XaiJu
茶衣流
茶衣流

fanbox


サキュモスハンター【13】 【ボスバニキュモスと引き分け】

サキュモスハンター【13】 【ボスバニキュモスと引き分け】【4540文字】 【第8話選択肢より】 https://abnormal-create.fanbox.cc/posts/8792748 ・視線を逸らし、彼女の足先だけに注視する。  なんとか視線を陰部から逸らした。  しかし、逸らせたと言っても、ごくわずか。  視線は右の方へズレ、彼女の足先だけを注視することになる。  だが、そこでハッと気が付く。 (そうだ。足だけ、足だけを見ていれば)  彼女たち、バニキュモスのもっとも重要な部分である脚部。  色香を感じにくい(少なくともメグルにはそのような弱点属性はない)部分を見続けることで誘惑に対して対抗できる。そのうえ、彼女たちの攻撃は、ムウとリイム戦でもそうだったように足が起点となって攻撃が発動する。 (ならば……なんとか……)  しかし、対応策が見つかったところで、勝機は皆無だった。  ならばと、対応を変えた。 「どうしたのかな~♡ラベリアのこ・こ、で~♡食べてほしくないのかなぁ~♡」  誘惑の美声がメグルの心を揺るがす。  “ここ”、へ視線が戻されそうになるのを必死で耐える。 「ほら、ピンク色の洞窟探検♡ハンターくんなら大歓迎♡さぁ、見てぇ♡くぱぁ~って開かれた入り口を♡」 (見るな!!見るな!!見るな!!)  誘惑のことばを振り払い、目を閉じる。  だが、そこで目を閉じてはいけないと、気が付き慌てて瞼を開く。  視線の先にはラベリアの右足がまだあった。  だが、一瞬でも目を開くのが遅れれば、危なかった。 「えい♡」  ラベリアの右足がメグルの立っていた位置へ移動してきていた。  跳躍で交わす。  切り返す余裕はなかった。  右足真下を通過したあと、モフっという毛の合わさる音ともにラベリアの両足が合わせられていた。 「おっしぃ~♡」  手を股の間に差し込んだまま、足が閉じられている。  もし、一瞬でも目を開くのが遅かったら危なかった。  あの足の間でもがく自分の姿が幻のように映りこむ。 「誘惑には乗らないの?じゃあ、遠慮なく捕まえちゃうからね」  立ち上がったラベリア。  同時に着地するメグル。  手が伸びてくる。巨大な手だ。ギリギリの回避などできない。  大きく、しかも素早く回避動作を行う。右へ左へ、無様でも、逃げ越しでも構わない。ただひたすらに回避する。  連続で伸びるラベリアの両腕。  回避するだけでも、通常は難しい。  だが、先に他のバニキュモスと戦ったおかげか、その攻撃パターンがある程度予見できていた。  また、回避に集中することで、ボスバニキュモスの攻撃であっても紙一重でギリギリ間に合っていた。 「ちょこまかと……ならば、これで……『夢幻淫技・夢牢』」  その瞬間、空間に違和感が生まれる。  それは、彼女の張る結界に閉じ込められたためだ。 『夢幻淫技・夢牢』  大型種のサキュモスだけが使える自身の周囲だけを現世と隔絶する淫技。  外部への攻撃ができなくなると共に、外部からの攻撃も受け付けない。  また結界内部から外部へ出ることもできない。  サキュモスはこの中でなら属性技を使える。  そして、彼女の属性技は……。 「『夢幻淫技・躰震(ラグ・ランダール)』」  土属性。  大地の属性は、地面からの奇襲が主だが、彼女の場合は違うようだった。  震えるのは彼女自身。  全身を震わせ、その余剰効果が大地をも揺るがす。 「『大地動(アド・ランダール)』」  足元が不安定になる。  揺れる大地の上に立つというのが、これほどまでに不安定さをもたらすとは考えてなかった。 「ッ」 「ぐッ!!」  その不安定な状態のメグルに彼女の巨体から掌底が繰り出された。  飛ぶように左へ回避。  回転しながら、そのまま距離を取る。  が、その巨体の前では、距離を取るという行為自体が愚策。  彼女の攻撃範囲からは逃れられない。 「ッ」 「グッ、がぁぁ――!!」  