XaiJu
葉一
葉一

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淫紋

前書き カテゴリ:全体公開 完成度:完成(100%:制作75分くらい) 備考:習作として。淫紋と獣化どっちもかきたかったんだけどどっちつかずになってしまったので、供養。 ○ 夜勤明けだった。身体が重い。昔は非番でも寝ないででそのまま遊びに行くくらいには体力があり余っていたが、最近はそうでもなかった。加齢には勝てないということなのかもしれない。熱いシャワーを頭からざぶりと浴びる。顔を撫でると強情な無精髭がちくちくと手のひらを刺した。一日分の皮脂が流れ落ちる。鏡を見ると、如何にも野蛮な三十路男の顔がそこにはあった。非番だから、と口にする。非番だから許されたい。とても公職に就いているとは思えない顔だった。全盛期よりも脂の乗り始めた体躯はそれでも、同世代からすればまだまだ引き締まっている方である。気を取り直して、メリハリのある胸板や腹筋を眺めていく。身体が資本の仕事でもある。ひと眠りする前に筋トレだけはやっておこう。そうしよう。その前に一発オナっておこうか。随分とご無沙汰だったことを思い出す。陰毛の合間からだらりとやる気なく垂れ下がった俺の息子を見る。そして。 「なんだこれ……?」 そのすぐ上、臍と陰毛の中間の肌に、奇妙な紋様がある。ハートマークを中抜きしたようなそれは、タトゥーのように黒々と、当然のような顔をしてそこに居座っていた。 それが、一番最初の異変だった。 ○ がたん……がたん……がたん……。 俺が腕を曲げる度に、一定のリズムで重りが上下する。ウェイトは60kg。珠になった汗がもみあげから頬、顎先へと滴り落ちる。Tシャツは汗をたっぷり吸って、身体にまとわりついていた。黒色の光沢がいかり肩と胸いた、そして乳首までくっきりと浮かび上がらせている。どうせここには野郎の同僚しかいない。気心が知れたということもあるが、そういうガサツな男しかいないのだから、俺も気にしなかった。息を吸う、吐く、吸う、吐く。曲げる、伸ばす、曲げる、伸ばす。 「お疲れ様です、楢崎先輩」 「おう、三山。今日は上がりか?」 「はい。ちょっと汗流して帰ります」 三山はぺこりと一礼してランニングマシンに向かった。すらりとした長身がブレることなく、一定のリズムで動き始める。俺は無意識に下腹部に手を当てていた。じん、とそこが熱くなる。またかと内心で舌打ちをした。昨日からどうも、三山が近くに来るとこの下腹の紋様が疼くように熱くなるのだ。がたん…………がたん…………………………がたん…………。リズムが狂う。集中が途切れる。三山の逆三角形のシルエットの浮かぶ背中に視線が釘付けになる。去年の夏に作った『眞島消防署』プリント入りの安物のシャツが、少しずつ汗に濡れそぼっていく様を見る。丁度今の俺と同じように、三山も乳首を立たせているのだろうか──。 頭を振る。何を考えてるんだ。いよいよ耄碌し始めたか。30になったばっかりなのに?いくら女に縁がないからってそんな馬鹿な。半分勃ち始めた息子をハーフパンツの上から押さえつけ、そそくさとトレーニングルームを後にする。ドアを押し開ける時、俺は再び三山に目を向けた。汗を流す三山。息が荒い。弾んだ瞬間、シャツが捲り上がる。その合間に、臍の真下に、俺と同じ紋様が見えた。 ○ 三山は確かにイケメンではあると思う。こざっぱりとした、気持ちの良いヤツだ。これは間違いない。女にも勿論持てるだろう。ちょっとばかし頭が悪いのは玉に瑕だが、黙ってれば賢そうに見える。学生時代に陸上で鍛えたというから、身体もばっちし鍛えられている。 