淫忍(2)
Added 2019-01-20 16:06:04 +0000 UTCカテゴリ:全体公開 完成度:未完(30%(鷹助の半分くらい):制作120分くらい) 備考:鷹助書くって言ったのに伊蔵であれやりたかったこれやりたかったと思って色々書いて力尽きた。久しぶりだから詰め込みたくなっちゃうんだね、わかるよ(自分にしかわからない)。三人称視点の練習という裏テーマがあるので、一応習作。 〇鷹助 淫忍の壱が誕生してから数日後。 東の国の忍の一人である鷹助は焼野原となった西の国に偵察に来ていた。深緑の忍装束を物陰の闇に溶け込ませ、その惨状を目の当たりにする。 (これは惨い……) 口布の下でごくりと鷹助は唾を呑み込む。城下町だけでなく、戦に関係の無い農村まで焼き落され、農民達は途方に暮れてそこらを徘徊している有様だった。しかし、うろついているのは老人や女子供ばかりで、若人の姿はほとんど見当たらない。戦死してしまったのだろうか、と鷹助は最初考えたが、風説を聞くにつけ、そうではないということが段々と明らかになってきた。どうやら、からくり城にて職の斡旋が行われているとのことで、男達はみな出稼ぎに出たのだと言う。属国の者ゆえ、大した金にはならないらしいが、このまま漫然と過ごせば農民達は冬を迎え、大半が凍え死んでしまうだろう。人の弱みに付け込んだ悪どい手管であるが、鷹助にとってはそうした狡猾さをからくり国が示したことに薄ら寒い感覚を覚えていた。程なくして、別の村からからくり城に向けてとぼとぼと歩いていく男達の一団を見つけ、鷹助はその後を付いていくことに決めた。 (からくり城……兄者とうまく落ち合えるだろうか) 危険な任務にも臆さず、主命とあらば命を懸けることも厭わない。そんな義兄弟の凛々しい顔を鷹助は思い浮かべた。伊蔵と鷹助のみならず、幼少期から忍として育てられた里の者達はみな緩やかな兄弟の繋がりを持つのがしきたりである。鷹助もそれに習い、伊蔵のことは少し歳の離れた義兄であると認識している。逸る気持ちを抑えながら、鷹助は再び影に消えた。 その頃、『魔』を大量に注がれ淫忍として転生した伊蔵こと壱はからくり城の地下深く、自らの寝屋として与えられた小さな和室に佇んでいた。足袋も手甲も、頭巾さえも外さず、赤黒い──それは実際、表現し辛い色だった。強いて表現するならば、肉色である。──忍装束を汗でしとどに濡らし、部屋の中央に仁王立ちをしている。彼の目の前には裸に剥かれた筋骨隆々の男が3人、息も絶え絶えに転がっていた。隣国の侍達である。壱は手早く印を結び、また一つ彼らに淫術を掛けた。呻き声がより一層大きくなる。壱は汗をかいている以外は涼しいもので、目元は常に冷徹な色を帯びていた。その内、一番年若い少年と青年の狭間の侍が頭を両手で押さえて苦しみ始めた。 「うっ、がああああああっ」 獣じみたその咆哮に、残る2人はぎょっとしてそちらを見遣る。その時には既に、若き侍は宿敵の前でたっぷり自らの子種を撒き尽くしていた。手も触れず、快楽に溺れた顔を惜しげもなく曝しながら、空射ちする陰茎をビクビクと震わせるだけだった。腹や胸の筋肉に沿い、たっぷりと精が散っている。だらしなく垂らした下からはとろりと唾液が一筋垂れ流され、その好色な表情は、喜びはしゃぎ過ぎた犬を連想させた。 「──山岸殿、相すみませぬ……某は、魔道に身をッ?!」 言葉が途中で遮られ、侍の目が驚きに見開かれる。瞬時、若い侍は人の形を失い、ばしゃり、と寒々しい水音と共に真っ白な液体と化した。強い栗の花の匂いで、それが大量の精であると分かる。畳の上に広がったその精液の溜り水が、侍の存在した唯一の証であった。壱が見せつけるようにその水溜りに躊躇いなく脚を踏み入れる。