金壁魔法 「後編」
Added 2024-01-22 14:43:28 +0000 UTC(あっちの狼娘(リコス)は避けた方がいいな) ログは全てを見ていた。 武装する男二人に挟まれた狼娘(リコス)が、 どのようにしてあんな短時間で突破したのか。 ~数分前~ 「おい、なるべく剣は使うなよ。大事な商品なんだから」 「わかってるって。しっかり体で捻じ伏せてやるよ」 凛々しい色気を放つ女体をいやらしく見据えて、 男二人がじりじりと迫っていく。 相手は高い身体能力を持つ狼の獣人とはいえこちらは二人、 さらに鎧で身を守っており、先ほどのように 不意を突かれなければ負ける事はない。 そう高をくくり、同時にどさくさに紛れて乳や尻を 揉んでやろうなどという邪心も膨らませていた。 すると。 『!』 狼娘(リコス)の片耳がピクリと上がり、顔つきが変わった。 仲間の悲鳴が彼女の耳に届いたのだ。 「おい、言葉は通じるんだろ? だったらよく聞けよ、大人しくしとけば傷付けたり――――」 話しかけてきた男が言い終えるより早く、 狼娘(リコス)が股間を足で踏み抜いた。 ガッッ! 正確には股間を守っている逆三角形の鉄板へと 足の裏を叩きつけたのだ。 「うッ!?」 先ほど兜越しに脳を揺らされたように、 今度は睾丸へと強い振動がかかる。 『ジャマだッ』 狼娘(リコス)は仲間のピンチに急いでいた。 股間を押さえてグラつく男へ近づいて剣を取り上げると、 その切っ先を首へと滑らせていく。 「ッッが ッッぁ」 鎧には稼働させるための隙間が必ずあり、 ソコを正確に狙われたのだ。 「てめぇ!」 鮮血を撒き散らして倒れる男を見たもうひとりが叫ぶと、 すぐ血の付いた剣が飛んできた。 「うお!?」 辛うじて構えた剣でそれを弾く。 だが、慌てて視線を戻す先に狼娘(リコス)はいなかった。 「しまった!」 逃げられた。と男は思ったが、そうではなく、 狼娘(リコス)は男の背後へと素早く回り込んでおり… ――――ゴキュッ! 後ろから男の股間を蹴り上げたのだ。 「ッッッ!!?」 男たちは股間に鉄板を下げていたが、 歩くためには足と足との間をあけておかねばならない。 つまり、真下からの強力な蹴りを防ぐ防具は無く、 男の最大の急所へと尖ったつま先が突き刺さった。 「おッッ… おぉ…」 ぐるりと白目をむいた男が崩れ落ちる。 『フン』 〝この手〟の攻撃に慣れている狼娘(リコス)は 感触から男の玉袋が破裂した事を察して、 止めを刺さずに仲間の元へと走り去っていく。 たとえ生きていたとしても、この森の中では 睾丸の潰れた男などのたれ死ぬしかないからだ。 ※ 『ブジか?』 『ア、アァ… タスカッた』 惨たらしく生殖器を破壊されたリーダーの男の横で 美しい狼娘(リコス)二体が手を取り合っている。 そして木の上に潜んで見ていたログは。 (〝強い方〟はできるなら避けたいな… 〝弱い方〟だけで単独行動してくれるとありがたいんだが…) 想定外の強さを持つ個体を見て策を練り直していた。 上手く潰し合わせるためにわざわざ三人をけしかけたというのに 狼娘(リコス)たちはほぼ無傷。 その強さを知れただけでも収穫だが、あの二体を同時に 相手するとなるとそれなりの作戦が必要だった。 (【金壁魔法】をかけて貰ってよかったぜ… おれも〝あぁなる〟ところだった) 樹木の根が血管のように張り付く地面へと 叩きつけられた大きな男。 絶命しているためピクリとも動かず、真っ赤に勃起する陰茎は ほぼ直角に折れ曲がり、思いっきり握り締められた陰嚢は 一部が破けて〝中身〟が血と共にこぼれ落ちていた。 (う) ログはこの道のプロと呼ぶに相応しい腕前だが 〝あんな姿〟を見せられて動揺しない男はいない。 ガサ…… ほんの少し強張った体が葉と擦れて不自然な音が鳴ってしまう。 そして、ソレを聞き逃す狼娘(リコス)ではなかった。 『!』『!』 二体がログの潜む一点へと顔を向けた。 (くッ 俺としてことが…) ログもバレたことに気付き、携帯していた短刀へと手を伸ばす。 ところが、今度は幸運な事が起こったのだ。 『オマエはエモノをモッテカエれ』 『ワ、ワカッた』 なんと〝弱い方〟の狼娘(リコス)が 男の死体を担いで去って行ったのだ。 (……なるほど、それだけ自身があるってわけか) 通常は複数で狩りを行う狼娘(リコス)だが、 その強さゆえに単独を好む個体もいるらしい。 〝弱い方〟を逃がし〝強い方〟と戦うハメになったのは ベストとは言えないが、この状況も悪くないとログは考える。 「へっ 面白れぇ。 やってやるよ」 かなりヤバイ相手に違いないが、これまでの戦い方から 勝機が十分ある作戦を思いついていたのだ。 「よっ――――」 木の上から飛び降りると、狼娘(リコス)の尻尾がぶわりと膨らんだ。 「〝弱い方〟もイイが、お前さんも高く売れそうだ」 ログが短刀を構えると狼娘(リコス)が 引き締まった四肢を地面につける。 『オマエも… ツブす!』 相手は美しい女性の皮を被った猛獣。 放たれる殺気は人のそれを遥かに超える。 それでもログは不敵に笑う。 恐怖もあるが勝ち目も十分にある。 「いくぜ」 狼娘(リコス)に動かれるより先にログが仕掛けた。 (ここで一気に決めてやる) 低く構える狼娘(リコス)に取った一手はまさかの〝蹴り〟 「ハッ!」 手に持つ短刀は使わず、やや不格好な前蹴りを放った。 狼娘(リコス)にとっても予想外の一手だったが、 最小限の動きで難なく蹴りを躱す。 『ノロい』 躱されたあと、ログは蹴り足が上がったままという非常に危険な格好となり、 狼娘(リコス)にとってはここから取る行動はひとつしかなかった。 『バカが… スキダラケだッ』 しゃがんだまま両手を地に付けて、 ログの開かれた股間を踵(かかと)で蹴り抜いた。 ――――ガッ 「おぅ!」 硬い踵が足の間へと猛スピードで滑り込む。 先の男三人と違ってログの股間は鉄板で守られておらず、 だからこそ狼娘(リコス)も正面から蹴ったのだが。 『!?』 感触の違和感から表情を曇らせた。 これまでの経験から少なくとも〝睾丸破裂〟するほどの 攻撃がヒットしたというのに、玉の感触すらしなかったのだ。 「――――隙だらけだぜ」 そう言い返したログが狼娘(リコス)の太ももを 短刀で斬り付ける。 『ウっ』 切り傷は浅い。 しかし、まさかの反撃を受けた狼娘(リコス)は 間合いの外まで飛び退いてしまう。 『キ、キサマ… ナゼ…!』 ログの股間には魔法がかかっている。 男の局部を守る〝金壁魔法〟が。 今の彼は物理衝撃のみを弾く魔法障壁で 生殖器を守られていた。 「ふ、ふん… 大したことねぇな」 大幅に軽減された衝撃でも睾丸には効く。 ただし、それは少し痛む程度のダメージでしかないため、 こうして即座に反撃できたのだ。 ログはこれまで見た狼娘(リコス)の戦いから、 聞いていた以上に急所を、特に男の睾丸狙いの戦法だと知り、 〝あえて狙わせる罠〟を張ったのだ。 得意の金的攻撃を〝金壁魔法〟で受けてやれば 隙が生じるだろうと考えて。 結果は成功。 短刀がかすった程度の傷だが、 すでに〝毒〟は入っている。 『ウ…? ナ…ナンだ…!?』 