爆乳女性教師が洗脳アプリで精神をデカパイ大好きなドスケベ男に書き換えられてしまうお話です。乳揉み、パイズリ、女装、連鎖落ち(生徒、妊婦)等の要素が含まれます。全編合わせて43,000字くらいです。 ―――――――――――― 1 また、誰か男子生徒が溜息をついた。 それが誰かは判然としない。 しかし、原因が、今、教鞭をとっている女性にあることは明らかだ。 落ち着いた濃茶に染められたロングヘアー。清流で洗われたかのようにすべらかな肌。黒曜を思わせる瞳は温かな光を宿し、柔和に整った顔立ちとあいまって、女神のごとき包容力を予感させる。身長は一六〇センチに届かないが、姿勢のよさが背丈を実際以上に高く見せている。 ブラウスとカーディガンは白、ふくらはぎが隠れる丈のスカートは紺――ゆったりとした服装をしていても、肉体に溢れる豊満さは到底隠し切れはしない。むしろ、秘匿されることでかえって想像を掻き立て、存在感を増している。実るべきところを実らせ、くびれるべきところをくびれさせた体が動くたび、むっち♡ むっち♡ と肉の軋む音が聞こえてきそうだ。 特にブラウスの胸部を窮屈に張り詰めさせる乳房は圧巻の一言だ。IカップともJカップとも噂されているそれらは、全身から醸し出される豊かな母性の象徴として、見ているだけで重さを幻覚してしまうほどたわわに熟れていた。巨乳という形容には収まらず、爆乳と呼ぶべきボリュームの肉果実が、多感な少年たちの目にどのように映るのか――説明の必要はないだろう。 男子生徒からは恋慕の視線を、そして女子生徒から羨望の眼差しを集めてしまう彼女の名前は菅原美保。都立◯◯学園の英語教師で、今年で二十九歳――しかし、優美な所作は彼女に実年齢以上に鷹揚な印象を与えている。実家が華族の流れを汲む名家だと知れば、誰もがさもありなんと頷くに違いない。 結婚はしておらず、勇気を出して尋ねた者によれば、今現在は交際している恋人もいないらしい。ならば、と玉砕覚悟で告白をする生徒は後を絶たないし、そうでなくても、眠れぬ夜の慰みに美保を思い浮かべた者は数え切れない。そして、彼女をオナペットにした少年たちは、現実の美保が浮かべる笑みの朗らかさを目の当たりにして、羞じらいと罪悪感を掻きたてられるのがお決まりだった。 「この英文、誰かに和訳してもらおうかな」 流麗だが読みやすい筆致で板書を済ませて、美保は生徒たちに向き直った。わかるひとはいるかしら、と問いかける声は、ここ一年三組の窓の外に広がる春の景色のようにうららかで典雅な響きを持っている。 問題の難度はさほどでもないが、生徒たちは挙手しようとはしない。 「誰も答えないの? 間違うのは別に恥ずかしいことじゃないのよ」 まったく、と苦笑いをした美保は、適当に目に留まった男子生徒を指名する。名前を呼ばれた少年は、素っ頓狂な声で返事をして、弾かれたように椅子から立ち上がった。それから少年は、和訳に取り組むのではなく、早口で教科書を読み上げはじめる。美保に見惚れていて話を聞いていなかったのは明らかだ。教室に溢れる失笑――しかし、誰が彼を責められるだろう。 「もう。先生の話を聞いていなかったのね。私の授業、そんなに退屈だった?」 むー、と膨れる顔もたまらなく可愛らしい。怒っても明るさに変わりはなく、美貌に陰りは見られない。立ち上がった男子生徒が、自分の錯誤に気づくとともに、極上の魅力にあてられ、顔を真っ赤に染めた。 「授業はきちんと聞いていなさいね。困るのは自分なんだから」 美声で優しく諭された少年は、吃りながら「すみません」と謝り、脚の骨が砕けたように椅子に腰をおろした。拳を固めて表情を引き締めようとしているが、口元が蕩けるのを抑えられていない。でれでれ、という擬音が似つかわしい様子は、叱られたのではなく、頭を優しく撫ぜられたかのようだ。彼を見る男子生徒たちの視線も妬ましげだ。以前はそんな彼らを軽蔑していた女子生徒の多くも、今では、まったく男という生き物は……と微苦笑まじりに呆れている。 その後に指名された別の男子生徒が、時折つまずきながらも和訳を行い、それに対して美保が解説を加える。授業はわかりやすいと評判で、それまでは英語に苦手意識があったが、大学進学に際しては英語に関わる学科を志望した、という生徒も少なくはない。しかし、どうしていつも男子の平均点は女子のそれに劣るのだろう、と首をひねる美保は、英文法には精通していても、己の魅力には無自覚だ。そんな天然具合が、また、男子たちの成績を落としてしまう一因となっていることにも、美保は気がつかない。 授業終了を報せるチャイムが鳴り響くと、美保は「復習を忘れないようにね!」と言い置いて教室を出ていく。美保が姿を消しても、甘い香水の匂いはしばらくその場に居残り、前列に座る少年たちの胸をときめかせていた。 次の授業の準備をはじめながら、男子生徒の幾人かがスマートフォンを取り出し、メッセンジャーアプリのグループチャットでやりとりをする。『菅原先生の乳でっっっか』『デカパイ揉みたすぎ』『あれ揉めたら死んでもいい』『毎回英語の時間は勃起おさまんねーよ』『俺も』『まじでHしたい』『トイレ行って一発抜いてこようかな』――率直な牡の欲望を述べ綴るメッセージのあいまに投稿されるのは、つい先ほどの授業中、シャッター音を消す改造が施されたカメラアプリで盗み撮りされた美保の画像の数々……何をしているかは様々だが、焦点が乳房に結ばれていることだけは変わらない。 