーのフロリーヌ家は地方の下級貴族。しかも、令嬢に魔導士の才が発露したのは、王立女子学園魔導士科の願書締め切りの直前。  剣士や戦士としての能力が最優先の守護メイドを短期間で育成できるわけがなく、フロリーヌ家は既知の剣闘士養成所を頼った。  この頃の王国では、剣闘仕合はひとつのプロスポーツとして発展しており、剣闘士は腕っぷしに自信のある者が身を立てるための専門職でもあった。  そんな女剣闘士のなかでも見目麗しく気立ての穏やかな者に、行儀や作法を学ばせたうえで、エメリーの守護メイドにしようと考えたのだ。  そうして養成所から推薦された女剣闘士のなかから、エメリーが選んだのが、レアだった。  このときのことを、エメリーは『自分の守護メイドはこの娘しかいない』と直感したと、のちに述懐している。初対面で『このお方に生涯お仕えしたい』と感じたと、レアも告白している。  ともあれ、自ら選んだレアの素肌に、エメリーは自らの個人紋章を、魔術で刻印した。  魔力でもって絶対服従を強制する魔術の紋章を、レアは望んで受け入れた。  そうして絶対的な主従関係を結んだエメリーとレアは、王立女子学園魔導士科で――。 「大変たいへん大変、どうしようぉ~」  半べそをかき、情けない声をあげて、庶民の家が丸ごと入りそうなほど広大な寮の自室に、エメリーが飛び込んできた。  魔導士令嬢は、他者の前では常に冷静沈着、かつ貴族令嬢として毅然とした態度を崩さない。  だが、レアしかいない場所では、感情を露わにする。幼い頃から世話をしてきた専属メイドを慕う少女のように、守護メイドに甘えた態度を取る。 「どうしたんですか、お嬢さま」  小柄なエメリーを、女性としては大柄で筋肉質な身体で受け止めて、メイド服姿のレアが優しく声をかける。  幼少期より磨いた剣技に加え、行儀作法をも身につけたレアは、主人《あるじ》たる令嬢の弱い面も愛している。 「どうしよう、レア……ついに、ついに始まっちゃうんだよぉ」 「いったい、なにが始まるのですか?」 「敵に囚われたとき、拷問に耐えるための講義だよぉ」  卒業後は士官として王立魔導軍に入隊する者が多い王立女子学園魔導士科では、耐拷問課程が必須科目になっている。  基本的には、魔術による自らの身体強化と耐性強化付与で、苦痛をやり過ごす技術を身につけるためのもの。  ただし、そのために身体拘束を受けたうえで、模擬拷問を受けることになる。 「学年主席のお嬢さまなら、難なく乗りきれるのではないですか?」 「う、うん……技術的にはね。だけど……」  エメリーが耐拷問課程に対して不安を抱くのは、ふたりが特別な関係にあるからである。  それは、女子学園ではよくある、女どうしの恋人関係ではない。  いや、恋人といえば恋人なのだが、ふたりの性的な指向が特殊なものなのだ。  その関係は、一見すると主従が逆転したようなもので――。 「身体拘束されての模擬拷問を受けたら……わたくし、レアとのときみたいに……」  拘束のうえでの模擬拷問に似た行為を、エメリーはレアにしてもらっている。エメリーに望まれて、守護メイドは女主人たる令嬢を拘束して責めている。  被虐性癖《マゾヒズム》の願望を持っていたエメリーが、絶対服従の魔術紋章でもって、レアに行為を強制しているわけではない。  エメリーが秘めた被虐性癖の持ち主だったように、レアは加虐性癖《サディズム》を持ち合わせていたのだ。  そもそも、ふたりが初対面で惹かれ合ったのは、本能の部分でお互いの性癖を感じ取っていたからでもある。 「相手が模擬拷問係の先生でも、お嬢さまは私のときと同じようになっちゃうんですか?」 「そ、そんなことはないわ。わたくしにとって、レアは特別よ」 「それなら、他人に責められてもへいきですよね?」 「でもね、レア……わたくしが心配しているのは……」  そこまで言って、エメリーはレアの目の奥が、いたずらっ子のように笑っていることに気づいた。 「もう……レアのいじわる」 「うふふ……そんな私だからこそ、お嬢さまはお気に召していただいたのでは?」 