目覚めてすぐ、私は拘束されていることに気付いた。 自分の身体を見ると、黒いテープが何重にも巻かれているのが分かる。 腕は後ろに回され固定されているらしく、どんなに力を入れても動かせない。 また、手に違和感がある。指先の自由が全く利かない。 周りの様子を確認しようにも、膝から先を背中側に折り曲げられ固定されており、 這って動くことすらできない。 自分の置かれている状況が異常すぎるだけに、逆に冷静な分析ができたものの・・。 いや、とにかくここから逃げないと。わけもわからぬまま、私は抵抗を始めた。 『あら、丁度いいタイミングで目が覚めたのね。』 それとほぼ同時ぐらいに、例の先輩の声がした。 そちらに顔を向けると、黒いテープの束を持った彼女が、ゆっくりと私に近付いてきている。 床に転がる私の眼前にしゃがむと、テープを伸ばし、千切り、それを私の口に貼り付けた。 それを何度も何度も繰り返す。声を出すのも、息を吸うのも封じられた。 必死で鼻から息を吸いながら、私は先輩の顔を見た。懇願と、広義の意思を伝えるために。 ―だが、私の目に映ったのは・・恍惚とした先輩の笑顔であった。 『あなたの弱点は肺活量。死ぬ気で訓練すれば、鍛えないとダメという心構えができるでしょ?』 私の目の前で、テープが引き延ばされていく。 『だから・・一度死にそうな目に遭ってみましょう!』 乱暴に頭を捕まれた。そして、黒いテープが私の頭に巻かれていく。―ちょうど鼻を隠すように。 私の呼吸を封じるように。 『グゥ・・!!』全く息が吸えない。全く吐けない。このままでは・・・!私は我を忘れて暴れた。 『とりあえず・・今からは1分頑張ってね。ここで見ててあげるから。私が・・コーチしてあげるから!』 片や苦難、片や至福。相反する思いが渦巻くトレーニングが・・人知れず始まった瞬間であった。 ―終わり