足袋にべっとりと精が付くのも厭わず、ばしゃ、っと勢いよく侍だったものを踏みにじった。山岸と呼びかけられた侍は、忍の目に悦びの色が走るのを見逃さなかった。生まれて初めて、恐怖で彼は身が震えた。 「──弥太郎を、どうしたのだ」 噛み合わない顎を気取られないよう、山岸は言った。今にも股間が爆発しそうなことを除けば、まだ彼は侍としての矜持を持っていた。もう1人はただ喘ぎ、横になっているだけでもう精一杯だった。この部屋の、壱が発する特別な淫気に当てられていたのだ。 「某が喰らったのだ」 口布が震える。壱は笑っていた。脚下の精液溜りが既にほとんどなくなっていることに、山岸は気が付く。その一方、山岸は自分が壱の股座に視線が釘付けになっていることには気が付けなかった。その肉色の下履きの中には、淫忍となってから一度も萎えたことがない猛り狂った魔羅が鎮座していた。 「惜しいな。しかし、貴殿らは某と同じ淫忍になるにはもう一つ足りないようだ」 ゆっくりと、勿体つけるように目の前でまた別の印が組まれていく。止めなくては、と山岸の頭の片隅で叫びが聞こえた。だが、彼は既にどうすることもできない段階に来ていた。 「某の肚の中で、永久に交合うが良い──淫術・色香の術」 山岸は唐突に匂いを知覚した。それは汗であり、精であり、雄の香であった。普段であれば即座に顔を背けようものであるが、今や深々と深呼吸をするように肺にその匂いを満たしている。弥太郎の最期の顔が、山岸の脳裏に過る。犬。快楽に酔い痴れた狗に、自分もなってしまうのだろうか。どこか遠くで、ばしゃり、とまた音がする。もう一人の侍が堪え切れずに精を吐き、そしてまた自らも精となってしまったのだった。 「旨いな」 壱は腹を擦りながら呻くように言った。山岸を眼力で制するが、最早この侍はそういった駆け引きが通じるほど意識がはっきりしていなかった。匂いに惹かれ、壱の忍装束を掴むと、猛烈に匂いを嗅ぎ始める。壱は思わず笑い声を上げた。興が乗った、と呟くと、忍装束を解き、逞しい剛体を晒す──。 次に山岸が明瞭な意識を取り戻したのは、淫忍の肉体の上だった。壱は頭巾、手甲、足袋以外は素肌を見せ、大の字に横たわっている。山岸も立派な肉体を持っていたが、壱はそれを上回る。隆起すべきところが隆起し、それに脂がほどよく乗っている。触れば弾力があり、熱があり、そしていつも液で濡れているようだった。淫忍として転生した直後は夥しい数の紋様が全身に浮き上がっていたが、今は罪人に入れ墨をするような簡素なものに落ち着いている。陰毛に埋もれるようにして臍を中心とした三重の正円のほか、右肩に4本の直線が平行に入っている。背中にはやはり梵字のようなものが刻まれているのだが、山岸からは見えなかった。山岸の問題は、その上に跨り、淫忍の淫忍たる魔羅を腸内に深々と挿入している自らの姿だった。 「はは、やはり惜しかったなあ」 「こ、れは……」 下腹部の膨満感に違和を感じながら、朧げな記憶を辿る。 (自分は……) 山岸は思い出す。淫忍の足袋に舌を這わせ、蒸れた腋に鼻を埋め、言われるがまま褌を顔面に押し付けられ、口内で魔羅をしゃぶりつくしたことを。自分ではない、という強い拒絶感が訪れる。しかし、今のこの接合が全ての記憶が事実であると伝えている。 (自分は、喜んで腰を振っていたではないか) 「獣に堕ちて快楽を貪った感覚はどうだ?なかなか味わえまい」 淫忍が手を伸ばし、山岸の臍周りを撫でる。目を向けると、山岸にも壱と同じような正円が黒くくっきりと刻まれていた。臍を中心に、二重となっている。淫忍の指先が触れる度、気が触れそうになるような快感が全身を貫いた。 「これは快楽の刻印。一つ目の円は、人でありながら人の許容量を超えた快楽に溺れた者」 壱は山岸と自らの臍の最も内側の線をなぞる。 