極上の女体は、本人の意思に関係なく、青い性欲を刺激せずにはおかない。このクラスに限らず、美穂の盗撮は珍しいことではない。撮影された画像や動画は、ネットを介して密かにやりとりされ、日々、少年たちのオカズにされている。去年の体育祭、教職員チームの一員としてジャージ姿でグラウンドを走る美保をおさめた動画――クーパー靭帯に憐れみを覚えてしまうほどに激しく揺れる乳房が、これまでに一体どれだけの精液を搾り取ったのか、想像もつかない。 盗撮は盗撮なのだが、あくまでも自分の目で見えるものをデータとして残したものばかりで、トイレや更衣室での姿を盗み撮りしたものはひとつとしてない。それは、倫理観以上に、美保の人徳のなせるわざなのだろう。そうしようと考えた男子生徒は数多いに違いないが、明るい笑顔が彼らに最後の一線を越えることを許さなかったのだ。 だが、神聖不可侵な領域は、今日、徹底的に穢される。どのように冒涜されるのか――それを知っているのは、教室の最後列に座っている少年だ。ツーブロックに刈り上げた髪を派手な金色に染めた彼の名前は新島雅也。入学間もないながら、素行不良で幾度も指導を受けている学園きっての問題児だ。 ここ数日は無断で欠席していたが、今日は珍しく朝から静かに授業を受けている。何か訳があるのだろうと想像する者はいたが、新島が美保を陥れようとしているとはまさか思わない。ましてや、その手段として、洗脳アプリ――常識の埒外にある道具を使おうとしていると一体どこの誰に考えつくだろう。 学園で最も女性的だと断言して、どこからも異論がでないであろう美保。新島は、彼女を今とは正反対の存在へと貶めようとしているのだ。菅原美保という「女」は今日を最後にいなくなる、と言ってもいい。 代わりに生まれるものに思いを馳せて、新島はひとり薄笑いを浮かべた。 2 放課後を迎えてしばらく経った本校舎に生徒たちの姿はまばらだ。 その代わりに、グラウンド、体育館、部室棟、その他あてがわれた場所で各自部活動に勤しむ彼らの熱気が伝わってくるため、寂しいとは感じない。就業中の雰囲気も悪くはないが、放課後の学校にしかない独特の空気感が、美保は好きだった。 生徒たちには存分に限りある青春を謳歌して欲しい。といって、もちろん、勉強も欠かしてもらっては困る。両者をバランスよく並び立たせる手助けこそ、教師の仕事だろう、と美保は考えている。 「先生、さよならー」 廊下の向かい側から歩いてきた女子生徒三人に、美保は笑顔で「さようなら」と挨拶を返す。昨年度、クラスを担任していた生徒だ。部活動には所属していなかったはずだから、今まで教室でお喋りに花を咲かせていたのだろう。 「さようなら。また明日ね。気をつけて帰るのよ。――不審者が出た、という話は担任の先生から伝達があったでしょう。何かあれば、すぐに逃げたり、助けを呼んだりすること。いいわね?」 美保の言葉に「はーい」と声が揃う。「わかってまーす」「ていうか、うちらより先生のほうが危なくない?」「帰りは学校から歩きなんでしょ」「気をつけてね」「タクシー使ったほうがいいかも」「先生、ちょー美人だからうちら心配だよー」 他の人間ならばともかく、自分が被害に遭うわけはない、と決めつけている口ぶりだ。根拠のない無敵感も、若者の特権ではあるのだろう。しかし、それが魔除けになるわけではない。最後にもう一度「気をつけてね」と念押しをして、美保は女子生徒たちと別れた。 彼女たちの言う通り、私も気をつけなければ、と歩を進めながら美保は思う。昨夜、学園近隣の住人で出くわして警察に通報したという、四つん這いになって駆け回る男――想像してみると滑稽だが、暗い夜道で追い回されて笑えるとは到底思えない。学園から美保の住むマンションまでは徒歩で二十分に満たない。タクシーを使う、というのはさすがに大袈裟だろうが、注意を払う必要はある。 渡り廊下を通って、美保は旧校舎へと足を踏み入れた。新校舎の建設に伴い、今はもっぱら倉庫として使われている建物に人の気配はない。建物だけではなく、空気までもが古ぼけている。写真を撮れば、どんな画角でも味わいのあるものになるだろうが、美保がここに来たのは、写真撮影ではなく、とある生徒の話を聞いてあげるためだ。 今朝、登校すると、職員室の机に折りたたまれたメモ用紙が置かれていた。広げて読んでみると、そこには、恋愛の相談にのってほしい、という内容が綴られ、待ち合わせの場所と時間が記されていた。先生にしか話せないことなんです、とまで書いた送り主の名前は見当たらなかったが、丁寧な筆跡から女子であることは間違いない。 恋愛の相談は珍しいことではないが、そのたび、本当に自分でいいのだろうか、と思わざるをえない。これまで美保が交際した男性は学生時代から数えて三人――いずれも、人間として尊敬できる相手ばかりだ。しかし、その全員に、付き合いはじめてほどなく、関係を解消されてしまった。理由は、三人とも、美保が恋人ではなく母親のように思えてきたから、というもの。あれこれと心配して世話を焼いてしまう性分が、彼らにそう感じさせたのだろう。反省はするものの、生まれ持った性格が容易に変えられるわけもない。自分は恋愛には向いてないのだ、と考えて、ここ数年は、異性からの誘いや出会いの場への招待は断ることにしている。