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いのちをつなぐ ♂ver.

第四紀完新世大絶滅。21世紀に起きた地球規模の災厄。


私はその大災害の生き残りの一人である。


この手記では、恐ろしくも奇妙な大災害の顛末と隠された真実を綴る。



2025年8月10日正午


大災害発生。


突如発生した大地震によって私の住む町は滅茶苦茶に破壊し尽くされた。


当時、私は20歳。


その日はたまたま勤め先のオフィスビルの地下階の倉庫で古い資料の仕分け作業をしていたが、突如、爆音と共に地面から突き上げられるほどの衝撃が起き、本棚諸共空中に身が投げ出されたのを覚えている。


電気が消え、何も見えない倉庫の中、本棚の下敷きになった同僚たちの呻き声が鳴り響く。

私自身も全身を打撲し、立ち上がるのも精一杯の状態で、必死に呻き声の聞こえる方向へ足を引き摺って行ったが、物が滅茶苦茶に散乱した倉庫内をただ移動するだけでも困難を極めた。


四苦八苦しているうちに、気付けば辺りが焦げ臭くなる。どうやら地上階では火災が発生しているらしく、火の手が地下まで回ってきたようである。


息をするのも苦しい状態で、自分一人だけでは到底同僚の救出など不可能と判断し、なんとか外に出て助けを求めようと試みた。


幸い地下には直接地上に上がる非常口が用意されており、扉自体の損傷が激しく開けるのには一苦労だったが、なんとか突き破り外に出ることに成功した。

しかし、目の前に飛び込んできた光景は想像を絶するものだった。


“紅蓮地獄”。


360°見渡す限りすべての建物が炎上している。


既に倒壊したビルも散見され、所々で爆発が巻き起こり、道端には無数の死体が転がっていた。


「こっちだ!急げ!!ゲートを閉めるぞ!!」


茫然と立ち尽くす私に、突如声が掛かる。


15mかそこら離れた地下鉄の入り口の前に一人の男がいた。今まさに防火シャッターを閉めんとする瞬間だったようだ。


会社が地下鉄入口すぐ横のアクセス抜群の立地で助かった。私は死に物狂いでボロボロになった身体を動かし、なんとか地下街に逃げ延びたのだった。



2025年8月11日未明


一日経ってもパニックが収まらない地下避難所。怒号やすすり泣く声が絶え間なく響き渡っている。


しかし、過去に震災を経験していた駅長の一人が指揮を執り始めたことで漸く人々は落ち着きを取り戻しつつあった。


地下の食糧備蓄を持ち出し、配給が始まり、私は約40時間ぶりに食料を口にした。


しかし、精神的ダメージから吐き気が治まらず、配られたパンがなかなか喉を通らない。


助けられなかった同僚達、地上で火に焼かれたであろう会社の人達。携帯の電波も通らず、家族や友人の安否も不明の状態。自身も火傷を負い、全身打撲の満身創痍で高熱にも魘された。


当初、避難してきた人々はこの災害は大地震によるものであると思い込んでいた。しかし、一日経って少しずつ冷静さを取り戻してくると、漸く現状の異常性に気付き始める。


いつまで経っても復旧しない通信。そもそも、いくら大きな地震が起きたとはいえ、町全体であそこまで火災が起きるのか。


しかし、この時、実は町どころか、国全体が世界中が地獄と化していたのだった。


後の研究で判明したことだが、“ある災厄”によって発生した衝撃波は、300℃を超える熱を帯びて世界中に波及し、町を瞬く間に火の海にし、沿岸部では何百メートルという大津波が押し寄せていた。


大地震もこれらと併発して起きた一つの災害に過ぎなかったのだ。


この同時多発的に起きた災害はたった1日の間に人類の総人口のほとんどにあたる79億人もの尊い命を奪っていた。


改めて思い返せば、この時点で私は確立1%の強運を引き当てていたことになる。


その日既に地球の総人口は1億を割っていたのだ。



2025年8月18日


災害から一週間以上が経過した。


外がどのような状況にあるかわからないままゲートを開くのは危険であると判断し、これまで地下で救出を待ち続けていた人々だったが、通信手段は一向に回復しないまま、ついに食料備蓄が底をついた。


