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女隊長フラン 後編

 敵軍の亜重機を回収した次の日。  やはりと言うべきか、敵軍と思わしき三体の亜重機が  施設に接近してきた。 「失礼します。フラン隊長!」  部下の女性兵が扉を開けると、  フランは整備士の女性と話しているところだった。 「敵が来たのか?」 「あ、ハイ! 数は三体、すべて〝男型〟です」  報告を受けたフランがさっそく出動しようとするが、   整備士は念を押すように声を掛けてくる。 「隊長。くれぐれもエネルギー残量にご注意を」 「あぁ。 では、行ってくる!」    ※  先日の戦闘跡の残る岩山に囲まれた一角で、  フランの乗る〝女型〟亜重機は隠れもせずに待ち構えていた。 (前回のようにこの施設を見逃してくれと頼むことは出来ないな。  奴らからすれば、自軍兵器の機密情報を奪った我々は  ひとり残らず殲滅せねばならない筈… それも一秒でも早く)  今回は言葉を交わす暇も無くいきなり仕掛けてくる可能性が高い。  フランはそう構えていた。  なぜならフランに時間を掛ければ掛けるほど、  奪われた亜重機が解析されてしまうと考えられるからだ。  そして、その考えは的中する。 『来たな!』   三体の足音が聞こえたかと思えば、  まったく減速せずに戦闘を仕掛けてきたのだ。 【おい、コイツだな】 【あぁ、気を付けろ、変な道具を使うそうだ】 【しかも高い格闘技術を持っているらしいな、面白れぇ】  昨晩の男から報告を受けている様子だが、  三対一、しかも性能の劣る〝女型〟という事もあり、  三人の男は言葉とは裏腹にどこか気を抜いてしまっていた。  弱点が改良されたかこの〝男型〟で負けるはずがない、と。 【よし、俺が行くぜ!】  〝男型〟は〝女型〟より機体サイズが大きいため、  三体でかかれば同士討ちの可能性もあると考え、  まずはひとりの敵兵が先陣を切った。 (一体で来るか。好都合だ)  相手が一体であれば〝新兵器〟を試しやすい――――  フランは運が向いてきたと感じ、さっそく実験台を迎え討つ。 【けっこう強いらしいが俺だって格闘技経験者だ。  ちょっとやる程度の女に負けっかよ!】  豪語する男兵が拳を放ち、そのままシンクロする  亜重機が大きな拳部分を突き出してきた。 『ふん、どうやら正確に情報伝達がされてないみたいだな』  フランが、正確にはフランの乗る亜重機が片手でさばく。 【なっ!】 『〝ちょっとやる程度の女〟が民間人を守る部隊の  隊長を任されるはずがないだろう!』      攻勢に転じたフランが相手の頭部、腹部、股間を打つ。 【はぐぅッ!】  彼女の良く使うコンボだが、これはあくまで〝確認〟。 【……へっ、この程度か】 (やはり、この〝男型〟の股間部も改良されている)      知りたかったのは敵軍の〝男型〟全機が股間の弱点を改良されているかどうか。  昨晩に大急ぎで開発した〝新兵器〟ならばそれも破れるが、  まさに〝身を削る兵器〟であるため多用したくなかったのだ。 『仕方ない… やるか』 【あん?】 『光栄に思え。 キサマが犠牲者第一号だ』   と、フランの〝女型〟亜重機が再び金的蹴りを放った。  ――――ゴグンッ 【ッッ!!?】  反応できないほど鋭い蹴りが〝男型〟の股間部に刺さる。 【……ったく、効かねーっての。  馬鹿の一つ覚えみてぇに】  〝新兵器〟はここからだった。 【うッ!!】 【何だ!?】  声を上げたのは後ろに控えていた二体の亜重機。  金的を撃った〝女型〟の足部分が発光したのだ。 