ある日、僕は見た。
駅の自販機で。
味噌汁が、売ってあるのを。
2018年、一月。
仮面ライダービルドは北都編に突入し、キュウレンジャーはクライマックス。
神ノ牙という面白い映画が公開された、そのちょっと後くらいだ。
自販機で、味噌汁が売られているのを見た。
しじみ何個分のなんとか、とかいう黄色い缶のやつだった。
なんで?
なんで、自販機で味噌汁を売る必要がある?
早起き会社員向けの朝ごはんのつもりだろうか。
実際、しじみ何個分とかの類のやつだからそういう思惑はあるのかもしれない。しかし、ちょっと想定している需要が限定的すぎやしないか。単純にコーンスープとかみたいなののポジションなのだろうか。
色々考えをめぐらせるが、その思考は一瞬の出来事であった。
ぼくはすぐに味噌汁から目をそらし、「ふうん」とつぶやいて改札へ歩き始めたのだった。
後に、後悔することになるとも知らずに。
ある日、ぼくはまた電車に乗る機会があったので駅に向かった。
改札を通り、目的の乗り場へ行く。その時に、ちらりと自販機が視界に入った。
「まだ、味噌汁なんてもの売ってるのか」
そうつぶやこうと自販機を見たが、
味噌汁は売っていなかった。
ぼくは無言で電車に乗った。
つぶやこうとした言葉が頭の中でせき止められたままぐるぐると回転しだした。
食べ物を噛み締め、味わうようにじわじわと脳に言葉の意味がしみこんでいく。
自販機に売っている味噌汁。
ぼくはあのとき初めて見たのだ。
自販機に売っている味噌汁。
自販機に売っている…………………………………………
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どんな味だろう?
唐突に飲みたくなった。
見つけたときにはOFFになっていたスイッチが、ひとりでに車内でONになった。
ちょっと気にかけてたけど気持ちはいたってニュートラルなものが姿を消すと、急に気になりだすあの現象。
あれに見事に苛まれてしまった。
飲みたい。
なんだかとっても飲みたくなってきた。どうしよう?
でももう自販機には売っていない。
でも飲んでみたい。
しじみの味噌汁。
ど~せただの味噌汁だろ。
でもコーヒーだって缶と紙パックと淹れるのじゃ全部全然違う。
だから飲んで確かめてみたい。
でもどこにも売っていない。
手に入らなくなった自販機の味噌汁。
あの味噌汁は、季節限定ものだったのだ。
買えばよかった。
買えばよかった。
どうして逃した?
バカ。
おバカ。
何を、バカって言ったヤツがバカなんだ。
バカめ、それを言ったらお前じゃないか。このバカめ。
ああそうだ、俺が言い出したんだった。俺のバカ。
ど~~~~~~~~~しよ。マジで。
考えているうちに、季節は過ぎて雪も溶けていった。
1年後。
正確に言えば11か月後くらい。
モノローグでかっこつけたくて1年って言いました。
2018年、12月。
仮面ライダージオウはオーマジオウと邂逅し、ルパパトはシャケづくし。
神ノ牙-JINGA-っていう胸糞おもしろドラマが終わるころに、また駅に行った。
そしたら、売っていた。
しじみ何個か分の味噌汁。
ぼくは即座に買った。なんせあれだけ飲みたかった味噌汁だ。
見かけたらそりゃあ買うに決まっていた。
ぼくは喜びの感情を手に込め指に込め、プルタブを開けて勢いよく味噌汁を飲んだ。
具、無い。
しじみを推してるからてっきりしじみの剥き身でも入ってるのかと思ったら、全くの汁オンリーであった。
推しているのはしじみではなく、しじみの栄養成分だったのだ。
汁は普通においしいけど、完全に汁だけだとは思わず拍子抜けした。
こんなもんなら、1年前見かけたときにとっとと買っておけばよかった。
1年待って味噌汁の汁を飲んだ日。その日は一日が少し空虚に感じられた。
こんにちは。前学校で作ったことのあるナップザックをなくしたことに最近気が付きました。kaLです。
この後、別の自販機で厚揚げ入りの味噌汁を買いました。
こっちのがおいしかったですが、厚揚げが全然缶から出てきませんでした。それでは。
-gaL
2020-02-02 02:25:44 +0000 UTC