連続の掌底は回避できなかった。  上から降ってくるモフモフの毛で包まれた手を掠めてしまった。  太刀で受けたものの、その衝撃で吹き飛ばされる。  数十メイルを転がる。  だが、即座に地面に衝撃を与え、跳ね上がる。  跳躍からの着地。簡易的にだが、体勢を立て直す。  吹き飛ばされたおかげと言うべきか、彼女の手足の届く距離から離脱できた。  だが、もちろん、その距離など彼女にかかれば一足で埋められる距離だ。 「ほら……おいで♡もう、こんなことはやめて……♡さぁ、こっちにおいで♡」 「…………」  先ほどまで猛攻を仕掛けてきていたラベリアが急に誘惑へ行動を切り換えた。  違和感。  彼女の足に視線を移す。  誘惑に乗らないためだ。  そこで、先ほどのまでの攻撃を思い出す。  そう、連続で飛んできた攻撃は“手”によるものだった。  回避を難しくする『大地動(アド・ランダール)』は、足が地面に着いていなければならないのではないか、という仮説が出来上がった。  彼女の誘惑に反するように、後ろへ後退する。  結界の縁ギリギリまで下がる。 「あら、バレちゃった?」  そこで、霧散するように夢牢の違和感が消える。 「あぁ……つっかれたぁ……近接しかできないのが、この技の困ったところなんですよ。それに力も使い過ぎて維持できるのなんてほんとにわずかな時間。まぁ、でも、ほとんど裸同然までボクのこと追い詰められましたし♡あと、一回、っていうところかしら♡」  ジュルっと弱る獲物を見下ろし舌なめずりするラベリア。 「そうだな。あと一発受ければ、もろに淫気の影響を受け、あとはなすがままだろう」  自分で口走っておきながら、陰茎がわずかに大きくなる。  防具もほぼ下着しか残っていない。  太刀で受けたがためにその歯も鋭さを失ってしまった。   「じゃあ、ここからが、本当の勝負ね♡」 「流石に勝てる気はしないが、負けるつもりもない!」  飛び掛かってくるバニキュモス・ラベリア。  その俊敏な手に、足にと、飛んでくる攻撃を回避する。  猫とネズミならぬ、ウサギとネズミの追いかけっこ。  あと一撃入れれば勝ちのウサギに、一撃入れれば負けのハンター。  ここからは集中力と純粋な体力の勝負だった。  戦いが始まって半刻。  決着の時はまだまだ訪れそうもなかった。 *** 「はぁ……はぁ……」 「あぁ……はぁぁ……」  平原に夕日が沈んでいく。  月がだんだんと昇る。  一体どれだけの攻防を繰り返したのかももうわからない。  メグルはただ回避に専念した。  防御を一切捨て、回避のみに。  太刀は構えたままだが、一度も切り返していない。  カウンターをすれば隙が生まれる。  カウンターを狙えるほど甘い相手ではなかった。   「なんなのよぉ……もぅ……」  サキュモスといっても連続で戦闘を繰り返せば疲労するようだ。  おそらく淫気を垂れ流しにしながら戦うからだろう。  自身の内にある淫気とて無限ではない。  人間の精気を糧に生きるサキュモスは、淫気を発することで代謝しているのだ。  ここまで長時間の戦闘は初めてだ。  ラベリアが疲労しているなら、同じようにメグルも疲労している。 「もうそろそろ、あきらめたらどうなのぉ……」 「いや、そっちこそ……はぁ、あきらめろよ……」  夕日が沈んだ。  完全な夜の世界へと変わっていく。  夜だからと言ってサキュモスが極端に強くなるということは無い。  ただ、夜目が聞くサキュモスのほうが、人間よりかは有利な条件ではある。   それから、数度の攻防。  夜になったからと言って状況は変わらなかった。   「このままじゃ……決着つかないじゃない……」 「なら、さっさと帰れよ……はぁ……」 「ここまで、やってご飯にありつけないのは、さすがに、ね……♡」 「ね、じゃねえよ……ぁぁ……ほんと、餌としてしか見てないだろ」 「餌だけじゃないわよ……ハンターさんのいうところのお礼参り、もきっちりしてあげないと、ね♡」 「だから、ね、じゃねぇ……いいかげん……ッ‼‼」 「‼‼」  急な変化、強烈な重圧を感じた。  