ショーダウンⅡ 『35:決意』
Added 2025-06-20 14:19:45 +0000 UTC#35 『決意』 「ひゅっぁはっっっっ!?!? いぎゃ~~~~~~~~っっっははははははははははははははははははははははははははははははははははははは、いひゃはははははははははははははははははははははははははははははははははははは、ひぎぇあはははははははははははははははははははははははははははははははは!!」 そのくすぐりは、綾香が今まで味わってきたどんなくすぐりよりも過激だった。 「ほらほらほらぁ! くすぐったいだろっ! もっと笑って苦しめぇ!! 苦しみながら死んじゃえ! コチョコチョコチョコチョコチョコチョ~♥」 鈴音の指の爪が、反り返った足裏の肌をガリガリと強く引っ掻き回す。 それは一見適当に引っ掻き続けているだけに見えがちだが、鈴音のくすぐり方は単純な動きだけでは構成されていない。 彼女のくすぐりはまず中指・薬指・小指を巧みに使った愛撫の様なくすぐりで綾香の足裏を刺激する。刺激の仕方は強すぎない程度の優しい触れ方なのだが、その刺激を与えられると綾香の足裏は途端にこそばゆさを知覚し耐え難い痒みを覚える事となる。 その刺激を与えると、次にメインの刺激である親指と人差し指による強い引っ掻き攻撃がその痒みを帯びた肌を滅茶苦茶に掻き毟ってくすぐって来る。 そのくすぐったさたるや身体に雷を受けたかのような衝撃を受ける程に強烈で、もうそれ単体の刺激だけでも発狂しかねないと思える程の笑いの衝動が生み出され、綾香の肺から全ての酸素を搾り取って吐き出させる程の笑いを強いている。 元々媚薬の効果で敏感になっていた肌を優しく愛撫して更に敏感にした後に、気が狂う程の強いくすぐったさが後追いで加えられてくる。そして、その強い引っ掻きを二本の指が行っている間に、優しく撫でる3本の指は次の責め場に向かって指を這わせ直してそこを愛撫し始める。 強い刺激を送り終えた親指と人差し指は、愛撫によって敏感にさせられたその肌にすぐに移動し直してそこをゴヂョゴヂョと強く引っ掻き回す強い刺激を再び綾香に浴びせる。 強い刺激が与えられている時は、3本の指が次の責め場所へ先回りして肌を敏感にさせ……親指と人差し指はその後にそこへと強い刺激を送り込んでトドメを刺していく…… その繰り返しを素早く足裏全域に施して余すことなくくすぐっているので、綾香は絶え間なく送り込まれてくる凶悪な刺激にただ笑わされる事だけを強制される。 一連の指の動きが早すぎる為、傍目には適当に指を動かしているだけにしか見えないが……しかし綾香本人はその卓越したくすぐり技巧を肌で感じて驚愕させられている。 自分の足裏の至る部位が次々にくすぐったい刺激で埋め尽くされていき、それが一斉に“笑い”に還元されていくその感覚は……もはや脳が“くすぐったい”と感じる前に、身体が勝手に笑い出してしまっていると表現する他ない。 くすぐったいと脳が認識して笑う……ではなく、刺激された事を知覚する前に身体が笑ってしまう……という身体的な反射行動を取っているに過ぎない。 綾香の脳はとうに絶え間なく送られるくすぐったい刺激に焼かれ、正常な反応が取れなくなっている。 くすぐったいという刺激がどんな感覚だったのか……それすらも思い返せない程に綾香は追い込まれ、ただただ笑う事を強制された人形の様に振る舞う事を余儀なくされていた。 「ほぎゃひぃ~~~っっははははははははははははははははは、やミゃあァぁはははははははははははははははははははははははは、ヒギャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、ぁがゲぎぃィぃひゃみゃああぁぁぁっははははははははははははははははははははははははははははははは、うみゃぃぃぃひひひひひひひひひひィヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ、ぅひひひひひひひひひひひひひひひひ、ェヒャェヒャェヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ、うひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ、いぎっひぃぃぃっっ~~~~!!!」 もはや言葉すらも形を成さなくなる程の激しい笑いの暴走は、くすぐりの刺激が綾香の脳の“言語野”を犯しているに他ならない。 