XaiJu
Yanaponte
Yanaponte

fanbox


生物と無生物の融合 ①

「俺の卒業制作、手伝ってくれない?」 そう言われ、思わず彼女は赤面した。 美術学校に入ったあの日から、片思いし続けていた先輩。 まさにその人から、直々にお願いごとをされるとは。 照れと喜びが混ざった笑顔を浮かべ、彼女は「はい!」と了承した。 ―不思議なことに、指定された場所は、人里離れた山の中であった。 地図を頼りに向かうと、そこにあったのは古びた一軒家。 恐る恐るチャイムを鳴らすと、意中の先輩その人が出迎えてくれた。 聞けば、この家は先輩が祖父から相続したというアトリエだという。 沈思黙考しながら芸術に打ち込むには、なるほど最適な場所である。 そこで、卒業制作の内容を聞かされる。 「俺が表現したいものは、『生物と無生物の融合』なんだ。良く分からないだろう?」 そういって彼は無邪気な笑顔を浮かべる。 「古来より、女性というものは生命の象徴だったらしい。俺のテーマをよりイメージ通りに表現するため、君の力を借りたかったんだよ。」 何やら道具を準備しながら、先輩は語り続けた。 言っていることの半分も理解できなかったが、とりあえず必要とされたことが嬉しかった。 そして、作品作りが始まった。 言われるがまま、私は椅子の上に立ち、壁によりかかる。少し手を広げて、足は閉じて―。 その指示に忠実に従った。 彼が手に持っていたのは、ダクトテープと呼ばれる物。 それを千切っては貼り、千切っては貼り。私の身体は見る見るうちに壁に固定されていった。 次第に彼は何も言わなくなった。 でも、真剣な眼差しと、頬を伝う汗の輝きを見ていると、何も話しかけてはいけない気がして、私も押し黙った。 数十分後・・・。 顔と足だけを残し、私は壁に張り付けられた。椅子を引かれても、ビクともしない。 文字通り、『生物と無生物の融合』。 彼のイメージに近づけたかな・・? 自分の置かれている状況。憧れの人と二人きりである状況。彼の一助になれたという事実。 色々なことを改めて思い起こすと、不思議と顔が紅潮した。 そんな私を見上げながら、先輩も笑う。 そして彼は、私にある言葉を呟いた。 「それじゃ、最後の仕上げに入ろうか。」

生物と無生物の融合 ①

More Creators