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洗◯された俺が主に捧げるために親友に◯脳映像を見せる話



俺からの送信は一言「相談事がある」。

ヤツからの返事もこれまた一言、「先に始めとるぞ」。

仮にも相談を持ちかけているというのに、あの男はあろうことか酒盛りの準備をしてあまつさえおっ始めているらしい。

なんと見事な経験則だ。そして実際それは正しい。俺も真面目な相談事をするつもりなど毛頭ない。


酒がいくらかと、安いつまみが少しあればいい。一晩飲み明かして愚痴って吐き出してそれで終わり。これまで幾度となく繰り返してきた、男同士の儀式のようなものだ。


付き合いも30年を超えた独身男同士のやりとりなどこんなものだ。家にあがりこむのに堅苦しい用意や礼儀などあったものではない。互いに世帯を持っていた頃はもう少しは違っていたが、独り身に戻ってからは開き直るように酷くなった。


「おーう早速始めてるぞ!」


鍵のかかっていない玄関を開ける。中から半分以上出来上がった上機嫌な声が聞こえてきた。不用心ということはない。現職の警察官の大男の家に好き好んで押し入るような馬鹿はいはしないだろう。

随分早くから飲み始めたらしい。一人暮らしには広すぎる室内からは、ここにまで男臭さが香ってきていた。


「おうおう、来おったかぁ、どうしたどうした! やけに真面目くさった顔をしおって!」


口から頭から体から、男そのものの豪快な臭いと声がプンプンしている。

酒で上がった体温で部屋全体を熱っされて、サウナのように熟成させているようだ。俺はゴクリと生唾を飲み込んだ。


剣道を通じて競い高めあった腐れ縁。竹馬の友。ときに好敵手であり。ときに頼れる相棒であった男だ。

ゴツゴツした顔と体を指して、黒沼高の風神雷神だの、鬼瓦兄弟だの、岩や芋に例えられてきた。

ヤツは警察官、俺は自衛官。それぞれ進んだ道は違ったが、だからこそ折に触れては集まってこの国の行く末から、女に振られた話まで様々なものを語ってきた。


そんな男がタンクトップ姿で無防備に大股を開いて酔っている。


――ほんの数日前までならば何の感慨もなかったであろう光景だ。むしろ顔をしかめていたに違いない。こんな親友にも、鼻を突く臭いにも。そんなものを、俺はまるで押収したての上物薬物のように吸い込んだ。肺いっぱいに男臭さが満ちると、それだけで下半身に血流が集中し、頭が酒も飲んでいないのに酩酊してくる。


改めて自分が別物に変わった実感に静かに震えたった。そうだ、俺は変えられた。作り変えられてしまった。全て終わってしまった。いや違う、素晴らしい形に変えていただいたのだ。


