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(SSあり)EX009_先輩の逃走を片手で阻止する巨大部下

EX009_先輩の逃走を片手で阻止する巨大部下





 気分が晴れない。



(あ~~~~~やだな~~~~~~)




 駅を出て、会社までの道を重い足を動かしながら歩く。いつもは通勤する人々で混雑する大通りは、比較的人通りがまばらだ。


「そりゃそうか……」


 一般的な会社の始業時間を一時間も過ぎていれば、出勤する人間は少ないだろう。ここ最近激務で疲れていたとはいえ、まさかの寝坊。会社からの鬼電で目が覚めるなんて。布団の上での会話が思い出される。


『塩塚ぁ! てめぇ寝坊とかなめてんのか!』

「すっ、すいません! すぐ行きます」

『ったりまえだろーが! 死ぬ気で走って来い!!』


 電話の向こうから怒鳴り散らかしてくる小須賀の声に目をつぶる。直属の指導役である小須賀はまあ嫌な奴で、ろくに教えもない仕事を押し付けてきて、それでミスると怒鳴って叱責してくるようなクズ野郎だ。それでいて本人は屋上でさぼってたりするもんだから毎日のようにイライラが溜まっていく。


(そもそも元をたどれば仕事を押し付けてきたお前が原因だろうが……)


 慣れない仕事でミスして修正して残業して……と、昨日も結局終電だった。どうも小須賀には目の敵にされている気がする。多分、俺が羨ましいのだ。身長160ちょいしかないから、今190センチもある俺が羨ましいんだろう。その上その辺の男じゃ比較にならないほどの分厚い筋肉。脳みそまで筋肉かよ、と言われ続けて、何度殺してやろうと思ったことか。ムカムカしてきたところでまたポケットのスマホが鳴る。小須賀だ。歩きながらスマホを耳に当てる。


『お前まだ来ねえの?』

「すいません、もう駅出て向かってるとこで……」

『その筋肉飾りか? さっさと走って来いよ愚図』

(てめえのせいだろうがよ……)


 電話の向こうで室外機のうなる音がする。また屋上でさぼっているのか。スマホを握りつぶしそうになる。お前、そんなん、マジで……


 キーーーーーーーーーーーー!!!!


 けたたましいブレーキ音が急に割り込んできた。右を向くと、俺に向かって猛スピードで突進してくるトラックの姿。


(やべ)


 頭に血が上って赤信号のまま道路を渡っていたことに気が付かなかった。もう避けられない。何トンもある鉄の塊に猛スピードでぶつかられて、流石に身体が吹っ飛ばされる。スマホも鞄も勢いで手放し、ぐるぐる回る視界の中、道端の自動販売機に思いっきり激突し、そのまま頭からアスファルトの地面に落ちた。


(…………あ~……)


 マジでついてない。地面に手をついて身体を起こし、膝をついて立ち上がる。うわ、スーツがボロボロだ。まて、さっきのスマホ……と周りを見渡したところで、気づく。事故に集まってきた人々の視線。まるで、おかしなモノでも見ているかのようで。ああ、そうだ。トラックにぶつかられたら、人間は普通死ぬんだ。バレる、バレた。そんなことを考えていた頭の中で、ブチっと何かが切れる音がした。


(もー……いいか……)


 ドクン、ドクンと心臓がひと際激しく鼓動をする。血液がドクドクと廻り、肌がピリピリと震え、身体中が熱くなっていく。みぢっ、とぼろ切れのようなスーツの肩部分がきつくなった気がした。続いてスラックスの太もも部分や革靴からもぎちぎちと音がする。ああ服はでかくなんねえんだ、と今更気づく。


(スーツも革靴も結構高かったのに……)


 ビリッ、とワイシャツの肩部分が裂ける。太腿の縫い目がバツンバツンと弾けた。革靴の底は抜け、あっという間に体の膨張に耐えきれずスーツが中から引き裂かれていく。ふと横を見ると、いつも同じくらいの高さだった自販機がもう腰くらいの高さになっていた。


「ははっ、ちいせ」


 周りを見渡している間にも俺の視界はどんどん高くなっていって、俺を見上げる人間たちが叫び声をあげながら逃げていくのがよく見える。重くなる俺に耐えられないのか、人を覆えるくらいデカくなった足が舗装をクッキーのように割っていく。人がゴミみたいなサイズになったとき、ようやく身体の膨張が止まった。いや、元に戻った、というべきか。肩にかかっていたスーツの残骸を払い落す。やわらかい風が全身の肌を撫でる。下からは絶え間ない喧騒。街中で全裸になってしまったが、もうどうでもいい。