いい出会いがあれば別だが、当面のあいだは、誰とも付き合うつもりはない。 おそらく、ではなく、間違いなく、美保は恋愛相談の相手としては不適格だろう。しかし、効果抜群の助言はできずとも、打ち明けられる悩みに真剣に耳を傾け、彼らの心の重荷を多少なりとも軽くしてあげることはできる。そんな真摯な態度が密かな評判を呼び、相談者が増えてしまうのだから困ったものだった。なかには、美保を恋愛の達人だと吹聴している生徒すらいるという。恋愛に関しては、自分が生徒たちに教わりたいくらいだというのに。 ここだ、と美保が足を止めたのは、元々は美術室として使用されていた教室。あまり待たせてはいけない、と扉を開くと、すかさず室内から伸びてきた手が襟首を掴み、美保を強引に室内へと引きずり込んだ。「きゃっ」という悲鳴を断ち切るように、彼女の背後で扉が勢いよく閉ざされる。 我が身に何が起きたのか、それもわからぬ間に、美保は羽交い締めにされていた。混乱のままに体を暴れさせても戒めから逃れることはかなわない。それどころか、もがくたび、彼女を押さえつける腕の力は強さを増す。 騙されたのだ、と気づいてももう遅い。 罠にかかった女教師に、彼女を囲んだ少年たちが笑い声をあげる。 「ごめんね、先生(笑)」 美保の真正面に立つ少年が言った。新島雅也――教職員のあいだで要注意と目されている生徒だ。無断での欠席、遅刻、早退は当たり前で、授業態度も良好とは言えない。学園の風紀を乱す不良と蔑む教師も多いが、だからこそ、真面目に向き合い、更生の手助けをしてあげなければいけない、と美保は考えていた。そうすれば、いつかはこちらの気持ちに応えてくれるはずだ、と。 しかし、今、新島は顔に浮かべた凶暴な笑みで、美保の抱いていた夢物語に死刑宣告を下していた。同様の表情は、彼の左右に控える四人の少年たち――そして、おそらくは美保を羽交い締めにしている少年の顔にも浮かんでいる。彼らは、皆、新島の友人――いや、その力関係を鑑みれば、取り巻きという表現が正しいだろう。新島と同様に問題のある生徒たちだ、と認識されている。 「騒ぐなよ。怪我したくないだろ?」 平然と暴力行為を仄めかす新島。目を見れば彼の本気がうかがい知れた。もしも美保が大声で助けを求めようとすれば、彼は何の躊躇いもなく、美保に危害を加えるだろう。話せば分かる、という美辞麗句の通用しない相手に、美保の喉が締め付けられる。 「新島くん、それにあなたたち――これは一体、どういうことなのっ」 美保は言った。怯えを見せてはいけない。彼らを調子づかせてしまう。それはわかっているが、声の震えは完全には隠しきれない。落ち着こう、とすればするほど、動揺は美保の内側に広がった。焦燥が細胞を燃え立たせ、平均よりも高めの体温をさらに上昇させる。ふりかけた香水が汗とともに香り、埃っぽい空気を淫靡に染めはじめた。 芳香に鼻孔をくすぐられ、少年たちが色めき立つ。悪辣な笑みを嗜虐的に歪ませる彼らの股間で、ペニスが肉の軋みをあげつつ硬くなっていく音が聞こえるようだ。もはや何をされてもおかしくはない。彼らはすでに越えるべきではない一線を越えてしまっているのだ。美保はこみあげる恐怖を奥歯に噛み殺した。 「やっぱりたまんねーわ、先生の爆乳」「毎晩お世話になってます(笑)」「近くで見るとますますデカい」「こんな乳して教師やってんのがおかしいって」 好き勝手に心の裡を吐き捨てる少年たちを掌で制して、新島が「あらためて、騙してごめんね」と美保に言った。謝意は微塵も感じられず、ひたすらの愉悦に満ち溢れている。その響きが、至近距離で少年たちからぶつけられる欲望よりも美保の体をこわばらせた。 「でもさ、先生、あんなメモで騙されるほうもどうかと思うよ。いくらなんでもお人好しすぎるって。これからはもっと人を疑うことを覚えようね(笑)」 「こんなことをして――許されると思っているのっ。あなたたちが何をするつもりにしろ、私は泣き寝入りしたりはしないわよ」 「もしかして、俺たちに犯されると思ってる? 嫌だなあ。そんなつまんないことしないって。俺たちがしようとしてるのはね、もっと面白いことだよ」 「面白いこと……」 美保は眉を顰める。彼らが何をしようとしているのかはわからない。しかし、それが何であるにしろ、碌でもない――そして、美保にとっては不愉快極まるものであるに決まっていた。不吉な予感に、スカートの内側で、美保の膝が小刻みに震えはじめる。 絶対に聞きたくはないと思っているはずなのに、美保の口は、意思に関係なく、「それは一体何なの」と尋ねていた。 3 今を遡ること三日前、暇潰しのネットサーフィン中、誤タップを経て飛ばされた怪しげなサイトで、新島はそのアプリを見つけたのだという。「洗脳アプリ」――使用すれば、任意の情報を対象に書き込むことができる、という内容が文法の胡乱な日本語で謳われ、札束の風呂に浸かり、裸の美女をはべらせる男の画像が掲げられていた。 もちろん、偽物だろう、と思った。どうせジョークアプリの類だろう、と。勉強こそ大の苦手だが、そんな馬鹿げたものの実在を素直に信じるほどの馬鹿ではない。しかし、もしかしたら本物かもしれない、という期待を少しも抱いていなかったといえば嘘になる。 スマートフォンへのダウンロードの後、インストールを完了した新島は、サイトの説明どおりにアプリを使用して驚愕した。