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小説 逆転主従 魔導士メイドと守護メイドの歪んだ関係 後編

 抱くように肩を押されて、部屋から寮の廊下に出る。  陽が落ち、夕食の時間も終わった王立女子学園寮は、しんと静まりかえっている。  そんななか、馬車が通れそうなほど広い廊下を、バレエヒールのブーツを履かされた足で歩く。  貞操帯に仕込まれた金属製ディルドで秘所を犯されながら、きつく厳しく拘束され、言葉を奪われた身を、4級魔導士のローブで隠して進む。  カッ、カッ、カッ……。  硬い大理石の床を、きわめて高いバレエヒールの踵が叩く。  カッ、カッ、カッ……。  廊下に人気《ひとけ》はない。  だがいつ、扉が開いて女学生やお付きのメイドが出てくるかわからない。その人が、顔見知りである可能性もある。  カッ、カッ、カッ……。  そして、知り合いに出会《でくわ》したとしても、廊下には隠れるところがない。バレエヒールで歩行を制限されたエメリーは、走って逃げることもできない。ネックコルセットとアームバインダーで拘束されていては、うっかり倒れてしまうと容易には立ち上がれない。  怖《こわ》い。恐《おそ》ろしい。 (ほ、ほんとうに……)  こんなことが、自分のためになるのだろうか。  心の内で、自分はこれを望んでいるのだろうか。  そう考えて立ちすくみそうになり、レアに軽く肩を押されたときである。  長い廊下の先に、1級魔導士のローブを模した、厳《いかめ》しい教職員用制服姿の女性を見つけた。 (あ、あれは……あの方は……)  寮に住まう女学生の指導監督が役目の、寮監先生だ。  王立魔導軍の幹部出身で、学園の教職員のなかでも一番厳格な先生が、どんどん迫ってくる。 (どうしよう、どうしよう……)  もし見咎められ、ローブを剥ぎ取られたら、エメリーは身の破滅だ。  その恐怖に支配され、貞操帯に仕込まれた金属製ディルドがもたらしていた肉体の昂ぶりが、急速に冷めてしまう。  しかし、レアは落ち着いていた。 「お嬢さま、先ほど申しあげたばかりですよ」  言われて、ハッとした。  もし肉体がはしたなくも恥ずかしい状態に陥っても、毅然とした態度を崩さなければ、容易に悟られることはない。 「おわかりいただけたら、堂々と歩いてくださいませ。寮で働いている4級魔導士になったつもりで」  そうだ。寮に限らず学園では、多くの4級魔導士が働いている。  寮の部屋ひとつひとつにバスルームが設置され、コックをひねればいつでもお湯が出るのも、彼女たちがいるおかげ。  それだけではない。4級魔導士が各設備の点検と修理を怠っていないからこそ、エメリーたちが快適な寮生活が送れているのだ。 「こんなときのために、知人の4級魔導士からローブを借りていたのです。寮監先生が管轄するのは、あくまで学園の女学生。私たちメイドや下働きの4級魔導士など、まったく気にしておられません」  小声で告げられたところで、いよいよ寮監先生が迫ってきた。  レアが廊下の隅に寄り、貴族令嬢に仕える専属メイドらしく、優雅に膝折礼《カーテシー》。  エメリーは4級魔導士ならこんなときどうするかを考えて、レアの隣で腰を折って頭を下げる。  すると寮監先生は、ふたりに一瞥もくれずに通りすぎた。  エメリーの顔の下半分が、ネックコルセットで覆われていることも、腕を通していない袖がだらんと垂れているのも、ストッキングの脚が見えているのも、奇妙な形のバレエヒールのブーツも、まったく気に留めず。  まさに、レアが指摘したとおりだった。やはり、エメリーの守護メイドは信頼できる。  そう思ったところで、緊張が解けた。  緊張から解放されると同時に、一時的に冷めていた昂ぶりが、一気に蘇った。 (いえ、これは……)  蘇っただけではない。部屋を出るときより、貞操帯の奥の火照りも疼きも強くなっている気がする。  そのせいで、しばしぼうっとしていたエメリーの耳元で、レアがささやいた。 「お嬢さま、訓練はまだ始まったばかりですよ」  そして、肩を押されて歩きだすよう促される。  カッ、カッ、カッ……。  再びバレエヒールの音を響かせて、廊下を進む。 「んふ、んふ、んっ……」  貞操帯内部に固定されたディルドに、敏感な粘膜を擦られて生まれる快感が、以前より強くなっている気がする。  エメリーを蕩けさせようと押し寄せる悦びが、ずっと大きくなったように思える。  