「二つ目の円は、獣の欲に身を堕とした者」 山岸の陰茎から先走りがとろりと漏れ出した。まるで我事であることを感知したかのようであった。 「三つ目の円は、魔に身を堕として快楽を貪った者」 壱がどこか誇らしげにそう言うと、まるで蛇が現われたかのように、すうっと筋肉質の肌に一線、円が引かれていく。それは瞬く間に壱に表れた四つ目の円となった。その行程は淫忍であっても耐え難い程に快感を感じるようで、壱の魔羅は熱された鉄のように熱く火照り、山岸に悲鳴を上げさせた。 「これは、他者を獣欲に堕とした者という証だ。貴殿を乱れさせた時、某はこれまでにない快感を味わったのだ」 感謝する、と壱は言うと、ゆっくり腰を動かした。山岸も、騎乗位で弾むように腰を廻し始める。山岸は今度こそ明確に理解していた。それは、最早自らが助かったり、まかり間違ってこの淫忍に一矢報いたりすることは絶対にないのだということを。それどころか、山岸は既に侍ではなく、人でもなかった。獣欲に身を堕とした、この淫忍の付属物のようなものであった。壱に隷属したことを認めた彼は、ただ快楽を貪りたいという欲求に従い、腰を振った。舌がはみ出ていることに、山岸は頓着しなかった。 ──どぷっ。 えげつない音を立てて、壱は射精を始めた。淫忍もまた、性欲に自身の全てを支配された存在であることを再認識させるような、機械的で熱烈な、淡白で偏執的な性交である。それが一つの鍛錬であるかのように、射精を続けながら何度も何度も腰を打ち付ける。陰嚢が収縮を繰り返し、ポンプのようにどんどん『魔』の種汁を山岸の中に送り込み、山岸の腹はみっともなく膨れていた。それは確かに、人間を超えた量の精であった。山岸はとうの昔に射精し尽くし、陰茎が天を突いて空射ちしている。山岸は何も考えていなかった。ただ漠然と気持ち良い、とこのままでは壊れてしまう、を繰り返し感じているだけだった。しかしそれも、段々と自身の崩壊を危惧する思考に偏ってくる。 (俺が壊れてしまう。壊れてしまう。壊れてしまう。壊れ) 「あっ」 それは間の抜けた一声であったが、山岸の最期の言葉になった。鼻に抜ける青臭い匂いに、喉奥から込み上げる液体。ごぼり、と喉が嫌な音を立てて、口から精が溢れ出た。今や山岸の身体の管という管に淫忍の精液が満ち満ちて、とうとう山岸を決壊させたのである。それでも刺突をやめない壱の動きに合わせ、山岸の口から何度も何度も精液がこぼれ出る。その様はまるで山岸が壱の魔羅となってしまったかのようであった。『魔』を受け入れられる程の器でなかった彼は、すぐさま人の形を崩し始める。 ばしゃり。 程なくして、山岸は山岸であることを保ち続けられなくなった。畳にぶちまけられた大輪の精の華を、淫忍は愛おしげに救い上げる。頭巾を剥ぎ取り、親しみを込めて彼はそれを飲み干していった。 暗闇の中、一匹の獣が目を覚ました。凛々しく、逞しく、人のように二足で歩く獣であった。 獣はおそらく狗である。狗といっても、大人程の背丈があり、爪は鋭く、牙も生えている。誰もきっと見た事がないだろう。全身を真っ黒な、それでいて短い獣毛に覆われている。臍の部分に赤い正円が二重にあり、そこだけは獣毛が生えず、他の獣毛も重ならなかった。獣はゆっくりと歩き出す。随分何か勝手が違うようで、獣は歩きにくさに唸った。一先ずは四つ足で行こうと考え直し、その逞しい身体をしなやかに曲げ、四つん這いになった。駆けると風のように速く走る事が出来た。股には赤黒い肉棒が、亀頭球まで露見するほど勃起している。獣なので一切気にしなかった。 そこは暗く、広く、それでいて匂った。主人の匂いがするのだ。獣は主人を求めて走る。そこここに、男どもが全裸に剥かれて転がっていた。