いつも口うるさい母は「息子に絶対服従」の奴隷へと変わり、求められるがままに小遣いを与え、新島の好物だけしかない夕食を作った。真面目しか取り柄のない父は「弾けまくりの陽キャ」となり、大学受験を控えた兄は勉強の記憶を根こそぎ奪われ呆然としていた。飼い犬を喋らせることはさすがにできなかったが、家の前をたまたま通りがかった男は「犬」へと変わり、四つ足で駆け回りはじめた。 「今日注意があった不審者って、あいつのことだと思う。何の罪もないのに犬にされちゃうとか、まじで可哀相。同情を禁じ得ねえわ(笑)」 アプリは本物だ。それを確信した新島は、今ここにいる友人たちを呼び出した。彼らも最初は信じなかったが、実際に効果を見せてやると目を輝かせた。当然、友人たちもアプリを欲しがった。しかし、今のところは誰にもサイトのアドレスを教えてはいない。教えるのは、優越感をもうしばらく楽しんだ後でいいだろう、と思っている。 「絶対教えてくれよ」と言われると、新島は「わかってるって」と笑う。惜しむことはなく、本気で教えてやるつもりだ、ということがうかがい知れる笑顔だった。彼は彼なりに、友人たちに絆を感じているのだ――という事実に安堵を覚えている状況ではない。 超常の力を誇るアプリを使って、少年たちは学校にも行かず、家に帰ることすら忘れて、存分に遊び狂った。腰の曲がった老婆に猛ダッシュを強い、タクシー運転手からブレーキの概念を消し去り、乳母車を押す母に子供を生ゴミだと誤認させる。目につく美女を片っ端から自分たちの言いなりにして、借金までさせて金を貢がせ、性欲を満たしもした。 このアプリさえあれば、もはや人生に障害は何もない。薔薇色の未来はすでに約束されている。勉強も労働も、必要は一切ない。にもかかわらず、今日学校へとやってきたのは、もちろん、そこにターゲットがいるからだ。 「それが先生、ってわけ」 美保が受け取ったメモは適当な女子生徒を操って書かせ、密かに置かせたもの。もしも無視された場合には拉致も視野に入れていたが、困っている生徒を放っておけない性格のおかげで助かったよ、と新島は言った。 「そのアプリを使って、私に何をしようというの……?」 怯懦を押し隠しつつ、美保は尋ねる。 洗脳アプリの存在を信じたわけではない。常識ある大人として、そんなものを信じられはしない。しかし、それを語る新島の口ぶりや彼の顔つきは、それが紛れもなく本物だと訴えている。万が一の可能性に、美保は身震いを禁じ得なかった。 陵辱に対する恐怖はもちろんある。それ以上に、どれひとつとってもかけがえのない経験の積み重ねで形成された自己を、他人の我儘で好き勝手に書き換えられる嫌悪感は筆舌に尽くしがたい。想像するだけで、全身の毛が逆立ち、冷えた血液が血管に粘りつく。洗脳アプリなんてありえないという思考は、不快な感覚を通し、洗脳アプリという恐ろしい道具が存在してほしくない、という願望へと変わる。 「先生をどうするか、色々アイデアが出たんだよね。俺たちの共用オナホにするとか、ホームレスのガキ孕ませてミルクサーバーにしようとか、教え子とパコることしか考えられないエロ女にしてやろう、とか」 オナホ。ミルクサーバー。エロ女。新島の発する単語の忌まわしい響きが美保の心をこわばらせた。洗脳アプリなんてあるわけがない、といくら自分に言い聞かせても、恐怖は膨れ上がっていく。しかし、本当に恐ろしいのは、新島の喋りからするとそれすらも却下された案だ、ということだ。採用されたのがどのようなものなのか、想像するだけで気が遠くなる。 「そういうのも悪くはないんだろうけど、せっかく学園の男子みんながズリネタにしてる菅原先生を玩具にするんだから、もっと面白くなるように工夫しないと。先生もそっちのほうがいいでしょ?」 同意を求められても返事などできるわけがない。 「それで、みんなで話し合って――先生には男になってもらうことにしたんだ」 「お、男――!?」 予想外の言葉に、美保は素っ頓狂な声をあげてしまう。 滑稽な反応に笑い声をあげる少年たち。表情に満足を溢れさせながら、「そ」と新島が頷く。 「先生みたいな、女らしい女が男になっちゃうとか、わくわくしちゃうよね。それも、ただの男じゃないよ。先生になってもらうのは、『爆乳大好きなドスケベ男』でーす(笑) どうよ、期待しちゃうでしょ?」 「き、期待なんて……」 「楽しいと思うよ。だって、最高のオカズがいつも一緒なんだもん。そのオカズに何するのも、先生の自由。何しても、誰からも文句は言われない。――爆乳に生まれた幸運と、それに気づかせてあげた俺たちの親切に感謝しながら、これからの人生、男として生活してね♡」 自分が男――それも「爆乳大好きなドスケベ男」になる。あまりにも現実離れした考えに、そうなった自分の姿すら思い浮かべられない。 Iカップだ、いやJカップはある、と妄想を逞しくされている美保の乳房――実際のサイズは一〇三センチのKカップ。トップバストとアンダーバストの差が三五・〇センチにものぼる肉鞠の重さは、幼児ふたり分にもなる。美保が肩凝りに悩まされていない日は一日としてない。 その他にも、大きすぎて足元が見えない、乳房が揺れて痛むために激しい運動も困難、服のシルエットが崩れてしまう、夏場に蒸れる、気に入ったデザインの下着に巡り会えない……と不満はいくらでも挙げられる。これまでに一体何度、減胸手術を考えたことか。