歩夢「果林さん、何読んでるんですか?」
果林「これ?ファッション誌よ。今月号には私は載ってないけれど、毎月送られてるくの。衣装の参考にもなるから便利だわ」
歩夢「なるほど。私ファッションにはそこまでは詳しくなくて…果林さんのアドバイスとかも聞いてみたいかも」
果林「ふふっいいわよ。歩夢に限らず皆元がいいんだからちょっと意識するだけでだいぶよくなるのに…もったいないわ」
歩夢「そうなんですか」
果林「えぇ。それに、今よりもっと魅力的になったほうが侑にも喜んでもらえるんじゃないかしら」
歩夢「侑ちゃんに…そうですねっ」
果林「ふふっ。歩夢はそうねぇ…。今のままでも悪くはないけれど、もう少し露出してみたらどうかしら。もっと大胆に肩を出してみたりとか」
歩夢「えっえぇ///恥ずかしいですよっそんな…」
果林「冗談よ。」
歩夢「もう、からかわないで下さい///」
果林「ごめんごめん。基本的に歩夢は今の路線で問題ないと思うわ。でもそうね、例えばこの前着ていた私服だと…色のバランスとかをもう少し意識するといいかも。」
歩夢「色のバランス…ですか?」
果林「えぇ。色の組みあわせとかもそうなんだけれど配分も大事なのよ。それと肌の色とかにもよって合う色が違ったりするの」
歩夢「なんだか難しそうですね…あの、果林さんがよければ今度買い物に付き合ってくれませんか?」
果林「いいわよ。ふふっ歩夢にとびきり似合う服を身繕ってあげる。」
歩夢「本当ですか。じゃあ早速なんですけど次の休日とかどうですか」
果林「次の休日…ええ、大丈夫。モデルの仕事もちょうど休みだわ。私も買いたい服があるからちょうどいいわ。」
歩夢「やったぁ!えーっと、場所は…」
果林「お台場でもいいけれど…せっかくだからちょっとお出かけしましょ」
歩夢のプロローグ
いつもより少し遅めの朝。
学校はお休み。普段なら少しのんびりしている休日だけど、今日は違う。
メッセージであの子におはようを言って、朝ごはんを済ます。
クローゼットから少し悩みつつ私服を選んで、お出かけの準備。
外に出ると秋の澄んだ空気が心地良いな。
いつもと同じバス停、だけどいつもより少し長い間バスに揺られる。
本当は別のルートのから目的地へ向かった方が早いけど、迷子になりやすい先輩がちょっぴり心配で、寮のすぐそばの駅を集合場所にしたのは秘密だ。
果林のプロローグ
何度目かの目覚ましで目を覚ます。
眠い。
私は朝がとびきり弱い。いつもはエマに起こしてもらうのだけれど、今日は朝から用事があるみたいで頼れない。
いつもの休日ならきっと無理することもなく寝ている。
でも今日は可愛い後輩との約束がある。
眠い目をこすりながら電気ケトルに水を入れ、お湯を沸かす。
コーヒーは寝起きには刺激が強すぎてお腹に良くないからと、代わりに作ったカフェオレを啜る。
例え寝起きでもプロ意識は忘れずにコーディネートしながら、少しずつ覚醒してきた頭でふと思う。
今日は迷わずに行けるといいな、なんて。
歩夢「大丈夫かな…寮のすぐ近くとはいえ果林さんだし…」
果林「お待たせ歩夢」
歩夢「あっ果林さん、よかったぁ」
果林「よかったってどういうことよ。いくら私だって流石にこの距離で迷ったりはしないわ」
歩夢「本当は?」
果林「…ちょっとだけよ。あんまり意地悪なこと言うと帰っちゃうわよ」
歩夢「あはは、ごめんなさい。つい…それにしても、こうして果林さんと二人でお出かけなんて新鮮ですね」
果林「そうね、普段は同好会の皆がいるし…何より、歩夢には侑がいるものね」
歩夢「///もう果林さんっ」
果林「お返しよ」
果林のモノローグ1
結局、少し迷ってしまった。
後輩に情けない姿は見せまいと思ってたけど駄目ね。あまつさえからかわれちゃうし。
お返しにとちょっぴりからかったけれど、大人げなかったかしら。
まぁ可愛らしく照れてる顔を拝めたから良しとしよう。
果林「歩夢は駅まではバスを使ってきたのかしら」
歩夢「はい、大体20~30分くらいだったと思います」
果林「へぇ。せっかくだから今度歩夢の家にも遊びに行ってみたいわね」
歩夢「果林さんだったら大歓迎です」
果林「あら、ありがとう。楽しみにしてるわね」
歩夢「そういえばエマさんは今日はどうしてるんですか」
果林「エマは今日は服飾同好会の子と用事があってね、朝早くからいないのよ」
歩夢「あれ、でも果林先輩朝弱いんじゃ…」
果林「可愛い後輩のために頑張って起きたの…なんてね。いつもより遅い時間だし、私だっていつまでもエマに頼りっきりというわけにもいかないからね」
歩夢のモノローグ1
最初に出会った頃は少しだけ怖いと思っていたりもしたけど、結構表情豊かで可愛らしいところもあるんだよね。
同好会のことや学校のこと、話題が尽きず、一人だと退屈な乗車時間はあっという間に過ぎていく。
さて、次は何のお話を…
あ、もう乗り換えだ―。
果林「えっと乗り換えは…どこだったかしら」
歩夢「私調べてきました。こっちです。ついてきてくださいっ」
果林「ふふっ。ありがとう。」
果林のモノローグ2
意外としっかりしているところがあるのね。
休日のお昼時、混雑する駅構内ではぐれないようにとは言え、思いっきり手を繋いで引っ張っていくなんて。
いきなりだったせいもあって、不覚にも鼓動が高鳴ってしまったわ。
そういうのって私がするはずなんだけど?
