とある深い森の奥。
普段は静謐な木々たちに、それに似つかわしくない嬌声がこだましている。
「あくぅぅっ!?」
木々の隙間に魔物たちの死骸があちこちに横たわり、熱気に混じって血と精の匂いがむせ返るほどに立ち込めていた。
ここは、王都から十里ほど離れた森の中。
この数ヶ月ほど、ゴブリンの一部族がこの森に根を張り、周囲の山村の農作物や家畜への被害が拡大し始めていた。
それらの村々からの嘆願に応じ、征伐に派遣されたのが領地から有志を募り結成された女戦士団であった。
しかし――正義の心を胸にゴブリン征伐に向かった彼女たちは今や純潔を失い、ゴブリンの穴奴隷と成り果てていた。
「あぁあぁっ! いや、いやぁっ!」
「貴様ら、こんなことをしてっ!!♥ おぉんっ!?♥ 許さないぞぉ♥」
「んちゅっ♥ ちゅぶうっ! んっ! んっ♥」
中には魔物のペニスに積極的に奉仕しているものさえいる。
「やぁん、ボクのおっぱい吸っちゃいや♥ あん♥」
金の短髪の女戦士などはゴブリンに乳首を座れ、嬉しそうにあえいで腰をヘコヘコと振っている。
彼女は「ボクの剣であいつら皆殺しにしてやる! おじさんの仇だ!」などと意気込んでいたのだ。
そう、戦いに臨む前に彼女たちに存在していた志はとうに霧散し、ただ魔に蹂躙される喜びだけがあった。
「んぶぅううっ!♥ んぐっ、んぐぐっ! んっ、んっ、んっ!」
「ギイィィィッ♥」
「あっ!♥」
やがて、ゴブリンたちは思い思いに精を放ち、女たちに種付けしていく。
びゅくくっ!! びゅるるるっ!! びゅびゅーっ!!
「はぁああああんっっっ!!!♥♥♥」
膣に、肛門に、口の中。そして髪や鎧にまでおびただしい量の粘っこい精液がぶちまけられた。
そのたびに女たちは舌を突き出し、ケダモノのような嬌声と共に体を痙攣させる。
「んっ……ちゅぱ♥ れろっ……! ちゅぷっ♥」
「あんっ!♥ あ、はぁあ……♥」
「あひぃぃ……♥」
恍惚とした表情を浮かべつつ、彼女らはゴブリンたちに全身を汚されるのに任せた。
ゴブリンの肉便器になり下がってしまった哀れなメスたちの姿がそこにあった。
女戦士たちを犯しきって、ゴブリンたちの間に若干弛緩した空気が流れたその時だった。
「聖なる雷よ、邪なる者たちを打ち祓え!」
バリバリと空気を裂く音がして、緑光が迸った。
ゴブリンたちを繋ぐように光は走り、その肉体を焼き払う。
「ギィエエーッ!!」
断末魔があちこちから上がり、体中から黒煙を吹き出してゴブリンたちは斃れていく。
「ギ、ギィっ!」
撃ち漏らしたゴブリンたちは本能的にかなわぬ相手と悟ったのだろう。一目散にその場から逃げ出していった。
「あんっ♥」
中出し中に慌てて逃げ出したゴブリンもいる。どくどくと注がれる快楽を味わっていた女戦士が亀頭の先端で膣壁をねぶられ、甘く喘ぐ。
「……なんてこと……」
雷撃を放ったのはヒルデだった。
道中立ち寄った村で聞いた話では、女戦士団がゴブリン討伐に出向いたが帰ってこないということだった。
それではと急ぎ駆けつけたのだが、遅かったようだ。
気をやって白目をむいているもの、白濁を上下から垂れ流して気絶しているもの。まさに阿鼻叫喚の地獄絵図であった。
「あ、あ……」
ヒルデに気づき、倒れ伏していた女戦士の一人がか細い声を上げる。彼女はまだ傷も浅く、正気を保っていた。
ヒルデは彼女に駆け寄り、抱き起こした。
「大丈夫?」
「は……はい……あなたは?」
「私はヒルデ。この国を護る天騎士の一人よ」
「あなたが……!」
噂に聞くヒルデを前に女戦士は一瞬ほっとしたようだったが、すぐに俯き、体を掻き抱いた。
その股間から一筋の白濁が垂れるのを見つけ、ヒルデは唇を引き結ぶ。
ゴブリンたちは自分たちが永く愉しむためか、女戦士たちに致命的な傷を与えてはいないようだった。
(そう、心以外は……)
体は無事でも、魔物に凌辱された心の傷はそうはいかない。
ヒルデの中で怒気が動く。
「彼らはすぐには戻ってこないでしょう。あなたは皆を手当して村に帰還して」
「はい……あの、ヒルデ様は?」
「私はあいつらの巣を叩く。あの邪鬼どもは一匹たりとも生かしてはおけないわ」