綾香の目は既に何処を見ているかも分からない程に視点が定まらず、顔はみるみる血の気が引いたように真っ青になっていく。 体中の至る所から汗を噴き出させ、涎はその汗と変わらない量を口から零し、目から流れ出した涙と合流して彼女の身体を濡らし尽くしている。 そんな哀れ極まりない顔を晒している綾香の顔を、目の前で頬を真っ赤に染めて智恵理が見降ろしている。 『あぁ……綾香さん……素敵♥ あんなに端整だったお顔が……苦しむように歪んで口からはだらしなく涎を垂らしてる……。目からは延々と涙が溢れていて……疲労の度合いが見て取れるほどの汗を浮かばせ私のくすぐりに悶えてくれてる……♥』 智恵理は勿論……苦しんでいる綾香を見て眺めているだけではない。綾香の身体に馬乗り状態のまま両手を伸ばして彼女の“脇のライン”を狙ってくすぐりを展開している。 『ハァハァ♥ 綾香さんの腋ぃっっ♥ 汗ばんでてツルツル指が滑ってくすぐり易いですぅ♥ 触り心地も最高ですし……くすぐってて気持ちも良いぃ♥』 大量の汗をかき濡れてしまっている彼女の腋の窪みを中心に……そこから下の脇腹までのラインを攻め筋に捉え、鈴音にも劣らない素早い指捌きで各部位ごとにくすぐりを施している。 ワキの窪みの部位には、全ての指を総動員させて柔らかい腋肌を引っ掻いて回る様な刺激を送り込んだり……親指と人差し指だけを使ってムニムニと腋肌を摘まんで揉み解すような刺激を送ってみたり……はたまた、指の爪だけを触れさせてツィ~~~ッと撫で上げ撫で下げを繰り返して見せたり…… そういう陰湿なくすぐりを繰り返した後は、全ての指で肌を撫でながら胸横まで刺激を指と共に運んで行って……そこにも、揉んだり触れたり撫でたり引っ掻いたりと多彩な刺激を送り込んでいく。そこもくすぐりで蹂躙した後は、馬乗りの姿勢のまま重心を綾香の腹部から股間へと移動させて腹部をくすぐり易くし、片手を綾香の腹に……もう片方を彼女の脇腹に添えて腹と脇腹を同時に責め始める。 脇腹は爪を立ててサワサワと撫でてくすぐったり、脇腹の括れをマッサージするように強く刺激したりとオーソドックスな責めを展開するが、腹の方には智恵理の異質な好みが見え隠れするよな責め方を行っていく。 腹の中心……臍の窪みの周囲をモショモショと全ての指で触って刺激したり、その臍の穴に人差し指を突っ込んで中をコショコショと弄り回してみたり…… 贅肉の無い腹の肌を揉み集める様に手を動かしてみたり、股間に至る寸前の肌をコソコソと悪戯するように刺激して来てみたり…… およそ綾香が不快感を感じられる全ての事をそこに施し、彼女にくすぐりとはまた味の違う新鮮な感覚を与えることに寄与させる。 「あっっあっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは、いぁあぁぁっははははははははははははははははははははははははははは、ひぎひゃっはひへっへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、おにゃかっっははははははははは、あははははははははははははははははははは、ソコらめっへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ!! ソコしゃわられるにょ弱っひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ!!」 ショーをこなす為に整えられた綾香の身体は、華奢ながら見事に美しく引き締まっているという印象を見る者に与える。 そんな魅惑的な身体の中でも彼女の腹部はより洗練された美しさを放つ部位として智恵理には映っていた。 痩せすぎている訳ではない……勿論太ってもいない。そして引き締まっているからと言って筋肉質でもない……理想の柔らかさと張りの有る肌だと確信を持って言えた。 そこに手を触れた瞬間、手のひらは吸い付く様にその肌に張り付き……力を込めた分だけ肌は緩やかに指の形に窪んでいく。 肌は汗ばんでいるが、その汗すらも手に馴染むように染み込んで来る。その汗を供なって肌を揉んであげると、濡れたことによって抵抗感の薄れた指先に適度な力が加わり、通常よりも強い刺激で脇腹の肌が揉みほぐされる。その刺激が余りにくすぐったいと感じてしまい、綾香の腹筋は過剰に驚く様にビクビクと震える反応を返す。 