「さて……と」


 ちら、と道路を見下ろす。俺にぶつかったトラックは、今や俺の足より小さかった。こんなおもちゃに吹っ飛ばされたのかよ、俺。右足を上げると全体重がかかった左足がアスファルトをバギバギと踏みぬく。トラックの運転手が運転席から出ようとしていたので、右足の親指で小突いてトラックを横転させる。運転手は中へと転がり落ちる。


「何逃げようとしてんだ?」


 そのままトラックの上に足をかかげ、ゆっくりと踏み下ろす。特に体重をかけなくても足の重みだけでトラックは紙屑のように潰れていく。うわ、柔すぎだろ。最後に舗装まで達したら、仕上げとばかりにぐりぐりと踏みにじる。足を上げると、まあペタンコになった鉄くずが残っているだけだった。少しだけ胸がすく。


「気持ちいーな……」


 今まで我慢してたのがバカみたいだ。なんでこんな足指にも満たない奴らに合わせて生きてたんだろ。今の俺はこいつらの建てたビルよりでかいのに。


「そうだ……」


 顔を上げて、まさに向かおうとしていた会社の方を見る。ビルより高い視点だと遠くの会社のビルすら丸見えだ。一番責任取ってもらわなきゃいけない奴がいる。ちらっと足元に目を向けた。人間も車も、まだ周りをうじゃうじゃしている。邪魔くせえな。


「ほら、歩くぞ、どけ」


 左足を上げて車がひしめき合っている大通りに一歩下ろす。べきゃべきゃとあっけなく足裏でゴミが潰れていく。そのまま車や人間を踏み潰したり蹴とばしたりしながら会社のビルに向かって歩いていく。人間で徒歩10分ぐらいの距離だ。今の俺なら一瞬でついた。


「お、まだいるじゃん」


 会社のビルは俺のみぞおちにも届かないほどの高さしかなかった。その屋上に、さっきまで電話していた小須賀の野郎がいた。はは、ちっせ。ぽかんと俺を見上げてやがる。


「こーすかせんぱい。遅刻してすんませーん」


 見下ろして笑いながら謝罪の言葉だけ吐いてみる。その言葉でスイッチが入ったかのように、小須賀は屋上の出入り口に向かって走り出した。うわ、おっせ。てか今更かよ。


「どこいくんすか?」





 右手を上げて、逃げる小須賀の前に壁のように立てる。そんなに強く打ち付けたわけじゃないのに、屋上の床がビキビキとひび割れていく。うわ、よっわ。小須賀も衝撃で尻もちをついて座り込んでしまった。面白くなって顔を近づけると、恐怖で真っ青になった小須賀の表情がよく見えた。


「ひで~顔っすね~。どうしたんすか? 電話みたいに怒鳴ればいーじゃないすか?」


 そんなことしたら一瞬で叩き潰すけどな。腰が抜けたままの小須賀を摘み上げて目の高さまで持ち上げる。痛いのか悲鳴を上げているが、知ったことか。


「今までさんざん仕事押し付けたり怒鳴ったりしてくれたな?」


 ほんのちょっとつまむ力を強めてやる。骨がぽきぽき折れる感触とともに小須賀の絶叫があがる。なんで俺こんなのにペコペコしてたんだろうな。


「お前チビだからさ~デカい俺が妬ましかったんだろ? どーだよ、実はこんなにでかかったんだぜ?」


 俺の身体が拝めるように、少し腕を手を遠ざけてやる。脂肪も少なく筋肉の形がクッキリ浮き出るほどに発達した肉体は人間サイズの頃でも相当目立った。普段着のTシャツは腕の部分とかパンパンになるし、スーツだってオーダーで……あー……そうだオーダーだったんだよ。破いちまってもうねえけど。……また腹立ってきたな。どうすっか。コイツ。見るとなんか涙や鼻水で汚えし、小さすぎて何言ってるかも聞こえねえ。


「もういーや。死んどけお前」


 キュッと親指と人差し指に力をこめると、あっけなく指がめり込んでぐちゅりと小須賀の胴体は潰れてしまった。最後に助けてとか聞こえたような気もするが、まあ気のせいだろう。小須賀の残骸を捨て、指についた血と肉片を屋上に擦り付ける。そのまま屋上のふちに手をかけてゆっくりとしゃがみ込んだ。会社のビルのフロア、ひび割れたガラスの向こうを覗くと、まあ見知った顔がこっちを見て叫んでいる。あの小須賀を放っておいた会社だ。要らねえだろ、こんなもん。


