前編はこちら!

小説は視点によって印象や書き方が変わったりする……ということで前回までの巨人視点、小人(人間)視点に続き第三者視点(巨人寄り)版です。 流石にこれの後編で終わりです。前半喋らないのでひたすら情景描写に文字数をつぎ込みました…… 以前のお話(タイトル微妙に変えました) 巨人視点 人間視点 人間の街に現われ...
人間にとってはそれなりに広いビルの屋上も、巨人からすればちゃぶ台よりも狭い空間だ。フェンスがはぎとられ、度重なる揺れでひび割れたコンクリの屋上にあるのは、既に瓦礫のようにボロボロな歩道橋の通路とアリのようなサイズの人間二人、それから巨人の手のひらにすっぽりと収まるサイズの、ビル内部へとつながる階段室だ。そのすべてが巨人の手の届く、というより、それを含めたビルがまるごと巨人の胡坐の中におさまってしまっている。ただビルの高さ自体は胡坐をかいた巨人の胸元ぐらいまではあるので、屋上にいる人間の兄弟をじっくりと眺めることができた。
巨人の、筋肉を満載した腕がぐぐっと持ち上がる。そのひと振りで目の前のビルを一瞬で瓦礫にできるほど巨大な腕が、屋上に濃い影を作る。人間たちはその重圧に怯え互いに抱き合い震えていたが、巨人の手が向かった先は、屋上に打ち捨てられていた歩道橋の通路だ。ついさっきまで手のひらに乗せていたその何トンもの塊を、巨人は電柱よりも太い指でこともなげに掴み上げる。そしてそれをまるで紙屑かのように手の中で握りつぶした。巨人の分厚い手の中から響く鉄が折れ曲がりコンクリが砕ける音に、取り残された兄弟は身体を震わせる。次に巨人が手を開いたときには、歩道橋はもうその形を親指と人差し指でつまめるような小さな、と言っても人間からすれば車よりも巨大な球へと変えていた。巨人はその球を軽く指で弾き飛ばす。ドゴォ、という重苦しい音が響き、何トンもの塊が放物線を描いてまだ無事だった区画へと飛んでいく。不運にもその飛ぶ先にあった、まだ巨人の被害を受けていなかったビルは、戦車の砲弾よりはるかに強力な、巨人としては適当にはなった球の直撃を受けて外壁も柱もぶち抜かれ、あえなく倒壊してく。巨人としてはそれは特にどうでもよく、すぐに屋上の上の二人へ視線を戻す。
先ほどまで自分たちがいた歩道橋があっけなく握りつぶされゴミのように弾き飛ばされた様子を見て、再度恐怖にさいなまれた屋上の二人は何とか立ち上がり、よろよろと階段室の方へと歩いていた。もちろん、そのまま階段室にたどり着きビル内部に入れたとしても、そのビルそのものが巨人の胡坐の中にあるのである。どこへとも逃げられはしないのだが、それでも一筋の希望にかけて二人はビル内部へ続く扉へと向かう。が、その希望も容易く打ち砕かれる。巨人からすれば虫のように遅い人間の歩み。その遥か上を、人間二人どころか百人でもまとめて押し潰せそうな巨大な手が、周りの空気をかき回しながら二人の上に影を作り、通り過ぎていく。そうして人間が向かう階段室の真上で止まった巨人の手は、コンクリでできた屋根へと降りていく。まずその手の重みを受けた屋根がひび割れ、耐え切れなくなった壁が砕け、たった数秒で階段室は巨人の手の下で爆散した。砕けた瓦礫が土煙をまといながら周囲へと飛び散り、ビルの屋上は大きく揺れて、今まさに潰れた階段室に向かっていた人間たちは尻もちをついてうずくまった。巨人が潰した階段室から手を引くと、手のひらにくっついた瓦礫が大きな音を立てながら落下していく。その手が戻っていく先を二人の人間は絶望のまなざしで追っていた。巨人はそれを目を細めて見つめている。
「ん?」