智恵理はその触り心地が癖になる程に気に入ってしまい、ついつい脇腹のくすぐりを雑にしてしまう程に触り込んでしまう。仕舞には片手は綾香の腹をくすぐる専属の手として残し、逆の手だけで腋やら胸横やらをくすぐりに行ってしまう始末。 それ程に綾香の腹は智恵理にとっては魅力的に映り……彼女を夢中にさせてしまうのだった。 「はぎゃ~~~っははははははははははははははははははははははははは、ぃぎひぃぃぃっひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、ぇへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ!! あがぁあぁぁぁあっはははははははははははははははははははははははは、ゲホ、ゴホ!! ぇげっっへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、いぎひぁぁぁぁっははははははははははははははははははははははははははははははは!!」 その智恵理による腹弄りは綾香の脳に新鮮な刺激を送り込む事になった。 腹を触られるのは確かにくすぐったいと感じるものだが、それでも腋や足裏と比べれば強すぎる刺激にはなり得ない。強すぎる刺激にはならないが、しかし触られる不快感は強く感じる為意識しないで済むなどという事はまるで無い。 足裏やワキからは激しい笑わせの刺激が送り込まれてくるが、身体の中心である腹部には智恵理による怪しい愛撫や臍ほじくりが繰り返され異質なむず痒さの様な物が湧き上がってくる。 それはくすぐったさと似てはいるが、不快だと思う感情の方が強く現れ……それもくすぐり同様“やめさせたい”と強く意志が込もってしまう。 でも、自分の力ではこの智恵理の弄りをやめさせる事など出来ないのだから、くすぐり同様に“もどかしい気分”にさせられた。 その“もどかしい”気分が、他の“くすぐったい”刺激と混ざり合うと……何とも言えない“こそばゆさ”に刺激が感じられてしまって、腹の触りだけでも笑いが生まれてしまう。 綾香は腹から送られるその異質なこそばゆさに頭が混乱させられ、増々くすぐったさの沼に飲み込まれていくことになったのである。 「ひぎぃひゃ~~~~っっっはははははははははははははははははははははははははははははははははは、あがはははははははははははははははははははは、ひぎぃひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、ぐぇへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、えへえへ、えへへへへへへへへ、へひひひひひひひひひひひひひ、ぐぎひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ……」 もはや形振りなど構っていられないと言わんばかりの笑い悶え方を綾香は客や紅葉の前で晒している。 綾香を、不敵な微笑を浮かべるミステリアスで美人なお姉さんというイメージを持っていた観客達は、この余裕のない笑い方を見てそのイメージを覆されることとなった。 紅葉もまた、綾香のこの壮絶に笑い狂う姿を見て自分の認識が歪んでいくのを感じてしまう。 知性的で、いつも冷静で、考え方も大人で、どんな相手であろうと怯むことなく余裕の笑みを浮かべているカッコいい女性…… それが綾香に対して抱いていた紅葉の像だった…… ―――― ――― ―― とある小さなデパートの屋上にあった小さなステージで……学生時代の紅葉は初めて綾香のステージを見た。 観客はまばらで買い物客もあまり足を止めていない……見ているのは子供たちだけ……そんな散々な状況であったが、綾香はそれでも少ない観客の為に真剣に手品を披露してくれていた。 当時の紅葉にはそれは衝撃だった…… 手品の技術もさることながら、ステージに立ち子供相手にも真剣にマジックを披露している綾香の姿が一際カッコいいと当時の紅葉は思ったのだ。 それから、彼女も手品を学んだ……。あの時の綾香の姿を思い返しながら、自分もいつかはあんなカッコいいショーを開きたいと……そう心に決めて練習に励んだ。 それから月日が経ち、自分の父親がネット番組のプロデューサーに抜擢された事を知った。 父は娘の為にとマジシャンを集めた番組を立ち上げる事となるが、紅葉はその番組のキャストに綾香を含めてくれと懇願した。 