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葉一
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淫忍(1)

前書き カテゴリ:全体公開 完成度:完成(20%(伊蔵のみ):制作120分くらい) 備考:習作として。ホントはポンポン便利エッチネタを次々忍者に仕掛けてエッチにしていく話だったんだけど前フリっているよねーって思いながら書いてたら力尽きた。次書くなら伊蔵の後輩である鷹助が出てくるよ。淫紋とタイトル被っちゃったてへぺろ。 〇伊蔵 その国は××地方の山深くにひっそりとあった。石高もそれほどなく、注目に値しない程度の領地しかない。数多の戦をのらりくらりと躱し続け、属国となることも厭わず、ただそこにあるだけの国である。下克上されるほどの旨味もなく、何となく城主である北氏の世襲が続いているようだった。ただ、その山中に不釣り合いなほど大きな城があり、中には様々な仕掛けがあると噂されていて、人々からは「からくり城」、そうしてそれ以外の特徴が無いから「からくり国」と呼ばれていた。 その地に怪異がある。あるいは邪が。からくり国の東にある別国の城主は、懇意にしている寺の住職からそう伝えられた。曰く「凶事である」。殿は「虚であろう」とその進言を一蹴した。数月後、からくり国は西の隣国に攻め入って数日の内に勝利を収めたという報が舞い込んだ。東の城主は慌て、国で抱えている忍の衆を呼びつけ、からくり国に潜伏させる者を決めるよう命じた。 伊蔵は忍として育てられ、忍として死ぬさだめの男である。齢は30を過ぎ、丁度益荒男としての盛りを迎えたところだった。技量は確かで、いざとなれば腕も立つ。並大抵の侍であれば、面と向かって対峙しても倒せる者はないだろう。 深緑色の忍び装束を闇夜に溶かし、音も無くからくり城の外塀によじ登る。警備は手薄で、巡回している侍達の練度は須らく並以下であった。 (まさかこいつらが西の国を落としたのではあるまい) 伊蔵は鋭い目で周囲を見回しながら、そう思った。滑るように歩き、人目を掻い潜る。確かにからくり城の名前の如く、専ら忍者のための罠や仕掛けは多くあった。ただしそれは、熟練と表現して差し支えないほどの腕前となった伊蔵の前では児戯のようなものだった。あっさりと罠を外し、あるいは巡回している侍を引っ掛けて囮にし、するすると順調に城内の屋根裏を自らの居場所とすることに成功した。城主の北の床を見つけたのが城内に潜入して3日目の夜で、広く手強いとされていたからくり城を想定していた伊蔵としては、呆気ないものだというのが正直な感想である。 (それにしても) 何もない。伊蔵はそちらの方が不気味であった。西の国に対して勝利したのは、虚報だったのではないかという疑念が生じてきていた。しかし、部下の忍が話すには「村も城も、全て焼け落ちていた」ということである。伊蔵は忍衆の報告を疑わない。やはり、この国には何かがあるのだろう。それも、住職が話していたような怪異が──。 「おや、こちらでしたか」 城主ではない声が聞こえた。耳慣れない、どこか癇に障る声だった。覗き穴から階下の様子を窺うと、北ともう一人、神主としか言い様がない格好をした若い男が城主と向かい合って立っていた。完全に礼を失した態度であったが、城主はそうした若い男の振る舞いを指摘せず、叱責せず、どちらかと言えば崇敬の念を込めた眼差しを投げ掛けていた。伊蔵は身を乗り出し、この異常を見届けることに決めた。 「次はどうしますか。南ですか、北ですか、それともまたさらに西に進んでみますか。東も良いですけどね、あまり賢明ではない。