人々の心も限界に達し、外に出たいと訴える人々が暴動を起こしかねない緊迫した雰囲気が漂い始めたことで、ついに駅長はゲートを開く判断をする。


しかし、人々は解放されるどころか、変わり果てた外の様子に心を折られることになった。


廃墟。


消化活動も救出活動も一切行われず燃える物がなくなるまで町が火で炙り続けられたであろうことは周りを見れば一目瞭然だった。


灰で真っ黒になった瓦礫と人骨が地平線の先まで散乱している。この一週間で確かにここにあったはずの町は忽然と消えてしまった。


そして何より異様なのが空である。曇っているとは言え、太陽が昇っている時間にも関わらず、あまりにも薄暗い。


まるで本当に地獄にでもいるようだった。


絶望の中でただただ噎び泣くことしかできない人々。本当の地獄はここから始まるのだ。



2025年9月20日


災害から一カ月以上が経過した。


結局、拠点を地下に置かざるを得ず、人々は無い食料を搔き集め辛うじて生を繋いでいた。皆心身ともに傷付き、日に日に命を落としていく人が増えていく。


仮埋葬として地下入り口近くに設けられた簡易的な墓地も気付けば何千何万という墓標で埋め尽くされていた。


地下は網目のように張り巡らされた地下鉄の線路と複数の地下街で構成されており、当初、避難民の数は全部合わせると100万はいたはずだが、たった一カ月で一割の10万人近くが亡くなった。


所々で地下水が湧き出ているため、最低限の水の確保はできていたが、飢えによる衰弱と精神疾患による体調不良が相次ぎ、薬もすぐに尽きてしまった。


その間、地上へ食料を探しに出たり、残っている集落がないかなどを調査する為に、探索隊が組まれたが、地平線のどこまでも焦土と化しており、良い結果は出なかった。


もはや地上には一切生命など存在してないようにさえ感じるほどに静かだ。



2025年9月25日


この日、まだ9月というのに雪が降った。


探索隊の調査報告から急激に気温が下がってきていることは知らされていたが、それもそのはず、ここ一カ月間一度といって日の光が地上に届いていたことはなかったから当然のことだろう。


世界中で発生した火災によって、煙と水蒸気とが大気に厚い雲を作り、かつて恐竜が絶滅した時と同じように地球には長い長い冬の時代が訪れたのだ。


地表に太陽光が届かなくなり、植物は生育できず、気温もみるみるうちに下がっていく。


世界全体を見渡せば、辛うじて火災を免れた森林地帯もあったかもしれない。しかし、全生命に平等に襲い掛かる永遠の冬と飢餓はセカンドインパクトとして、地上に住む命に死の手を広げていった。



