夕飯を終えていつものようにテレビを前にお茶の時間を過ごしたふたり。夕飯をつくってもらったら、つくっていない側が率先してお茶を入れるのがなんとなく暗黙の了解になっていて、今夜は陽太郎の番だった。
猫舌の沙穂は熱々のお茶は飲めないため、陽太郎はあらかじめ氷を一粒二粒と入れて確かめながらベストの温度で持っていく。ミルクを差せば手っ取り早いが、多分今日はストレートがいいだろうと云うのもなんとなくで織り込み済みだ。
陽太郎の気遣いにすぐさま気づく沙穂。もうひとりではない、言葉を交わさなくても自分の心と体を理解してくれる安心感に満たされる毎日。月のものも近づいていて感情が昂っている沙穂は些細な気遣いにも気分がノって来てしまう。
「陽くん、今日はお仕事どうでしたか…?」
陽太郎はぼーっとコーヒーを飲みつつぼちぼちかなぁと答えつつ、沙穂の顔を見やる。テレビを見るわけでもなく、チラチラとこちらを見つめる沙穂の視線に鼓動が高まる。沙穂が自分の気持ちや希望をなかなか言い出せないのは結婚した後でもそう劇的に変化するわけではない。求められているかどうかが不安だし、何より「そういうこと」を女の子から持ち出すのは恥ずかしいに決まっている。
「思ったよりも今日は作業が進んだし、店に立ってたわけでもないしね…めっちゃ元気だよ」
目を見ながら沙穂に声をかけると、照れたように笑いながら「よかった...」と安心した笑顔を見せる沙穂。沈黙が続き、一緒に見ていたドラマの音はトンネルの向こうの出来事のように意識から遠ざかって小さくなっていく。沙穂の首筋に後れ毛がじんわりと汗で張りついていたり、エプロンで抑えられた豊満な胸元のかすかな揺れ、小刻みに震えている指、沙穂の体の全てがこちらを誘っているように見えてしまう。
「一緒にゴロゴロしよっか」
呼びかけにコクンと頷く沙穂。
寝室に入り、陽太郎は優しく沙穂を後ろから抱きしめた。
慌てた沙穂を膝に抱える形でそのままベッドに座り、迅る気持ちを抑えながら、ゆっくりと丁寧にセーターをたくし上げた…
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