当時は、地方のコンテストでの優勝経験くらいしかなかった綾香だったが……紅葉のその懇願により声が掛けられた。 それからの綾香の活躍は目覚ましかった。 登場から連勝を繰り返し……10連勝に届く勢いで勝利を捥ぎ取っていった。 容姿も手品の技術も……文句のつけようのない、番組のメインを張るに相応しい人物だと誰もが認めていた。 紅葉もそんな綾香と対戦する事を楽しみにしていた。 憧れだった人物との再会もそうだったし、綾香と対戦できるのだと想像すると胸が躍る思いだった。 紅葉は綾香を憧れの目で見ていた。それと同時に自分こそが彼女のライバルに相応しいのだと自分に言い聞かせてもいた。 綾香はクールビューティだと周りから持て囃されていた。それならば、そのライバルである自分は徹底的にヒール(悪役)を演じて彼女を引き立ててやろう……とまで考えていた。 悪役の自分に負かされ、どん底からまた這い上がる綾香の奮闘……そして、再び戦って今度は自分が負かされる……というシナリオを父親に組んで貰って、よりドラマチックに綾香と番組を盛り上げてあげようと……そう考えていた。 しかし、その目論見は父親の暴走のせいで破綻した。 いざ綾香と相まみえる日になっても……彼女が撮影スタジオに現われる事は無かった。 父はそんな綾香に罪を被せる様に……対戦の前に“逃げた”……と公表した。 不戦勝となった紅葉の初陣はそれから破竹の勢いで連勝を重ねる……というシナリオに書き変えられたが……しかし、紅葉はそれを断った。 憧れだった綾香に逃げられたというショックも大きかったし……何より、対戦すると約束してくれていたのにそれを何も告げずに反故にされたのが信じられなかった。 自分のデビューは綾香に勝ってから飾るのが相応しい……と、そう思っていた紅葉に……番組の次のシナリオなど興味はなかった。 もう一度……綾香を連れ戻して今度こそ自分と戦って貰いたい! そう思いを込めて綾香の足取りを探そうとしたが…… その後に分かった事は……彼女がマジシャンをやめカジノのディーラーになる道を選んだという事実だった。 その為の養成校に入ったと知った紅葉は……綾香への憧れの気持ちは砕け、代わりに自分の想いを踏みにじられたという怒りの念が湧き上がる事となった。 いつしかその念は恨みの感情へと書き変えられて行き、彼女に復讐する事が自分の次の目標だと再認識した。 自分もディーラーの養成校へ通い、綾香を追うように同じカジノへと就職し……やっと復讐の機会が得られたかと思えば……綾香は事件を起こしてカジノを辞めた後だった。 しかも、そのすぐ後にカジノも閉店に追い込まれ路頭に迷う事を余儀なくされた。 恨みの感情に塗りつぶされた紅葉には、それ自体も綾香のせいだと恨みを増長させて増々怒りの炎に身を焦がす事になる。 ……そして、その恨みを知る“伊角百合子”に拾われる事となる。 『うちに来るなら、その恨みを晴らすお手伝いが出来るかもしれないわ』という百合子の申し出に、紅葉は何の疑いもなく身を任せる事となる。 そして、彼女の指導の下……最新機器を搭載したイカサマカジノにてディーラーとして腕を振るい……今に至る事となった。 かつて憧れを抱いていた綾香に復讐を誓って……紅葉は歪んだ復讐心を発散するかのように不正に手を出し続けた。 百合子に言われるがまま……綾香と繋がりのある麗華達が接触してくるのを虎視眈々と待ちながら……紅葉は静かな恨みの炎を燃やし続けた…… ―― ――― ―――― 『そう……私はあいつに憧れてた……。客相手に一切表情も崩さず手品を披露するあいつが……カッコいいって思ったから……私は追いかけた……』 でも、裏切られた…… 裏切られたと思ったから……恨んでしまった。 憧れが強かった分……裏切られたと知ると落胆も大きかった。そして、悔しくも思った…… 何でこんな女に……私は憧れてしまったのだ……と、後悔もした。 『だから私は誓った……。絶対に復讐してやると誓って怒りに任せて再び綾香の後を追った……』 そして、復讐は叶った…… 綾香を辱める事に成功した……けど…… 『でも、私のモヤモヤした気持ちは晴れてくれなかった……』 綾香が苦しむ姿を見て……ざまぁみろと口にはするけど、胸の奥はずっとモヤモヤしてて苦しさを増していた。 このモヤモヤの正体はなんなんだ? と疑念を自分に問うが…… 本当は自分でも気付いていた…… 綾香があの時……何も言わずに逃げ出したんじゃなくて、何か事情があって逃げ出したんだろうと……薄々勘づいてもいた。 