【な、何が起き――――】   喰らった本人がそう言いかけたところで言葉が途切れる。 【ふ、ふぐぅぅう??!】  格闘技経験者のこの男はとうぜん睾丸の痛みを知っている。  アクシデントで当たった時、他の打撃とはまるで異質な鈍痛に襲われ、  しばらくはまともに動く事さえ出来なかった。 (う、嘘だろ! 改良してある筈なのに… な、なぜ…!)  あの時の痛みが…  男特有の地獄が… 〝あの時以上〟に襲ってきたのだ。 【う… ぅぅ…】  結果。    〝女型〟が蹴りを引き戻すのと同時に  〝男型〟は内また気味の姿勢で倒れ込んだ。 【な、なんだと!】 【一撃ッ! 馬鹿な…】  仲間の不可解な敗北が後ろの二体に動揺を与える。 『さぁ、次はどっちだ♪』 【くッ】【うぐぐ】  〝女型〟のひと睨みで二体の〝男型〟が後ずさる。  改良された〝男型〟ならば股間を打たれても衝撃は伝わってこない、  という男たちの自信を支えていた前提が崩れたのだから、  戦意が萎縮してしまうのも無理はなかった。  今の彼らは金的を得意とする女性格闘家の前で  ファールカップを失ったのと同じ心境なのだ。 「ふん、貴様らの股座にぶら下がっているのは〝飾り〟のようだな。  この程度で怖気づくとは」  この挑発にも意味はある。  敵と同様にフランもこの戦闘を長引かせたくは無かった。  先程の光は、発光するほどのエネルギーを足に集約させた結果であり、  〝男型〟が一発で沈んだのは改良部分である〝キンタマモーター〟を  守るゲル素材へと、その強烈なエネルギーが伝わったから。  衝撃を吸収するゲル素材でも電気を通すことは  昨日の〝スーツ伸縮装置〟で確認済み。  ならば〝キンタマモーター〟が焼き切れるほどの電流を与えてやればいい、  と、開発されたのが、この〝新兵器〟なのだ。  ただし、エネルギーの消耗も激しく、下手すると機能停止の危険もあった。 (残り二体… 残存エネルギーを考えればギリギリ…  無駄な動きは少しでも抑えた方がいいな)  ただでさえ〝女型〟が蓄えられるエネルギー量は〝男型〟に劣る。  自分からは動かず、挑発によって相手を動かし、急所を打つ。  フランも決して余裕がある訳ではなかった。 【くそッ 何が飾りだ! 馬鹿にしやがってッ  ようは股間さえ打たれなきゃいいんだろ】 【お、おぉ。 こっちは〝男型〟二体だぞ。  同時に掛かれば〝女型〟の一体なんて楽勝だ!】  恐怖を払拭するためか、男たちが大声を出して向かってくる。 「ふふ♪」  操縦室のフランが口角を上げる。  金的のインパクトが強すぎて男たちは忘れていたのだ。  フランの操る亜重機は、格闘技経験者の男が操る亜重機より  遥かに強かったことを。 『素人どもめ』  別方向から飛んでくるふたつの拳を最小限の動きでいなし、  流麗な動きのまま〝男型〟二体の頭部を打ち抜いた。 【がッ!】 【ぐおッ!】  二体が同時に足を止めたのを確認すると、  まず右側の機体の股間部へと左拳を打ち込み―― 【はぐ!?】  発光するほどのエネルギーを左腕に集約させた。 【ま、待て―――― あぁぁぁぁッッ!!】  まばゆい光が周囲を照らしたあと、  〝男型〟は両腕で股間を覆い隠しながら無様に倒れ込んだ。 【て、てめぇッ】  残り一体。  フランは慢心せず、冷静に、冷徹に急所をえぐる下準備を整える。 『ハッ!』  ――――ゴギッ! 【ふぐ!!】  左手でアゴをかち上げ、右手で股間を狙う。 【クッ させるかよッ】  股間を狙ってくると分かっていた〝男型〟がフラつきながら両手で  股間部を防御した。 しかし、 『無駄だ』   フランは構わず右拳を相手の両手に押し付けて発光させたのだ。 