果林「さ、着いたわよ。」
歩夢「そういえばここって、果林さんはよく行く街なんですか?」
果林「そうね、撮影で行くことが結構あってね。古着屋も多いから重宝してるのよ」
歩夢「古着屋で結構買うんですか?」
果林「そうよ、私意外と倹約家なの。それに良い服に新品も古着も関係ないからね」
歩夢「なるほど…」
果林「古着屋もまた連れて行ってあげるわ」
果林「今日は歩夢にオススメのお店があるの」
歩夢「うわぁ、可愛い洋服がいっぱい…」
果林「このお店ならきっと歩夢に似合う服がいっぱいあるわ」
歩夢「でもこれだけあると悩んじゃいますね…組み合わせも難しい」
果林「歩夢が好きな服を選んでもらって、私がそれに合わせるモノを身繕うっていうのはどうかしら」
歩夢「面白そうですねっ一人じゃ難しいので助かります」
果林「もともとそういう約束だからね。腕の見せ所よ」
歩夢「えーっとそれじゃあ…あ、これ着てみたい。それからこれも…うーんこっちも可愛いなぁ」
果林「ふふっ、歩夢って意外と欲張りさん?」
歩夢「だ、だって一つに絞るの難しくて~…。でも何着もあると合わせるのも難しかったですよね?」
果林「大丈夫よ、私を誰だと思ってるの。何着でもちゃんと選んであげる」
歩夢「頼もしい…」
果林「そうね、例えば最初に選んだ服なら、このフレアスカートと組み合わせるのが良いと思うわ。こっちの服なら、カーディガンを上に羽織りましょ。色は…これが合うかしらね」
歩夢「わぁ流石…ありがとうございます。」
果林「どうしたしまして」
果林「さ、次はどれにしようかしら」
歩夢のモノローグ2
試着室。狭い室内に何着もの選んでもらった洋服をかけていく。
どの服もとっても可愛くて、着るのがとても楽しみだな。
でも私に着こなせるかな、なんてちょっぴり不安にもなりながら服の袖に腕を通していく―。
歩夢「…どうですか?」
果林「うん、これもとっても可愛いわ。やっぱり歩夢は可愛いわね」
歩夢「可愛いだなんてそんな…服のおかげですよ」
果林「もっと自信もっていいのよ。歩夢は自分が思ってる以上にとっても魅力的なのよ?」
歩夢「は、はい。ありがとうございます。」
果林「さて…どれも勿論良いと思うのだけれど…せっかくだから一式歩夢の服をコーディネートしてみたの。もしよかったら最後に着てみない?」
歩夢「本当ですかっ。着てみたいです」
果林「ふふ、きっと似合うと思うわ」
歩夢「あの果林さん…これ…」
果林「うん、我ながら良いチョイスだわ。オフショルダーのニットワンピにラインの入ったオーバーニーソックス。」
果林「大胆に出したデコルテにインナーキャミソールの肩紐がいい感じになじんでいるわね」
果林「歩夢らしくリボンもあしらわれていて、全体的にパステルカラーでまとまった大人っぽさもありながらも可愛らしいコーデだわ」
歩夢「露出がちょっと多いです…果林さんこの前言ってたことって冗談じゃなかったんですかっ」
果林「この前はからかい気味に言ってしまったけれど、言っていたことは本当よ?ちょっぴり大人っぽい歩夢もとても魅力的だと思うわ。」
歩夢「…恥ずかしいです」
果林「ごめんなさい、本当に歩夢に似合うと思ってコーデしたのだけれど気を悪くしてしまったかしら…。」
歩夢「いえっ、そんなことは」
果林「無理、しなくていいのよ?」
歩夢「…」
歩夢「…いえ、せっかく果林さんが選んでくれたんです。それにちょっぴり恥ずかしいですけどとっても可愛い洋服だしっ」
果林「ありがとう」
歩夢「そういえば果林さんも買いたい服があるって…」
果林「えぇそうね。もう決まってるわ」
歩夢「試着はしないでいいんですか」
果林「これは私が着るものじゃないからいいのよ」
歩夢「そうなんですか」
果林「えぇ、これはエマへの贈り物。いつもエマにお世話になってるから少しでもお返しがしたくてね。エマのサイズは把握しているから大丈夫よ」
歩夢「ふふっ。素敵ですね」
歩夢「せっかくだし私も侑ちゃんに何かプレゼントしようかな」