「そうだけど……そうなんだけどぉ……」  ほっぺをぷーっと膨らませ、エメリーがレアの胸をポコポコと叩く。  その愛らしい反応に愛しき令嬢をギュッと抱きしめて抵抗を封じ、守護メイドが耳元でささやいた。 「お嬢さまは私とのことを思い出し、お身体が反応して恥ずかしい状態になることを恐れておられるのでしょう? もしそうなら、いい方法があります」 「ほ、ほんとうに?」 「はい、お嬢さまに絶対服従の守護メイドたる私にお任せください」  レアはその身に、自ら望んで絶対服従の魔術の紋章を刻印している。エメリーに逆らうことができないばかりか、女主人たる令嬢に不利益になる行為や、希望に反することもできない。  いや、魔術の紋章がなくても、レアはエメリーが本気で嫌がることはしないだろう。  魔導士令嬢は、そう信じている。 「わかったわ、レアに任せるわ」  エメリーがそう答えると、レアが令嬢の耳たぶをはむっと甘噛みした。 「苦手な相手、不得手な武器を持つ敵と仕合うことになったとき、剣闘士はそうした相手と似たタイプの仲間、その武器を持つ者と稽古をします。闘いの前に、不安に思うことに自分を馴らし、苦手意識をなくすためです」  語りながら、レアがエメリーが身につけていた王立女子学園魔導士科の制服を脱がせる。  エメリーにかぎらず、王国の貴族令嬢が、自分の手で着替えをすることはない。高貴な女性は、幼少期から身の回りの世話のすべてをお付きのメイドに任せる。  それは、将来の前衛役を期待される守護メイドも同じ。ふだんの暮らしのなかでのレアの仕事は、仕える令嬢のお世話である。  とはいえ今、レアがエメリーの制服を脱がせているのは、日常の着替えではない。 「それと同じように、お嬢さまも苦手なシチュエーションに慣れてしまえば、不安なく模擬拷問の講義に臨むことができます」  そう告げたところで 魔導士のローブを模した外套《コート》にロングスカートを合わせた魔導士科の制服を脱がし終えた。  するとエメリーは、コルセットと貞操帯、ガーターで吊ったストッキングだけの姿になっていた。  妖しく嗤い、レアが優しくも淫靡な手つきで、エメリーのお腹に触れる。  そこには、コルセットの編み上げがフルクローズするまで締めあげられたうえで、ウエストのもっともくびれた部分に貞操帯の横ベルトがかかっていた。 「うふふ……お嬢さま、よくここまで耐えられましたね」 「だって、レアがそうしたから……それに……」  金属製の堅牢な貞操帯の横ベルトが施錠されているせいで、エメリーは勝手にコルセットを緩めることができない。  もし緩めてしまうと、貞操帯の金属帯だけがお腹に食い込んで、かえって苦しい思いをすることになる。 「うふふ……そうでしたね。お嬢さまのコルセットをきつく締め込み、貞操帯を嵌めたのは、私でした」  頭半分ほどの身長差が生む視点の違いでエメリーを見下ろして、レアが指を移動させる。  コルセットで締めあげられたお腹から、小柄で華奢な令嬢の体格には、不釣り合いなほど豊かな胸へ。  実のところ、エメリーの乳房が格別大きいわけではない。もともとは、標準より少し大きめという程度。  だがコルセットをきつく締められているせいで、ウエストとの対比で大きく見えているのだ。  そんなエメリーの胸の頂で、ぷっくり膨れて自己主張しているような乳首に、レアの指が触れた。  そこには、敏感な肉を穿ち貫く、バーベル形のピアス。 「この乳首《ニップル》ピアスも、私が着けたもの」  そう言ってひとしきりピアスごと乳首を玩弄し。 「んッ、ふぁ……」  エメリーに甘みを帯びた吐息を漏らさせて、いったん離れたレアが、クローゼットから革製の装具を取り出した。 「まずは、これを嵌めていただきます」  傍らのテーブルに置いた数々の装具のなかから、レアがぶ厚く硬い革製のネックコルセットを手に取った。  初めてその装具を見せられたとき、エメリーはそれがネックコルセットだとは気づかなかった。