『よく考えて見ろ、キサマら男は両手で股間を押さえただけで  睾丸への衝撃をゼロにする事が出来るのか?』  両手程度の防御では流れてくる電流は遮断できず、  奥に隠れていた〝ふたつの球体〟が火花を散らした。 【オァァァッァァァッ!!】  ピクンピクンとまるで人間のようにな動きで痙攣したあと、  〝男型〟は体をくの字に折って倒れてしまう。 『あっけないものね』   フランの操る〝女型〟の足元に転がる三体の〝男型〟  いずれも股間を押さえており、〝中の男たち〟も  操縦室で同じ格好を取っているのだろう。 『ふふ…♡』  フランは体をぞくりと高揚させると、  無意識に〝何も付いていない〟自身の股間を触っていた。 (……だが、危なくもあったな。  エネルギーの残量がもうほとんど無い。  仮に一発でも外していたら倒れていたのは私の方だったかもしれん)  亜重機を三体も運ぶエネルギーなど残っていないため、  とりあえず操縦者だけでも拘束しておこうと考えた、その直後。  ビーッ  ビーッ 「!」  通信モニターに文字が送られてきたのだ。  [隊長! 緊急報告! 亜重機がもう一体接近中です!] 「何だと!」  報告が入って十秒も経たないうちに足音が聞こえ、  フランの前に一体の〝男型〟亜重機が参戦してきた。 【ウチの部下たちを返してもらおうか】 『……出てくるタイミングがあまりに出来過ぎだな。  どこかレーダーに引っ掛からない所で見てたんだろ?』 【慎重な性格なのでね】 『何が慎重だ。  部下に突っ込ませておいて自分は安全な位置で見物とは、  ただの腰抜けだろうが』 【それが本来の部下と上官の立ち位置では?  まぁ、吠えたくなる気持ちも分かる、とういか…  今のキミはもう吠える事しか出来ないのだろう?】 『ッ…』     見抜かれている――――  フランが冷や汗を流した。 【エネルギーの貧相な〝女型〟であれだけの荒業を繰り出いたんだ。   私の見立てでは… もうまともに戦う事も難しいんじゃないか?】  男の推測は当たっていた。  フランの乗る亜重機にもう戦闘する余力は無く、   走る事も、防御する事さえ難しかった。 【ふっ…まぁ安心したまえ。  部下たちはその施設に居る女共を嬲ろうと考えていたらしいが、  私はそんな野蛮な事はしない。さっさと殺して終わりだ】  『ほう、それはそれは…  上官様は下半身の管理もお手の物という訳ですか』  フランが会話を引き延ばしつつ勝機を探る。 【ふふ… 私くらいになると専属の慰安婦がいるのでね。  睡眠、食事、性処理、すべて満たされてこそ  正しい指揮が取れるというものさ】  『ハハ、ペニスを女に咥えさせるのも部下のためとは…  立派過ぎる上官で涙が出てくるよ』 【ふん… こんな話をしていたらまた欲求がうずき出してきたよ。  これは速やかに帰って〝処理〟してもらわねばな。  もちろんキミたちを始末したあとで】  〝男型〟がズシィンと一歩踏み出す。  上官というだけあって亜重機の装備も部下とは違う。  機体の性能では勝てず、エネルギーの残量も天と地ほど離れている。  それでも、フランには最前線でつちかってきた経験があった。  今、自分の置かれている状況から生き残るすべを構築する能力が。 【ん?】  〝女型〟が急に片膝をついた。 【おやおや、もう立っていられないほど弱っていたとは】  普通ならばそう考える。  ただし、フランが片膝をついたのは足元に転がる部下の亜重機から  〝普通ではない方法でエネルギーを回収するため〟なのだ。 (もし失敗したら…私の亜重機は完全に停止してしまうな…  ま、なるようになるさ)  覚悟を決め、フランはシンクロする右手を  倒れている〝男型〟の股間へと潜らせた。 