頭の中でその事実を反芻すると、全身が生温かい膜で覆われたかのような卑猥な快楽で満たされた。


思い返すのは主の顔だ。


「まったく、酒を呑むにしても、せめて俺を待ってからにせんか」

「ハッハッハ、まあ許せ! ようやっとできた休日だぞ、楽しい時間は長いほうが得ってもんだろうが!」


俺は親友といってもいい男と語らいながら、頭の中では主との幸福な一夜を思い返していた。


「で、相談事っちゅうのはなんだ」

「ん――ま、それはボチボチ話す」



口を適当に動かしながら、ひたすら主との記憶を反芻する。


「相談事のフリした自慢話じゃなかろうなあ、そのツラは、なんだなんだ、緩んどるのがわかるぞ」

仕方がないことだ。脳が主のことで満たされると、幸福感で勝手に顔に笑みが浮かぶ。口中にツバが溢れ、年甲斐もなくガチガチに勃起してくる。

自衛官として鍛え続けてきたこの体を見初められ、脳を徹底的に弄られ、味わったこともない快感を全身に与えられ、尻の奥に主の素晴らしい子種を植え付けられた。

俺はアレを知ってしまった。もう戻れない。もう戻ることなどできはしない。

そうなった。

そう変えていただいた

あのお方の素晴らしい技術により、永遠に過去の俺を捨て去った。忠誠を誓った。

もう戻れない。

戻れないとはなんだ。

俺は戻りたくないのだ。

あの快楽と悦びのない人生に戻れるはずがない。

だから差し出すのだ。

友を。親友を。自分と同じく巌のように鍛え上げた雄を。主に。

自ら志願した。

主が喜ぶことと思って、頭に浮かんだもっとも逞しい男がコイツだった。

お前はもう逃げられない。

俺はお前を逃さない。

俺はもう逃げられない。

だからせめてお前だけでも。


………………。


「どうした、早く座らんか」


俺は自分の足が止まっていることに気がついた。


今すぐにでも与えられた命令を遂行したいはずなのに、俺の脚は凍りついたように動かない。


なにをしている。

はやく。一刻も早く動け。

持ってきたのだろう。

あのビデオテープを。

一秒でも早く主の元に帰りたいだろう。愛しき主の元へ。

お前の命や脳は今や主のものなのだ。

脳みそまで筋肉のようだと例えられてきたこの顔面と肉体なのだから、筋肉のように伝達された指令をそのまま実行すべきだ。


「なんだなんだ、どうした」

「ん…………? あ、ああ………………」

どうした。

本当にどうしたのだ。


なにを……躊躇っている。


たかが親友を――国のために人生を捧げている警察官の親友を淫乱な変態に永遠に変えるだけだぞ。


ただそれだけで、主に褒めていただけるのだぞ。


これほど簡単なことがあるか。

今コイツは油断している。

映像を見せろ。

そして洗脳してしまえ。

俺のように。

お前のように。


「俺…………は………………」


お前と同じにしてしまえ。


頭の中で激しい声がぐわんぐわんと反響していた。

俺は鉛のように重たい体をようやく沈め、友の横に腰を下ろした。


心臓が結婚式の挨拶のときより激しく脈打っている。

全身が全国大会の試合前より強ばっている。


「スマンスマン、どう伝えたもんかと考えておってな」


俺はそういった諸々をすべて飲み込み、かつての自分のように振る舞った。


お前の仲間にしろ。

そうだ、俺の仲間にしろ。

お前も俺と同じになるのだ。


待っていろ。


お前も主のコレクションに加わえてやるぞ…………。


「ん? そうか。まあいい、さ、まずは一杯、ホレホレ」


ようやく腰掛けた俺にヤツはとりあえず納得すると、手元にあったグラスを差し出してきた。これまで何度となくしてきたように。

それを受け取った俺もまた、今までとまるで変わっていないように豪快に笑って飲み干してみせた。

しかしお前、人を呼ぶんだから少しは片付けをせんか。などどうでもいいくだらない雑談を口から出す。そうして次に、くだらない人生相談などを続けた。

今まで何度となくしてきた行為だ。心にもないことでも、言葉を並べ立てるなど難しいことではない。


赤点を取りそうな教科の相談。

試合直前の緊張の紛らわせ方。

付き合っている彼女へのプロポーズの言葉。

離れて暮らす息子へのプレゼントはどうするか。


人生の折に触れてはこうやって馬鹿みたいに騒いできた。

今にして思えば、本当に馬鹿なことで悩んでいたものだ。主のいない人生……これまでの四十年以上の人生は、振り返ってみればくだらないカスの集まりだ。


こんな行為は今すぐやめて、とっとと主から頂いた玩具で尻穴を弄りたい衝動に襲われていた。魔羅をおっ勃てて変態っぷりを晒したい。雄汁にまみれて鼻からその臭いを堪能したい。そういった素晴らしい体験を、この男にもさせてやりたい。

