お世話になっております。若林です。
僕によく漫画を見せてくれる新人がいるのですが、この人がよく「キャラに何をさせていいかわからない」という理由で悩みます。
例えば「普段バカっぽいのに、たまにハッとするようなことを言うキャラ。」を描きたいとします。
すると「ハッとするようなこととは……??」と悩み始めて、何も思いつかず手が止まってしまうのです。
他にも、「怖そうに見えて、実は愉快なキャラ。」というのを描こうとすれば、「愉快なことって何したらいいんだろう……??」と悩んだり。
「真面目で良い子だけど、ものすごく天然。」なら「天然なことって何したらいいんだろう……??」と悩んだり。
ただ、こうして文章化するとわかると思うのですが、キャラにやらせようとしてることがどれも抽象的で、そうやって考えようとすると難しいことばかりなんです。
おそらく本人の中で「漫画の主人公はそういうことをする」「そういうことをしないと面白くならない」という先入観や強迫観念があるんだと思います。
でもこういう先入観や強迫観念を持った人、漫画家志望者の中には結構いるのではないでしょうか。
「キャラに面白いことをさせなきゃ」と思えば思うほど、何をさせていいかわからなくなるものです。
この問題を解決するには、とりあえず考え方を変えましょう。
「普段バカっぽいのに、たまにハッとするようなことを言うキャラ。」
「怖そうに見えて、実は愉快なキャラ。」
「真面目で良い子だけど、ものすごく天然なキャラ。」
これらの文章は全て「他者から主人公への印象」です。
「Aという印象から、Bという印象になるキャラ」という説明でしかなく、その間の行動が何も設定されていません。
このような「Aという印象からBという印象になる行動とは何か?」という考え方は、実はすごく難しいんです。
1~2個くらいならがんばれば思い付くと思いますが、たくさん描こうと思うと大体の人は苦戦します。
そもそもこの考え方は大喜利に近いんです。「こんな歯医者は嫌だ。どんな歯医者?」のように、最終的な印象に結びつくような行動を考えるのは難しく、行動に一貫性を持たせるのも大変なので、漫画のキャラとしても破綻しやすいです。
キャラの行動を考えたいなら、まずなるべく考えられそうな行動を設定しましょう。
「普段バカっぽいのに、実はとても優しくて人のことばかり考えてる。」とか
「怖そうに見えて、実は人見知りで素直になれない。」とか
「真面目で良い子だけど、実は好きな人のことばかり考えてる。」とか
「Aという印象のキャラが、xという行動を取る」という設定です。
この時点では、Aという印象とXという行動には、ギャップの関係性はほとんどありません。なんならAとXを他のとそれぞれ入れ替えても成立します。
ここから、「Aという印象から、Xという行動を取るキャラ」を「Bという印象」に見せるようにします。
「普段バカっぽいキャラが、何も考えてなさそうなのに人を思いやること言って、ハッとさせる」とか
「怖そうに見えるキャラが、実は人見知りであたふたしてるところが、愉快」とか
「真面目なキャラが、好きな人のことばかり考えて他が見えてないところが、天然」とか
どうでしょう。こちらの考え方のほうが行動のバリエーションが思い付きやすいのではないでしょうか。
さらに「こういう行動を取る」という一貫性を持たせることができるので、キャラとしてブレにくいです。
そしてその行動は「こういう印象になるように見せたい」という「演出」をすることで、任意の印象に見せることができます。
大事なのは、キャラに変に面白いことをさせようとしないことです。
「このキャラはこういうことをするキャラ」というのがあるなら、それをすればいいんです。
そこから「そういう行動をすることで、そのキャラの魅力が見える」という演出をしてあげればよくて、そういう作りのほうがたぶん考えやすいと思います。
なんか説明が長くなってしまって逆にわかりづらかったかもしれませんけど、「面白いことをさせよう」とすると難しいので、「キャラがやりそうなことをやらせて、それを面白く見せよう。」と考えたほうが考えやすいですって話です。
何かの参考になれば。
※僕の漫画を例に挙げると、「ぱちん娘。」の大きいコマでキャラが何か言ってる前のコマでは、大きいコマの面白さをギャップで見せるためのフリになるコマが入ってると思います。
みどりが何かクズなことを言うその直前には、大体良いことを言う雰囲気を出してたりしています。
「すごく気さくで優しい子なんだけど、実は全部パチンコで勝つために徳を積もうとしてるだけの、クズ。」っていう作りですね。
zaehar
2021-09-10 17:19:29 +0000 UTC