その日、突如町に現れた巨大な猫型の怪獣。
彼は大都市のど真ん中に堂々と座り込み、あろうことか白昼堂々、自らのペニスを扱き始めた。
獣特有のがっしりとした大腿部。そして、股から巨塔のように聳え立つ黒光りする男性器。
町を見下ろし威圧するかのような逞しいその裏筋には、何か紋様のようなものが浮かび上がり青く発光している。そして、その尿道の膨らみに沿って、彼が手を上下させる度、バリバリと電撃が走った。
ゆうに1㎞はあるその“トールハンマー”が戯れに振り下ろされれば、一瞬で町が壊滅するだろうことは火を見るよりも明らかだ。
後に“雷帝”と呼ばれ恐れられた彼は、その肉体自体が一つの巨大な発電所のようなもので、オナニーするだけでも、摩擦発電でどんどん電気が体内に蓄積されていく。
その発電力は凄まじく、気まぐれに数秒ピストンしただけでも、地球上にある全ての発電所の合計電力量を上回ってしまう程だ。
彼の二つある精嚢はそれぞれが+極、-極の役割を担っており、精液が電解質の代わりだ。そう、彼の精嚢はそれ自体が生体蓄電池なのである。
彼の生殖器の発電機としての性能はそれだけではない。
ピストン運動による充電以外にも、精子が蠢きぶつかり合う摩擦によっても、彼は自然と帯電していく。ちょうど雲の中で氷の粒が衝突、摩擦し、落雷を発生させるのと同じメカニズムだ。
二重に充電され、体内に溜まりに溜まった膨大な電気エネルギーが射精によって放出された時、おそらく周囲に存在するすべての形あるものは消滅することだろう。
火花放電により視界が真っ白になったと思ったと矢先、急激に熱せられた空気の熱膨張によって発生した圧力波が建物を破壊し尽くし、爆轟がそこに存在する全生命の鼓膜を破壊する。
分岐放電によって、建物や木々、人間達に次々と大電流が流れ、側撃によって被害は広範囲に広がっていく。
人類が観測した雷の最大電圧は13億Vと言われているが、雷帝の射精放電は実に30億V。電流にして200万Aだ。
それだけの大電流に晒された人間がいったいどうなるのか。
その答えは“爆発する”だ。
ふざけているのではない。本当に爆発する。
大電流が人体を流れると、体内の水分が急速に熱せられ一瞬で水蒸気になる。水の瞬間的な蒸発による体積の増大は実に1700倍だ。
そう人間の身体で“水蒸気爆発”が起きるのだ。
・・・彼の射精がいかに恐ろしいものかはお分かりいただけただろうか。
被害報告によると、彼の一回の射精放電による死者は200万~500万とも言われている。
ただ、なぜわざわざ彼が町のど真ん中でオナニーをするのかや、何に興奮してフル勃起しているのかは未だ諸説あり、研究者の中でも意見が割れている。
また、今の頻度で彼が射精放電を繰り返すと、約3年程で人類は絶滅するとも言われている。
いかに彼の強力な放電をアースし、都市部への被害をなくすのかが人類存亡の為の各国の共通議題だ。
しかし、射精放電だけ対策すれば、それで安心というわけではないのが、非常に悩ましいところだ。
というのも、3.5㎞はあろうかという、彼の巨躯そのものが既に人類にとっては致命的な脅威であり、彼の所作一つ一つが生み出す被害も甚大だからだ。
生殖の為だけに備わっている器官とは到底思えない、あまりに異常なサイズのペニス。
それを思い切り叩きつける“雷帝の巨槌(トールハンマー)”の被害も射精放電と遜色なく、また、この巨槌を支える為に発達した大きな足は、効率よく広範囲の町を更地にしてしまう。
まさに人類を蹂躙する為に進化してきたような大量殺戮生物兵器だ。
人類はこの難局を乗り越えられるのだろうか。
彼らの生きざまをしっかりと見守っていきたい。
人類存亡記4章6節より(著者:ゼラオラ)