そこで何か行動を起こして当時の状況を探ろうと思えばできたけど……でも、一度抜いた刃を簡単に鞘に戻す事なんて出来なかった。 一度ヒール(悪役)を演じようと決めたのだから……それは全うしないと自分すらも否定してしまう事になると……そう思った。 だから、演じ続けた…… 恨みと怒りと不安と罪悪感という相容れない感情をごちゃ混ぜにして…… 「ぇがっっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは、いぎひゃ~っははははははははははははははははははははは、ゲホゲホゲホ!! ぇげっっっへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、いぎぃぃぃひひひひひひひひいっひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、ぁひゃははははははははははははははははははははは……」 しかし……今の綾香の姿を見ると……自分が何のために怒りを覚えたのか思い出せなくなる。 下着姿に剥かれ、両手両足を拘束され……二人の女に好き勝手くすぐられ放題くすぐられて…… 笑って……悶えて……苦しんで……惨めに顔を歪ませて…… そんな姿を見たいと切望していた自分は実際にそれを見られて喜んでいるのか? それが見られて気が晴れているのか? そう自分の問いかけると……素直に返事を返せない。 なぜか胸を締め付ける程の苦しさに襲われて……辛い。 「あぎゃ~~っははははははははははははははははははははは、ひぐっふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ、ぃえへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、くししししししししし! ほぁっっはははははははははははははははははははははははははははははは、ひゃだぁあぁぁはははははははははははははははははははははははははは、えへえへえへ、えへぇへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへぇへぇへぇへっっへっへっへっへっへっへっへっへっへっへ!!」 本当は自分がこのくすぐりを受けなければならない立場なのに…… 「ひぃひぃっっ! イヒヒヒイィィィィィィィィィッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒ、いぁひゃはははははははははははははははははははははははははははははははははははは、ひぎぃぃっっ~~~~~~~!!!」 罰を受けるべきは……本当は自分だけの筈なのに…… 「ひぃ、ひぃぃっひひひひひひひひひひひひ、ァヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ、くへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、ィヒヒヒヒヒヒッヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!!」 こんな無様でカッコ悪い姿を……綾香にさせるべきではないと……心のどこかがザワついているのに…… 「ゲホゲホゲホ!! ゴホゴホ!! っほほほ、ひひひひひひひひひひひひひひひひひ、ぅぃひひひひひひひひひひひひひひひひひぇへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、ぁはははははははははははははははははははははは、ひぎっっ!! いひぃぃっっっ~~~~!!!」 自分がこのように人の前に晒し者にされると考えると……怖い。 身体中をくすぐられて笑い狂う姿を人の前で見せるなんて……恥ずかし過ぎて出来ない……。 「んぐぇへへはははははははははははははははははははははははははははは、ゲホゲホ! いぎぃぃぃっひぁぁぁっはははははははははははははははははははははははははははははは、イヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ、ひぃぎぃぃぃっっ!!」 笑うのが苦しいなんて思ったの……初めだった。 足裏やワキを触られてこんなにくすぐったいって感じたのも……初めてだった。 