【お、おい…何をしている】  股間を押さえている手が邪魔だったが、  操縦者が気絶しているため簡単に外すことが出来た。  そして、フランの手が股間部の装甲に到達すると、 『フンっ』  力づくで装甲を剥がし、残りすべてのエネルギーを振り絞って  剥き出しになった〝キンタマモーター〟を握り締めたのだ。 (ぐぐ…! どうだ! いけるか?)  整備士から聞いていた。  あのゲル状の緩衝材は打撃等の衝撃には強いが、  ゆっくり握り締めるような〝圧迫〟には効果が薄いと。 【キサマッ その手を離せ!】  上官の亜重機が向かってきたが、  他に手の無いフランは握る事にだけ力を注ぐ。   『このッ いい加減に… 潰れろ!』  〝女型〟活動停止数秒前。  〝新兵器〟によって色々と焼き切れていた〝キンタマモーター〟が、  とうとう圧迫に耐え兼ね……… 割れた。  ――――パギュッ!! 【オオオォォッォッ!!?】  悲鳴を上げたのはモータを潰された亜重機の操縦者。  〝男型〟とシンクロするような〝割れるほどの痛み〟が睾丸に降りかかり、  気絶したまま更なる地獄へと墜ちていったのだ。  さらに、 【うぐッ!?】  向かってきた上官の亜重機も後方へ大きく弾かれる。 【キ、キサマ、いったい何を!】  エネルギーが尽きかけていた〝女型〟に襲い掛かった瞬間、  目にも止まらぬ動きで蹴り飛ばされた―――!  上官の知識をもってしても何が何だか分からなかった。 『分からんだろーさ、  私にとっても博打だったのだからな』  と、フランが無残にひしゃげた〝キンタマモーター〟を投げ捨てた。 『念のために… もう少しもらっておこうか♪』  フランが素早く〝エネルギー回収〟を再開する。 【え!】     転がっていた他の二体も同様に股間装甲を外し、  左右の手で同時に〝キンタマモーター〟を掴んだのだ。 『エネルギーに余裕が出来たから、今回はラクに潰せそうだ♪』 【おいッ やめ――――】  上官の言葉の途中に〝嫌な音〟が挟まった。   ――――プギュッ     ――――ガチュッ  四つの〝キンタマモーター〟が同時にスクラップとなり、  操縦者の男二人が同時に口を開けた。 【アガアァァッ!??】 【ヌアッァァァ!??】  痛みの想像できてしまう上官は無意識に腰を引くが、  〝女型〟の両手にまとわりつく放電の帯を見逃さなかった。 【ま、まさか… モーターに蓄積していたエネルギーを回収したのか?】  フランがおもむろに立ち上がり、四つのモーターを捨てて答えた。 『ご名答♪』  フランはエネルギーを得るため、エネルギーを捨てた手順を逆に考えた。  エネルギーを大量に与えた〝キンタマモーター〟を割れば、  中に蓄電されているであろうエネルギーを回収できると予想したのだ。  中々にぶっ飛んだ一か八かの策だったが、結果は成功。  既に敗北していた男たちの睾丸神経がさらに焼き切れるという  二次的被害は出たが、六個の球体と引き換えに得たエネルギーは  〝女型〟亜重機の隅々まで満ちていた。 【わ、悪あがきをッ!!】  〝男型〟の両腕から刃物が飛び出し、一直線に切りかかってくる。 『やはり貴様は上官の器ではないな』  ――――パシっ 【何ぃ!?】  白刃取り。  〝男型〟が振り下ろす刃を的確に手のひらで挟んだ。 『亜重機は操縦者の身体能力を反映する相棒。  いくら装備を整えていようが鈍った体では並以下の性能しか出せない』 【ぐぬ…!】  残っていた方の手を振り上げ、甲から突き出す刃を向けてくるが、  フランに届くことは無かった。  パギィンッ!  