「今からこの会社潰すから。せいぜい頑張って逃げろな?」


 もう一度立ち上がって、ゆっくりと拳を振り上げる。ちょっと手を乗せたぐらいで屋上がひび割れるほど柔い建物だ。ぶっ壊すのなんて簡単すぎる。屋上に向かって勢いよく拳を振り下ろす。まるでコーティングされたチョコのようにバキャっと屋上が砕けはじけ飛び、俺の拳はそのままビル内部をドガドガ破壊していく。たったそれだけでビルの上部がほぼ全壊。下の方も衝撃で押し潰されたりして、しばらくするとゆっくりとビルが傾いてくる。


「じゃーな」


 しかし俺はそれを許さず、残ったビル上部に手をかけて一気にしゃがみ込んだ。ズガガガガ、と上からのとんでもない圧力で押し潰されていく元弊社ビル。土煙が収まったとき、そこにあったのはただの瓦礫の山。中の人間は多分みんな死んだだろうな。


「あーちょっとすっきりしたな。……ん?」


 腹より下に違和感を感じて視線を下げる。見るとさっきまでぶらぶらと揺れていた俺のチンコが、ムクムクと膨張を始めているところだった。人間サイズでも相当デカかった俺のチンコ、今じゃ人間どころか車よりでかい。


「そーいや死ぬほど忙しくて全然抜いてなかったからな~……」


 立ち上がって少しいじってやると、あっという間にビキビキと硬くなる俺の自慢の息子。どうすっかな、と周りを見れば、まだ無事な建物がたくさん。車はちょっと小さいが、トラックやバスならちょうどいいかもしれない。


「どうせこの街には帰ってこれないしな」


 せいぜい最後まで楽しむか、と目についたビルに向かってゆっくり一歩を踏み出した。

 

 


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Comments

コメントありがとうございます!スパッと辞めちゃえばいいのになかなかやめられないのは巨人でもあるあるだったり……(なのでこういう時の人間側の被害がすごい) 巨人の仲間内でもこういうのは個性出てくるでしょうね~!身体で威圧して幅を利かせたりはたまた(ま~たチビがぴーちく怒鳴ってるよ)って人間を下に見て柳に風だったり……塩塚くんも会社でただ一人かばってくれた一個上の先輩がいたけど逆に矛先向けられて辞めちゃって…巨人に戻ったあとそれ思い出して、その先輩だけ助けてあげるって裏話考えてたんですけど入りませんでしたね! 巨大化で服破けるのもいいですよね!今回手はゴツさよりすらっとした感じのでかさになるよう描いてたので、多分本人もイケメンだと思います!

ichiya

あー人間のフリ辞めてもういっかーって暴れちゃう巨人さんってやはり良いですね。。。!! 激務で抜く暇もないほどでも人間のフリしなきゃいけないってことは、そこそこは巨人に戻るリスクはあるんでしょうけど、一旦諦めがついたら「街」ごと処分してしまえるだなんて、転職的な感じでやーめた出来ることがまたなんとも良いですねぇ… 巨人の仲間内で 「あいつまたキレて街一つ潰したんだってw」 「相変わらずこらえ性がねぇなぁ、チビ相手でも仕事なんだからちゃんとしなきゃ」 とか、やっぱり人間化してもでかいから 「チビとかちょっと脅せば言う事きくだろ?」 とか言ってたりして…とか妄想しちゃいました! 里帰りした時はストレス発散で合法的に暴れられるところ言ったりとかしたりしてとか… 何気にスーツから巨大化して、マッチョな身体を晒して全裸になるのも興奮しました!!掌の指先が長くて、バレーとかやってたイケメン巨人さんなんだろうか…とか妄想しちゃいます…(*´Д`) イラストと文章、ありがとうございました!!

あかいろ

コメントありがとうございます! 実は縮んで人間世界で生活していた巨人さんでした! これがまあ仕事うまく行ってたらここまで大暴れにはならなかったんですが、あの上司がめちゃくちゃいびるもので……人には優しくしないとだめですね!(巨人の可能性があるので)

ichiya

うおお、人間サイズに縮こまってるけど本来は巨人…って良いですね! がんばって正体バレないように振舞っていたようですけど、 人間のサイズや常識に合わせていくのは、 ごっこ遊びのような窮屈さもあったのでしょうね…… それが事故の拍子にぷつっと切れてしまって、 そこからはもう馬鹿らしくてやってられなかったんでしょうね~。 上司も指先であっけなく潰れてしまいましたね…(*´Д`) 勤め先のビルも丸ごと潰して、忙しくて忘れていた性欲も思い出して、 もうこの街丸ごと壊滅させられるのは決定事項でしょうね…^q^

曹達(ソーダ)


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