8月21日
「おっ、見えてきた」
育人が、海をかき分けながら歩いている。ハワイを溶岩と精液で一夜にして壊滅させた育人は、夜が明けたころに次の地に向かい始めた。ハワイから西は水深がほぼ4000mを越える深さだが、今の育人にとっては腰ほどの深さしかない。ちょっとした島ほどもある身体が海をかき分けるたび、そのうねりが100m級の波となる。空は晴れているのに育人の周囲はまるで大嵐のように波が荒れ、数十キロ離れていても船が転覆するほどだった。
また海底は育人が歩く度踏みしめられ地形が変わり、泥や生き物の死骸が巻きあがり、それが4000mの長さの脚でかき回される。育人の歩いた後はもはや海の環境が変わっていた。そうして、広大な海すら育人の障害とならなくなって数時間後、育人の目の前に陸地が見えてくる。
「あれがアメリカか……」
といっても、もはや航空写真のような高さからでは建物も車もろくに見えない。育人が近づいていると政府から警報があり、沿岸の街を中心に避難が進んでいたが、何十、何百万人の避難が一日二日でできるわけがない。立っている人がかすかに感じる程度だった揺れはあっという間に立っていられないレベルになり、車が転がってビルが倒壊し、来訪者をもてなす真っ赤な橋は揺れに耐えきれず幾多の車とともに海に沈む。それでもまだ公園や空港など、広い平地を中心に人々は生き残っていたが、ビルさえ飛び跳ねるような大きな揺れとともに大地が割れ、続けてすべてを飲み込むような大津波が沿岸部すべてを襲うと、流石に生きていられるものはほぼいなくなった。世界一高い山と肩を並べるサイズの育人の質量はもはや下手な島を凌ぎ、その一歩一歩が巨大隕石の直撃と同等の被害を生み出した。
「地面も柔らけーな……」
当然柔らかいはずもないのだが、育人の質量を大地が支えられるわけもなく、一歩踏み出すごとに100m以上地面が沈み、圧縮され、泥の津波となって衝撃波と一緒に周囲を襲う。建物も緑も関係なく茶色に変わり、たった数歩で街がダース単位で消えていく。下を見ながら歩いていた育人だが、流石に視界が高すぎて何もわからない。もっと近くで見ようと、おもむろに膝をついた。膝頭の直撃でまたもや大きなクレーターができる。
「っと」
あまりにも柔い地面にバランスを崩しそうになる、が、育人はそのまま身体を傾けて両手を地面につく。直径一キロ近い右手が大きなショッピングモールを押しつぶし、左手は街区を二つ三つまとめて瓦礫にする。当然その周囲も衝撃波でズタズタだ。それでもなんとか、両膝両手の着地から奇跡的に逃れた人々。すべてをひっくり返すような揺れがようやく収まり、周囲を見渡せばなんだか薄暗い。土煙じゃない、と上を見上げて――そこかしこで小さな絶叫が響き渡る。
本当ならそこにあるはずの空。揺れの中何とか形を保つビルよりはるかに上――2000m以上の高さにある何かが、太陽の光を遮っている。街そのものを覆ってしまうほど巨大な天蓋。そんな巨大な建築物などあるわけがないが、人々はその天蓋が何かを知っている。その尋常ではなく発達した腹筋や胸板、それがゆっくりと膨らむように上下する。中継された映像でも、遠くからやってくる姿も見た。四つん這いになった育人が、街の上空に蓋をしていた。
「ん~……」
といっても、育人が四つん這いになったのはほかの目的があった。身長8000m越えとあまりにでかくなりすぎて立ったままではでかいビルならまだしも、車や人間は小さすぎて遠すぎて見えなくなってしまったのだ。ただ見えなくなっただけでそこにはあるはずなので、まず育人は四つん這いになって地面を見下ろす。それでもまだ2000m以上上空。育人はゆっくりと腕を曲げ、顔を地面へ地面へと近づけていく。だが今の育人にとって、車はトラックでようやく1mm、人間など0.3mmサイズとダニよりも小さい。どれだけ顔を近づけようとも目だけで70m以上ある育人の肉眼ではもう判別はできない。ただそれらが集まっていれば話は別で、崩壊した道路の隙間を縫うように小さな粒の集まりがうごうごとうごめいているのが人間の群衆だとはなんとなくわかった。
「ふっ」
ちょっと前まで自分もあの大きさだったことがなんだかおかしくて、育人は思わず笑ってしまう。その育人も意図しなかったようなちょっとした息が、竜巻のような暴風となって逃げ惑う群衆や車をまとめて宙へと巻き上げる。何なら建物まで吹っ飛んでいく始末だ。
(ちょっとした息で吹き飛んじまうのか)