ゴブリンの繁殖力はあまりに高い。メスとあればどんな種族でも孕ませ、子を成せる。
一匹でも逃せば瞬く間に数を回復し、復讐に来るだろう。それだけは何としても避けねばならない。
「そんな……それは……」
「心配しないで、あなたたちはここから生きて戻ることを優先して」
女戦士に微笑みかけて頷いてから、ヒルデは踵を返しゴブリンたちの後を追った。
ゴブリンの住処はそれから十数分ほどのところにあった。切り立った崖の麓に洞窟があり、そこへゴブリンの足跡が続いていた。
入口の縁に体を預け、耳を澄ませると奥の方からかすかなざわめきが聞こえてきた。
(ゴブリンとはいえ、相手の巣に飛び込むのは危険が大きいけど……生還して一息ついている今がチャンスね)
ヒルデは覚悟を決めるように深呼吸をすると、その入り口からゆっくりと侵入した。
内部は壁に松明がかけてはあるものの薄暗く、獣臭が充満している。
少し広くなった場所で、数匹のゴブリンが火を囲んでいた。皮膚やまとっていたボロ布が焼け焦げていることから、先程のゴブリンたちとみていいだろう。
ヒルデはそちらへ静かに忍び寄ると、腰の鞭に手をやり、一気に振るいあげた。
鞭に雷が宿り、バチバチと乾いた音が鳴り響く。ゴブリンたちはようやく侵入者に気付き、慌てて武器を構えた。
「ギィーーッ!!」
ゴブリンの一体が威嚇の咆哮を上げて飛び掛かる。しかし――
「消えなさいっ!! サンダーウィップ!!」
その言葉と共に鞭に集めたエネルギーを開放し、辺りを雷が薙ぎ払う。
「ギギャァーッ!!」
ゴブリンたちはあっという間に黒焦げになって地面に倒れた。この閉鎖空間の中ではヒルデの雷から逃れるすべはない。
ヒルデは息絶えたゴブリンたちを見下ろしながらさらに奥へと進む。
洞窟内は狭く曲がりくねっており、時折枝分かれしている。だが通路全てに足跡があり、容易く辿ることが出来た。
「はっ……!」
ヒルデはふと、自分が辿ってきた足跡の違和感に気づいた。
足跡はわずかに縁が二重に盛り上がっている。つまり、二度踏まれている。
(ということは――)
この足跡を辿らせて、罠にかけようとしているということだ。
ゴブリンは人語は解さないものの、かなり悪知恵は働くことが知られている。
醜悪な見た目と粗暴な振る舞いに騙され、痛い目を見た事例は古今絶えない。
(あれね……)
ヒルデは注意深く周囲を観察し、ひとつ罠であろう仕掛けに気づいた。
行く先、洞窟の天井にイビレシアという植物が根を張っている。
小型哺乳類程度なら軽く捕食してしまう凶悪な植物で、通りがかった生き物に麻痺毒を含んだ胞子を吐き出す性質がある。
直接人が捕食された例はないが、その後魔物に襲われたり、その毒が仄暗いことに用いられたり、間接的に人に危害をもたらす植物だ。
ゴブリンはその麻痺毒を獲物に食らわす罠として用いているのだろう。
(つまり、このあたりに連中は潜んでいるはず)
こちらの力を知っているのであれば、好機と見れば一斉に襲いかかってくるだろう。
ゴブリンにこちらが気づいたと勘付かれないよう、ヒルデは努めて平静を装いながら進む。
「うっ……!」
そして突然うめき声をあげてふらついて見せる。毒を食らったふりをしたのだ。
頭上ではイビレシアが胞子を吐き出しているが、それは呼吸を止めて凌ぐ。
そんなヒルデの様子を見て、物陰に隠れていたゴブリンたちが飛び出してきた。
「グギャアアアアアアッ!!」
(今……っ!)
そして溜め込んだ雷の魔力を振り向きざま、一気に解き放つ。
「雷よ!! サンダァァッ! ウィップ!!」
一瞬洞窟内が白く染まり、弾けた。雷が空気を裂き、洞窟全体が大きく揺れる。
ぱらぱらと岩石のかけらが舞い落ち、砂塵が収まったとき、そこに立っていたのはヒルデのみだった。
「ふぅ……悪知恵の働く連中ね……」
油断ならないとはわかっていたが、あと一歩であの女戦士たちのように――
ブンブンと頭を振って脳裏に浮かんだ悪夢を振り払う。
あったかもしれないことを考えても仕方ない。
ヒルデはゴブリンたちが全滅したことを確認すると洞窟を後にし、村へと報告に戻ったのだった。