辺りが完全に暗闇に包まれた、新月の夜。
ひと気のない山間部に、壊されることもなく幾年も取り残された廃倉庫の中で、”それ”は行われていた。
「・・・おら、余計な手間をかけさせんじゃねーよ、いまさら抵抗しても無駄だろが」
上下黒の衣服に、レトロな目出し帽。いかにも強盗といった風貌の男が、目の前で蠢く銀色の塊に吐き捨てた。
コンクリートでできたがらんどうの室内に、その怒声が反響した。
「んん!んぅ!」
その銀色の塊と化した【風見 凛】は、必死にその声の主から遠ざかろうともがいた。室内にあるのは、その二人と、一台のビデオカメラだけである。
凜の足首から鎖骨辺りまでは、完全にテープで覆われており、顔にも厳しくそれが巻かれている。鼻の辺りからは厚手の布が見えており、わずかに見える両目は完全に怯え切っている。
首と足にはロープが巻かれて、移動を完全に封じている。
「ーカシラは厳しくも情けのあるお方だ。お前みたいに、店の売上をこそこそ盗み続けたホステスなんてのは、ケジメとして山奥に埋められても文句の言えない話だろ?けどカシラはよ、『死ぬほど怖い思いをして、かつ色を付けて弁償してもらえればそれでいい』だってさ。優しい方だよ、ホント」
そういうと、男は凛の肩に手を置き、そして眼前にテープの一片をちらつかせた。
「ちょっと前も、ウチのやってる金融の金を返せなかった女三人にモデルの仕事を紹介して、きっちり返済させたって一件があったんだよ。身体張ってもらって、十何時間働かせたっけなぁ。だからあんたも、ある種修行と思って、罪を償うんだな」
凛の両目に"それ"が近づいた。
両手は完全にテープで固められている。耳には何かが詰め込まれ、周りの音もほぼ聞こえない。おまけに鼻には、自分が履いてきたものが被せられていて、呼吸さえままならない。
あとは、何を・・・。
それが分かった瞬間、凜ははっきりと恐怖した。
「見えない、聞こえない、しゃべれない、動けない・・・そんな状況で足掻く姿を見たいってイカレた野郎は結構多いみたいだぜ?しっかり稼ぎな、コソ泥さんよ」
そして凛の五感は、闇に閉ざされるのであったー
完
Yanaponte
2022-04-18 13:04:37 +0000 UTCYanaponte
2022-04-18 13:03:35 +0000 UTC矢那
2022-04-17 20:18:30 +0000 UTCバロム
2022-04-17 05:34:11 +0000 UTC