あんな風に手足を拘束されて…… 抵抗できないよう固定されて…… くすぐったくて仕方のない刺激を延々と送り込まれて無理やり笑わされ続けるなんて経験……した事なんて無かった。 苦しかった……辛かった……恥ずかしかった…… 悔しかった……ムカついた……いつまで続くか不安にもなった…… 笑ってる自分が哀れで……くすぐりに支配されているかのようで自分がとても無力に思えて……それでも身体中が刺激されるのが可笑しくて笑っちゃって…… 色んな感情が渦巻いて、滅茶苦茶にされ…… そこで……初めて“くすぐり”が怖いと自覚した。 今まで子供の遊び程度にしか考えていなかった“くすぐり”という行為が……暴力にも勝る残酷な行為だと改めて実感させられた。 もう二度と……あんな刺激受けたくない。 もう二度と……あんな無防備な格好で笑わされたくない…… そう思っているけど…… 心のどこかで別の自分が問いかけて来る…… 本当に……これで良いのか? と……。 「はひぃ、はひぃ、あひひひひひひひひひひひひひぃぃぃっひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、ぇひゃははははははははははははははははははははははははははははははは、いぎぃぃぃっっひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、ぇへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、ぁはははははははははははははははははは……」 自分の身代わりになってくれた綾香を見ながら…… 彼女がよってたかってくすぐられている無残な姿を見ながら…… 死ぬほど笑い死ぬほど苦しんで悶えている彼女の姿を見ながら…… 紅葉は今一度自分に問いかけている。 本当にこのままで……良いのか? と。 『嫌だ……私は……あんなくすぐりに……耐えられない! 今更……代わって罰を受けるなんて……出来ない! 無理だ……私には……』 必死に……問いかける自分にその様に返す紅葉だが、逃げる言葉を浮かべる度に胸の奥がズキズキと痛んでしまう。 そして、再び問い掛けが始まる…… 本当にこのままで良いのか? と。 紅葉はその問いに苦しむように目を閉じて首を振って拒絶しようとするが、その言葉が頭から離れる事は無い。 『嫌ッ! 折角……罰を受けずに済んだのに……。折角……罰を身代わりに受けてくれているのに……それに異を唱えるなんて出来ない! 出来る筈がない!』 頭を抱えて自分との問答を繰り返す紅葉…… そんな苦しんでいる様子を隣でジッと観察していた麗華は、ヤレヤレと言わんとする様に溜息を零し……そして紅葉に語り掛けていく。 「どうですか? 恨みは……晴れましたか? アレを見て……」 不意に掛けられたその言葉に、紅葉はビクリと身体を震わせ思わず麗華の方に顔を向けてしまう。 隣に座って自分に目を真っ直ぐに見つめる麗華の顔は、先程までの楽しそうにしていた表情とは打って変わって、冗談一つ聞き入れないと言いたげな真剣さを纏っていた。 「…………」 紅葉は、麗華の言葉に……自分の今の心境を返せない。 自分が今どう思っているのか……綾香に対して今どんな感情を抱いているのか……それを自分自身で精査できていない為、思いを言語化できないでいる。 麗華はその様子を彼女の雰囲気から察し、再び溜息を零す。 「わたくしは……この結果がわたくしの望み通りになった、とは思っていません。だって……貴女が綾香さんを恨むのは最初から筋違いだったのだし、被害の度合いから言えば綾香さんの方が被害者だと言っても過言ではないのですから……」 そう改めて言われ、紅葉はますます罪の意識に押し潰されそうな思いを抱える。 被害者は綾香の方だった……。それは今しがた初めて知った事実だった。 薄々は勘づいてはいたが……しかし、その事実を知って手のひらを反して謝罪するなど紅葉には出来なかった。 自分の非を認めてしまえば……今まで彼女に向けていた怒りの熱が全て冷めてしまって、自己嫌悪に陥ってしまうのは目に見えていた。 今までの自分は何だったんだ? と自問自答し苦しむ姿が容易に想像出来た。 だから、分かってはいても……態度に示せなかった…… 「そんな被害者の綾香さんが貴女の代わりに罰を受けるなど……わたくしは認めたくありませんでした。でも……彼女は言いましたわ。