こんにちは、庄名です。
2月の下旬になってしまってすみません!
少し小休止の記事が溜まってきてしまったので、いくつか公開していくと思います。
今回は、以前Twitterで描いた絵に文章担当のユーリちゃんがSSをつけてくれました。ユーリちゃん、ありがとう!
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ほとんどの方にははじめまして、このFanboxでSSでお手伝いをさせて頂いています、柊ユーリと申します。
今回は庄名ちゃんのとても素敵なイラストに、自ら志願してSSをつけさせていただきました…!
みどりのこの行方をこれからを、ちょっとでも想像してもらえたら嬉しいです。
今後ともどうぞよろしくお願い致します。
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『 みどりのこ 』
きっとだから、陳腐な言い方になるが、運命だったのだと思う。
「俺と来いよ」
差し出した少年の手に、疑うことを知らぬ目がぱちぱちとまたたく。
少女は手を伸ばそうとしながら、もう片方の手が理性として働いて押しとどめている。
「大丈夫だ。責任は全部俺が持つ!」
「でも……」
少女は森の奥にある小さな集落・通称「みどりのむら」に住む、「みどりのこ」だった。
近場の村や町は、彼女たちの特異性を恐れて近づかない。
少女たちは、ただ静かに自給自足をしてそこで暮らしているだけだ。周囲の村から、衣料品など自分たちで賄えないものだけを物々交換で得ている。
しかしみどりのこは、何も知らない。集落の奥で、外部の者とは誰とも会わず、誰とも触れ合わず、選ばれしものとしてそこにいる。
その、はずだった。
「わたしが出ていけば、世に災いが起きてしまいます」
「どうして?」
「それを起こさないのがわたしの役目だからです」
災いが起きる。
災いを起こさないでいる。
そうと信じて、集落の者たちは奥深くにいるみどりのこを守る。
みどりのこは集落で産まれ、何も知らず、ただ一生をその集落で祈りを捧げるのだ。
「でも、ほら」
「ん、」
「あんたは、ただの子供だよ」
少年は、少女の腕をためらわず引き寄せ、その胸に抱き留める。
わっ、と年頃らしい声をあげて慌てふためく少女は、けれど抵抗せずその胸の中にいる。
目線の高さはほぼ同じ。少年は近くの村に住む、衣料品などをみどりのむらの集落へと届けてやる雑貨屋の息子だった。
「君だって、子供だよ」
「お、俺は外の世界を知ってる!」
むう、と頬を膨らませる少女。
少年の父が足を痛めて、短い道のりだからと少年に仕事を預けたのがはじまりだった。
「知りたいんだろ」
「……うん」
「外になにがあるか、なにをお前が守ろうとしていたのか」
少女の足元には小さな包み。
婆や爺たち、少女を世話する集落の者の目をくらませて外に出ようとするには、それぐらいの荷物しか用意できなかったのだ。
「知りたい」
「だったら、行こう」
少年の父は、集落の存在に懐疑的だった。
少女が祈り続けなければ、世界は崩壊するのだという。
そんな文献はない。そんな伝承も他では聞いたことがない。
少年の父もまた、世界を知るわけではない。山奥の小さな村の、小さな雑貨屋の主人に過ぎない。
「でも、爺様、婆様がなんていうか……」
「あんたがいなくなったら、また別の子供を攫ってくるさ。たぶんだけど」
「……」
少女は首を傾げ、しきりにひねっている。
そうなのだろうか。本当にそうなのだろうか。
自分はどこからか攫われてきたのだろうか。赤子のころに? そんな記憶は、当然ながらどうしても浮かんでこない。
攫ってきたにしては、少女の記憶の中での爺や婆はいつもうやうやしく少女を下にも置かない存在として扱っていた。
「親父が言ってた。子供が消えるんだって。このへんにはそんな話があるって」
少年の瞳はきらきらと輝いている。
出会ったのは偶然だった。でも今では、必然だったとさえ思っている。