その矮小さに育人の興奮が股間へと集まっていく。萎えた状態でも500m以上あった逸物は四つん這いの状態でもビルより上空でぶらぶらと揺れていたが、育人がさらに屈んだことで、むくむくと伸びる先端が、何とか揺れに耐えていた300m級のビルの側面にぶち当たる。ビルの上部はあっけなく崩壊したが、その感触に育人はビクッと身体を震わせる。
「……」
だがまだ若さ真っ盛りの育人のチンコはあっという間に立ち上がり臍にびたりとくっついてしまう。ぼたっと垂れた粘り気のある先走りが、数千トン級の水塊となって建物ごと人々を押し潰した。育人はゆっくりと体を揺するが、立ち上がりきった肉棒に触れられる高さの建物はない。
「………まあ、いいよな」
育人は地面についていた膝を片方ずつ浮かして脚を伸ばす。動線上の高層ビルが足指に当たって吹き飛ぶように崩れていく。そうして腕立て伏せのような体勢になった育人は、ゆっくりと身体を降ろしていく。身体の下にいた人間たちはすでに叫び疲れていたがそれでもことさらに泣き叫ぶ。山が、いや、山よりもでかい質量が空から降りてくるのだ。上空から押さえつけられた空気が豪風のように吹き荒れ、街を覆う影がどんどん濃くなってくる。腹筋が高層ビルを上から押し潰し、倒壊するより早くビルを上から崩していく。
そして―――
大陸すべてを揺るがすような轟音と衝撃波が、周囲を襲った。腕だけ立てて腰から下は地面につけた状態になっただけだが、その下および周囲にあったものはそれだけで押しつぶされるなり吹き飛ばされるなりして消えた。そして人間たちにとって最悪なことに、これはまだ始まりでしかない。育人は少し腰を浮かして右手を股間へと伸ばす。区画一つを押しつぶせる巨大な手でも800m級の肉棒は握りきれず、半分以上がはみ出したままだ。育人の前腕がぐっと膨らみ、ごごごっ、と育人の肉棒の砲身を力任せに下に向けていく。地下ごと押し潰した育人の真下にもはや人間など存在するわけがないが、もしいたら、ぼたぼたと瓦礫のついた先走りを垂らす200m近い直径の亀頭を見て、絶叫したことだろう。
育人はその状態のままゆっくりと腰を下ろす。鋼鉄より硬い亀頭は育人にしょって圧縮された地面をものともせず、まるで砂地であるかのようにずぶずぶと地面にめり込んでいく。首をそらしてその快感に酔う育人、ハワイの火口とはまた違う、押し広げていくような刺激。800m近い竿をすべてうずめて、陰毛が大地をこする。育人は一度息を大きく吐いて腰を浮かす。土や瓦礫を吐き出しながらずるずると抜け出る肉棒だったが、それがぴたりと借りのあたりで止まる。そして、
「……らっ!!」
育人は雷のような声とともに、腰を思いっきり地面に打ち付けた。次の瞬間、衝撃波とともに育人の腰を中心に巨大なクレーターが生まれる。一度では済まない。二、三、四、十、二十、と、育人が地面に腰を打ち付ける。巨大な質量が何度も何度もぶつかって地盤や地殻に深刻なダメージを与えていく。数百キロ離れたところにも揺れが伝わり、地割れや噴火を引き起こした。もちろん、育人の知るところではない。何度も打ち付けゆるくなった穴にいらだち、ぐいと身体を前にそらして押し付けるも、先に大地に限界が来てごごごぼんっ! という音ともに大地を掘り起こして現れた巨砲が先走りをまき散らしながら育人の腹筋にぶち当たった。
「ちっ!!!!」
舌打ちした育人は立ち上がると、自らの手でその巨砲を扱きだす。先走りが地上4000mの高さでぐじゅぐじゅと音を立て大地に落ちて新しく穴を作った。
「――っ!!! くぞっ!!!!」
育人の尻がぎゅっと締まった。育人の直径200mの砲身から核爆発のような轟音とともに精が吐き出される。その最初の射精は飛行機の飛ぶ高度を超えて上昇し、数分後に数億トンの白濁が数百キロ先の街を直撃して壊滅させる。これが二発、三発と続く。大量の白濁が街も森も大地にあるものすべてを埋め尽くさんばかりにまき散らされる。そうやってひとしきり精を吐き出して―――育人は上を向いて小さく息を吐いた。
「……たんねえ、な」
育人のチンコはぼと、ぼと、と残った精を落としながらも、いまだにギンギンにそそり立っている。周囲一帯は壊滅状態だが、幸い、育人にとってもこの大陸はまだ広大だ。すくなくとも、今日は。
「次、行くか」
育人が、次の街を求めて歩き出す。この日、西海岸を中心に大陸の三分の一が、育人のオナに巻き込まれて壊滅した。
ichiya / ichiarrow
2025-07-29 14:18:02 +0000 UTC曹達(ソーダ)
2025-07-28 13:46:42 +0000 UTC