2026年7月15日


朝も春も来ない地獄のような日々。


気の振れた輩同士の殺し合いは日常茶飯事となり、極限の飢餓を前に“禁忌”を犯すものも後を絶たない。


感染病が蔓延し、死体は放置され腐乱し、地下全体が異様な臭気で包まれていたが、もう皆鼻が馬鹿になって、それすら誰も気にも留めなくなった。


力を持つ一部の人間達が地下を支配するようになり、少しでも食料になりそうなものや新鮮な水は彼らが独占するようになる。


最上位層に至っては“種の保存”などと謳い、子作りする余裕すら見せる中、最下層の人間達は蛆虫やネズミを食べて、辛うじて生を繋いでいるような状態だ。


毎日数百人が亡くなる中、私はしぶとく生き残っていた。


まだ若く体力があったから持ちこたえていたこともあるが、何より大きかったのは生きる意味を持てたかどうかだと思う。


どうやら“生きている意味がない”とそう感じた瞬間から身体は急激に衰弱していくようで、実際、精神的に参った人から亡くなっていた。


私が生に執着した理由は、単純に今この地獄を引き起こしたものが何なのか真実を知りたかったことがある。


大地震、大規模火災、明けない冬の到来…諸々の状況を鑑みれば、隕石の衝突が有力な説ではあったが、同時に説明がつかないこともいくつかあったのだ。


例えば、もし隕石衝突なのであれば、人間の科学技術があれば、隕石の衝突時刻や軌道を割り出し、核ミサイルで破壊したり軌道を逸らすこともできた筈だ。


仮にそれに失敗したところで、隕石が近づいていることくらいは判明していないとおかしいのである。


しかし、大災厄は誰も何も分からないうちに突如として起きた。


本当は隕石とは別の何かとんでもないことが起きたのではないか。そう考えると、その真実を知らぬまま死ぬのはあまりにも勿体ないとそう思ったのだ。



2035年5月24日


日は未だ届かず。


生存者は5万を割る。


ここと同じように、他の大陸、他の国の地下にも生き残りはいただろうが、災害から10年も経った今、全滅してしまった地域も多いことだろう。


この頃には、外気温は-30度に達し、もはや外に探索に出ることは不可能となった。


しかし、人間の渋とさと生きる知恵は凄まじいもので、この時期には、ネズミや蝙蝠、虫の養殖やキノコの栽培が盛んになり、食糧問題は解決しつつあった。


人々に余裕がでてきたことで、ようやく遺体の処理が進み、地下には巨大な墓地が作られた。


隔離地域が設けられ、病に罹った者は強制的に隔離されてしまうが、人権より尊厳より、何より種として生き残ることが優先される価値観がこの時は広まっていた。


極限の状態が続いたことで、漸く人も他の動物と同じように“種を繋ぐ”という本能が道徳心を凌駕したのである。



2070年4月15日


待望の瞬間が訪れた。


長い間空を覆っていた分厚い雲がようやく消え、ついに地上に光が差したのだ。


40年以上恋焦がれた朝日に人々は歓喜の声を上げた。


この時私は齢65を数えていた。自分より上の年齢の大人たちは既にほとんどが亡くなっていたこともあり、数少ない高齢者のうちの一人となった。


生存者はわずか5400名。中には種の保存の方策により誕生した、地上を知らない第二世代も含まれる。


しぶとく人間達が生き残っていた中、地上では生物の約90%の種族が絶滅していた。残りの10%と言ってもほとんどが海洋生物で、哺乳類に至ってはもはや手で数えられるくらいの種類しか残っていない。


雲が晴れたとは言っても地表を覆い尽くす雪の層は分厚く、問題は山積みだが、しかし、とうとう人類は大災害を乗り切ったのだ。


2080年7月23日


ついに地球上の人類で最高齢となった。災害の真実を知りたいという執念だけで生にしがみついているような感じだ。


この十年間で地球の探索は進み、他の地下で生き残っていた人々と邂逅することも稀にあった。互いに情報を共有する中でわかったのは、地球全体で生き残ったのがわずか10万人という少なさだったことだ。生存率はわずか0.00001%である。


大災害がなく順調に人類が繁栄を続けていれば、今頃には100億人をゆうに超えていただろうことを考えると、どれだけ人間という種が後退したかを改めて痛感させられた。


どこか一つでも国が存続していれば、という淡い希望も立ち消え、人々は0から文明を立て直していくこととなる。


この時、私は災害経験者の貴重な生き残りとして、そこそこの権力を握っており、生活基盤の立て直しと並行して行われていた災害調査の最高責任者を務めていた。


500名ほどの災害研究員を組織し、主に災害爆心地の調査を中心に真相究明にあたっていた。


10年間の成果と言っても、そもそも爆心地にアクセスするまでが非常に長い道のりで、せいぜい爆心地の位置の特定と、そこにあった直径150㎞を超える巨大なクレーターを発見したことくらいだ。


もし本当にこの規模のクレーターを生成するほどの巨大隕石だったら、一瞬で10億人もの人間が蒸発したと推測されるだろう。


隕石説とは別に大規模核爆発説も挙がったが、クレーター内には放射性物質が検出されなかった。


謎は深まるばかりである。隕石の接近を国民に知らせないなんてことはあり得るのだろうか。


私に残された時間ももう少ない。このまま死んでは、何のためにここまで頑張って命を繋いできたのか。焦燥に駆られる中、ある日、驚くべき報告が届いた。


2081年3月5日


この日、研究者の一人がクレーター近くの廃墟でボロボロのビデオカメラを見つけた。


あらゆる物が朽ちて形も残らなかった中で、偶然に偶然が重なり、火災にも津波にも巻き込まれずに瓦礫の中に埋もれていた奇跡のカメラ。


そして、その中に入っていた風化した一枚のSDカード。


今までも似たような発見は幾度かあったか、50年以上の歳月が経過していることもあり、結局データを復元するには至らなかった。


しかしこの時、研究者達は初めてその中身を復元することに成功したのだった。


・・・そして、そこには嘘のような冗談のような光景が映っていた。


カメラに記録されていた映像は、沿岸の大都市と綺麗な海。話し声とエンジン音、そして一枚ガラスを挟んでかなりの高度から映し出されていることを見るに旅客機から撮影された映像であろうか。