巨人が声を上げたのは、巨人の方を見て絶望していた兄の方が、今までと違う子黄土を取ったからだ。弟の方をおいて前に出て座り込み、這いつくばり、いわゆる土下座の体勢をとったのだ。そこまでは、巨人にも分かった。巨人からすればアリのようなサイズの人間だが、胸元ほどの高さの屋上に立っていることもあってそこまでは判別できた。だが声が聞き取れない。何かをわめいているのは聞こえているものの、巨人にとってはまさに蚊の鳴くような声だ。その言葉を聞き取るため、巨人はぐっと背中を曲げ、顔をビルの屋上へと近づけた。濃くなる影に顔を上げた人間が悲鳴を上げる。20メートル近い巨人の顔が本当に目と鼻の先ぐらいの近さにあるのだ。鼻息どころか、巨人の皮脂の臭いや発する熱まで直に感じ取れる距離。より目になって人間を見つめる眼はその人間よりもでかい。巨人がちょっと顔を下げれば悲鳴を上げている男はそのまま鼻で押し潰されるだろう。それほどの近さに巨人の顔があることに人間は慄き、逆に巨人はこのぐらいの近さでなければ人間の声は聞き取れなかった。
「ひっ、あ」
「何だ? もっかい言え」
巨人のいつも通りの声量は、人間にとっては轟音だった。鼓膜どころか音に吹き飛ばされる程の声量。それでも耳をふさぎながら何とか耐えた人間は、涙目のまま、巨人の顔を見上げ、その眼に向かって精一杯の大声を出した。
「お……お、俺はどうなってもいいので……!! 弟は……弟だけは助けてください……!!」
その大声は、空を覆う顔の両側にある、何メートルも離れた巨人の耳になんとか届いた。巨人はその内容を聞いて目を丸くする。そうして思わず吹き出しそうになってしまうのをなんとかこらえた。もしここで巨人が吹き出してしまったら、それだけで土下座している男もその後ろにいる弟も、空の彼方へ吹き飛んでしまう。だがかすかに聞こえた男の願いは、巨人にとってはそれだけおかしかったのだ。
なんといっても、その願いを聞くメリットが巨人には全くない。そして願いを聞かなかったからと言って人間が何をできるわけでもないのだ。男がどれだけ抵抗しようと、巨人は指一本でその男と弟をまとめてすり潰してしまえる。男を差し置いて弟をつまみ上げぺろりと喰ってしまうことも、二人が乗ったままビルごと抱き潰すのも、気が向くだけで簡単にできる。男は弟と共に既に巨人の玩具になることが決まっているのに、自分を犠牲に弟を助けたいと懇願している。それが巨人にとってはとても面白く、そしてかわいらしかった。
巨人は少し考え込み、ふと自分が胡坐をかいているビルの近くに電話ボックスがあるのを見つけた。散々ビルの周囲を踏み荒らし、ケツを下ろした瞬間近くの古いビルが倒壊するほどの衝撃があったのにもかかわらず、その電話ボックスは奇跡的に被害を免れていた。底から数メートルしか離れていない電柱や標識はものの無残に吹き飛んでいるにもかかわらずだ。巨人はその電話ボックスに手を伸ばすと、親指と人差し指でまるで豆腐をつまむように優しく摘まみ上げた。ただそれでも巨人の指が触れた瞬間、電話ボックスのアクリルは一瞬にしてひびが入り真っ白になる。上部のフレームをゆがめながら持ち上げられた電話ボックスは、そのまま人間の兄弟がいる屋上へと降ろされる。ズガン、と割と重苦しい、しかし今まで巨人が立ててきた轟音からすれば遥かに軽い音を立てて電話ボックスがコンクリに着地する。人間二人はその降りてきた電話ボックスと降ろした巨人を交互に見比べる。巨人はそれを見てふっと笑った。
「見てろよ」
