男は笑みを浮かべながら、空を見上げる。 晴れ渡る空。雲一つない快晴。 そんな爽快な景色に不似合いな銀色の筒が、その眼前に聳え立っている。 ―そして、その側面には、藍色のスーツに身を包んだ女性が一人。 その華奢な体躯とは対照的な重厚な金属で、否応なしに固定されている。 自分の置かれている状況の異常さに気付いた瞬間から、そこから脱しようと懸命に足掻いている。 しかし、響くのは鈍い金属音のみ。状況は全く変わらない。 『ぐ・・ぐっ!』 時折、声にならない呻きが漏れる。 男の口角が更に上がる。 「我らに盾突いたらこうなるという見せしめは、どこまでも凄惨でなければな」 銀の筒の正体は、簡易ながらも爆薬を搭載したミサイル。 彼は"贈り物"を添えて、彼女を雇い主に送り返す腹積もりなのだ。 男は右手を挙げて合図を送る。最後の準備を始めろという意思を示すために。 そして、導火線に火が点けられる。感情のない無機質な女性の声が、周囲に鳴り響く。 「30(サーティ)、29(トゥエンティナイン)、28(トゥエンティエイト)・・・」 己の未来を察したのか、彼女の苦闘が一層激しくなる。 玉のような汗を流しながら、結果の見えた戦いを続ける。 ―残された時間は、少ない。