大災害の起きる日時の直前までは平穏な美しい風景がただただ流れていたが、災害発生時刻数分前になると突如として海が大きく盛り上がっていく様子が確認された。


そのまままるで海が立ち上がるように、数㎞、もしくは数十㎞はあろうかという水の柱になったかと思うと、徐々に水が形を作り始め、やがて美しい青い肌をした巨獣の姿に変化した。


「え?何あれ!?」

「やば…あれってCG?」

「ちんこでっか…」


謎の巨大生物の存在に気付き、俄かに機内がざわつき始める。


その姿は爬虫類のようにも両生類のようにも見えたが、顔立ちは肉食獣のようにも見えた。

大きな尻尾にヒレ、しかし人間のように二足歩行で立ち、明らかに雄と分かるような性的特徴を有している。


人間のものと酷似する一対の睾丸。それも途轍もない大きさで、一玉一玉が頭部と同じくらいの大きさがある。


何より目を見張るのがその巨尻。真下にある1000万人級の大都市すら簡単に覆い隠してしまう程の巨大さがあり、下手すればケツの穴だけで町の一角を飲み込んでしまうのではないかという程のスケールだった。

それを見た研究者たちはすぐさま“第四紀完新世大絶滅”の犯人が何なのかすぐに理解した。


そして実際に映像には“その瞬間”もしっかり映っていた。


彼は空を覆い尽くさんばかりの巨大な尻を大都市に向けると、無情にも町に腰を降ろしたのだ。


まるで月が二つ落ちてきたかのようなその巨玉によって一瞬で町が呑み込まれたかと思った時には、立て続けに巨尻が地面に到達。轟音と共に町と1000万の命は一瞬でスクラップになり、周囲の地面が地盤ごと罅割れめくり上がる。


その地割れが余程の深度なのか、マグマが噴き出す様子まで確認できた。しかし、次の瞬間には映像は乱れノイズで何も映らなくなった。


研究者たちはしばらく呆気にとられ茫然と立ち尽くした。


なぜ人間達が誰一人彼を認知できなかったのか、その真実がこのカメラにすべて詰まっていた。


地球外から到来したわけでもなく、ズシンズシンと特大の足音を響かせながら町に近付いたわけでもなく突如として彼は大都市に姿を現した。最初から彼はこの地球の海に潜んでいたのだ。


港町の住人と、その周囲の町にいた人間達だけは、その存在を目にしていたと思われるが、同時に彼が視界に入るほどの距離にいた人たちは皆、巨尻メテオで灰も残さずに蒸発したと推測される。


かくして彼の存在は隠されてしまったのである。


彼が何のために地球規模の大量殺戮を行ったのかは不明だ。


しかし、この世界、いや宇宙には人知も及ばぬような神がいて、そして彼らからした人間など塵芥のような存在でしかないという、その一端を最期に知れただけでも今まで生きてきた良かったとそう思えた。


この事実は人類にとってはあまりに絶望的でやるせないものなのは確かだ。


しかし、なぜか私は同僚や友人、そして家族を一瞬で奪った彼を恨む気持ちにはならなかった。


あまりに強大な存在故に個として認識できなかったこともあるかもしれないが、それ以上に生物としてのあまりに完成された美しさに心を奪われたことがある。


これは私だけが異常なわけではない。


あの日、あの衝撃的な映像を見た研究者達のほとんどが同じ感覚に陥っていた。中には性的興奮を覚えたものも少なくなかったという。


傷一つないマリンブルーのつるつるの肌は、海そのものの美しさを投影しているようで、同時に新鮮な果実でも見ているようにも錯覚させられ、逞しい四肢と、筋肉の筋が浮き出た極太の尻尾が生物としての美しさを際立たせている。


そして、“性交して子孫を残す”という生物だけが持つ最大の特徴をこれでもかと見せつけるように発達した彼の性のシンボルは、もはやどんな言葉や表現でも足りないくらいの魅力が詰まっていた。


