―数日前、彼女に起きていた出来事を知る人間は、 雄弁に成果を語るその姿に感服していた。 ―戌亥冥が失踪した。 突如として駆け巡った、不穏な報せ。 同僚が必死に連絡を取ろうとするも、彼女からの反応は何も無かった。 「何か良からぬことが起きている・・・。」 周囲が不穏な空気に包まれる中、彼女を良く知る人間が、あることを思い出す。 冥は、類まれなる天文学者であるだけでなく、趣味で機械いじりも行う。 だがそのレベルは趣味の域を超えており、 つい最近、衣服に収められる大きさのGPSシステムを自作したという。 『星を見るためには山に登ったりするから、もし私と連絡が取れなくなったら、この電波を探してみてよ』 そういって彼女は、友人に周波数の書かれたメモを託していたのだ。 果たして、それらがすんでのところで彼女を救った。 その数値が示す場所。そこに冥は居た。飛び立とうとする気球の中、全身を芋虫のように拘束された状態で。 駆け付けた同僚たちは、心得のある者はバーナーを止めに掛かり、腕力のあるものは冥を気球から外しにかかった。 そして、冥は九死に一生を得たのであった。 翌日、回復した冥の証言と、GPSのログから、ある男が割り出された。 警察の聴取に対し、容疑を認めたその男はそのまま逮捕となり、 新星発見の名誉は再び冥に帰することが決まった。 今日が発表の場だ。壇上の冥は、緊張の中に歓喜の表情も浮かべている。 それはまさに、数多の障害を乗り越え、長年の夢が結実した人間だけが表せるものであった。 ―完