私の苦手な物が東にはたくさんありますからね」 「ああ…………」 城主はその一音を発しただけで、二の句が継げないようだった。愚鈍、というより最早壊れかけているようだと伊蔵は思った。若い男こそ妖術や怪異を扱う邪なのだろうと、推測する。途端に、若い男の後ろ姿に禍々しい気を感じるようになった。 「贄が要ります。それもたくさんの」 「用意……させよう……、お主の言うとおりにな…………」 突然腕を振り上げると、城主は大きく柏手を打った。ぱん、と乾いた音が鳴るとともに、障子が音も無く開く。 屈強な男が縛られた上、正座をさせられ、そこに居た。伊蔵の覗き穴から丁度その男の全景が見られた。着ているものはなく、巻きつけられた縄以外全裸である。髭や髪が伸び、落ち武者然としている。いや、確かにこの男は落ち武者で、おそらく、西の国の敗残兵か何かだろうと伊蔵は見当を付けた。男の瞳が怒りと憎しみで滾っていることが見て取れたからである。 「ふふ、いいですね。汚らわしく、実に私達の好みだ」 噛みつかんばかりの形相の男に、若い男は掌を向ける。呪いが、何かの文言が、まるで溢れ出すかのように若い男の口から次々と流れた。落ち武者の変化は急激だった。表情は怒りから困惑、そして恥辱に染まる。ぼうぼうに生えた陰毛の合間から、隆々と陰茎が勃ち上がる。こちらまで匂い立ちそうなほど、汚れ、粘つく糸を引き、今や完全に屹立していた。 「やめろ、やめてくれッ……」 落ち武者は力のない声を出した。だらだらと珠の汗を流している姿はとても情けなく、それでいて哀れだ。伊蔵は忍らしく表情を変えずにその様子を注視している。いかなる術を用いれば、そのようなことが可能なのか知識を総当たりしているところだったが、おそらく思い当たる節はないだろうという確信もある。即ち、これは人間の技を越えているのだ。落ち武者の陰茎からとろりと淫水が流れ、涙のようにだらだらとこぼれ始めた。若い男がさらに力強く呪を掛ける。その腕の力みに合わせ、落ち武者はたっぷり射精した。濃厚な雄の匂いが、伊蔵の口布を通して伝わってくる。落ち武者はもう怒っても恥ずかしがってもいなかった。ただその快楽に酔い痴れ、恍惚の表情を浮かべ、くずおれていた。精に塗れた逞しい胸に、黒々と紋様が浮かぶ。梵字のようであったが、意匠が強く判然としない。 「お前は今から『贄』だ。お前のものは最早一つもこの世に存在しない。全て魔に捧げられたのだ。汗一つ、精一滴、髪毛一本、全て我らのものだ」 若い男がそう告げると、落ち武者は「ありがたき幸せ」と焦点の合わない目を向け、応じていた。また精がだらしなく、みっともなく放たれる。しかしそれは床を汚すことなく、すうっと中空に消えた。気付けば汗や精に塗れていたはずの落ち武者もすでに情事の痕はなかった。しかし、濃厚な残り香はあり、すれ違いでもしたら誰しもぎょっと振り返るだろう。そうした痕跡──魔に自らを捧げたという『事実』だけは永遠に残るのだ。伊蔵はじっとりと嫌な汗をかいていた。落ち武者の堕落を目にしたこともあるが、若い男のその手腕に拠るところが大きい。あっという間に大の男を手籠めにするその力量は、戦となれば不利である。ましてや、人外の力を有するとなれば侍や忍では太刀打ちできない。 (幸い、我が国を襲う気は今のところないらしい) 備えをする猶予はまだある。この情報だけでも持ち帰らねば、と伊蔵は気配をより深く押し込めた。 次の日の夜、伊蔵は行動を起こした。即ち、からくり城からの脱出である。 そっと行動する度に、あの時の匂いが、あの時の気配が、あの時の呪が思い出される。それは伊蔵にとってやはり恐怖の種となっていた。 (考えるな。いまはここから出ることだけを考えろ) 伊蔵は感情を沈め、一つ一つ罠を外し、着実に外へと向かうはずだった。しかし。 (おかしい) それは伊蔵の全く想定していないことだった。