正直に言って、男たちがどうしてこんな器官に心惹かれるのか、まったく理解できない。 新島や他の少年たちの目に爛々と輝く光。まさか――という気持ちを、美保は振り払う。そんなわけがない。洗脳アプリなんて、絶対に存在するわけがない。彼らは不審者の話を聞き、そこからありもしない話をでっちあげて、自分をからかっているのだ。生徒のおふざけには寛容なほうだと思っているが、いくらなんでもこれは度を越している。 「馬鹿なことを言っていないで、私を自由にしなさい」 体に残された活力をかき集め、美保は新島を睨みつけた。視線を鋭く尖らせても、その顔の可愛らしさは変わらず、少年の嗜虐心を満足させる役割しか果たしてはくれない。 「今なら、誰にも言わないであげるわ。どうするべきか、よく考えるの」 「もしかして、俺の言ってること、信じてない?」 新島が尋ねた。懐から取り出されたのは一台のスマートフォン。筐体の黒が、ひどく禍々しく感じられる。喉元に刃を突きつけられたかのように、背筋を悪寒が襲った。 信じるわけがないでしょう、と美保は言った。 「洗脳アプリなんて、どこの誰が信じるというの。悪ふざけも大概にしなさい。後悔するのは、あなたたちなのよ」 心から将来を思って発した言葉も、しかし、彼らには届かない。 「馬鹿なことを言ってるかどうか、実際に試してみればわかるよ」 数度のタップを経て、スマートフォンを掲げ、美保にカメラをむける。洗脳アプリなど存在しない、と言っておきながら、美保の内側で、身が破裂しかねないほどに恐怖が膨れ上がる。やめて、という言葉が喉を駆け上った。それは、舌に伝わる寸前に、「はい、チーズ♡」という声がけの後に瞬いたフラッシュに灼かれた。 閃光は、眼球を突き抜け、美保の脳髄の奥深くに突き刺さる。 「どうかな、先生。俺の言ってたことが嘘じゃないってわかった?」 新島の質問に、美保は答えられない。そもそも、彼女の耳には問いかけを拾う余裕がない。自分の体――生まれてからこれまでそこに存在して当然だと思っていたものに対する強烈な違和感が、美保の心を滅茶苦茶に掻き乱していた。 (な、何なの、これはっ……) 美保を羽交い締めにした腕が離れる。力を失った膝は、彼女に立っていることを許さず、美保はその場に崩れ落ちる。自分に何が起きたのか――混乱を極めながら自分の体を見下ろし、彼女は言葉を失う。 見慣れているはずの手足が、あたかも初めて見るもののように新鮮に目に映る。自分の意思通りに動きはするのに、自分のものとは思えない。何より、視界の大半を専有する胸の膨らみ――その圧倒的な質量に、殴りつけられたような衝撃を覚えずにはいられない。自分の体にこんなにも巨大なものが実っているという事実が信じられず、「はあっ?」という驚きの声が跳ね出る。自分が発する声も、また、初めて聞くように感じられた。 「これ……私っ……どうなって……っ」 見慣れているはずの自分の胸から、どうしても目が離せない。疎ましくすら思っている器官が、その破壊的な魅力でもって、今、彼女の視線を釘付けにしていた。高鳴る心臓が、沸騰した血液を全身に送り、肌から汗が吹き出る。触ってみたい、という強烈な欲望を押さえつけるため、美保は関節が白むほどに強く拳を握りしめなければいけなかった。 そこに至ってようやく、美保は自分を襲っているのが違和感ではないことに気がつく。今、彼女の息を焦がしているのは、まぎれもなく欲情だった。美保は、自分自身の肉体に劣情を抱いてしまっているのだ。勘違いだ、と否定するには、その感情はあまりにも生々しい。 洗脳アプリは実在したのだ――受け入れがたいことを受け入れるより他に、この状況を説明するのは不可能だ。しかし、男の性欲に苛まれながらも、美保の意識は、いまだに自分を「女」であると認識している。これはどういうことなのか。その理由はわからないが、今はそんな疑問は捨て置いて言わなければいけないことがある。 「新島くん……私を……元に……元に戻しなさいっ」 乳房から視線を引き剥がし、美保は新島の顔を見上げる。体内を炙る熱が、息遣いを焦がしていた。視線は蕩けきり、睨みつけることすらできない。ほんのわずかに動くだけでも、自分の体を意識してしまい、弾ける喜悦が息を乱す。逃れようとしても、それはかなわない。美保の体そのものが、美保を囚えている檻であり、美保を責めたてる拷問器具の役割を果たしている。 「どういうことだよ、新島」 少年のひとりが眉を顰める。 「先生、完全には男になってねえみたいだぞ。失敗か、これ?」 質問を受けて、新島が顎にスマートフォンをあてて「んー」と軽く唸る。眉間には皺が寄っているが、表情はどこまでも楽しげだ。 「今までの連中と違って、先生には、これから何をするのか説明したからな。心の準備ができてたせいで、抵抗できてるのかも」 「おいおい。どうするんだよ。中途半端なままか?」 「効いてることは効いてるんだから、あとは、先生が立派な『爆乳好きのドスケベ男』になれるように俺たちが協力してやればいいんだよ。それはそれで楽しそうだろ? もしかしたら、アプリの効きが悪くてよかったかもな」 新島の言葉に、少年たちは顔を見合わせて笑みを浮かべた。「あーそれいいかも」「うわ、やば」「すげー楽しそう」「最高じゃん」 「あ、あなたたち――」 怖気が、美保の体をこわばらせる。一瞬のうちに精神を男に書き換えられることは免れた。