お世話になっております。若林です。
編集さんや妻氏にネームの直しを指摘された時に、心がけておくルールがあります。
「相手の感じた違和感や疑問を尊重する」
言葉で言うのは簡単ですが、実際にどうするかは難しい問題です。
たとえば「この台詞の意図がわからないから、説明を足して欲しい。」という指摘があったとします。
でも作家としては、台詞に説明を足すと言葉の読み味が悪くなったり、野暮ったい印象になることがあるので、なるべく直したくないとします。
このような時に「編集の意見を尊重して、台詞に説明を加える。」か「作家の感性を尊重して、台詞をそのままにする。」かの2択になってしまうと、どちらかが折れないとならなくなります。
作家にとって不本意な修正を加えれば作家の意欲は落ちますし、編集も意見を無視されたら委縮して次回以降指摘しづらくなってしまいます。
このような問題の時、基本的に、どちらかが正しいのではなく、どちらも正しいのです。
なのでお互いが納得できるように、修正案を考えなければなりません。
参考までに、僕の場合をいくつか紹介します。
①「最後のキャラの台詞がブレているように感じるので修正しましょう。」という指摘がありました。
確かにその台詞はキャラがブレていて、そのままだと違和感があります。
ただ話の結論としてはそこに持って行きたいので、その台詞を変えると話がよくわからなくなります。
そこで……
「キャラがブレているということは、主張や考え方に一貫性が無いということ。」
「今回の話の中で、最初と最後で言ってることが違っている。」
「これを一貫させればブレなくなるはず。」
「なので最後の台詞ではなく、途中の台詞を変えましょう。」
という提案をして、お互い納得できる修正になりました。
②「キャラの感情の変化がよくわからない」という指摘がありました。
この時点では、何が「よくわからない」のか僕にはわかりませんでした。
しかも相手も「悪くはないけど何か引っかかる」という程度でした。
このような、はっきりした理由のわからない違和感というのは、よくあります。
こういう時にちゃんと伝えてくれる相手というのは頼もしいです。
そこで……
「まず何ページまでは普通に読めたのか」
「どこから違和感が始まったのか」
を聞き取りながら問題の場所を探します。
「その時の違和感は【疑問】なのか【不快感】なのか【無感動】なのか」
「もっと別の違和感なのか」
と違和感の種類を聞いていきます。
「今回はキャラの感情の変化に違和感を感じる」
「このコマからこのコマへの感情の流れが急に感じる」
「じゃあ間に中間の感情を入れよう」
というように解決しました。
③「設定がファンタジーすぎる」という指摘がありました。
設定がダメだと、もはや話自体がボツになります。
でもその設定は絶対面白いと思ってたので、なんとか活かす方法を考えました。
そこで……
「そもそもこの話の中でファンタジーがダメってことは無い。」
「なのにファンタジーすぎるという感想を持たれてしまうのは、リアリティを感じられないということだな。」
「リアリティは、設定そのものよりも、それに対するキャラの反応で変わってくるな。」
「じゃあ設定に対してのキャラの反応にもっとリアリティを持たせよう。」
ということで、キャラそれぞれの反応を変えました。
最初はファンタジーな現象に対してものすごく素直に受け入れてたので、もっと疑い深く「そんなことあるわけ……」「いやまさか……」という反応に変えてみました。
ちなみにこういうことはファンタジーに限らず、キャラのやり取りでも、理由が納得できなかったり共感できない反応を描くと「リアリティが無い」と言われます。
このようなネームの指摘と修正を日々やっています。
ちなみに、「こうしたほうが面白くなるのでは」というギャグとかを提案をされることもあります。
それは疑問や違和感から来た提案ではなく、単純に相手の思い付きなので、本当に面白かったら採用すればいいし、そうでもなかったら不採用でいいやつです。
ただこれも、ドライに不採用にしてしまうと相手がへこむので、時間に余裕がある時は「だったらこうした方がもっと面白くできる」とアイデアを上乗せするようにしています。
すると相手は「さすが!!」って納得してくれるので、お互い気持ちよく進むことができます。
それから、ネームの修正は「面白い」って言われるまで続きます。
「面白いとは思うんですけど……」みたいな感想が出て来た時は、何か違和感を感じてる時なので、そこは慎重に探っていくようにしています。
また、相手が「いいと思います」っていう感想を言ってきた時は、なんとなく満足感が低く感じるので、しばらく相手に感想の詳細を喋らせてみて、何か無意識に不満を感じてないか探ります。
杞憂に終わることもありますが、聞いてると「やっぱ満足してないな」「もっとこうしたほうがいいな」っていうところが見つかる時もあります。
こんな感じで日々ネームを直しています。
※ちなみに僕のこういうやり方は、妻氏にネームを見てもらう中でできていきました。
うちの妻氏は元々感想を言うのは得意ではありませんし、そもそも喋るのが苦手な人でした。
ネームを見せると、最初の頃は黙って熟考するので、すぐ感想が欲しい僕はイライラしてました。
しかも長いこと待って返って来た感想は「よくわかんない」「なんとなくピンとこない」という、めちゃめちゃ漠然としたものでした。
それで余計にイライラすると、向こうも余計言いにくくなって、違和感を感じても言わずにスルーされることすらありました。
そんなやり取りを続けて僕も反省して、いくつかルールを決めていきました。
①指摘されてもイライラしない
②どんな感想でも尊重する
③漠然とした違和感の原因を突き止めるのはこっちの仕事
④修正の具体案を相手に求めない
今ではまあまあ上手くやれてると思います。