主に与えられた新たな価値観と快楽が俺の脳細胞を掌握していた。


「まあ相談事っちゅうのはなあ、まず……コイツを、ぐひっ、見てくれ」

俺は待ちきれずに手元から与えられたビデオテープを取り出した。


「なんだそいつは……? ビデオテープか? おいおい最近はDVDっちゅうもんが流行っとるだろうが。知っとるか?CDじゃあないぞでーぶいでーだ」

「まあそう言うな、こいつはな……イイもんだぞ……きっとお前の大好物だ」

俺は予め用意していた台詞を吐いた。自分で喋っているというより、脳に刻まれた言葉がそのまま再生されたようなものだ。


「なんだ面白いもんってのは、オイオイ、お前いい歳こいてまさか寮で押収したAVでも持ってきたんじゃなかろうな」


ヤツの顔は呆れ半分、スケベ半分といった笑みだ。ゴツゴツしたオヤジ臭い顔だが、笑うと顔のシワが集まって若い頃と同じようないたずら小僧の顔になる。

こうなることは容易に予想できた。しかし二十年以上前のことをよく覚えているものだ。俺もコイツも。


あのときのAVには、当時は勃起が止まらないほど興奮したものだ。

だが今の俺にとっては一切の興味がわかない代物だ。

俺はもう異性愛者ではない。結婚していた過去が理解不能の別次元の出来事のように思える。

正確には同性愛者とも違う。

俺は主が興奮しろという相手に興奮し、悦びを覚える生き物になったのだ。


妻にも、息子にも、親友と思っていたこの男にも興味など残っていない。そんなものは全て、あの日雄臭いザー汁と一緒に流れてしまった。


剣道のために、国のために、鍛え抜いたこの分厚い肉体は全て主に捧げてしまった。それだけでは足りない。もっと多く。俺が捧げられるものならば、なにもかも差し出したい。この親友であればきっと主は喜ばれることだろう。


俺の親友。

鍛え抜かれたこの肉体。豪放磊落といった性格。全てが喜ばれる筈だ。俺を手に入れたときのようにきっと、手を叩いて笑ってくださるに違いない。

すべてを捨てることを誓わされ、変態的なポージングを求められ、尻の初めてを奪ってくださるに違いない。


「逃げろ――って、何の話だ」


再生ボタンを押す寸前、やつがボソリとそんなことをいった。

逃げろ?

何の話だ。


「お前さんが言ったんだろうが、なんだ、逃げろ……ってのは……」


逃げろ。

今すぐ。

見るんじゃない。

俺のようになるな。


そんな戯言を俺の口が発していたことに指摘されるまで気が付かなかった。

信じがたい失態だ。

残っていよったのだ。

俺の中に、かつての自分の残滓が。

正義を旨とし、友情を重んじる、堅苦しいくだらない性分が。

まるで射精したあと、肉棒の奥に残っていた精液のように。

雄汁を掃除したあと、ちぎれて張り付いていたティッシュカスのように。


俺の心は瞬時に怒りで真っ赤に染まった。


この世でこれほどなにかに怒りを覚えたことなどない。


ヤツは訝しげな目で俺を見ている。


上等な頭とは言い難いが、察しの良い男でもあった。

今のでいよいよ違和感に気が付かれてしまったかもしれない。

築き上げてきた信頼が、そのまま不審に繋がってしまう。


なんてことをしてくれたのだ。

かつての俺。

正義漢だった俺。

自衛官だった俺。

この男の親友だった俺。

もう必要とされていない男が俺を――


「おい、どうした」


肩に手が置かれる。

心配か、疑惑か、何れにせよこうなったらこの男はもうただの酔っ払いではない。一人の警察官の雄だ。

今すぐ再生ボタンを押せ。

こいつを堕とせ。

家の生えた俺の指先がピンと伸びる。


あと数ミリでボタンが奥へと沈む。

だが動かない。

真っ黒なブラウン管の画面に警察官と自衛官の二人が写っている。


見てみろこの肉体を。

見事なもんだ。鍛え抜かれた胸板。体毛は全身ボウボウで、すぐに汗だくになって芳醇な雄臭さを放つ。

足腰は鍛錬によって太く力強い。何時間でも腰を振り、何発でも射精する精力があるに違いない。こんないい身体のオヤジが二人一辺に手に入ったとなれば、きっと素晴らしい褒美の射精をくださる。