果林「いいんじゃないかしら。それだったらこのあと近くのアクセサリーショップにも行かない?きっといいものが見つかるわ」
歩夢のモノローグ3
これ、あの子に似合うかな。うーん、こっちも良いな。
隣の先輩からアドバイスをもらいつつ、一つ一つ手に取っていく。
あの子にプレゼントするものなんだからちゃんと考えて買わないとね―。
果林「侑へのプレゼント、良いものが買えたみたいね」
歩夢「はいっ果林さんのアドバイスのおかげです。ありがとうございますっ。」
果林「私はちょっと助言しただけなんだけど…ありがたく受けとっておくわ。」
果林「それにしても我ながらそのコーデ本当に似合ってるわ。すごく可愛い」
歩夢「も、もう忘れてたのにっ。言わないでくださいよ///」
果林「恥ずかしがることないわ。堂々としていればいいのよ」
果林「そうだ、せっかくこんなに可愛いのだからメイクもしましょうよ。このあたりに私の知り合いがやってるメイクアップサロンがあるのよ」
歩夢「メイク…ですか?でも色々と大丈夫でしょうか」
果林「大丈夫よ、私に任せなさい。それにスクールアイドル活動にもきっと役に立つと思うわ」
歩夢「じゃ、じゃあせっかくなのでお言葉に甘えて…」
ぐぅぅ
果林「そういえばもうお昼だったわね。まずはご飯を食べてからにしましょ」
歩夢「はい///」
果林のモノローグ3
モデル仲間とたまに来るお店。いつものメニューを注文する。
お洒落なお店だなんて隣で目を輝かせていた後輩は、何を食べるか結構迷っていたみたい。
後輩と談笑したり、ちょっとだけからかったりしているうちに料理が運ばれてくる。
ほんと、美味しそうに食べていて、こっちまで嬉しくなってくるわ。
歩夢「美味しかった~」
果林「歩夢ったら本当に幸せそうな顔をするんだから」
歩夢「美味しいものは美味しんですもん♪」
果林「それじゃ、お腹も満たされたことだし、お化粧しに行きましょうか」
歩夢のモノローグ4
プロのメイクアップアーティストに下地から一つずつ丁寧にメイクしてもらう。
私の知らないコツや技術ばかり。
筆を使うとこんなにきれいな仕上がりになるんだな。
鏡を見るとそこには私の知らない私がいた。
歩夢「す、すごい…これが私…」
果林「普段の歩夢も素敵だけれど、より歩夢の魅力を引き出しているわ」
歩夢「自分でするときと全然違いますね」
果林「色々と参考になるポイントがあったんじゃないかしら」
歩夢「はい、細かいところも教えながらメイクしてくれてとても勉強になりました」
果林「さて、次は撮影の時間ね。ここは撮影スタジオも併設されているのよ」
歩夢「え、撮影ですか」
果林「そうよ、とっても綺麗なんだから写真に収めないともったいないわ」
歩夢「綺麗だなんてそんな」
歩夢「でも私上手くポーズとか取れるでしょうか」
果林「難しいことは考えなくていいのよ」
果林「まぁそうね、誰かに見られていることを意識すればいいんじゃないかしら」
歩夢「誰かに…」
果林「うんうん、良い感じよ」
歩夢「ふぅ…なんだかこうやって写真を撮られているとモデルになった気分ですね」
果林「歩夢はモデルとも見劣りしないわ。素敵な写真が取れてるわ」
歩夢「あ、ありがとうございます」
果林「やっぱり侑のことを意識しているからかしら」
歩夢「も、もう///」
果林「ごめんごめん。」
果林「それじゃ次のポーズは、両手を頭の上に」
歩夢「上に…?」
果林「歩夢だぴょん♪」
歩夢「…っ!?」
歩夢「やりませんよっ///」
歩夢「もう、果林さんたらすぐからかうんだから」
果林「歩夢がかわいいんだもの」
歩夢「むぅ」
果林「そういうところよ。あ、ほらこんなところにゲームセンターがあるわ」
歩夢「話を逸らさないでくださいよ」
果林「まぁまぁ。面白そうだし入ってみましょうよ」
歩夢「それはまぁ別にいいですけど」
果林「へぇ。クレーンゲームねぇ」
果林(可愛いぬいぐるみだわ…)
歩夢「果林さんそれやるんですか?」
果林「…えぇ。ちょっとだけやってみようかしら」
歩夢「それ結構コツとかいりますよ」
果林「少しやって駄目そうなら諦めるわよ」