それはラベリアも同じだったようだ。 「もう夜だよ。こんなサキュバスの大好きな時間に外出なんて、イケないハンターさんだわね♡」  どこから現れたのか。  急に存在が現れたとしか言いようのない、瞬間的な出現。  それは、ラベリアとメグル対峙する間に姿を現した。 「こんばんは♡」  ラベリアと比べれば相当に小さい。  小さいと言えどもメグルの倍ほど身長があるサキュモスだった。  だが、直感で分かる。  この個体は、ボスバニキュモス・ラベリアよりも強い。 「あぁ……バニーちゃんも、こんなに疲弊しちゃって……そんなにこの子強いの?」 「ぁぁぅぅ……ご、ごめんなさぃ」  そういいながら、目の前に現れたサキュモスに縮こまるように平伏し、謝罪し始めるラベリア。 「え?わたし、なにも怒っていませんよ♡それどころか……上玉を見つけてくれて感謝してますし♡」  メグルを視線だけで硬直させるサキュモス。  今、ラベリアが攻撃を仕掛けてこれば、間違いなく回避できない。 「あぁ……♡ぁぁ……♡おいしそう♡」  じゅるぅ~と蛇のように長い舌をむき出しに、メグルを見定めるサキュモス。  いや、サキュモスと言うよりもサキュバスという方が近いのかもしれない。  蝙蝠の翼に、ヤギのような巻角。尾から伸びる尻尾の先端には鏃のようにとがっていた。  書物に記されたサキュバスと同じ姿。  だが、彼女はサキュモスのように人と比べれば圧倒的に大きかった。 「ここからは交代……♡で、いいわよね♡バニーちゃん♡」 「はい、はい、もちろんでございます」  お尻に生やしたふさふさのウサギの尻尾がプルプルと震えている。  上下関係がサキュモスの世界に存在するかどうかはしらないが、あのボスバニキュモスが怯えるほどの存在。  いや、対峙しているだけで抗いがたいプレッシャーに押しつぶされそうだった。 「?わたしのこと知っているのかしら?あったことある?」 「いえ、ございません。ですが、その淫気(オーラ)だけで五淫獣、もしくは女王様かと推測しました」 「あはは。当たっているわよ。いいこね。そんないい子から、獲物を奪ってごめんなさいね」 「滅相もありません」 「その代わりに、近くで負けちゃった同族ちゃんは後で復活させてあげるわ」 「ありがとうございます」  そんな会話が続けられる間、ラベリアはずっと伏せたままだった。  そして、メグルも何もできなかった。  分かる。隙などない。  それほどまでに圧倒的な夜の中に生まれた一点の深淵。 「さて、ハンターさん、自己紹介からしましょうか~♡わたしは、五大淫獣が一角、第二淫獣のイリス・ラマ・メイトリューロン♡サキュバス種に最も近いサキュモス♡一方的な蹂躙になると思いますけど、楽しみましょうねぇ♡ハンターさん♡」  五大淫獣という名前は聞いたことがない。  そもそも、サキュモス同士で上下関係が何層もある組織が成立しているということか。  混乱する。  サキュモスの集団は蜂のように女王とその他という形で形成されているというのが一般的な認識だ。  彼女の存在はその認識を一変させるものだ。 「さぁ、ハンターさんのお名前も教えてもらえるかしら♡」  答える必要は……。 「メグル……だ。ソロのハンターだ」  ……ない。と思ったにも関わらず、メグルはそう返答していた。 「そう、メグル君ね♡イリスは、ねぇ、メグル君よりもと~ってもつよいサキュモスなの♡だから、ハンデ、あげる♡イリスは、メグル君に指一本、舌一つ、尻尾も、体のどこでも触れずに、メグル君のことやっつけてあげる♡」 「ハンデ……♡ぁぐぅ……♡」  なにかがおかしい。  すでに、何かがおかしい。 「じゃあ、はじめましょうか♡楽しい蹂躙の時間ですよ♡」  連戦に次ぐ連戦。  メグルの前に強大な壁、いや断崖が立ち塞がった。 *** 【第14話へ】 【災厄来たる。第二淫獣イリス・ラマ・メイトリューロン】 https://abnormal-create.fanbox.cc/posts/8792895


More Creators