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個人的な文章の書き方(5) 実例編

 SSを書いている中で、個人的に印象深い推敲の一文があったのでここで示しながら好き勝手に語っていこうと思う。  なお、「これが正しい!」というものではない前提で観て頂きたい。  以下に示すのは拙作『TS淫紋は退魔師を侵食する』の最後の一文なのだが、当初はこのようなものだった。 「鼠蹊部まで大きく開かれた下腹部、その中央には褐色肌から浮きあがるように、鮮やかなピンクをしたハート型のタトゥーが刻まれていた」  ……投稿されているものとは、少し異なっているのがお分かりだろうか。問題は前半部分である。  この文章を読んだとしてイメージはできる、強く引っかかることもないだろう。しかしよく見ると『鼠蹊部』『下腹部』という2つの単語が被り、微妙に不協和音を放っていた。  着々と推敲していって、本当に最後。このまま勢いで投稿しても問題にはならないだろう。しかし最初の読み手である自分自身が引っかかったのだから直したい。  ラストの一文ということもあり、ここで本腰を入れる事にした。  このような場合、2つの単語のうちどちらかを類語に変える事で被りを減らすのは自己流なのだが、今回はそれが使えなかった。  『鼠蹊部』『下腹部』というのは、人体の位置を示す用語であり、代替が効かないのだ。『下腹』(したはら)と書くと意味は伝わるが、エロさは失われてしまう。  このあたりでにっちもさっちもいかなくなり「単語の変更ではダメ、根本から弄る必要がある」という結論に至った。  この状況を脳内で描くと、淫紋ユウト(ユウ)の淫紋ということもあり、腹部の中でもかなり下側の股間に近い位置に刻まれているイメージである。だから「ただの下腹部」ではなく「鼠蹊部まで晒された下腹部」なのが重要になる。  ここまで考えると「重要なのは『鼠蹊部』で『下腹部』を省略するべきでは?」というアイデアがまとまる。問題はエロさを表現しつつ、どのように文にするかだ。類語による言い換えが効かないから難しい。  ……ここでイメージに対して「鼠蹊部までは分かるが、最も下側は何で隠されているのか?」というツッコミが浮かんだ。ユウの服装は下がホットパンツであると先に書いてはいるが、最後の一文からは服の描写が抜けている。  『鼠蹊部まで晒されている⇒股上が浅い⇒ローライズ』  この連想で単語が浮かんできた。ホットパンツの中でもローライズ、という新たな情報を加えつつ、鼠蹊部とパンツでギリギリ隠された股間……というよりエッチなイメージを仕上げることができたのだ。  全くの余談だが、格闘ゲーム「ブレイブルー」内のキャラ・バレットに対して「尋常じゃねぇローライズ」という名言が生まれ、とても印象に残っている。  ここまで材料が揃えば、あとは文章に残すだけである。 「ローライズで大きく晒された鼠蹊部、その中央には褐色肌から浮きあがるように、鮮やかなピンクをしたハート型のタトゥーが刻まれていた」  自分らしい文章、そして締めになったと思う。  この修正に、断続的に30分くらい考えたはずだ。  ……こういう拘りをss全体を通して考え込んでしまうので、執筆は止まっている時間の方が長い。 (了)


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