自分の罪は……自分で清算したいんだ……って」 「……自分の……罪……」 「綾香さんは、自分のせいで貴女がイカサマをする羽目になったのだと……そう考えていらっしゃるようです……」 「……っ!? あいつのせいで……私がイカサマを?」 「それは極論だとわたくしは申し上げましたけれど……綾香さんはそうは思っていないようで、自分に出会いさえしなければもっと別の人生があった筈だ……と言って聞かなかったんです」 「会ってなければ? な、何よ……それ……」 「さっきも言ったように、綾香さんは……自分の行った不正が多数の人間の人生を狂わせたのだ……と後悔しています。その内の一つが、紅葉さん……あなたの人生でもあるのだと……」 「……だ、だから私の罪を被る……と? 罪を被って清算する……って?」 「えぇ。それが綾香さんの選んだ道です……それを彼女は躊躇なく選んだ……」 「道を躊躇なく……選んだ……?」 「自分が犠牲になる事で、せめて貴女にお詫びがしたかったのだそうです……」 その言葉を聞き、紅葉は言い知れぬ怒りの感情が湧き上がった。 その怒りは……恨みや妬みから来るような陰湿なモノではなく……純粋に納得できないと思ったからこそ湧き上がった怒りだった。 「ふ、ふざけんじゃないわよ! 黙って聞いてりゃ……なにさっ! 自分が居たせいで私の人生が狂ったと……勝手にそんな事ほざいてんの? 馬鹿じゃない? イカサマを働いたのは私の意思よ! 私が自分で選んでこの人生を歩んだのよ! それを勝手に責任は自分にあるとかほざいてんの? 馬鹿にもほどがあるわ!」 紅葉の憤慨に麗華は驚く様に目を丸くしあっけに取られてしまう。 まさか彼女が自分の言葉にその様な怒りをぶつけて来るなんて思いもよらず……しばしその動きを止めてしまった。 「勝手に居なくなって、勝手にイカサマやって、勝手に断罪されて……私がやっと追いついたと思ったら、今度はまたショーに出てマジシャンもどきな事をやってるっ! 散々私の気持ちを振り回しておいて……今度は何? あんたの人生は私が踏み外させたんだ……って勝手に豪語する訳? そんな事を言ったの? あいつが?」 怒りに勢いを任せて次々に心の奥底に溜まっていた感情を吐露していく紅葉…… その様子を見て、麗華は僅かに口角を持ち上げその吐露を黙って聞き続けた。 「冗談じゃないわよ! それじゃあ……私が手品に憧れたのも、私が“あんな風にカッコいい女になりたい”って思ったのも……全部自分の不手際が原因だって言ってるようなもんじゃない! 傲慢も甚だしいわ! 私は私の意思で憧れたし嫉妬したし怒ったし恨みも持ったのよ! そんな私の“想い”まで否定してんじゃないわよ!!」 そこまで言葉を紡ぐと、紅葉は吹っ切れたような表情を浮かべ頭に掛けていたタオルを投げ捨てる。そして怒りに任せる様にその場に立ち上がって麗華を睨み、言葉を続ける。 「もう茶番は十分よ! 今すぐ綾香を解放しなさい!」 「……解放? それは……どういう意味でしょう?」 「あいつの役目はもう終わりで良いって言ってんの! ヤるなら……私になさい!」 「……綾香さんを解放して……貴女がまた身代わりになる……と?」 「違う! 身代わりなんかじゃない! 元々は私の罪だった筈よ! だから、順当に私が罰を受ける! それが当然の流れってもんなんでしょ?」 「……よろしいのですか? 今見ている通り……あの二人は情もかけずに容赦なく貴女の身体をくすぐり抜きますわよ?」 「……くっ! や、やってみなさいよ! もう怖いなんて思わないわ! 逃げもしない! どんなに苦しくたって……最後まで受けきって見せる!」 「鈴音ちゃんの足裏責め……と~ってもこそばゆいですわよぉ?」 「うぐくっ!! んな事知ってるわよ!」 「智恵理さんの腋をこしょぐる手……死ぬほどくすぐったくて……耐えられないと思いますよぉ?」 「くぅっ!! う、うるさい! 良いから……さっさと……交代しろっ!!」 「綾香さんと再び立場を入れ替わるという事は……彼女に背負って貰おうとしていた罪も自分が背負い直す事になるのですよ?」 「ぐっっくぅぅっ!!」 「それでも自分が罪を償いたいという事でしたら……もう止めません。お望み通り、綾香さんを解放して貴女だけを死ぬほどくすぐって差し上げましょう……」 「くっっ…………」 「良いですか? これが最後です……。最後にもう一度だけ聞いてあげます……」 「………………っ!」 「本当に……綾香さんの好意を無駄にしてでも自分が罰を受けると……お考えなのですか?」 綾香の苦しむ姿を見て……自分では到底耐える事など出来ない罰だと理解は出来ている。 