巨人は人差し指をゆるりと立てると、その腹を電話ボックスの天井に乗せた。太さだけで一メートル以上、長さであれば五メートルはくだらない巨大な指。当然重さも指だけで200キロを超え、まだ軽く触れている程度なのに電話ボックスのフレームはメギメギと音を立ててひしゃげていく。そのまま巨人が指を下げていくと、電話ボックスはフレームを折り曲げ、アクリルが割れる音を響かせながら何の抵抗もなく潰れていく。割れたアクリルの隙間から垣間見えた緑色の電話は台と一緒に崩れて床へと落ちる。そのまま巨人の指は電話ボックスをペチャンコにして、指の腹の肉がその残骸を包み込み真横からでも見えなくなる。指がコンクリの屋上につくと、ズンっとビルそのものが揺れた。時間にして十秒も経っていない。
巨人が指をあげると、分厚い皮膚にくっついた瓦礫が落ちてカラカラと音を立てる。さきほどまで電話ボックスがあった場所は屋上のコンクリが直径2メートルに渡ってクレーター状に陥没していた。その中心にあるのがもはやそれが人が入る箱だったとは思えないほど無残につぶれている電話ボックス。天井部分のフレームが何とか姿を残していたが、巨人は指先で容易くそれを跳ね飛ばした。コンクリごとえぐるように吹き飛ばされた電話ボックスの残骸は隣のビルにぶつかり、壁に跡を残しながら落下して小さな音を立てた。
「おら、そこ立てよ」
巨人の声が先ほどまで土下座をしていた兄の方に降りかかる。巨人が指さす「そこ」とは、今さっき電話ボックスの残骸が弾き飛ばされたクレーターの中心だ。巨人の指先で押し潰され、50センチほど陥没し、コンクリはひび割れえぐられボロボロになっている。男はそれを見てごくりと唾をのんだ。
「お前も同じよーに潰してやるから。ああ、どっちでもいいぜ? 残った方を助けてやるよ」
ニヤニヤとした笑いで見下す巨人に対し、それを見上げる人間の顔は凍ったように真っ青だった。男は電話ボックスが巨人の指でいともたやすく潰れていく様子を間近で見たばかりだ。否応なしにその情景が頭の中によみがえる。当然巨人がわざわざ電話ボックスを潰したのはそれを意図してのことだ。もし人間が同じような目に合えば、電話ボックスより遥かに容易く潰され肉塊になるだろう。巨人はしばらく男の反応をうかがっていた。男は覚悟がついたのか、震える足を叱咤して立ち上がると、後ろにいた弟のもとへ近づき、抱きしめた。巨人からは豆粒が寄り添っているようにしか見えないが、最期の別れを惜しんでいるということは何となく想像がついた。別れを終えた男はゆっくりとクレーターの方へ歩いていく。途中足場の悪さにぐらついたりしながらも、何とかその中心へとたどり着いた。ぐいっと袖で顔をぬぐって巨人の顔を見上げる。
「へえ、お前でいいんだ」
意外でもなかったような声色でつぶやいた巨人は、ゆっくりと筋肉を満載した、ビルすら一薙ぎできる腕を持ち上げる。ゆっくりと手のひらが男の頭上へと近づき、伸ばされた人差し指の腹が男の真上で止まった。指紋の間に先ほど潰した細かな瓦礫がいくつか挟まっている。濃い影に覆われた男はその指を見上げながら固まっていた。
「覚悟は決まったな?」
巨人の指が、ゆっくりと下がっていく。ビルに使う鉄骨よりも太い指だ。巨人が力を入れずとも、その重量だけでも人間がどうこうできるものではない。真下にいる男は動かない。元々弟の代わりに犠牲になるつもりだったし、そもそも足が震えて動けすらしない。ただ潰されるのを涙を流しながら待っている。巨人が指を下ろすだけで地面が揺れ、空気が押し付けられて風が吹く。そしてついに、巨人の指先が男の髪の毛に触れた。とんでもない質量が頭にのしかかり、男の膝が否応なしに曲がる。踏ん張ろうとしても巨人の指は持ち上がるどころか凹みもしない。このまま潰されるのだと男が覚悟したところで、不意に巨人の指が下がるのをやめた。
