第16話:変わらなくて、それでいい。
待ち時間にはウィンドウショッピングでも。
そう思って、約束の30分前に有楽町駅の改札口へ到着したのだが、急に面倒になってしまった。
そもそも、見て回ったところで銀座・有楽町界隈で、俺が購入すべきものは何一つない。
お洒落な衣類も革細工もアクセサリーも、身につけたとて似合わなすぎる。身に纏われた商品が可哀...
2021-04-04 02:32:55 +0000 UTC View Post
待ち時間にはウィンドウショッピングでも。
そう思って、約束の30分前に有楽町駅の改札口へ到着したのだが、急に面倒になってしまった。
そもそも、見て回ったところで銀座・有楽町界隈で、俺が購入すべきものは何一つない。
お洒落な衣類も革細工もアクセサリーも、身につけたとて似合わなすぎる。身に纏われた商品が可哀...
2021-04-04 02:32:55 +0000 UTC View Post
「ただいま…と」
帰宅すると、玄関口でりうちゃんのスマホが着信音を鳴らしていた。
液晶画面には『みずきくん』と表示されている。
『みずきくん』とは、りうちゃんの弟で、本名は、有栖川瑞稀(ありすがわみずき)という。
とても気持ちの良い好青年で、りうちゃんよりも1つ年下らしい。
有栖川りう(ありすがわ りう)の目には、かつて無いほどの曙光が宿っていた。
そもそも彼女の瞳はキラキラと美しいのだが、今はそうではない。
ギラギラとさんざめき、獲物を仕留めんとする狩人の眼光だ。
獲物は、りうちゃんの家のテーブルの真ん中にちょこんと置かれている。
手のひらを広...
2021-03-21 00:03:17 +0000 UTC View Post
口数は少なかった。
「学校には行かなくて良かったの?」
「うん。本当は行かなきゃいけないんだけど、明日でも大丈夫だから」
「そっか。その...」
「うん?」
「あ、いや...ケ、ケーキ、お土産に持って帰らせてもらえて良かったね」
「うん」
ふたりは並んで歩く。彼女の自宅に向かって。
そこ...
2021-03-14 03:14:02 +0000 UTC View Post
その夜、俺はりうちゃんと交わった。
お互いに休む暇も与えず。
連続の2回戦だった。
彼女は上下を反転させながら、体をくねらせ、時折、甲高い声を上げた。
その反応に呼応するように、俺も負けじと、しかし優しい手つきで彼女の弱点を攻め続けた。
...
2021-03-08 09:54:23 +0000 UTC View Post
帰宅後、冷えた体を湯船で温め、焙じ茶を二杯淹れる。
一杯は自分が、もう一杯は目の前のりうちゃんが飲む。
有栖川りう(ありすがわ りう)という変わった名前の美少女と、こうしてテーブルを挟んで焙じ茶を飲むのが俺の嬉しい日課となっている。
彼女の笑顔は、俺を心の底から元気にし、活力を与...
2021-03-02 11:15:46 +0000 UTC View Post
日は暮れ、辺りには街灯が灯っていた。
夜になると、東北の寒さが一層身に沁みる。
「悪かったね、みっともないとこ見せちゃって」
金髪のロングヘアを手櫛ですきながら取り繕おうとする彼女ーーー優夏さんには、年相応の若さが見て取れた。
18歳でこの街を出てから3年、つまり21歳。
覆いかぶさるような澄んだ青空。
海岸沿いの県道からでも、波の寄せて引く音が心地良く聞こえてくる。
「海が見たい」
りうちゃんの一言から連休を利用して、俺たちふたりは秋田県の男鹿半島に来ていた。
東京から、在来線と新幹線に揺られること7時間。長旅を経てようやく到着だ。
ひとつ大きく伸...
2021-02-20 09:01:13 +0000 UTC View Post
「という訳で、今日は、ガトー・ショコラを作ります」
有栖川りうシェフはそう、高らかに宣言した。
どういうわけか、先日りうちゃんが家に遊びにきた日に、今日の予定を空けておいてと言われていた。お菓子作りをするから食べてみて欲しいんだとか。
俺のカレンダーが仕事以外の予定で埋ま...
2021-02-12 10:15:55 +0000 UTC View Post
心、踊る。
胸、ときめく。
今日、俺は人生で初めての体験をすることになる。それはきっと、もう、ほんの5分後には訪れる。
自然と鼓動が高鳴り、家を出る足取りも軽やかだ。それもそのはず。
これから5分とかからずに到着予定の場所は、楽園そのものなのだから。
...
惰眠を貪る。
一見、怠惰な人間を連想させるフレーズだが、これこそ、人類が求める最も純粋で高尚な幸福なのではなかろうか。
幸福の定義は十人十色、千差万別だが、これは、その中にある一つの共通解と言っても差し障りない、と俺は思う。
ぐでー。
そんな訳で、今日も今日とて、休日...
2021-01-21 11:12:59 +0000 UTC View Post
ぽつ...ぽつ...うぃーん。
ぽつ...ぽつ...うぃーん。
フロントガラスを雨粒が滲ませる。それらを左から右へ、ワイパーが追いやっていく。
生憎の雨。
早朝から雨模様だった空は、予約していたレンタカーに乗り込むと同時に、雨粒を降らせた。
旅行の日に雨が降れば、それはそれ...
2021-01-11 01:05:08 +0000 UTC View Post
「父さん!...父さん!」
母の腕を振り解いて叫んでいた。
無機質なベッドに横たわり、時折、車両の振動で体が震える以外の反応は無かった。
『赤信号直進します...赤信号直進します...』
寒空の下に響くけたたましいサイレンは、その内側にいることで、より鮮明に感じた。
カーテンが引かれているので外の状...
2021-01-02 10:44:49 +0000 UTC View Post
故郷では、秋が終わると、世の中の彩りが失われた。
でも、そうではない世界があるということを、東京に移り住んで知った。
紅葉や銀杏に代わって街を彩るのは、色とりどりのイルミネーション。
都会の街は、夜というドレスを纏い、煌びやかに着飾っている。
もうじきクリスマスだ。
10年程前、まだ...
2020-12-22 10:37:14 +0000 UTC View Post
俺には越えなければならない壁がある。
それはとてつもなく巨大で、堅牢で、そして無慈悲だ。
「んーっ!...眠い」
これだ。
小さなテーブルを挟んで向かいに座るのは、10代後半の女の子。「りう」という少し珍しい名前の持ち主だ。大きな瞳が印象的で、控え目に言っても美少女と言わざるを得な...
2020-12-12 10:54:35 +0000 UTC View Post
貯金は全く増える気配がないが、疲労とストレスだけは加速度的に蓄積されていく。そんな生活を何年続けているのだろうか。
「ただいま...」
帰宅した時に呟くこの一言はただの習慣だ。誰もいない空間に霧散していくだけの言葉を、吐き出していただけ。けれど、
「おかえりー!」
今は違う。
自分の...
2020-12-04 09:35:04 +0000 UTC View Postこんばんは、れぶんです。
当ページをご覧いただきありがとうございます。
PixivFANBOXでは、普段描いているイラストと、その前後の状況やイラストに関連するストーリーを、一つの作品としてまとめ、支援者限定記事にて公開していきます。
私はこれを、イラスト+ストーリーということで、「イラストーリー」と呼んでいます。 2020-12-04 09:25:43 +0000 UTC View Post