令嬢が知る頚椎保護用のものと、あまりにかけ離れた形状と大きさだったからである。  その前側の下端は、乳房の膨らみが始まるあたり。上端は、口を覆って鼻のすぐ下。後ろ側の下端は、前側よりさらに下、エメリー自身には見えないが、お腹のコルセットのすぐ上。上端は盆の窪を覆って後頭部に達している。  素材のぶ厚さ硬さと相まって、嵌められてしまうと、首をまったく動かせなくなる。  加えて、内側の口にあたる位置には、口中に押し込めるための、呼吸孔つき突起が設えられている。  嵌められたら最後、まともに喋れなくなる、箝口具を兼ねた首の拘束具なのだ。  そのネックコルセットを、エメリーは拒むそぶりすら見せずに取りつけられる。  口中に言葉を奪う革巻きの突起を受け入れて、胸の上から鼻の下までをぶ厚く硬い革で覆われ、後ろ側で編み上げを締め込まれる。  上端の縁が、柔らかい頬の肉に軽く食い込んだ。  下端の縁が胸の膨らみの上側を締めつけ、お腹のコルセットと合わせて、乳房を挟み込んでくびり出した。  それからレアが手にしたのは、開口した底辺部分に2本の長い革ベルトとバックルつきの短いベルトが取りつけられ、頂点付近から底辺まで編み上げが設えられた二等辺三角形の革袋。  アームバインダーと呼ばれる、腕の拘束具である。 「お嬢さま、腕を背中に。まっすぐ揃えてください」  言われて従うと、二等辺三角形の革袋を、腕に被せられた。  頂点たる袋の突き当たりに指先が当たると、底辺の開口部の縁が二の腕の半ばに達した。  それから、長いほうの革ベルトが左腋の下から身体の前面に引き出される。  引き出されたベルトは、胸の上を斜めに引き上げられ、首の右を通って右肩から背中へ。  革袋の縁の短いベルトのバックルに留められてから、もう1本の長いベルト。  それを右腋から胸の上に引き出されると、最初のベルトと交差させながら引き上げられて、左肩から背中。  こちらも短いベルトのバックルに留められると、エメリーの腕は革袋に閉じ込められて自由を失った。  とはいえ、アームバインダーによる腕の拘束は、これで終わりではない。 「お嬢さま、肩を後ろにすぼめるようにして、両の肘どうしをくっつけてください」  レアとの秘め事が始まった頃は、肩と肘の関節が硬くてそれができなかった。  だが、守護メイドの手によるきつく厳しい拘束に馴らされるうち、エメリーは言われたとおりにできるようになっていた。 「お嬢さま、すっかりアームバインダーにお慣れになりましたね」  そのとおりだ。エメリーの肉体は、レア好みの拘束具に馴染んでしまった。 「もう、私の拘束なしでは生きていけませんね」  言われなくてもわかっている。レアをけっして手離さないという決意を込め、彼女の肉体に自身の紋章を魔術で刻印したエメリーだが、一緒に暮らすうち守護メイドの責めを精神に刻まれて離れられなくなった。  そうと思い知らされながら、アームバインダーの編み上げ紐を下から締められる。  手首、前腕部、肘。締めつけがせり上がってくるほどに、腕が窮屈に閉じ込められていく。  そして、編み上げの締め込みが上端に達したとき、エメリーの腕は1本の棒に変えられ、背中に固定されたかのように動かせなくなっていた。  いや、自由を奪われたのは、腕だけではない。  首を固定するネックコルセットと相まって、エメリーの上半身全体が、型に嵌められて固められたような状態に陥っていた。  そんなエメリーの背後に、レアが背もたれのない椅子を置く。 「お嬢さま、おかけください」  固められて動かせない上半身を支えられながら腰を下ろすと、レアが3つめの革製装具を手にした。  バレエヒールのブーツ。  王国で近年流行しつつある舞踊、バレエのつま先立ちの姿勢を、被装着者に強制するブーツである。  履かされたら最後、バレエ経験者でなければ、歩行はおろか立つことすら困難にされてしまう。  その拘束具じみたブーツが、王立女子学園の指定靴を脱がされたエメリーの足に履かされる。  