確かにそうだ。だがそれは、俺が興奮することとは何の関係もない。 AVを見るだけのマシンと化したパソコンで、お気に入りの一本を再生する。ほら、ちゃんと勃起するじゃないか。左手で息子を弄びながら、そんなことを考える。すぐに先走りが出て来たので、ティッシュで拭いながら扱いた。女が本当に感じているかのような顔をする。切ないような、それでいて愉しいような、そんな顔が溜まらなかった。 「──ッ!!」 安普請のアパートなので声を上げないように気を付ける。びゅっ、と勢いよくザーメンが飛び出てきた。重ねたティッシュで上手く受け止める。いつも通りのはず、だった。 「なっ?!」 紋様が、ほの暗く光る。黒とも紫とも言えない、鈍い色で、ほんの微かに、まるで生き物の呼吸のように明滅していた。熱い。そして、気持ち良い。びゅるっ。もう一度、予期しない射精がある。一度では済まない。幾度も、幾度も、壊れたように射精していた。受け止めきれなかったザーメンが、畳にぼたぼたと落ちていく。黄みがかった、特濃のザーメンが何度も、何度も──。 むせ返るような匂いの中で、俺は放心していた。今までのどんなセックスよりも、どんなオナニーよりも気持ちが良かった。もう一回、今すぐにでも味わいたいという気持ちと、次にああなったら俺は壊れてしまうのではないかという恐怖があった。紋様を見る。それは先ほどとは打って変わって、死んだように静かだった。ただ、よく見ると大きく、そして複雑な紋様に変化している。俺はそれを何故か成長していると感じていた。 ○ 三山とすれ違うだけで、俺の息子は硬くなっていた。条件付けされた犬のように、俺の中で三山は性的興奮と強力に結びついている。何故かは分からない。ただ、三山の方も俺を見て時折気まずそうな顔をすることがあった。俺のケダモノじみた視線を感じ取ったのだろうかと思う。鈍感な方だから、そんなことはないだろう。そう自分に言い聞かせた。 三山の活動服姿で、筋トレの姿で、脂ぎった夜勤明けの姿で、俺はオナニーを繰り返した。夏の訓練でたっぷりかいた汗の匂いを、消防車の中で寝こけた時の髪の匂いを、数か月履き古した半長靴の匂いを、思い出してオカズにした。もう抵抗はなかった。だってその方が気持ちいいから。別にセックスしてくれとせがんでいる訳ではない。ズリネタに使わせてもらっているだけなのだから、迷惑はかけていない……そう思い込む。紋様に導かれるがまま快楽を貪る生活がここ数週間続いている。その都度、紋様は成長を続け、今では俺の臍を中心に複雑な幾何学模様が絡まったハートマークを形成していた。誰にもこんなこと相談できない。俺はこの非科学的な状況を自然と受け入れていた。俺にはもうどうしようもない。そんな確信がさらに俺をダメにしていった。帰宅して、飯食って、三山でしこたまオナニーして、寝る。そんな日々。 夜中、突然目が覚めた。痛い程勃起している。紋様が疼いている。こんな真夜中にまで無理矢理起こされたのではたまらない。もう一度寝ようと瞼を閉じる。すると、頭の中に鮮明なイメージが浮かんできた。消防署のロッカールームだ。三山が俺のロッカーの前に佇んでいる。俺は三山が今日夜勤だったことを思い出す。ダイヤル錠を回す三山は、当然のように俺の誕生日を揃えていく。かちゃり、とちゃちな音がした。俺のロッカーが開く。中には雑然と物が詰まっている。 『ああっ……先輩、先輩…………』 堪え切れない、といった様子で三山はしゃがみ込む。俺の着替えを、雑然と放り込んだタオルを、替えの半長靴を、手当たり次第に取り出していく。 『おれっ、こんな……楢崎先輩ッ…………』 濃紺の活動服が痙攣する。