男は指を押し付けられた状態のまましばらく待っていたが、突如指が横に動き、首がねじ切られる勢いで押さえつけられている頭が吹っ飛びそうになる。次の瞬間には指が逆に動き頭も同様に振り回される。男は指に髪の毛をブチブチとちぎられながら、何とかその巨人の行動に耐えていたが、突如その動きが止まって、指が頭から離れる。頭をぐわんぐわんと揺らされふらつく中、指はどんどん上へと上がっていき指の影から外れてまたにやにやと見下ろす巨人の姿が男の視界を埋めていく。そして男が何だと思う間もなく、巨人の手が再び男に迫り、その人間より遥かに太い親指と人差し指で男の胴体を摘まんだ。
「ぎゃああああああああ!!!!」
男は瞬く間にビルの屋上からさらに高くへ持ち上げられる。巨人は親指で男の腹を、人差し指で背中を前後から挟むようにして男をつまみ上げているのだが、人差し指さえ幅だけで一メートル以上あるのだ。指に挟まれた男の身体は殆ど巨人の指に埋もれてしまい、なんとか親指の爪の影から顔だけをのぞかせている状況。勿論巨人は細心の注意を払って雲をつかむように優しく人間を摘まんでいるが、それでも男にとってはアメフト選手のタックルを全身に受け続けているようなもので、体中の骨がみしみしと悲鳴を上げていた。勿論手足など動かせる余地すらなかった。そうして持ち上げられたのは、屋上より数十メートルも上。ちょうど巨人と目が合うように吊り上げられ、その巨大な目に男は痛みも忘れて喉を鳴らす。
「ひっ、うわっ……!!!」
「お前みたいな健気な奴、俺結構好きなんだわ」
男は巨人が何を言っているのかわからなかった。男からすれば、巨人は人間の街を襲い、今さっき自分を指一本で潰そうとした凶悪な存在だが、巨人からすればそんなもの全て遊びにしかすぎず、男を指で潰さなかったのも言ってしまえば気まぐれだ。巨人の施行を理解できない男を摘まみ上げたまま、巨人はゆっくりとその手を下へと持っていく。家が何軒も経ちそうなほど張り出した胸、人間など何百人も収められそうな割れた腹、自分の身体を見せつけるようにゆっくりとだ。重厚な動きに合わせて筋肉がぐむぐむとうごめく音が男の耳に入る。身体ごと手足を指先で抑えられた男は動くことすらできない。
そうしてたどり着いた先は、巨人の股間。蛍光イエローの競泳パンツ、その中央から左の腰骨にかけてずろりと伸び上がる膨らみはもはや電車ほどもある。ギチギチに引き延ばされた競パンの生地はうっすらと透けて、人間の腕より太い血管が浮き出て見える。天気のいい中動き回ったこともあり巨人はじっとりと汗をかいていて、特に陰毛が臭いをため込む股間部分はむわりと臭気を発している。当然それは男の鼻にも届いていたが動かせない手では鼻を覆うこともできず、男は口で息をして何とかそれに耐えていた。巨人はそれをにやにやと見下ろしている。が、甲高い声が聞こえて巨人は顔を上げる。
「ん?」
巨人が顔を上げた先にいたのは、二人いた人間のもう一人、今巨人の手に摘ままれている兄が必死で守ってきた弟だった。屋上の隅で震えていたはずのその弟は、なんと屋上の端まから乗り出して、巨人に向かって叫んでいる。その叫び声も巨人からすればかすかなものだったが、「兄を返せ」といったようなことを叫んでいることに察しがついて巨人はくっくと笑う。そうして競パン付近に寄せていた手を引き上げ、屋上を見れるようにくるりと男を持ち替えた。そうして弟の姿を目に入れた兄は一気に顔を青くした。
「ほ~ら見てみろよ兄の方、弟まで健気だぜ?」
「トウタ、危ない、落ちるぞ! 俺はいいから!!」