しかし、その代わりに、これから美保は少年たちによって、じわじわと男――「爆乳好きのドスケベ男」へと追い落とされるのだ。どれほど運命を呪っても、今の状況が変わるわけではない。 「怖がらなくてもいいよ、先生」 へたりこんだまま、立ち上がれずにいる美保の前にしゃがみこんで、新島が言う。口調は優しげだが、細められた目――瞳に輝く嗜虐の色が、美保の未来を端的に示していた。 4 入居時に「万全ですよ」と説明されたセキュリティは、美保を従えた新島たちには意味をなさない。学園近くの住宅街に建つマンションの一室――住人の性格をあらわして、どの部屋も清潔で、整理整頓が行き届いている。 しかし、飾られている小物もお洒落なリヴィングに満ちる熱気は、瀟洒な内装にはまったくふさわしくない、車座になって座る少年たちの醸す猥雑さは、独身女性の住居を、あたかも男子部の部室のような猥雑な雰囲気に染め上げていた。 美保もまた、少年たちが描く円の一環として、床に座らされている。大人として、教師として、どうにか平静を保とうとしているが、揺れる瞳をのぞきこむまでもなく、表情には動揺が濃い。当然だろう。洗脳アプリ――そんなもので、自己の存在を他人に書き換えられてしまったのだ。落ち着いているほうがどうかしている。 あの後、新島たちは、体調不良を偽って仕事を早退するよう美保に命じ、この部屋へと押しかけてきた。テーブルに所狭しと並んでいる酒、肴、煙草は、ここに来る途中のコンビニエンスストアで、美保が買わされたものだ。拒否をすれば元に戻してはやらないぞ、と脅されれば命令に服従するより仕方がなかった。 教師の身でありながら、生徒たちと酒宴の席を囲んでいる――信じられないが、これが今の美保の状況だった。 「何暗い顔してんだよ、美保」 すぐ隣にあぐらをかいている新島が言う。学園男子すべての憧れの的と言ってもいい菅原美保の住処に堂々と侵入を果たした興奮が、顔にふてぶてしい笑みをもたらしていた。 「な、名前を呼び捨てにしないで。不愉快だわ」 「堅苦しいこと言うなって。俺たち、もう友達だろ?」 誰が友達よ――と美保に言うことを許さず、新島が乾杯の音頭をとる。 「新しい友達に、乾杯(笑)」 美保を除く皆が「かんぱーい」と明るい声をあげ、許されざる酒宴に耽りはじめた。ある者はツマミに手を伸ばし、ある者は咥えた煙草に火をつける。教師として、制止するべき立場にありながら、美保に許されているのは黙ってそれを見ていることだけだ。 くっ、と奥歯に焦燥を噛み締めている美保に、少年たちが次々と声をかけてくる。「菅原先生の前で酒飲んでるとか背徳感やば」「菅原先生じゃなくて美保な」「これまでは生徒と教師だったけど、これから友達としてよろしくな、美保」「友達っていうか、親友?」「色々悪いこと教えてやるから期待しとけよ〜」「自分が先生だったってことも女だったってことも完全に忘れさせてやるよ」 他の少年たちも、美保を友人――男友達扱いしてくる。これが彼らの意図する、美保を完全に男に堕とすための教育なのだろう。男扱いすることで、男としての自覚を促そうとしているのだ。自分の半分ほども年齢を重ねていない彼らに、同性の友人のような扱いを受ける屈辱は、拳を握りしめようと 耐えられるものではない。 私は女だ。美保は自分に言い聞かせる。 しかし――気を緩めると、彼女の視線は、意図していないのに、己の胸元へと惹き寄せられてしまう。洗脳アプリの効果がじわじわと彼女を侵食しているのだ。精神の腐食は、目に見えないだけに、美保の恐怖を煽る。どうにかしなければ、とは思うものの、どうすればいいのかはわからない。 ほら、美保も飲めって、と新島が発泡酒の缶を押しつけてくる。 「美保の歓迎会なんだから、主役が飲まないとか、ありえないだろ」 「私は教師なのよ。生徒と一緒にお酒なんて飲めるわけないでしょう」 「つまんねーこと言ってないで、さっさと飲めよ。これ、命令な」 元に戻りたいんだろ、と言い添えられれば、どれほど意に反していようとその通りにするしかない。美保は眉間に苦悶の皺を寄せて、ひどく重たく感じられるプルタブを開けた。酒が飲めないわけではないが、あまり強くはない。積極的に飲みたい、と思った経験もない。飲み会の席では、いつもアルコール類は頼まず、烏龍茶を飲んでいる。 「飲めばいいんでしょう」 毒杯を煽るように、美保は酒に口をつけた。飲んだのはほんの一口――だというのに、火照りがまたたくまに体に広がっていく。生徒との飲酒がもたらす罪悪感のために、味はまったくわからない。 「何ちびちび飲んでんだよ。男なら一気しろ、一気」 なあ、と新島に同意を求められ、少年たちが拍手とともに一気飲みを求めるコールをはじめる。一気飲みの危険性は承知しているが、逆らうことは、当然できなかった。 「……っ」 どうしてこんなことになってしまったのか、と嘆きながら、美保は一気に酒を煽る。蠢く白い喉に、少年たちの視線が集まっているのを感じた。 必死の思いで缶を空にすると、少年たちが「おお」と感嘆の息を吐く。 「やりゃできんじゃん。それじゃ、その調子でもう一本いっとけ」 空になった缶を美保から取り上げて、ぞんざいに投げ捨てた新島は、また新しい酒を美保に押しつけてくる。その調子で、美保はたてつづけに三缶の酒を飲まされることになった。これほど短時間にこんなにも大量のアルコールを摂取するのは初めてだ。 