すねから足首、足の甲までが一直線になる超ハイヒールのブーツに足を収められると、太ももの裏が、椅子の座面から離れた。  もう一方の足にも履かされ、支えられながら立ち上がると、ふだんは頭半分ほど高い位置にあるレアの顔が、エメリーの正面にあった。 「お嬢さま、バレエヒールにも慣れて、立てるようになりましたね」  実のところ、立てるだけではない。ふだんのように颯爽とした歩行ではないが、エメリーはバレエヒールのブーツで歩くこともできるようになっている。  そしてそのことは、エメリーが歩けるようになるまで、バレエヒールに馴致《じゅんち》させたレアにもわかっていた。 「お嬢さま、脚を開いてくださいませ……はい、それで結構です。  立たせたエメリーに、肩幅より少し広い程度に開脚させると、レアは身体を支えていた手を離し、令嬢の前にしゃがみ込んだ。  そして取り出した小さな鍵で、貞操帯本体に取りつけられていた、針で突いたような小さな穴が無数に穿たれた自慰防止用の金属板を外す。  それから同じ鍵を使って貞操帯本体を固定する錠前も外すと、エメリーの秘所を覆っていた貞操帯の縦ベルトをゆっくりと下ろした。  上半身の自由を完全に奪われ、拘束具じみたブーツを履かされたエメリーのそこを、いやらしく責めようというのか。  そう考えた令嬢の期待は、いい意味で裏切られた。 「小水排泄のため貞操帯に切られた溝に、レアが金属製の棒――ディルドを取りつける。  貞操帯内側に設置された、太さは守護メイドの指を3本重ねた程度、長さは人差し指の1.5倍ほどの金属製ディルドが収まる場所は、ひとつしかない。  ふたりで学園の寮に入った夜、レアに処女を捧げた場所である。  エメリーが新たに抱いたその期待は、裏切られなかった。 「お嬢さま、失礼いたします」  上目遣いにエメリーを見て告げたレアが、厳重な拘束で被虐性癖を煽られ、充分に潤っている令嬢の入り口に、硬いディルドの先端をあてがった。 「んっ、んぅん……」  箝口具を兼ねたネックコルセットで塞がれ喋れない口で、エメリーが甘みを帯びてうめいたところで、レアが貞操帯の縦ベルトをゆっくりと持ち上げ始める。  それにつれ、金属製ディルドが令嬢の中に侵入してくる。  挿入される金属棒は、けっして巨大なものではない。凶悪な形状をしているわけでもない。  だがそれでも、被虐の令嬢は、そこが融けてしまいそうな快感に襲われる。 「んぅ、ぅんん……」  甘くうめきながら、襲いくる快感に少しずつ蕩けていく。  やがて、金属製ディルドの侵入が止まると同時に、貞操帯の縦ベルトがお股から下腹部にかけて密着した。  カチリ。  おへそのあたりで聞こえた音は、横ベルトと縦ベルトの合わせめに、錠前がかけられた音だ。  そうして金属のディルドを咥え込まされた秘所を封印し、レアが肩を抱いてエメリーを歩かせた。  ふだんより短い歩幅で、ゆっくりとしたペースで、身だしなみを確認するため寮の部屋に設えられた姿見の鏡のほうに向かう。  1歩、また1歩。足を運ぶたび、令嬢の中に固定された金属の異物が、敏感な粘膜を艶めかしく擦る。  エメリーを蕩けさせようと、甘美なる快感が押し寄せる。 「んぅ、んふ、んふ……」  甘い吐息が、鼻に抜ける。 「んふ、んっ、ぅん……」  口中を占拠する突起を貫通する呼吸孔から、艶を帯びたうめき声が漏れる。  無意識に金属棒を食い締めるオンナの肉が融け、熱い蜜となって溢れ出す。  それほどまでに魔導士令嬢の肉体が昂ぶったところで、大きな鏡の前にたどり着いた。 「ご覧ください、お嬢さま」  言われるまでもなく、エメリーの目は己の姿に釘づけになっていた。 「はしたなくも恥ずかしいお姿ですね、お嬢さま」  指摘されずとも、自分が痴態を晒していることはわかっていた。  それは、今だけではない。エメリーはレアにきつく拘束されて淫らに責められると、いつもこうなってしまう。  だからこそ、恐れたのだ。  耐拷問課程の模擬拷問のなかで、レアとの秘め事を思い出してしまうことを――。  