兄の方が顔を青くしたのは、その巨人の胡坐に囲われたビルの姿のせいに他ならない。大地震にも耐える基準で建てられたビルだが、巨人の起こす振動を間近で受け続けて外も中もいたるところがひび割れ、いつ崩れてもおかしくないほどボロボロだった。特にフェンスが無理やりはぎとられた屋上は、その縁部分が格段にもろくなっている。兄は必死に弟に離れるように叫んでいるが弟も強情で離れない。それを面白い見世物のように見下ろしていた巨人。体勢を変えようとしたのか、足をほんの少し動かしたときにその踵がビルに当たる。かするぐらいの弱さだったが、それでも人間のビルにとっては大きな衝撃で、ぐわんとビルが揺れて、屋上から乗り出していた弟が、ころん、といった様子で転がり落ちた。
「トウターーー!!!」
巨人の指の中の兄が喉がちぎれそうな勢いで叫んだ。巨人にとっては胸の高さだが、人間にとっては何十メートルもの高さだ。もし地面に叩きつけられでもしたら確実にその人間は死ぬ。ひたすらに暴れる兄だが、巨人の指に挟まれて顔以外何も動かせない。その間にも弟は重力に従い落ちていく。――が、そこで巨人の腕がぐぐっと動いた。兄をつまんでいるのと反対の手が、空気を引き裂きながら落ちる弟の落下先へと向かう。上に向けて広げられた手のひらは指を除いても八畳の部屋がすっぽりと入るほどのサイズ。その手のひらは勢いあまってかビルの外壁にぶつかり、コンクリや窓ガラスを容易く押し砕く。そうして上がった土煙の中に豆粒のような弟が落ちていった。
「ああっ、トウタ! トウタ!!」
バタバタと動こうと頑張っている兄を、巨人はゆっくりと広げた手のひらの方に持って行ってやる。そうして手の上に兄を優しく放った。とはいっても人間からすれば三メートル以上の高さから放り投げられたようなもので、下が巨人の柔らかい手のひらでなければ大怪我は免れなかったであろう。そうやって転がり落ちた兄は土煙と瓦礫で視界が悪い中弟の姿を探す。土煙に咳き込みながら叫んでいると、小さな高い声が聞こえて兄はそちらに振り向いた。
「にいちゃん……」
「トウタ!! ああ、トウタ!!」
土煙でぐちゃぐちゃになりながら兄は弟を力いっぱい抱きしめる。その様子を、ようやく晴れ始めた土煙の外から、自らの手のひらを見下ろすようにして巨人がニヤニヤと観察していた。
「お、死ななくてよかったな?」
巨人は空いている手を二人の居る手のひらに近づけると、二人の周りの瓦礫を指で弾き飛ばす。巨人からすれば指先にも満たない小さな欠片だが、人間からすれば自分の身体ほどもある動かすことすらできないコンクリの塊。それを巨人の指はいともたやすく砕き吹っ飛ばしていく。巨人が指をはじくたび、空気が引き裂かれて瓦礫の砕ける音と共に轟音がうなる。電信柱より太い指が車より速いスピードで、間近の瓦礫を吹き飛ばす。もし人間が当たろうものなら、吹き飛ばされることすらなく瞬時に肉塊になるだろう。二人の兄弟は指がかすりすらしないように縮こまって抱き合っている。あらかた瓦礫を手のひらから吹き飛ばすと、巨人はぐっとその手を顔へと近づけた。巨人の鼻息で残った小さな瓦礫や砂埃が吹き飛ばされていき、人間二人はその鼻息で飛んで行かないようにぐっと踏ん張っている。その砂にまみれた姿を見て、巨人は思わず笑った。
「ははっ、きったね」
巨人は手を揺らさないようにゆっくりと立ち上がる。勿論巨人にとってというだけで、手のひらの人間たちにとっては大地震だ。座った時でさえ胸元にしか及ばなかったビルは、立ち上がると巨人の腰よりも低く、今まで無事なのが不思議なほど弱弱しく見えた。巨人はそのビルの前に向き直り、見下ろし、右足をあげてそのビルの中腹に軽く蹴りを入れた。巨人の30m近い足が、窓ガラスも外壁も容易くぶち抜いて、鉄筋入りの柱も何もかも軽々と破壊していく。巨人の軽い蹴りの威力はすさまじく、先ほどまで人間二人が乗っていたビルはまるで砂でできているかのように吹っ飛びながら崩れていった。巨人はもう崩したビルには目もくれず、手のひらの兄弟を見下ろす。