それは、レアへの信頼から緊張感が薄れたせいか。  それとも――。 「お嬢さま、昂ぶりが強くなっておられるようですね?」  不意に、レアに声をかけられた。  そのとおりだ。エメリーの状態は、レアにはお見通しだった。  とはいえ、悪い気はしない。  恥ずかしいけれど、レアが自分のことをわかってくれていると知り、嬉しい気持ちのほうが大きい。  素直にそう思ったところで、レアが言葉を続けた。 「お嬢さまは、ご自身の恥ずかしい姿を見られることで。ご自分がはしたないオンナだと知られることで、悦びがいっそう大きくなるタイプなのかもしれませんね」 「んぅう(そんな)、うんん(まさか)……」  思わずあげてしまった声は言葉にならなかったが、言いたいことはレアに伝わったようだ。 「お嬢さまのような被虐性癖を持つ女性のなかには、そんなタイプが比較的多いそうですよ」  ほんとうだろうか。  いや、レアが言うからには、きっとそうなのだろう。  レアしか頼る者がいない状況で、優しい声で告げられ、彼女の言葉が事実なのだと思わせられる。  愛しき守護メイドの言うとおり、自分は恥ずかしい姿を見られ、はしたないオンナだと知られることで、より大きな悦びを得るのだと信じ込まされる。  カッ、カッ、カッ……。  そんな状態で、レアに導かれて廊下を進む。  突き当たりを曲がり、慎重に階段を降りて、ふだんエメリーたち女学生は使わない通用口へ。  メイドと4級魔導士の組み合わせなら、そのほうが自然なのだ。 「んふ、んっ、んっ……」  甘い吐息を漏らしながら通用口を出だところで、寮内に戻ろうとするメイドふたりと出会した。  魔導士科以外の女学生についている者だろう。知らない顔のメイドに、レアが軽く会釈する。 「こんばんは、ごきげんよう」 「こんばんは、よい夜ですね」  すれ違いざま、レアがメイドとあたりさわりのない会話を交わす。  喋れないエメリーが頭を下げたまま無言で通りすぎると、メイドが振り向いて自分を見る気配。 「あの魔導士、ちょっと変じゃなかった?」 「うん、おかしなマスクを着けてたし、太ももが丸見え。奇妙なブーツを履いてるし、袖に腕を通していない……なんか、腕を縛られてる感じ?」  おそらく、確証もなく当てずっぽうで言っただけだろう。  だが、偶然であっても自分の状態を言い当てられ、いたたまれなさでこの場から急いで立ち去りたい。  だが、バレエヒールのブーツを履かされた足では、ゆっくり慎重に歩くのが精いっぱい。  それに、もし慌てて逃げ出したりしたら、かえって怪しまれるだろう。  そう考え、努めて平静を装って歩く。  とはいえ、ふたり組のメイドも、一介の4級魔導士に深く興味を持ったわけではなかった。  やがてメイドたちの気配がなくなったところで、昂ぶりがいっそう強くなった。  カッ、カッ、カッ……。  石畳の地面をバレエヒールで叩いて歩くうち、エメリーの中の金属製ディルドが生む快感も大きくなった。 (やはり、わたくしは……)  レアに言われたように、恥ずかしい姿を見られ、はしたないオンナだと知られることで、より大きな悦びを得るタイプの被虐性癖者《マゾヒスト》なのだ。  あらためてそうと思い知らされ――実際は信じ込まされ――ながら、すっかり陽が暮れた遊歩道を歩かされる。  カッ、カッ、カッ……。 「んっ、んっ、んッ……」  金属製ディルドを挿入固定されたまま封印された秘所に生まれる快感が、ますます大きくなってきた。  カッ、カッ、カッ……。 「んッ、んぅ、んぅん……」  ネックコルセット内側の突起ヲを押し込められ、喋れない口から漏れるうめき声に、どんどん艶が増してきた。  カッ、カッ、カッ……。 「んぅん、んッ、ぅうん……」  貞操帯の奥で、オンナの肉が融ける。  快感に襲われ続けて、頭が蕩ける。 「お嬢さま、今日のところはここまでにして、お部屋に戻りましょうか」  そう言われ、レアに肩を抱かれたときである。  前方から、仲睦まじいようすの女性カップルが歩いてきた。  ひとりは、メイド服姿。もうひとりは、魔導士科の制服。  すっかり暗くなっているし遠目だが、なんとなくわかる。 (あ、あれは……)  エメリーのクラスメイトと、お付きの守護メイドだ。  そして、エメリーから見えているということは、彼女たちからもこちらの姿が見えているということ。  今はまだ、メイドと4級魔導士の組み合わせと認識されているだろうが、もっと近づき、目深にフードを被った顔を覗き込まれたら――。  