白刃取りのまま相手の股間を蹴り上げたのだ。 【ふぐッ!】  痛みは無かったが反射的に股間を押さえて後退してしまう。 『あ』 (しまった。〝新兵器〟を使うのを忘れていた…私も修練不足だな)  フランが反省した通り、金的蹴りの足を戻さず電流を流していれば  全てが終わっていたのだが、今回は〝蹴り足を素早く戻す〟という、  体に染みついたクセが出てしまったようだ。 【お、おのれぇッ】  〝男型〟の股間装甲に大きなひびが入っている。  これが人間の男だったら〝男〟ではなくなっていた筈だ。 【よくも…私の亜重機に傷を…!】 『戦闘に傷は付き物だろう。 まぁ確かに…  股間だけ破壊された姿は無様に見えてしまうがな♪』 【ぐぬぬ… 笑ってられるのも今の内だ!】  激昂した上官は、なんと、みずから股間装甲を剥がし始めたのだ。 『気でも狂ったのか…… ん!』  今さら〝キンタマモーター〟を見せられた程度では驚かない。  フランが目を細めて凝視したのは、〝男型〟の股間部に  見慣れない〝棒状の部分〟があったからだ。 『何だソレは? 女性操縦者を動揺させるためのオブジェか?』  〝キンタマモーター〟の間に垂れ下がるソレはどう見てもペニスだが、  排尿も射精もしない亜重機にペニスなど必要ない。 【〝女型〟に対する我が軍の〝秘密兵器〟さ】  すると、その棒状の部分が徐々に盛り上がり、  勃起するペニスの如く天を向いた。 『ますます卑猥な形になったが… それが何だというのだ?』 【ひひひ… すぐに分かるさ】   『ッ!!』  フランが半歩下がった。  棒状のモノがホースのように伸び続け、  しなりを利かせて襲ってきたのだ。   『……ずいぶんとおぞましい〝秘密兵器〟だな』  いうなれば股間から生えた鋼鉄のムチ。  その間合いは〝女型〟のゆうに二倍はある。  いくら格闘経験で勝っていても容易には踏み込めない。 【私だってこんな事はしたくなかったさ。  なんせ…〝女型〟を貫く姿は強姦なのだから♪】 『クッ…』  シュッ――――っと鞭の先端が飛んでくる。  その使い方はムチというよりサソリの針に近く、  こちらの間合いの外から極太の先端部で狙ってくるのだ。  しかも、その狙ってくる箇所というのが。 (コイツ、私の…〝女型〟の股間ばかりを突き刺そうとしてくる…  なるほど、向こうの狙いも〝エネルギー吸収〟か)  〝男型〟の股間にはパワーを生み出すふたつのモーターが付いているが、  〝女型〟の股間にはエネルギーの貯蔵を担う部品が入っている。  あのペニスを模した触手はソコへ入ってこようとしているのだ。 『一回でも刺されたらアウトというわけか』 【あぁそうさ。 私の股間から伸びる〝これ〟は  確実にキミの股間へと突き刺さる事になるだろう♪】  ふたつの球体の間にある棒状のアレは、一応、  あの位置に付いている理由もある。  仮にこの卑猥な棒が〝女型〟に突き刺さった場合、  その棒の付け根にエネルギーが送られてくる訳だが、その位置が  〝キンタマモーター〟の間ならばすぐにパワーへと変換できるのだ。  しかし、やはりどんな理由があろうとも〝アレ〟を連想してしまうため、  女性整備士たちからは〝ペニスノズル〟と嗤われていた。    『品性の欠片も無い兵器だ』  〝男型〟の腰から突き出た触手が蛇のようにうねり、  先端部が獲物目掛けて高速で飛んでくる。 【ズッポリと挿れてやろう!】  刹那、フランが呟いた。 『―――私が格闘家だった頃のアダ名を教えてやろうか』        ――――――ズパァッ!!  〝女型〟が手刀を振り下ろし、触手を縦に切り裂く。 