30年以上の親友を差し出す。ただそれだけで、射精ができるのだ。褒めていただけるのだ。


体の奥底から喜びと期待が込み上げ、勃起していた肉棒から激しく先走りが溢れた。

主から与えられた六尺褌に卑猥なシミをつくり、全身に快楽の波が押し寄せる。

腰が抜けそうなほどに気持ちがいい。これだ、この快楽と悦びが何倍にもなったものが与えられる。コレ以上の幸福など存在しないと断言できるほどの幸せ。


早く。早く。早く堕とせ。


「う……おぉ♥」

小さなうめき声。それと同時に小便が漏れるように、大量の精液が俺の肉棒から溢れた。

触りもせず、主から与えられた六尺に擦れた快感と、これから起きる甘美な瞬間への妄想だけで射精できた。

ああ、頭の中にあった悲鳴のような声が急速に消えていく。心が晴れやかになっていく。いやらしい気分だけを残して全てが霧散していく。


この男に見せつけろ。力付くで。嫌がろうと拒否しようと関係ない。


ブラウン管の向こうの厳つい男のうち、片一方の顔が別人のようにいやらしく笑った。


俺は再生ボタンを押した。


テープが巻き上げられ、古臭いブラウン管に映像が映る。

それはサイケデリックな渦巻き模様だった。

低い機械音がステレオスピーカーから流れ、目を引く渦巻きが奥へ奥へと俺達の視線を集めていく。


「お、おい何だこりゃあ……!」

俺のすぐ後ろで親友は不快そうな声を上げて後ずさるのがわかった。

これはすべて俺の失態だ。

最初からこの映像を流して、暫く見ていればイイものが見られるとでも言えばよかった。しかしもうすでに警戒されている。おそらく大人しく見てはくれないだろう。


俺は躊躇うことなく親友と呼んでいた男の体を押し倒した。


「な、なにしやがる!」


これまでの戦績は五分と五分。正面からぶつかりあったら、容易に勝利などできない相手だ。

だが、すでにこいつは酒が入っている。普段の実力は発揮できない。そしてなによりこの俺には絶対にこれをやり遂げなければいけないという偉大にして崇高な使命感がある。突き動かされている。負ける筈がなかった。俺はヤツの腹に一撃を入れて、そのまますぐに容赦なく絞め技に移行する。


「ぐっ...!」

俺の腕が首に巻き付くと詰まった息を吐いた。

「抵抗するな、そうすりゃ……ぐふっ、すぐ楽になる……♥」

自然に笑みがこぼれた。

もはや迷いはない。

『迷いだったもの』は俺の六尺褌の中で、男臭いぐちゃぐちゃ染みになっている。俺は味わうように腰を振った。ヤツのたくましい背中に、ガチガチに勃起した肉棒が擦れて気持ちがいい。