そこで、レアがエメリーを抱き寄せた。 「お嬢さま、しばらくじっとしていてください」  正面から抱きしめて、耳元でささやいた。  そのあいだにも、ふたり組が近づいてくる。  ネックコルセットで下半分を覆われたエメリーの口に、レアが自分の唇を重ねる。  彼女たちの姿は、傍目には接吻するメイドと4級魔導士にしか見えないだろう。 (レアは、きっと……)  そうすることで、エメリーの正体を隠そうとしているのだ。  魔導士科女学生の守護メイドでありながら、4級魔導士と密会して睦み合うふしだらな女と思われることを覚悟して。  嬉しい、嬉しい。  なんとしてもエメリーだけは護るのだという、レアの断固たる意志をひしひしと感じ、喜びに打ち震える。  やがて、クラスメイトと守護メイドが、レアの背後を通りすぎる。  お互い秘密の逢瀬を交わす者どうし、見てみぬふりで離れていく。  そして、レアが顔を離したとき、喜びは悦びに変わっていた。 「んう(レア)……」  くぐもったうめき声で、愛しき守護メイドの名を呼ぶ。 「お嬢さま……」  魔導士令嬢を護ったレアが、エメリーを見つめる。  蕩けながらそのまま守護メイドにしなだれかかると、レアがあらためて耳元でささやいた。 「お嬢さま……このままでは、歩いて戻れそうにありませんね」  その通りだ、悦びに蕩け、脚に充分な力が入らない。  それは、エメリーが恥ずかしい姿を見られ、はしたないオンナだと知られることで、より大きな悦びを得るタイプの被虐性癖者《マゾヒスト》だから。  加えて、愛しのレアに抱きすくめられ、箝口具を兼ねたネックコルセットごしの接吻をを交わしたゆえ。  蕩けてしまったエメリーに、レアがあらためてささやく。 「それに、あのふたりと時間差を置いて戻ったほうがいいでしょう」  蕩けて思考能力が減退したエメリーにはわからないが、レアが言うならそうなのだろう。  エメリーが視線でうなずくと、レアが令嬢を道端のベンチに誘《いざな》った。 「お嬢さま、お先に失礼いたします」  そしてそう言って先にベンチに腰を下ろすと、自らの太ももの上にエメリーを座らせた。  立った状態で身長差があまりなかったのは、バレエヒールの高い踵のせい。もともとレアは、エメリーより頭半分ほど背が高い。  その差が、今はレアの太ももの厚みで相殺《そうさい》され、またも頭の位置はほぼ同じになっていた。 「しばしのあいだ、お愉しみくださいませ」  その状態で後ろからエメリーを抱きしめ、レアがささやいた直後である。  元剣闘士らしく女性としては逞しい手が、4級魔導士のローブの合わせめから滑り込んできた。 「んんっ!?」 「お嬢さま、もう人はあまり外に出ていない時間ですが、念のため声は抑えてくださいね」  エメリーがくぐもった声をあげると、レアが耳元でささやいた。  言われてエメリーが声を飲み込んだところで、ローブの中で守護メイドの手が動き始める。 「お嬢さま、くれぐれも大きな声をお出しにならないように」  念を押しながら、バーベル形ピアスが穿ち貫く乳首を、レアが人差し指の腹で撫でる。  触れるか触れないかの弱い力で、ゆっくりと、優しく。  その愛撫が、ゾクゾクと快感を生む。  エメリーがいっさいのストレスなく気持ちよくなれるやり方で、レアの指が乳首を愛撫する。 「んっ、んふ、んッ……」  ネックコルセットのぶ厚く硬い革ごしの接吻で得た悦びに、乳首弄りの快感が上乗せされる。  貞操帯に固定された金属製ディルドで高められていた性感が、乳首の快感でさらに煽られる。 「んッ、んぅ、んん……」  ほんの短い愛撫で、エメリーはますます蕩けさせられる。 「んん、んう、ぅうん……」  そこで、令嬢の反応に艶が増したことを感じ取ったレアが、愛撫のやり方を変えた。  これまで緩く撫でているだけだった指が、乳首をつまむ。 「んッ、ぅうんッ!?」  とたんに大きな快感に襲われ、思わずくぐもって喘いでしまう。 「お嬢さま、声が出ていますよ」  言われて声を飲み込んだところで、もう一度。 「んぅうんッ!?」  乳首をつままれて、痺れるような快感が襲いくる。 「んぅんん(どうして)……」  乳首をつままれると、大きな快感が生まれるのか。  思わず言葉にならない声で問うてしまったが、幾度となくレアとの睦事《むつみごと》を重ねてきたエメリーにはわかっていた。  