『〝蛇殺し〟のフラン』     蛇殺しの〝蛇〟は男性に付いている〝股間の蛇〟のこと。  ある日、フランの美貌と肉体に耐え切れなくなった道場の男が  人目の付かない所で彼女を襲いうという事件があった。  抵抗しないフランを見て完全に油断した男は〝発情した蛇〟を出し、   フランへと見せつけたのだが、その瞬間、〝蛇の胴体〟が切り離された。  大量の血を撒き散らして叫ぶ男。  何事かと道場の者たちが集まると、そこには…  血だまりに沈む男と、切断された男根、  そして、右手のみを血に染めたフランが立っていたという。 『流石に骨は断てないが、充血した海綿体程度ならこんなものだ♪』 【ハゥッ!】  〝ペニスノズル〟が縦に切り裂かれた。  〝キンタマモーター〟と違って操縦者に痛みは伝わらないが、  自分のモノを切り落とされる映像が、どうしても頭に過ぎってしまう。 『腰が引けているトコ悪いが… こっちへ来てもらおう』  フランが引き裂かれた触手を両手で掴み、グイっと引っ張った。 【うおぉ!?】  〝ペニスノズル〟にも大きな欠陥があった。  ペニスを掴まれた男性が強く抵抗できないように、  〝ペニスノズル〟を引っ張られると根本の〝キンタマモーター〟に痛みが走り、  踏ん張ることが出来なくなってしまうのだ。 【おおぉッ や、やめろッ】  グイグイと引き寄せられる度に操縦者にも感覚が伝わる。 【やめろと言っているんだ!】  上官の敗因は現場での経験不足。  搭載されている多種の装備を使えば逃走くらい出来たかもしれないが、  引っ張られていく〝先にある地獄〟を前に、思考が恐怖で埋め尽くされたのだ。 『ここでやめる馬鹿がどこにいる』  間合いまで引き寄せた〝男型〟へと―――  〝女型〟が膝(ひざ)を突き上げた。            ゴギュンッ!! 【ひ、ひぃぃっ】  上官の股間に響く微かな振動。  それが〝余震〟でしかないのは知っている。    知っているからこそ先に悲鳴が上がったのだ。 【アアアァアッァァアッ!!】  深々と突き刺さった膝が発光し、  送り出す膨大なエネルギーが〝男型〟の股間を焼き焦がした。 【ガアアァァァッ!!】  操縦室の上官が感電したかのように震え続け、  そのまま大の字に倒れ込む。  だが、その股間は盛り上がり、先端部が湿っている。  淫らな妄想による生理現象ではない。  〝死〟に直面する男の体が子孫を残そうとした肉体反応だった。  実は上官のみならず他の男三人も〝同じ肉体反応〟をしていたのだが、  フランがそれを知るのは〝このあと〟である。 『これまでさんざん慰安婦に処理させてきた報いだと思え』     エネルギーが回復したフランは、まず男たちを縛り上げ、  それから敵軍の亜重機を施設へ回収する事にした。  ※     ~亜重機格納庫~ 「やだー♪ 何アレ~♡」 「アハハ♪ どうみてもオチンチンでしょ♡」 「しかも切り裂かれて… 痛ったそ~… 分かんないけど♪」  〝ペニスノズル〟を見た女性整備士たちの笑い声が巻き起こっている。  さらに、その後ろでは。 「うっわ、ひとり残らずテント張ってる…」 「しかも、コレって… 射精してるの?」 「最悪ね。 ホント…男の股間って汚らわしい」   縛り上げた男四人の前で、女性兵たちが冷徹な目で冷笑していた。 「フッ… この〝男型〟四体は貴重だが…  そっちの男たちもまだまだ利用できそうだ♪  さぁみんな、丁重にもてなしてやろうじゃないか」 「「ハイ! フラン隊長♪」」  この日を境(さかい)に両軍の均衡が崩れ始めることになる。 


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