本の中の英雄。憧れていた、捕らわれの姫君を救い出す王子。因習と共に生きる集落で、少女と出会った少年はきっと、自分はそういうものなのだと確信していた。
「だからあんたも、きっとそういう子供なんだ」
「ん……」
少女は飽いていた。
集落の言い伝えを、信じていると断言することは難しい。
だが、全く信じていない、ということもまだ断言できずにいる。
自分がここにいて、祈りをささげることで世界は均衡を保っている、などとは。
「わかんないよ……」
だから、かぶりをふるしかない。
小さな肩がが震えている。行くことも戻ることも自分ではできそうにない。
みどりのこ、と呼ばれた少女には名前がない。
みどりのこ、と呼ぶ爺や婆としか交流がなかった少女には、少年の姿も言葉もなにもかもが眩しい。
「だったら、やめておこう」
「え……」
「俺、あんたと一緒に行きたかったけど、無理なら仕方ない」
少年はふと一転、頭を垂れた。
足も一歩引いて、抱き留めていたはずの少女の身体を解放する。そして、自身の小さな荷物を背負いなおした。
すがりつきたい気持ちをどうにかこらえ、悲しみをこらえ。
英雄になりたいという気持ちはやはり夢となるのか、という落胆をどうにかみせまいとするが、それは尚更少女を煽るとは気づきもせず。
「父さん、もう怪我が治るんだ。そうなったら、俺はもう二度とここには来れない」
「え、そ、そんなの……」
「あんたが行かないんだったら、仕方ない。無理に連れ出すわけにはいかないだろ」
そうして背を向けた。
じゃあな、という言葉を最後に、零れそうになる涙を振り切るように。
「行く!!!」
そして、少女は慌ててその背に縋った。
三歩ほど足を踏み出した先で、少年に背中に少女が飛びついてきたのだ。
わっと慌ててよろける少年に、少女が慌てて飛びのいて気遣った。
「危ないだろ!」
「ご、ごめんね。ごめんね?」
そして、すぐに笑った。
彼女を安心させるため。
そして彼女を救うという英雄になった自信のにやけ顔を、彼女に悟らないために。
「よかった」
「え?」
「あんたと一緒に行けるなら、俺、なんでも捨てていくよ」
いずれバレる。
雑貨屋の息子がみどりのこをかどわかしたこと。連れ出したこと。
世界がどうかなるかなんて知らない。きっと、なんてことはないと今は二人は信じている。
全て幻想だ、世界がたったひとりの少女を失ったぐらいで、滅びるわけがないのだと。
「私も捨ててく。だから、手を離さないでね。ずっとそばにいてね」
「もちろん!」
二人は手を取り合って、道なき道を駆けだしていく。
未来を信じる、さわやかな笑顔が二人の顔に浮かんでいた。
いにしえより存在する大木を中心とした、深い深い森の奥にその集落はあるとされていた。
かつては盗賊団が作った集落で、数えきれないほどの財宝があるとも言い、近寄った者たちは雑貨屋の一族を除いて全て帰ってこないとも言われていた。
いつしか噂は、伝説に書き換えられ。そしてそのみどりのむらから、みどりのこは消えた。
世界がどうなっていくのかは、どうにもならずに続いていくのかは、まだ、誰も知らない。
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絵:庄名泉石 文:柊ユーリ
読んでいただき、ありがとうございました!
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(庄名からのおまけ)
元はこんなシンプルなイラストでした。
いろいろいじくってる間になぜか緑の中に佇む令嬢みたいに…
顔もちょっとのっぺりしていますね。目の位置なども結構移動させています。
描いてから手直ししやすいのも、デジタルの良いところですね。
悪いところでもあるのかな?
それでは、見ていただきありがとうございました!
庄名泉石
ななつ
2022-02-23 03:11:52 +0000 UTC