そうしてにやにやと笑いながらゆっくりと手のひらを降ろしていく。ヘソあたりまで下ろすと巨人が背中を丸める。巨人が作る陰にすっぽりと覆われながら降下していく手のひらの上の兄弟。それがぴたりと止まったのは、腰あたり、ちょうど手のひらの人間が下を見下ろすと競パンが見える位置だった。既にかなり高揚していた巨人の競パンは、電車並みのチンコによって今にもはじけ飛びそうだった。左の腰骨に向かうチンコがギチギチと生地を押し上げていて、ウエストの部分はかすかに浮いて隙間を作っている。そこから漏れ出るむわりとした汗とアンモニアが混じったようなにおい、巨人自体から放たれる熱気は手のひらの人間たちのもとにも届いていた。巨人が反対の手で水着に手をかける。飛び出してもおかしくない程いきり立っているチンコは逆に水着に亀頭が引っかかって水着の中にとどまっている。電車より長く太い、鋼鉄よりも固いチンコがびくびくと脈打つ姿はまるで獣のようだ。
「お前ら、これが何かわかるよな?」
巨人は手のひらを斜めにして、競パンに人間たちを近づける。転がりそうになる兄弟は必死で踏ん張っているが、もし落ちればその先にあるのは巨人が開いた競パン、今もとんでもない熱気と臭気を振りまくチンコの上である。二人は落ちないように何とか耐えようとしたが、巨人が手のひらを揺らすとあっという間に転がってしまう。手の縁から落下すると二人はチンコの根元当たりの陰毛のクッションに受け止められた。ワイヤーのように太いチン毛にからめとられまともに動けない人間たちを見下ろして巨人は目を細める。
「帰ったらまた遊んでやるよ。兄貴はその間、弟が潰れないよう守ってやれよ?」
そういって巨人は競パンにかけていた手を外す。するとバチンという音と共に競パンが閉じ、人間たちは競パンの中に閉じ込められる。競パンの薄い生地を通して黄色い光が入ってくるので、中は真っ暗ではなかった。ただチンコの発する猛烈な熱気と、汗とアンモニアと精液がまじりあったようなにおいが、外に出ることなく中に閉じ込められた兄弟をサウナのように蒸していく。
巨人が歩きだすと、中にいる兄弟たちも大きく揺さぶられる。今はチン毛のクッションにからめとられ、飛び跳ねたり落ちたりすることはないが、すぐ真下にある電車並みのチンコはいまだ鉄以上の硬さを保ったままどくどくと脈打ち、巨人の歩行に合わせてぐりゅ、ぐりゅ、とうごめいている。もしこのチンコが少しでも上に跳ね上がれば、真上にいる人間はなすすべなく吹っ飛ばされるだろう。もし巨人のチンコと体の間で挟み潰されたら、一瞬で肉塊になるはずだ。兄は弟を守るように、必死にチン毛にもぐりこむようにして揺れから耐えていたが、突然血流が増加したかのようにチンコがさらに膨らみ、競パンに押さえつけられていた竿がぐぐっと跳ね上がる。兄も弟もなすすべなく吹き飛ばされ、狭い競パンの中をボールのようにはね飛び、最後に落ちた先は巨人のチンコの上、ちょうどカリが段になっているところだった。どくどくと脈打つ地面はいまだ動いており、亀頭と巨人の身体が強く押し付け合う。その間にいた人間の兄弟二人の意識は、そこで途切れてしまった。
そんなことにも気付きもせず、巨人は鼻歌を歌いながら、残ったビルや建物を戯れに蹴り壊しながら、人間の街を後にした。
END