「うぅぉぉ……♥ お前もいいオナホになれるぞお♥」

俺は逞しい背中を褒めてやると、つい数分前まで赤かった顔面が蒼白になった。

驚愕と動揺、なにより混乱が浮かんでいた。




「お、お前何を言っとるんだ! もう冗談では済まな――ガッッ!!」

もはや言葉など聞く必要はない。

俺は全身の力を込めて2つの顔面をブラウン管に近づける。


「なんなんだコレは……! こ、コレを見せて、な、にが、なにが、なにがっガガガッ!」

何が起きているかはまだ理解できていないようだが、コイツの脳は一足先に変化を始めている。映像に仕込まれた素晴らしき情報の数々に、今まさに書き換えられていっている。


「抵抗するだけ無駄だッ……さあ、とっとと、堕ちちまんだぁ」

脳に雄汁を中出しされるように、情報が洪水のように流れ込んでいく。少し見れば視点吸い寄せられ、暫く見ていれば頭が呆け、更に見続ければ力が入らなくなっていく。



「駄目――だっ、嫌……だッ、俺は俺ァ…………!!」

「ぬぅ!?」

だというのにコイツはどういうことか、まだ抵抗を続けている。ちからづくで見せられているという状況が、却って本能的な危機感を目覚めさせてしまったのだろう。

俺のときは違った。後輩に騙されて「重要な情報ですので見続けてください」と言われているうちもう抵抗できないところにまでイッてしまった。

それで終わり。

間抜けで滑稽。

愚かな自衛官だ。

今も視界の隅に入っているだけで、あのときの屈辱と歓びが蘇ってくる。

それにひきかえ、なんだこいつは。


「ま、まったくとんでもない馬鹿力だ……!」

命を燃やすような力が込められているのを感じる。少しでも力を緩めれば拘束から逃れ、最悪……警察全体にこの映像のことが、そして主のことが露呈するかもしれない。


ゾッと……恐ろしい想像に身の毛がよだった。


「そんなことはさせん、絶対に……あってはならん……!」


俺は再び力を込めた。

早く堕ちろ。

完璧に堕ちろ。

完成しろ。


生命力の全てを使おうが、人生を賭けた抵抗だろうが関係ない。

所詮まだ主に出会えていない男の限界だ。人生を全て捧げてしまっても構わないという体験を得た俺と、精神修行だとか、国のため人のためなどという半端な覚悟のお前。はなから勝負はついていた。

「あが…………あ…………カッ…………ハァ…………」

やがて、俺の腕の中に収まっていた幼馴染の体から、電池が切れた玩具のように力が緩み始めた。

「あが……あがが………………」

視線はただ一箇所、俺がつけたテレビ画面に向かっている。

「あぁ…………はぁぁ…………はぁぁ…………」

顔からも険しさが消え、眉毛は下がり、口が半開きになる。

脳にまず最初に、抵抗をする必要はないという情報が流れるのだ。意思や力が一切抜けて、ただ目だけが一点だけをひたすら見つめるために働く。


もう終わりだ。もう逃げられない。

もともと俺用にチューニングされた映像だが、そのままでもコイツに効くという確証があった。


「あぁ…………、がが……なにを、なんで、こ……れは……」


腰が浮き上がり、口からヨダレが中毒患者のように大量に溢れてくる。

人生で味わったことのない快感の量にまだ処理が追いついていない。

だがそれもじきに終わる。すぐに書き換えられ、待っているのは偉大なる主の存在だ。


眼の前で、人生を通じて共に生きてきた男が変わっていく。

俺の手で変えられていく。

もう戻ることはない。

この変貌は不可逆だ。


もう肩を並べて笑うこともない。

人生を共にすることもない。

俺がこの手で強引に奪い取ったのだ。


「ひ…………ひひっ…………ぐひっ…………」

まだ表情は消えたままだが強制的に口角が吊り上がり、笑うような悲鳴が上がりはじめた。

肉棒が服越しでもわかるほど固く隆起し、腰が快楽を求めて回り始める。


「ぐひッ…………なにが…………ふひっ…………ほひっ…………」


ただ幸福感で笑うことしかできなくなり、まともに喋ることさえできなくなる。

普段は人々を守り、指示し、指導する立場の男が、まるで生まれたての赤子のようにブルブルと震えている。

ああそうだ、実際に俺達はこれで、生まれたてまで戻るのだ。

そうしてこのオヤジ臭い顔と体と精力だけをのこして、主の求める変態へと生まれ変わる。


すでに俺はコイツの体を拘束していない。後ろから抱きしめているだけだ。そのまま耳元で語ってやる。

「生まれ変わるんだ、俺とおなじで…………ぐふふ♥」

そう言うと、体がガクガクと痙攣するのがわかった。


「うまれ…………ふひ…………かわ…………はひ…………あるじ…………ふひッ…………」


呼吸をするたび笑い声が溢れ、肉棒の角度がぐんぐんと反っていく。

俺は優しく、表面を撫でるようにコイツのデカマラに触れてやった。


「は…………ひっぃぃい…………うひぃぃ……ひぃぃッ」


笑いと悲鳴と喘ぎが混じり合った声が、男臭い口から溢れてくる。


「やめ、ひゃめ……へくれぇ……」

締まらない口から無様な声が上がる。男らしい声が台無しだ。


やめる?