出来るなら、入れ替わらずに平穏に事を済ませてしまいたいとも思っている。 しかし、逃げてしまおうかと考えると……胸の奥が疼いて痛む。 綾香の苦しそうな顔を見ていると……申し訳ない気持ちで一杯になってしまう。 あの台に乗せられるのは怖い…… 体中をあの二人の手が這い回ってくすぐってくると想像すると……居ても立ってもいられない気分にさせられる…… 笑う事を我慢など出来やしないだろう…… 笑えば笑う程酸欠が強くなって苦しくなるのは分かり切っている…… 入れ替わるということは、またあの地獄を……味わう事になる。 死ぬほど苦しいあの地獄に……自ら向かおうとしている。 それは愚かな決断なのだと……言われなくても理解出来ている。 自分が一番それを理解している。 でも…… 「えぇ、それで良い……。最初から……そうしなくちゃいけなかったのよ……」 どんなに辛いくすぐりを受けても…… どんなに苦しい酸欠を味わったとしても…… 湧き上がってくるこの胸の痛みと比べれば……些細な事でしかない。 綾香の辛そうな姿を見て覚える心の痛みに比べれば……自分に与えられるくすぐりなどもはや些事でしかない。 肉体の辛さなど……心の良心が貫かれる痛みに比べれば大したことはない。それを紅葉は今痛烈に味わっていた。 「私の罪は私が拭う。そんな当然なことから逃げたら、私はあいつに顔向けできなくなるもの……」 結局……自分がしでかした罪は……自分で償わないと心なんて晴れる訳がない。 この胸の痛みも……そういう償いでしか取り去る事なんて出来ないのだろう…… それが分かった今……紅葉が決断を迷う事は無かった。 「……分かりました。では……その様に……」 麗華は紅葉がその考えに自らの意思で辿り着いたのだと確信し、口の緊張を解いて安堵の息を吐いた。 そして、綾香をくすぐる事に夢中になっている智恵理と鈴音に向かってパンパンと手を二回打って合図を送り彼女達の手を止めさせた。 「お嬢? どうしたんですか? なぜ中止の合図を?」 いつの間にか口の端から垂らしていた涎を手で拭いながら、陶酔状態から我に返った鈴音がその様に尋ねる。 「綾香さんへの罰は中止にいたしますわ。すぐに枷を外して差し上げなさい……」 麗華の返答にキョトンと目を丸め、顔を見合う二人。未だ成り行きを理解していない二人は、何故責めを中止にしなくてはならないのか理解出来ず眉を寄せる。その様子を見て麗華は追加で説明を加える。 「紅葉さんが……最後まで罰を受けたいと仰っていますの。ですから、その場所を彼女に譲ってあげてくださいまし……」 麗華がその様に説明を加えると、鈴音は意外だと言わんばかりの驚き顔を作って紅葉の顔を見た。 紅葉は……その視線に目を合わせるのを気恥ずかしく感じ、顔を横に背けて視線から逃れようとしている。 「へぇ~~あんたってば変わってるのね? あれだけ苦しめられた後だって言うのに……まだ笑い足りないんだ~?」 コチョコチョと顔の前でくすぐりるフリをして見せる鈴音の挑発に、紅葉は目を閉じて「ヒィ」と小さな悲鳴を零す。 「今度はさっきみたいに手加減なんてしてあげないわよ? 綾香のくすぐられを見てたでしょ? あれ以上のくすぐりをあんたに施してやるから覚悟なさい!」 脅すようにその様に言う鈴音に、紅葉はぐっと目に力を込め不安で揺らぎそうになる意思を保とうと我慢する。 そして、目を開け鈴音の顔を睨みつけながら精一杯の強がりを言葉に込めて言い返す。 「す、好きにしたらいいわ! 私を苦しめたいんだったら……そうすればいい! でも、私はやり切って見せるわよ! あんた達のくすぐりに今度こそ最後まで耐えてみせるんだから!」 その強がりを聞いた鈴音は口元をニヤリと歪ませて笑みを零した。 智恵理も同様に、それは楽しみだと言わんばかりの笑顔を口元に作った。 「そう……その覚悟があるんなら……期待しても良いのよね? 途中でギブアップなんて言わないって……」 鈴音の言葉に紅葉の心は震える。 怖くて……不安で……押し潰されそうなプレッシャーを掛けられているようで、今一度踏み出した脚まで震えてしまう。 しかし、彼女の決意は……変わらない。 どんなに辛い思いをしようが……自分が背負うと決めたのだ…… 今更……その決意に揺らぎなど無い。 身体や心が恐怖に震えるとしても……決意だけはしっかりと芯を突き立てて鈴音の前に立っている。 覚悟と決意に満ちたその顔で……彼女達の前に立っているのだ。