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妙齢グラドル、廃墟にて。 -ショート・ストーリー 後編-

日が沈みかけているのに、建物の中はひどく蒸し暑い。必死に暴れたせいで上手く呼吸ができず、汗が滝のように流れてくる。 時折鎖を思い切り鳴らすのが、今出来る精一杯の抵抗であった。 そんな彼女の苦闘を、一台のカメラが見つめている。―これこそが、撮影隊の置き土産だ。今この空間には、由紀子しか居ない。 「今から24時間、廃墟で独りもがくお前を撮影する。表立った広告はもちろん打ててないが、高額なライブ配信のオプションを付けたら飛ぶように売れたよ。お前の再起のため、一度地獄の底に落ちてこい。新たな境地を開いてこい。美しい肢体を晒すだけがモデルじゃないんだ。綺麗な姿を収めるのだけが、イメージビデオじゃないんだよ。」 そう言うと、監督は由紀子の口に巻かれたテープを強引に剥がした。痛みに顔を歪めながら何かを訴えようとする由紀子に、強引にボトルに入った水を飲ませた。 生理現象には逆らえないのか、由紀子は一気にそれを飲み終えた。その後すぐに詰め物がされ、再びぐるぐるとテープを巻きつけられた。 「これで死にはすまい。ただし、ヘンに暴れれば保証はできん。間違ってもこれをスナッフフィルムにはしないでくれよ。」そう言い残し、監督は彼女に背を向けた。 猿轡の下から必死に叫ぶ由紀子を尻目に、クルーは全員去っていった。もうそれから、どれくらいの時間が経ったろうか・・・。 カラスの鳴き声が聞こえる。少しずつ外が暗くなってくる。恐怖が一層濃く、その胸に湧いてくる。 「(どうしよう・・そんな・・なんで・・・)」 絶望の中、彼女は再度思い切り暴れた。ガシャンガシャンと鎖が鳴り、建物の中を反響する。 そして再びの静寂。ぐったりとした由紀子は、首が締まる感覚を覚え、無理矢理身体を起こした。 何も考えられず、由紀子は絶望の底に沈んだ。 夕日はいよいよ山の向こうに消えようとしている。一羽のカラスがギャアと鳴き、飛び去った。 ―撮影はまだまだ、終わらない。 ―完

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