このからくり城は侵入者に対して備えているのではなく、城から出る者を警戒しているのではないか。そう思う程、往路に比べて罠の数が尋常じゃなく多い。罠や仕掛けの質も段違いである。城の設計思想が狂っているとしか考えられなかった。伊蔵は迂回を余儀なくされた。人に見つからなくとも、行ける道が限られれば脱出は困難になっていく。とうとう伊蔵は城の下層まで辿り着いたが、面積が広い分、迷路めいた造りになっていた。 (……この匂いは) すっと物陰に身を隠すと、軽快な足取りで城内を見回る侍が傍を通った。この前の落ち武者ではないが、同じ精の匂いがした。伊蔵は特別に鼻が利いたこともあり、同じ匂いを放つ者が何人も何人もこの城の中に潜んでいることが分かっていた。伊蔵は黒い神主が言っていたように、彼らを『贄』と一まとめにして認識している。『贄』の男達は常に発情していた。袴などの下で陰茎を硬くしながら、涼しい顔で歩いている。この城の全員が『贄』という訳ではないが、3人に1人くらいは『贄』となっているだろうと伊蔵は考えていた。 (もう少し『贄』について探りを入れてから出るか) 不気味さからの恐れを拭えずにいたが、脱出にも行き詰まりを感じていたところで『贄』が通り掛かったのは僥倖だった。音を立てず、伊蔵は『贄』を尾行する。廊下を曲がり、地下への階段を下り、地階とは思えないような畳の間を横切り、ずんずんと『贄』の侍は迷いなく進んでいく。その度に『贄』の放つ匂いは強くなっていく。突然、侍はある部屋の障子をさっと開け、滑り込むようにして入っていった。部屋は構造上広く、そしてたくさんの『贄』の気配が感じられた。伊蔵はそこで、やはりこの感覚が単なる匂いではなく『魔』と呼ばれるものなのだと認めざるを得なかった。部屋をうまく覗けるかどうか、思案する。 「見ませんか?」 伊蔵の耳元で、あの嫌な声がした。心の臓が凍る。それは正しく、あの男が地面から湧いた、としか表現が出来なかった。伊蔵が振り向きざまに苦無を振るおうとするも、若い、軟弱な白い腕が鋭く手首を掴んで離さない。万力のようなそれは、やはり彼が人外の者であることを如実に伝えていた。 「見ていたんでしょう?殿の部屋で」 手も触れずに、障子が勢い良く開く。逞しい侍たちが、所狭しと蠢いていた。ある者は裸で、ある者は褌を取る手間も惜しんで、ある者は股引や袴の上から、全員が手淫に勤しんでいた。寝ていても立っていても、何となく一列に並び、他人の視線を気にすることなど無く、互いの肌が触れ合うことすら関知せずに、ただひたすら自慰行為に耽っているのだった。各々の動物的な呻き声が輪唱のように部屋に響き、地響きのような音となっている。 (これは、まるで……) 家畜のようだ、と伊蔵は思った。男達は絶頂を迎え、虚空に精を放ち、寸時呆けると再び陰茎に手を伸ばす。それが無限に繰り返されている。ただただ射精とともにこれ以上ないという程の匂いを色濃く撒き散らしながら、自らの生を、雄としての全てを『魔』に捧げているのだ。全ての者が呪われたしるしとして胸に同じ紋様を有している。射精する度にそれが怪しく紫に光った。 「良い餌場なんですよここは。誰にも邪魔されたくない。分かるでしょう?……見たところ貴方も、『贄』としてはうってつけのようですね」 忍装束の間に、ずいっと男が手を入れ、鎖帷子の上から伊蔵を撫で回した。伊蔵は微動だにすることができない。 (俺も『これ』になるのか) 諦観と嫌悪の中間で伊蔵は覚悟を決めようとしていた。任務の失敗、それは常に想定として生じるものだ。まさか、このような結末になるとは思わなかったが。 「…………?…………貴方は『贄』なんかよりももっと良い器をお持ちのようですね」 男は笑みを浮かべ、ぱちんと指を鳴らす。