そこでレアが、エメリーに黒い外套を羽織らせた。 (こ、これは……)  ただの外套ではない。魔導士のローブだ。そのなかでも、最低ランクの4級魔導士用の、装飾のない質素なものだ。  王国では、扱える魔術の寡多や強弱により、魔導士は4つの階級に分類されている。  使える魔術がもっとも少なく弱い者が4級。そこから魔術の種類が増えたり、より強力な魔術が使えるようになると、3級2級へ昇格していく。  ただし、市井《しせい》の魔導士が自己流の修練でなれるのは2級まで。最上位の1級として認められるには、王国が認定した特別な1級魔導士養成課程を経る必要がある。  ちなみに、王立女子学園魔導士科は、入学した時点で2級魔導士に認定され、卒業と同時に1級魔導士に列せられる。  その事実をエメリーが蕩けかけた頭で思い出していると、レアが羽織らせた4級魔導士のローブの前ボタンを留めた。  それで、ネックコルセットの首から下も、乳首ピアスを取りつけられた胸も、きつく締めあげられたコルセットも、金属製ディルドを内蔵した貞操帯も見えなくなった。頭にフードをかけられると、顔の下半分を覆うネックコルセット上部も目立たなくなった。  ただし、腕を通していない袖は、身体の側面にだらんと垂れ下がっている。スカートやインナーのワンピースを着ていないから、薄いストッキングに包まれた脚は見えている。  そんな状態のエメリーの両肩に手を置いて、レアが妖しく嗤って口を開いた。 「お嬢さま、これで準備が整いました。さあ、おでかけいたしましょう」 「んっ(えっ)……?」  一瞬、耳を疑う。 「んぅんん(どうして)……?」  幾度となく肉体を重ね、心を通わせたおかげの以心伝心。声は言葉にならずとも、言いたいことは伝わったのだろう。  妖しく嗤ったまま、レアがエメリーの疑問に答える。 「お嬢さま、申しあげたはずですよ」  それは、制服を脱がされながら、かけられた言葉。 『苦手な相手、不得手な武器を持つ敵と仕合ことになったとき、剣闘士はそうした相手と似たタイプの仲間、その武器を持つ者と稽古をします。闘いの前に、不安に思うことに自分を馴らし、苦手意識をなくすためです』  さらに、レアはこうも言った。 『それと同じように、お嬢さまも苦手なシチュエーションに慣れてしまえば、不安なく模擬拷問の講義に臨むことができます』  そして、エメリーが苦手に感じ、不安を覚えているのは、模擬拷問中にレアとの秘め事を思い出し、はしたなくも恥ずかしい状態になってしまうこと。 「お嬢さまが模擬拷問で恥ずかしい状態なってしまうことは、避けられないと思います」 「ん、んんぅ(そ、そんな)……」 「ですが、恥ずかしい状態になっていると、模擬拷問担当の先生に悟らせない方法はあります。これから行なうのは、そのための訓練です」  つまり、肉体がはしたなくも恥ずかしい状態に陥っても、毅然とした態度を崩さなければ、容易に悟られることはない。 「んう(でも)……」  自分に、そんなことができるのだろうか。  新たに生まれた言葉にならない疑問も察し、レアは答えてくれた。 「お嬢さまは、バレエヒールにも慣れることができたではないですか」  そうだ。はじめは立つことすらできなかったバレエヒールを履いて、エメリーは歩けるようになった。  それに、絶対服従の紋章をその身に刻んだレアは、エメリーに不利益になること、令嬢が望まないことはできない。  いや、魔術の紋章なんかなくても、レアはそんなことをしない。 (だから、これはわたくしのためになること。ほんとうは、わたくしが望んでいること)  そう考えて、鏡のなかでレアの目を見て。 「さあ、お嬢さま。参りましょう」  愛しき守護メイドの言葉に、首を動かせない魔導士令嬢は、視線でうなずいた。

小説 逆転主従 魔導士令嬢と守護メイドの歪んだ関係 前編

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