一心に手淫に耽る者、性交する者、触手に絡め取られて無限に搾精される者、様々に淫らであった。どれも臍に正円を一つ、入れ墨で持っている。獣はそれを見て、2つ円を持っている俺様の方が偉い、と思った。ちらり、と見知った顔が通り過ぎる。弥太郎であった。弥太郎は若い肉体を汗と精液に汚し、助平な顔で立ったまま手淫に耽っていた。獣は暫しその様子を眺めていたが、ふいと目を逸らし、また駆けた。 獣は、自分が山岸であったことを完全に忘れていた。それどころか、人間であったことや、人間の言葉なども忘れていた。朧げな何かが、ぼんやりと想起されることはあっても、意味をほとんど為さなかった。だから、ここが淫忍の肚の中であるということなど、経緯は全く覚えていないし、分からなかった。ただ、自分が今ここに在るのが主人に拠るものだということはきちんと弁えていた。 匂いを辿り、獣はついに主人を見出した。淫香の源たる壱は、全裸で悠然と椅子に腰掛けていた。逞しい肉体に、密な体毛。腹に四重の円、天を突く魔羅。その姿をはっきりと認めると、獣は主人の眼前に平伏した。獣は主人の顔を本当の意味で初めて見た。無精髭に、太ましい眉。どちらかと言えば険しく、四角四面な人格を連想させるその顔を、獣は無条件に愛しく思った。だらりと涎と先走りが垂れる。獣は我慢や恥という概念から解き放たれていた。 「そうか。こうなったか。山岸は淫獣となったということか。はは、ははははは!」 壱は笑った。そうして獣の頭を撫でた。淫忍は呪を込めて接吻をすると、獣はたちまち抑制が効かなくなり、壱にのしかかった。猛り狂った陰茎の行き場がない。淫忍は鷹揚に自らの両足を抱え上げ、その肉壺とでも言うべき淫肛を晒した。獣は逡巡した。それは、無礼なことなのではないかという考えが一瞬過ったのだった。しかし所詮は獣、すぐに獣欲に負け、その凶悪なけだものとしての陰茎を壱の腸内に捻じ込んだ。 「ああ、熱いッ!熱いぞッ!!」 主人が悦んでいることが分かり、獣も嬉しくなった。遠慮なしに獣は腰を振り回すと、一吼えし、世界を揺らした。黄味がかった濃厚な精液を放つと、本能的に亀頭球まで淫忍の中に差し込んで、きちんと受精するまで種付けを熱心に行った。流石の淫忍も、獣の激しさに呑み込まれ、汗だくになり、精液を何度も放っていた。二匹の淫獣の間はべとべとの汗とべとべとの精液が糸を引き、まるで二粒の納豆のようであった。 淫忍は身体を迸る熱さにたじろぎ、驚いて左胸を見た。硬く張ったそこには、新しい梵字のような紋様が刻まれている。それは壱にはすぐに分かった。即ち『狗』である。 「おッ、おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ」 壱の雄叫びと共に、彼の骨格が変わっていく。それは正しく変化であった。獣としての素質を通り越して淫忍となった壱は、『魔』から『獣』へと転じる術を会得したのである。山岸だった獣がそれを開花させたため、当然主人たる壱も黒い狗へと変貌を遂げた。獣に戻る快感で、壱はあと少しで人間としての意識を永遠に手放すところであった。しかし腹に刻まれた快楽の刻印が、それを許さない。体格をそのままに狗へと姿を変えた壱は、再び山岸だった獣とまぐわった。 壱は鼻を鳴らして夜風を嗅いだ。『獣』としての能力を得てから数日後のことである。狗としての嗅覚を得た彼はますます任務に精が出て、より多くの雄を喰らっている。 (これは……) 鷹助の匂いを数里先から感じ取り、壱はにやりと頭巾の中で笑った。淫忍の弐になる者は、適材が現われなければ鷹助に違いないと確信していたのだ。万が一にダメでも、『獣』にはなるだろう。想像に疼く魔羅を下履きの上から扱き上げ、淫忍は淫らに義兄弟の来訪を歓迎した。