『贄』たちが一斉に伊蔵を見、そして瞬時に転身した。 「ひっ」 伊蔵が忍ではなく、人として発語したのは久方ぶりの出来事だった。『贄』たちはその身をくねらせ、それぞれが一本の赤黒い触手と変わり果てたからだ。その先端は男根と同じ形状をしており、醜悪さに磨きを掛けている。ずるり、ずるり、とそれらは蠢き、近付き、しなやかに、それでいて強かに伊蔵の手足を拘束した。 「『贄』はみんな私達の眷属さ。君も転生するがいいよ。もっと、上等なものにだけど」 急に砕けた口調で男は言った。伊蔵は為す術なく頭巾を剥ぎ取られ、ぼさぼさの髪に無精髭を生やした素顔を認められる。堀が深く、野性味があり、粗野な印象を与えるが、目鼻立ちは真っ直ぐで整っていた。素顔を見られることは、忍にとって死に等しい。舌を噛み切ろうとした瞬間に、触手が口内に侵入した。その生臭さで伊蔵は視界が滲んだ。草色の忍装束は汗と粘液でぐっしょりと湿り、汚らしい濃淡を作っている。触手がそれらを引き裂き、ただのぼろきれと変えていく。鎖帷子は留め具を壊され、とうとう褌のみの姿にされた伊蔵は、余すことなくその恵体を『魔』の前に晒していた。隠密行動を阻害しない程度に引き締まり、肥大した筋肉。そして脇や陰毛、脛など、身を守るべきところに濃密に生い茂った体毛が、伊蔵の益荒男ぶりを如何なく示していた。 「さあ、彼に『魔』を注いでおくれ」 触手が伊蔵に殺到する。褌を掻き分けて尻にぬるりとそれが入ると、伊蔵は全身で抵抗を示した。痛みはなく、快を覚えたのが余計に恐怖に繋がったのだ。呪が聞こえる。前回よりも高低や節のついた、長い祝詞のようだった。そのうち、肚の中の中で触手がのたうち回り、生暖かい汁が爆ぜる。どろっとした感覚に加え、ひどく自分が汚れたような感覚を伊蔵は確かに感じた。そして、それが二度と清められないようなものであることも確信した。 (俺が、俺が、塗り潰されちまうっ!!) 次々と触手が『魔』を種付けし、伊蔵は無尽蔵にそれを受け入れていく。若い男は祝詞の最中ながらにやけるのを止められなかった。伊蔵はやはり素晴らしい器だった。捧げる側ではなく、捧げられる側として。腸から溢れた精が、触手を伝ってどぼどぼと流れ出る。伊蔵の目は段々と虚ろになり、人格も『魔』に塗り潰され尽くそうとしていた。最後の一節が詠み終わると、伊蔵は弓なりに、とうとう人間最後の射精をした。褌を貫通し、濃厚に、幾重も精が溢れ出る。まるで伊蔵が『魔』に堕ちたことを祝福するかのようであった。伊蔵はだらしなく笑い、口内を犯していた触手を啜り上げる。どうしようもなく、腹が減っていたのだ。そこには任務に忠実な忍としての伊蔵は既にいなかった。顔を除く全身に梵字のような紋様が浮かんだ、『魔』に転生した伊蔵は、既にこの事態を受け入れ、喜ばしいことと認識し始めていた。触手の拘束をいなし、二本の脚で堂々と男の前で仁王立ちをする。勃起した陰茎が痛い程天を突き、伊蔵が淫らな生物に生まれ変わったことを新しい主人の前で証明していた。 「お前はこの国の忍者として働いてもらう。ただの忍者じゃない。淫らな忍者、『淫忍』だ」 「応ッ」 裏切りを命じられ、嬉々としてそれを受け入れる伊蔵に、男は手を翳す。気付くと赤と黒が入り混じった色の忍び装束が伊蔵に着せられていた。鉢金には大きく「壱」の文字が刻まれいている。 「お前の名は今から壱とする。『贄』の作成と次なる弐の転生がお前の任務だ」 「応ッ」 伊蔵──いや、壱は褌の中で陰茎を震わせていた。主命を賜る喜びに、打ち震えていたのだ。息をするように消え、壱は闇夜を駆けた。自らが『贄』と同じ淫らな匂いを漂わせていることに深い満足感を覚えていた。


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