「ぐふっ、やめる? そんな酷なことをするわけがないだろう? すぐにお前は完璧な雄になれるんだぞお」


俺は再びグリグリと勃起した肉棒をこすりつけた。

もう二度と自分の意志では交尾することさえない、子作り済みの勃起チンポだ。主の命令があればすぐに射精し、頭の中から不要なものを排出するいやらしく便利で変態的な棒。

それが俺の肉棒だ。

「おまえの、このデケえのも、すぐにそうなるんだ♥」

「ひ、ふひっ、はひっ」

「おうおう、そうか嬉しいかあ♥」

笑い声がちょうど返事のようになってしまって、俺はつられて笑ってしまった。

いや、実際に返事をしたのかもしれない。主の下僕としての自覚がもう出始めたのかもしれない。素晴らしいことだ。なんと幸福なのだろう。

ああ笑顔がとまらない。収まらない。

気がつけば俺も映像に釘付けになっていた。主が俺達のような益荒男に向けて作ってくださった洗脳映像。男の思考を駄目にして、主への忠誠心を詰め込むすばらしい装置。


「チンポぉぉお♥ チンポたまらんんん♥♥」

俺はたまらず股間を握りしめた。自分と、そしてコイツのをそれぞれ片手で握りしめる。

風呂で、センズリで、寝起きで、何度となく見てきたイチモツだが、こんなにもしっかり握りしめたのは初めてのことだ。熱く脈打ち立派な雄槍は、今にも射精しそうなほどパンパンになっていた。