「もう……いいでしょう。これ以上は……とても無理よ……」 体が熱い。視線がうまく定まらない。しっかりしなければ、という心の声さえどこか曖昧だ。吹き出た汗のため、ブラウスが肌にへばりつき、布地にブラジャーが浮き上がって、少年たちの目を楽しませる。その光景を楽しんでしまっているのは、彼らだけではない。美保の視線もそこへと惹き寄せられてしまう。何をしているのだ、と叱咤する理性はアルコールに蕩けさせられていた。 触りたい。 禁断の欲望が膨れ上がっていく。それは本来の自分に由来するものではない。洗脳アプリによって植えつけられた男の欲望だ。それはわかっているのに、どうしても、それを制御することができない。 (私、何を考えているの……っ!) はあっ、と吐いた息は喉が焦げてしまいそうだ。さらにどっと汗が分泌され、美保の肌を濡らした。女体から体温とともに発散される熟した色香が、酒以上に少年たちはおろか、美保本人をも陶酔させずにはおかない。 「先生暑そうだけど大丈夫?」「暑いなら上着脱いだら?」 脱いで欲しい、できるだけ薄着になって欲しい、という願望丸出しの声をかけてくる少年たち。美保に男という枷を嵌めておきながら、彼らは極上のさらに上をいく豊満体への性的興奮に奮い立っている。最悪なのは、今の美保には、その気持ちが痛いほどに理解できてしまうことだった。 「別に暑くはないわ。私のことは放っておいてちょうだい……」 額に汗を光らせながら、美保は言った。喉がひどく渇いているが、この場にある水分は酒だけだ。それに何を飲もうとも、この渇きを根治することはできないに違いなかった。これは美保の体ではなく、心が訴えている渇望なのだ。 しかし、 「我慢は体に悪いぞ。さっさと脱いじまえよ」 そう言って、新島が美保の着ているカーディガンに手をかけ、「やめなさいっ」という制止も聞き入れず、強引に脱がせてしまう。剥ぎ取られた女の服は、酒の缶を捨てるのと同様の無造作な動きで床に投げ捨てられた。特に気に入っている一着をそんなふうに扱われて怒り心頭に達する余裕は、美保にはない。 「〜〜〜〜〜〜っ♡」 剥き出しにされたブラウスの隆起。尋常ではない質量は、カーディガンの覆いを失い、さらに大きく感じられた。自分の体の一部だ、とわかっているのに、その迫力が美保に生唾を飲み込ませる。見下ろしているだけで、上書きされた男の部分が歓喜しているのがわかる。 はっ♡ はっ♡ はっ♡ と、獣のような息遣いが聞こえる。それは、他ならぬ己の喉から漏れているものだった。今、自分がどのような表情をしているのか、鏡を見ずともわかる。それは、女が一生浮かべるはずのない、好色な男の表情に違いなかった。 「本当にデカいよな、美保の乳」 すげーよ、つーかもはやエグい、と笑いながら、新島が手にしていた酒を置き、女教師の爆乳を左右の手で鷲掴みにする。何の前触れもない接触に、美保は驚きの声をあげた。離しさないッ――という彼女の声など聞き入れるわけもなく、新島は、莫大な質量を誇る牝の肉塊を我が物顔で揉みしだきはじめる。 「おお。すっげ。めちゃ柔らけー(笑)」 これまで、一体どれほどの男子生徒の精汁を搾り取ってきたかわからない乳房が、少年の掌の中で、彼の思うがまま、柔軟すぎるほど柔軟に姿を変える。どんなに乱暴に指を動かそうと、それは、抜群の寛容さでもって愛撫にまつろう。 「やめてっ。触らないでっ。手を……離しなさい!」 美保は声をあげこそすれ、新島の手を振りほどこうとはしない。そうしようと思っても、体が動いてくれない。それは、彼女自身が、乳房が蹂躙される光景を見たいと思ってしまっているからだ。 「別にいいだろ。同じ男のよしみで乳くらい揉ませろや」 美保を嘲弄するように、愛撫の粘着を増す新島の手。乳房という器官だけではなく、それを構成する細胞ひとつひとつを揉みこむような動き――大きく広げられた指と指の隙間に盛り上がる柔肉がたまらなく淫靡だ。乳房がこねられるたび、胸の谷間にむんむんと蒸れる匂いが衣類をすり抜けて美保の鼻孔へと立ち上った。呼吸をするだけで、甘ったるい香りが脳を撫ぜ、切ない気持ちを巻き起こす。 自分も揉みたい。揉みしだきたい。強烈な欲動が、美保を突き上げる。我慢していられるのは奇跡としか言いようがなかった。 「まじでデカすぎだろ、この乳。何カップあんの?」 「どうしてそんなこと教えなければいけないの……」 「教えろよ。――それともアプリ使って聞いたほうがいいか?」 「あ、あなたというひとはっ。そんなものを使って良心が咎めないのっ」 「いや、全然(笑)」 新島はいささかも悪びれることなく言う。無駄だとは知りつつも、彼に視線を刺しながら、美保は「け、Kカップよ」と答えた。Kカップ――今までは忌まわしいと思っていたその響きが、アプリの影響下にある今では、天上の音楽のように素晴らしく耳に響く。もっと大きければよかったのに、という思考すら頭の片隅にあるのに気がつき、美保は慄然とした。 「Kカップかよ。何センチ?」 言いたくはない。しかし、抵抗しても意味はない。 苦々しい諦念を噛み締めながら、美保は答えた。 「……一〇三センチよ」 「おいおい。メートル超えはさすがにやばすぎだろ。何喰ったらこんなふざけたデカ乳に育つんだよ」 新島は乳房からいったん手を離した。そして、今度は揉むのではなく、すくいあげて掌に弾ませはじめる。