〝毒〟といっても大事な商品に猛毒を入れる訳にもいかず、 今回は強力な睡眠薬を短刀へと塗り込んでいた。 『ネ… ネム…い…』 狼娘(リコス)が手を顔に当てて片膝をつく。 ログは念のため距離を取り、薬が回るのを待っていた。 「――――よっしゃ、いっちょあがり」 しかし。 「ん!」 念を入れていたのはログだけではなかった。 「何だこの匂い?」 甘い香りを嗅ぎ取り、上を向くとそこには。 「げ!」 女性の形を成した植物〝アウラウネ〟が居たのだ。 「くっそ! こんな時に」 ログは偶然だと思っていたが、このアウラウネは さっき去って行った〝弱い方〟の狼娘(リコス)が 念のために応援を頼んでおいた魔物である。 『ふふふふふふ…♪』 木の上から撒き散らしている甘い香りは〝催淫香〟と呼ばれ、 男性の性欲を暴走させる効果があった。 「ぬ…ぅ… 妙な技使いやがって」 近くで膝をつく狼娘(リコス)にも降りかかっているが、 男性器を持たぬ者には無害であり、この場においては ログばかりが効果の対象となっている。 「ハァ… ハァ…」 数秒もしないうちに股間が大きく盛り上がる。 〝催淫香〟で呼び起こされた性欲が海綿体を充血させ、 〝子種を注入させるための肉棒〟を完成させたのだ。 『ふふふふふ……♡』 「ちッ あんな上から…」 木の上で笑うアウラウネだが、フル勃起していては 登ることが難しく、木との摩擦でイってしまう可能性も高い。 それほどまでに下半身が昂っていたのだ。 「ちくしょう!」 と、悪態づきながらも狼娘(リコス)を見ると、 片膝をついたまま両眼を閉じていた。 (眠った! ……よし、これなら) ログは急いでペニスを取り出すと、そのまま自慰(オナニー)をし始める。 「ハァッ ハァッ ハァッ」 催淫がいかに協力でも〝抜けば〟多少なり緩和される。 それが男というもの。 狼娘(リコス)は眠り、アウラウネは木の上から動こうとしない。 ならばこの隙にシコって催淫を解いてやる。 そうログは考えたのだ。 「ハァッ ハァッ ハァッ」 〝己の短刀〟を握り締め、狼娘(リコス)の美しい寝顔をオカズに 摩擦運動を繰り返し―――― 早くも果てた。 「んあぁ!」 どびゅるるるるうるるっるるうっっっ!! 催淫の効果により射精(で)る量は通常の倍以上。 「ああッッあぁッ」 びゅるるうるるるるう!! 大量の精液を吐き出すと、予想通り体が軽くなった。 物理的にあれだけの量を放出したのだから当然だが。 「ふぅ… ふぅ… ふぅ… よ、よし」 予想外の邪魔が入ったが〝問題〟はヌキ出した。 後は眠る狼娘(リコス)を担いで森を出るだけ。 ログは射精の余韻にしびれるペニスをしまおうとする、が… ――――グニッ! 最後の最後で天は彼を見放した。 「!」 後ろから伸びてきた何者かの手によって 射精直後の男性器が乱暴に掴まれたのだ。 「こッ これはッ!?」 ついさっき見たばかりの光景。 ログが頭部のみを振り向かせると、 肩越しに〝弱い方〟の狼娘(リコス)が見えた。 『キサマ… ヨクも… ナカマをッ!』 野生の勘と言うべきか、アウラウネに頼んだ後でも 嫌な予感がぬぐい切れず、彼女自身も駆けつけてきたのだ。 「ぐぉ!」 射精直後という男にとって〝最大の隙〟 この狼娘(リコス)はそこを狙って背後から弱点を握ったのだ。 ギュムウウウゥゥウゥゥゥ… 「ぅああぁッッ……!!」 それでも〝この弱点が機能している〟のはおかしかった。 (な、なんでこんなに痛むんだよ…! 〝金壁魔法〟がかかっているってのに) 〝打撃〟だけでなく〝握り〟でも対物理防壁は発動するはず。 なのにまったく軽減されない圧力が生殖器へと ダイレクトに伝わってくる。 (なんで! なんでだよッ!) ログがいくら動転しようと狼娘(リコス)は手を緩めない。 それどころか、膝をついて動かない仲間を見て怒りを深め、 湧き上がる怒気を指先へと集約させていく。 ギュウゥゥウ… ギチッ ギチチッ 「ぬぁぁあぁあぁぁっ!!」 今のログに思い出せる余裕など無いだろうが、 彼に〝金壁魔法〟をかけたクエラはこう言っていた。 《サキュバスには気を付けてください。 彼女たちの〝催淫〟をくらって射精すると 〝金壁魔法〟の効果も無くなってしまいますので》 ログはこの森にサキュバスなど出ないからと、 特に気に留めておらず、実際彼はサキュバスには出会っていない。 だが、重要なのは《〝催淫〟を喰らって射精すると》の一文。 彼は確かにアウラウネの〝催淫香〟を喰らってから 自分でシゴいて射精した。 つまり、条件は満たしてしまったのだ。 『シッテいるぞ… オスは… ココをツカメばオワリ』 ギュチ! ギュチ! 「ごおぉぉ!!」 〝金壁魔法〟によって注がれた魔力は睾丸に滞留し、 娼婦に抜かれた程度で解けることはないが、 催淫を喰らった状態となると話は変わってくる。 サキュバスだろうとアウラウネだろうと、彼女らの催淫は 魔法の一種であり、睾丸内にうずまく〝金壁魔法〟の魔力と 結びついてしまうのだ。 結びついてしまえば射精によって〝金壁魔法〟の魔力ごと 放出されてしまうため、その効果も消え去ってしまう。 『ガウゥッ!!』 ひときわ大きく声を上げた狼娘(リコス)が、 ログの股間を掴んだまま彼を担ぎ上げた。 「!!」 刹那、恐怖の光景が蘇る。 自分がけしかけた男の… 最期の光景が。 「ま、待てッ 俺はただ睡眠薬を――――」 『ダマれッ!』 担がれ、反転した視界が急降下してゆく。 それがログの目に映る最期の光景だった。 ――――ドッ! 踏み固まった地面へ衝突すると、 ゴキ… グジュ… という不快な音が鳴り響く。 充血する陰茎が折れ曲がり、陰嚢が破けて 〝内容物〟が飛び散った音だ。 因果応報。 私欲のために利用した男と同じ末路を辿ったログに 相応しい言葉である。 ※ 「――――あ」 客の股間に〝金壁魔法〟をかけていたクエラの手が止まった。 「どうした? クエラちゃん」 「い、いえいえ、コレに見惚れちゃっただけですよー♡」 誤魔化すように勃起しているペニスを突いてやると、 それだけで男の表情が緩んでいく。 「お、嬉しい事言ってくれるねぇ♪」 〝金壁魔法〟が解けた場合、その魔力の主である クエラは感じ取ることが出来るため、そんな〝報せ〟は 彼女にとって日常茶飯事なのだが、効果が持続する時間より 遥かに早く解けたからつい手が止まってしまったのだ。 (あの狼娘(リコス)を狩りに行くって言っていた男の… 魔法が解けた) クエラの口角が微かに持ち上がる。 「――――はい、終わりましたよ♪」 「おぉ、ありがとさん」 「あ、そうそう、この魔法は催淫を受けて射精してしまうと 効果が無くなってしまうんで、サキュバスとか〝アウラウネの〟 催淫攻撃には気を付けて下さいね」 クエラは正義の味方ではないが人として、 女性として気に喰わない事も当然ある。 そんな個人的感情から、ログには〝アウラウネのこと〟を あえて伏せて忠告したのだ。出会う確率は低いだろうから 説明するまでもないと自分に言い聞かせながら。 ログが男三人組に肝心な情報を隠していたように、 クエラもログに情報を隠していた。 まさに因果応報。 ログの〝金壁魔法〟が異様に早く解けたことが何を意味するか、 それは彼女の晴れ晴れとした顔が物語っていた。 おわり