「んおぉぉおッ♪ チンポぉぉおお♪」

俺の喘ぎ声に合わせて、ついにコイツの口からも卑猥な言葉が溢れた。

俺の手コキをもっと求めるように勃起をこすりつけてくる始末だ。


「どうだあ、抵抗なんて最初っから無駄だっただろうぅ♥」

「チンポ…………チン、ポォオ…………♪」

「さあ、コイツからいっぱい出しちまえッ、全部ぜんぶ、いらんもんはドクドクと垂れ流しちまうのが一番だぞお♥」


テレビ画面の渦の回転が早まり、チンポの脈動もそれに合わせて早くなる。

認知不可能な音のなかに、次第に主の声が混じり始める。今はまだ名も顔も知らない男の声だが、それがやがて人生全ての基準となる偉大なお方の声であるとわかってくるのだ。

この過程がたまらない。

思い出すだけで射精してしまいそうだ。


ああ、違う、今まさに射精している。

俺は親友を洗脳しながら、俺自身もまた洗脳を深めて射精しているのだ。


「アッアッァツアルジの…………あがぁぁあ♥」

「そうだそうだ、いいぞ、ああ、いい……イく……イきつづけている…………あぁぁ…………」

こんな遠くにイながら主の声が聞ける。

主の命令を遂行している。

主のおもちゃが増えようとしている。

その感動に精液があとからあとから溢れてくる。

金玉は常に稼働し、どくどくと精液を生み続けてくれている。

その全てが無為に快楽のためだけに排出され、六尺褌に消えていく。


「アルジ…………あぁ♥ 洗脳ゥゥウウ…………あぁぁ洗脳…………あり、が…………あぁぁ♥」

「そうだそうだ…………いい顔になってきたぞお♥」


強制的に作り上げられて歪だった笑顔が、至福の緩んだ笑顔に変わっていた。俺と同じ顔だ。そうだ、同じだ。おなじになる。

「いつも一緒にやってきたもんなあ、俺達は…………ガハハッ♥」

その事実が可笑しくて笑ってしまう。自然と下品な笑い声がでた。

ああそうだ。こうなるのは至極当然のことだ。

自然の成り行き。

成長の一過程のようなものだ。

俺達はこうなるためにこれまで競い、戦い、高めあい、人を愛し、別れ、そして今日ここに来たのだ。


全ては主のものになるために。


「ぐひっ…………ぐひっ………………ぬひひひひひ、主、主のお声が…………ぁぁぁあああ♥♥」

「あ、出るか、出そうだな」

俺はすべてを察し、握りしめていた手を離した。

俺の刺激による射精ではない。お前は今から――


「お前は主に精液を捧げるのだぞ、いいな、捧げるのだ♥」

「は、はひぃぃい♥ ささげるぅうぅ♥ 雄汁ぅぅうう♥ 種汁ぅぅうう♥♥ 俺をささげえええええげげげえ………………ああぁぁあい、イグゥウウウ♥♥♥」


ついにヤツのちんぽから、凄まじい勢いで精液が飛び出した。


ああ、友ながら見事な射精だ。


きっと肚に出せば着床間違いなし。

鼻が曲がりそうなほど臭い、見事溜め込まれた男汁。

そして、コイツの人生が詰まりに詰まった一発だ。


「あ…………あああああ♥ でちまっったでちまったでちまっったたたたたたた♥♥♥」

いよいよ痙攣が激しくなる。

空っぽになった頭に怒涛の如く情報が流れ込む。

主の求めるものが、脳細胞の隅にまで一気に行き渡るのが見ていてわかる。


「ああいいぞお、いいいぞおおそうだそうだそうだ♥」

「洗脳うぅぅううう主ぃぃいいいいい愛しておりますぅううう俺も俺も俺も愛して洗脳していただき感謝感激であります愛しております俺も洗脳愛されて幸せです俺は私は儂はもうほかにはなにもいらないであります愛して洗脳されて洗脳されて脳みそ全部主に捧げるのがすべてすべてすべてえええええ♥♥♥」


二発目の射精は、主への愛とともに。

三発目の射精は、脳みそを捧げる宣言とともに。

四発目、五発目に至っては、もはや言葉にもなっていない咆哮とともだった。


もはや俺の助けも必要ない。

俺は主の褌以外、世俗に纏わる邪魔な衣服を全て脱ぎ去ってその横で射精していた。


洗脳は完璧に果たされた。


この男はもう俺の親友だった男ではない。


主の玩具。主の下僕。主の道具。


俺と同じ、雄の形を精液が詰まった筋肉の塊で変態なことしか考えられない新たな生命体に変わったのだ。



「ぐひひひひ主、主ぃぃい♥♥♥」


俺とコイツがおなじように笑うせいで、もはや自分の声だか友の――元親友の声かもわからなかった。


だがどうでもいい、同じことだ。

俺とコイツの関係は、俺達の歴史が決めることでもなければ、俺達の脳みそが考える問題でもない。


すべては主が決めることだ。


主が親友同士の絡みが見たいといえば、千年の恋人のように愛し合うだろう。

戦う二人が見たいと仰るならば、親の仇以上に憎しみ合うだろう。

特になんの指図もなければ、名も知らぬ通行人よりも無関心であろう。


「どうなるだろうなあ…………ああ、主はなんて仰るだろうなあ、はやくお聞かせ願いたいものだぁああ♥♥」

「はアァァ…………ハッァハァ主、主にお会いしたいぃぃいい、ああ、早く、はやくうぅぅう♥♥♥」


俺は主を想って射精した。

横の男も主を想って射精した。


そこになんの違いも隔たりもなく、ただ快楽だけがこの世界の全てだった。


こうして俺達の友情は終わり。

引き換えにこんなものとは比べ物にならないほどの気持ちのいい射精を味わわせていただくこととなったのだ。







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