Kカップ、一〇三センチの乳房は、躍動のたび、少年の手首にずっしりと負荷をかけ、彼を楽しませてしまう。楽しんでいるのは、新島だけではない。それを眺め下ろす美保もまた、弄ばれる乳肉に胸をときめかせ、溜息を漏らしてしまう。 「お前ばっかりずりーぞ」 俺たちにも揉ませろよ、と新島を押しのけて、他の少年たちが美保の乳房に群がる。我先にと手を伸ばし、鼻息も荒くKカップを揉みくちゃにする友人たちの様子に、さすがの新島も苦笑いを浮かべていた。 「やめなさい。乱暴にしないで……っ」 「大丈夫。優しく揉みまくってやるから」「美保の乳房まじでエロ」「エロすぎるって、これは」「俺元々貧乳派だったんだけど、美保に会って考え変わったわ」「もう美保レベルじゃねえと胸大きいとか思えないよな」「性癖歪めた責任はきちんととれよ」 乳房を蹂躙されながらも、やはり、美保は彼らを跳ね除けることはできない。それどころか、彼ら以上に顔を蕩けさせ、呼吸を荒らげてしまう。揉まれている感覚はある。しかし、美保は揉んでいる少年たちの興奮に同調していた。 興奮がより体温を高め、美保は湯をかぶったように汗まみれになる。香水よりもなお芳しい匂いが部屋の空気を淫靡に染め上げる。 「まだ暑そうだし、もっと脱げよ」 少年のひとりが、ブラウスの裾に手をかけ、止めるまもなく一気に喉元までまくりあげる。ぶるるんっ♡ と音をたてかねない勢いで、ブラジャーに包まれた乳房が視線の中にまろびでる。ほかほかと湯気をたてかねないほどに火照った肉鞠のあまりの艶めかしさに一同は声を失った。その「一同」には、むろん、美保自身も含まれている。 (わ、私の胸……こんなにいやらしかったなんて――) 見慣れているはずの乳房の迫力に、美保は絶句するしかない。ブラカップにみちみちと詰めこまれた乳肉――見下ろしているだけで魅力のあまりに気絶しそうだ。いつまでだって眺めていたくなる。この世のものとは思えない至宝が、自分の体の一部だという事実に目眩がする。 そのまま強引にブラウスを脱がせると、次いで、少年はブラジャーに手をかけた。慣れた動きでホックを外し、女体から引き剥がす。それから、彼は「やっべー。見ろよこれ」と笑いながら、美保の体温を濃厚に残した下着を皆にむけて揺らしてみせた。 たっぷりと汗が染み込んで重くなった生地。大容量のブラカップは、どんぶりよりも、むしろボウルを想起させる。デザインは瀟洒なものではないが、落ち着いた意匠は、凄まじいまでの生々しさを見る者に与えずにはおかない。極上の美酒を回し飲みするように、美保のブラジャーの触り心地を堪能し、匂いを楽しむ少年たち。そんな様子を見ても、返しなさい――という言葉は美保の口からは出ない。 その視線は、剥き出しになった乳房に釘付けとなっていた。 「こ、これ……っ」 これが本当に自分の乳房なのか。そう思わずにはいられない。 透き通るような繊細な肌にほのかに浮かぶ静脈。少女のように初々しい色合いの乳輪と乳首。ブラジャーの保持を外れた巨爆乳は、暴力的と表現するしかない自重のあまりに形を崩している。並の巨乳ならば「人」型となるべきところが、サイズのあまりに「I」型を描いている谷間からは、汗の薫香が、それまでとは比べようもなく強く香った。 己の乳房に、美保は心を鷲掴みにされていた。 呼吸が苦しい。心臓の高鳴りがうるさい。血液が強酸性の液体に変わってしまったかのような感覚が身を切り裂いている。目を離さなければいけないと思うのに、渾身の力をこめても視線を外すことができない。 「揉んでみろよ、美保」 新島が言う。囁きと言ってもいいほど低い声だが、これまで耳にしたどんな音よりも明瞭に彼女の頭蓋に響き渡った。 「ぶっちゃけ揉みたいだろ?」 「わ、私は……揉みたくなんて……」 揉みたくなんてない、と言う口調の弱々しさで、美保は己の内心を端的に示してしまう。 「恥ずかしがんなって。こんなデカ乳見せられたら、男なら誰でもそう思うんだから。それにさ――これ、お前の胸じゃん? 誰にも迷惑かからないんだから、好きにしたらいいんだって」 「私の、胸……」 自分の体なのだから、自分の好きにしていい。悪魔の囁きが美保を誘う。越えてはならない一線を越える容易さに美保はたじろぐ。美保の内側で、理性と欲望とがぶつかりあい、激しく火花を散らした。 それにさ、と新島が言葉を継ぐ。 「美保は俺たちに爆乳好きになれって洗脳されてるんだから、仕方ないだろ。悪いのは全部俺たち。美保は被害者。だからクソデカKカップ揉んでもいいんだよ」 「悪いのはあなたたち……私は被害者……」 新島の言葉を、自分の言葉として繰り返す美保。その視線は、以前、乳房へと注がれている。クソデカKカップ――そう言われても仕方がないボリュームが、絶えず美保を誘惑している。 自分の行為の責任は、すべて新島たちに押しつけてしまえばいい。そうだ。そうすればいい。だって、それは事実なのだから。欲望に服従する言い訳を見出した美保――唇の端に笑みが浮かんでしまっているのに、彼女自身は気がつかない。 「あ、あなたたちが悪いのよ」 自分は悪くない、と誰よりも自分自身に対して言い訳をしながら、美保は掌を乳房へと近づけていった。 ―――――― 続きはBOOTHにて頒布中です。 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