果林「…取れない」
歩夢「少しやって駄目そうなら諦めるって…」
果林「じー…」
歩夢「果林さん…?」
果林「え?あっああ。もうちょっと、もうちょっとだけしたら諦めるわよ」
歩夢(果林さん負けず嫌いだしなぁ。それに前あげたシールも喜んでたしもしかして…)
歩夢「あの、もしかして。このパンダのぬいぐるみほしいんですか?」
果林「いやっそんなことあるわけっ」
歩夢「じゃあ、取れなくて悔しい?」
果林「歩夢、何が言いたいのよ」
歩夢「ここは私に任せてみませんか?」
歩夢「こう見えても結構、ゲーム得意なんですよ」
果林のモノローグ4
かっこ悪いところを見せてしまった。なんだか見透かされている気がしたし。
でもしょうがないじゃない。私、勝負事となると負けたくないんだもの。
それにこのぬいぐるみ、すっっっっっっっごく可愛いじゃない。
これは部屋の一番いいところに飾りたいわね。
ともあれ、後輩には感謝しないとね。
果林「ぬいぐるみ、取ってくれてありがとう」
歩夢「いえいえ、私も楽しかったですし」
果林「それにしても歩夢、あなたすごいわね…」
歩夢「えへへ、こういうのはちょっとしたコツさえあれば取れるんですよ」
果林「だとしてもあんなあっさり取るなんて」
歩夢「璃奈ちゃんに誘われて行くようになってから、ちょこちょこ通ううちに慣れてました」
歩夢「でもちょっと疲れちゃったので、少し休憩しませんか」
果林「それだったらこの近くにいい喫茶店があるはずだわ」
歩夢「えーっと地図だとこのあたりのはず…」
果林「任せっきりでごめんなさいね」
歩夢「大丈夫ですよ」
果林「見覚えはあるのだけれど…」
果林「こんなところにこんな建物あったかしら」
歩夢「うーん、見た感じ学校に見えますけど」
果林「そうみたいね…でも学校なんてなかったと思うけれど」
歩夢「綺麗ですし、もしかして新しい学校なんでしょうか。」
果林「そうかもしれないわね」
歩夢「あっ、もしかしてあの喫茶店じゃないですか?お店の名前も同じです」
果林「そうだわっ間違いないわ」
歩夢「行きましょう」
果林「えぇ」
果林「この喫茶店は結構穴場なのよ」
歩夢「そうですね、休日なのに静かで落ち着けます」
果林「今日はありがとう。歩夢の知らない部分も知れたし、楽しかったわ」
歩夢「こちらこそ、楽しかったです。色々勉強にもなりました」
歩夢「それに果林さんの意外な一面も見れたし」
果林「そうね、ちょっとカッコ悪いところを見せてしまったわ」
歩夢「カッコ悪くなんかないです」
歩夢「可愛いし、それも果林さんの魅力なんだと思います」
果林「…そうかしら」
歩夢「それに服の事やメイクの事、侑ちゃんのプレゼントのアドバイスだって頼りになりました」
歩夢「とってもかっこよかったです」
果林「…ふふっ」
果林「歩夢はよけもんね」
歩夢「モン?」
果林「私の出身の島言葉で『良い人』って意味よ」
果林「あまり出身地のことは言わないことにしてるんだけどね、歩夢になら言ってもいいかなって思ったのよ」
歩夢「果林さん…」
果林「歩夢のこと結構信用してるのよ」
果林「だって八丈島出身だなんて、私のイメージに合わないじゃない」
歩夢「私はそんな果林さんも全然良いと思います」
果林「歩夢ならそう言うと思ったわ」
歩夢「えへへ」
歩夢「また一緒にお出かけ行きませんか」
果林「えぇ、勿論。いつだって歓迎よ」
歩夢のエピローグ
夕暮れ、帰りの列車。気づけば先輩が私の肩にもたれていた。
先輩も結構疲れたんだね。
また一つ、普段はなかなか見れない顔を見れて得した気分。
私も先輩の方にもたれて目を瞑る。
また一緒にどこか行きたいな。
果林のエピローグ
いつの間にか眠ってしまったらしい。
目を覚ますと後輩も私に体を預けていた。
よかった。私の寝顔は見られずに済んだみたいね。
でももう少しだけ、後輩が起きる前までこうしていよう。
さて、今度はどこに誘おうかしら。
おしまい。
後日談
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