令嬢の乳首は、硬い金属製のピアスが貫通している。  その乳首をつままれることで、指が接している外側のみならず、内側からも敏感な肉が刺激されるのだ。  そうとわかったところで、襲いくる快感を止めることはできない。 「んむうんんッ!」  箝口具を兼ねたネックコルセットごしに、艶めく声を漏らしてしまう。 「んふぅんむッ!」  挿入固定されたディルドを食い締めて、下半身も快感に襲われる。  ふたつの快感がひとつの大きな快楽になって、エメリーをますます蕩けさせる。 「お嬢さま、誰かに声を聞かれてしまいますよ」  耳元でささやかれても、声を抑えていられたのは、ほんの短い時間。 「……んっんんッ!」  押し寄せる快感に蕩けさせられ、艶を帯びたうめき声をあげる。 「これは、肉体がはしたなくも恥ずかしい状態に陥っても、毅然とした態度を崩さないための訓練なのですよ」  本来の目的を告げられても、もはや毅然としていようと思うことすらできない。  声を聞いた者にこの姿を見られたら、言い逃れのしようがないのに。 「ん、んうう(いやぁ)……」  わずかに残った理性があげさせた拒絶のうめきは、本気のものではなかった。  ほんとうにやめてほしいとき、エメリーはそう思うだけでいい。  絶対服従の紋章をその身に刻んだレアは、エメリーが本気で嫌がることを、けっしてできないのだから。 「んっ、んッむッ!」  恥ずかしい姿を見られ、はしたないオンナだと知られることで、より大きな悦びを得るタイプの被虐性癖者は、道端のベンチで乳首を弄られながら昂ぶっていく。 「んむぅんんッ!」  ネックコルセットとアームバインダーで拘束された身を後ろから抱きすくめられられ、ピアスが貫通する乳首を責められて高められる。 「お嬢さま、気持ちよさそうですね?」  そうだ、気持ちいい。 「もっと気持ちよくなりたいですか?」  そのとおりだ、もっと気持ちよくなりたい。  レアの言葉に、思考を経ず直感的に思った直後である。  守護メイドの乳首に触れていないほうの手が、4級魔導士のローブのボタンを外した。 「……ッ!?」  驚き、声をあげかけたときには、ローブがはだけられていた。  もう、ピアスが貫通する乳首を、隠すものはない。金属製ディルドを咥え込んだ秘所を覆う貞操帯も丸見えだ。  そこから、恥ずかしい姿を見られ、はしたないオンナと知られることで高まる被虐性癖者の悦びのステージが、一段上がった。  レアの愛撫も、いっそう淫靡さを増した。 「んっ、んむむむッ!」  もう、押し寄せる快感を止められない。 「んぅ、んぅんんッ!」  もはや、止めようと思うことすらできない。  道端のベンチの上でレアに抱きすくめられ、愛撫され、痴態を晒しながら、快感に飲み込まれる。  飲み込まれ、押し流され、追い上げられる。  そこで、なにかか来た。  いや、エメリーのほうがたどり着いた。  きつく厳しく拘束された身体がこわばる。  そうしようとしていないのに、抱きすくめられられたまま身体がビクンと跳ねる。  絶頂。  オンナだけが辿り着ける、性の高み。悦びの世界。恍惚の境地。  愛しきレアの手でその場所に送り届けられ――。 「んむむッ、んうんんんッ!」  艶めいてうめいたあと、エメリーはガックリと身体から力を抜いた。  たどり着いた高みから、ゆっくりと下りてくる。  少しずつ、覚醒していく。  気づくと、ローブのボタンは留め直されていた。  そのうえで、レアに後ろから抱きしめられていた。  愛しい。もともと好きだったが、今は彼女のことをさらに愛おしく思う。 「お嬢さま……」  そこで、守護メイドが耳元でささやいた。 「お立ちください。そろそろ戻らないと、就寝前点呼に間に合わなくなります」  言われて、ハッとした。  これから、来た道を辿って、寮の部屋に帰らなければならない。  恥ずかしい姿を見られ、魔導士令嬢がはしたないオンナだと知られるリスクを犯しながら。  そうと悟った直後、金属製ディルドを挿入固定されたままの秘所が、再び火照り始めた。  淫靡な愛撫の余韻が残る乳首が、刺激を求めて疼きだした。  そのことで、自分は痴態を晒すことでより大きな悦びを得るタイプの被虐性癖者なのだと、エメリーはあらためて思い知らされるのだった。 (了)

小説 逆転主従 魔導士メイドと守護メイドの歪んだ関係 後編

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