些細な生理現象ですらテラフォーミングを起こしかねない大穴。

すべての雌を狂わせ体内機能を破壊する濃厚フェロモンを垂れ流す巨棒。

地球上のすべての生物量すら軽く凌駕するほどの巨玉。

事実、大絶滅を引き起こした巨尻。


その神のスケールを目の当たりにすれば、微生物のような人類が生きようが死のうが何の意味もないことを思い知らされる。そして同時に無価値だからこそ、価値の化身である彼に命を左右されることすら光栄なことに思えてくる。


“神に命を取っていただいた”ことで、壮大な宇宙の端にあるちっぽけな虫けら如きが神と接点を持つことに成功したのだ、と。


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(今日はこの惑星で新鮮なお魚でも食べようかな。)


シャワーズ種の青年“レン”は腹ごしらえの為、地球を訪問していた。


シャワーズ種は一風変わった狩りをすることで知られている。肉体を液体に変化させる特殊体質を活用して、池や湖、海に一体化し、水の中に存在する生物すべてを事実上腹の中に納めてしまうのだ。


勿論、自分の身体に対し、水場の規模が大きすぎると消化は難しくなるが、それでも自分の体積の数十倍以上の体積を捕食場に変えることは可能だ。


他惑星への干渉はデリケートな部分が多く、あまり推奨されていないが、彼の場合、液体に変化して流れ込むように他惑星の海に侵入するので、基本的に星の住人にバレることはない。


ただ、今訪問している地球という星は、彼の住む星に比べてスケールがかなり小さいので、あまり海の幸を食べ過ぎると生態系に大きな影響を与えてしまう。


身長150㎞の彼の胃の大きさから考えると、せいぜいケーキ一個分のカロリーを消費するくらいに留めたほうが良いだろう。


レンもそこは十分理解しており、彼自身も心優しい性格をしているので、あまり星の住人に迷惑は掛けないようにと気は使っていた。


しかし…


「ふぅ~ご馳走様でした!やっぱり別の惑星の天然ものとなると新鮮で美味しい!・・・でも、ちょっと液体になりすぎて身体がなまっちゃったから、少しだけ座って休憩しようかな。住人の気配もないし、ちょっとくらい姿を現しても大丈夫だよね。」


それが人類の歴史の岐路だった。


液体から本来の姿に戻るレン。高校生になり性成熟した逞しいオスの裸体を地上に晒す。そして、砂浜にゆっくり腰を降ろした。


まさか砂浜と勘違いしたそここそが港町の繁華街で、レン自身が配慮しようとしていた筈の星の住人達が何百、何千万と集中していたところだとは彼は思いもしなかったことだろう。


ズズン…


(あれ?)


思いもよらず身体が沈み込む。同時に腰を降ろした反動で星全体が揺れているような感覚を覚えた。


ふと地面を見ると自分を中心に地面が滅茶苦茶に罅割れ、地割れが起き、その衝撃が地平線の遥か先まで広がっていることに気付いた。


「あ…座っただけなのになんか凄いことになっちゃった。ちっちゃい惑星だと脆すぎて星ごと壊れちゃうこともあるから注意しないとね。惑星の住人に迷惑かけてなければいいけど…。」


そう、地球の歴史に刻まれるような大絶滅を引き起こし、人類から“神”と呼ばれた彼は、別の惑星では、一人の何の変哲もない男子高校生でしかなかったのだ。


ただ座っただけ。


それだけで世界中の全生命がその衝撃波で命を散らし、星に氷河期が訪れることになるだなんて、彼は知る由もないだろう。


すべての生命の日常を奪った彼は、小腹を満たし満足したのか鼻歌交じりにいつもの日常に戻っていった。


おわり


・レンの“尻もち”による死者の死因別内訳


巨尻による直接的な圧死:1045万3571名

(うち巨玉:645万381名)

地割れ落下死:120万7261名

巨尻メテオ衝撃波による蒸発:13億2391万7311名

衝撃波による火災死者:38億7105万4735名

地震に伴う建物倒壊下敷き:5億8547万4434名

瓦礫等落下物衝突による死者:9165万3749名

災害に伴う交通事故死:53万3291名

津波死者:20億2964万5876名

精神錯乱による殺し合い:3万3561名

自殺:3479万1103名

飢え死に:2010万8814名

感染病による病死:958万3211名


総死者:79億7845万6917名

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