三山は活動服の上から自慰をしていた。俺のシャツを鼻に押し当て、蕩けきった顔で猿のように股間を揉んでいた。興奮が俺にも伝播する。俺も無意識の内に息子を揉み扱き始めていた。三山の痴態を、余すところなく見ていたい。 『──んッ!!』 イった。俺も布団の中で完全に果てていた。活動服に染みが広がっていく。慌てて三山がズボンを下ろすと、ボクサーブリーフがドロドロに汚れていた。イメージが掻き消えていく。「俺のオナニーも見られているかもしれない」。そう考えると俺の中に、また鈍い興奮が生まれ始めていた。 ○ 三山のロッカーは俺と同じように雑然としていた。洗濯のタイミングを見失った活動服が吊り下げられている。ズボンの股間の部分を念入りに嗅ぐ。三山の精液が匂った。あれはやはり夢ではなかったのだ。 「うっ──」 股間が痛い。ここで抜くのはまずい。トイレに駆け込み、また大量に射精をする。室内に残留してしまうのではないかと思う程、濃く、匂いが強い。それはまるで野性の獣が放つそれのようだった。 次の泊まりで、三山と二人きりになれる──その時こそ、この異常事態を話し合う時なのではないか。でもどうやって?そんなことを考えている間に、当日を迎えてしまった。 「よろしくお願いします」 三山が一礼する。俺は、言葉をかけ損ねる。今日はやめておくか。じんじんと熱く疼く腹を押さえる。振り返ると、持ち場ではなく三山がミーティングルームに突っ立っている。俺は口を開きかけ、やめた。活動服の膨らみで、三山が痛い程勃起しているのが分かった。そして俺も、そうこうしている間に完全に勃起していた。 「楢崎先輩、オレ──」 言うな、と思った。言ってしまえばまた一歩、引き戻せないところまで進んでしまう。そんな予感が漠然とあった。べろりと三山はシャツを捲り上げる。くっきりと割れた腹筋の上に、黒々とあの紋様が浮かんでいる。それはすぐさま、鈍く光を放ち始めた。 「おかしくなっち、まッ──」 三山の表情が崩れる。淫蕩に。よく味わったことがあるから、分かる。腰を揺らし、息子をパンツに擦りつけて、手も使わずに射精する。俺も同じようにシャツを捲り上げ、三山に紋様を見せびらかしていた。はっきりと分かる。これは呪いなのだと。 「お゛っ、うおおおっ、おおおおおっ?!」 「はあッ!!ああああああああああああああああッ!!」 野太い雄の声が部屋に響き渡る。失禁したかのように、濃紺の活動服に染みを広げていく。人間では有り得ない射精量。いつの間にか俺達はヒトではない何かになってしまったのではないか。ぼたぼたと、三山の股に白濁が広がっていく。程なく俺の股下にも。人間としての尊厳を捨て、俺達は快感を貪っていた。これは、呪われた二人同士でしか味わえない快楽なのだろう。膝が笑い、崩れ落ちる。精液の水溜りの中に、身体が倒れる。三山もすぐに後追いした。誰かが来る。足音が聞こえる。 「そろそろ完成かな」 年若い声だった。俺はその声に誰何しようとするが、どうにも声が出なかった。そして何より、その声の主に深い恭順を感じていた。 ○ 「僕はね、番いの使い魔が欲しかったんだよ。なかなか適任者が居なくてね。人間を使えば人間の言葉が分かるだろう?でもそれにしても人間を使うにはコストがかかる。分かるかな?」 大学生くらいの小柄な青年はそう言った。何も分からなかった。少なくとも俺は面識がない。 「ッス!!全然分かんねえッス!!」 がむしゃらな大声で三山が応じた。真面目くさった表情で、真面目にこの青年の話に受け答えしていた。俺達は直立不動の姿勢で、青年の前に並んでいる。身体の自由は効かない。いや、本当は動かそうと思えば動くのだろうが、そういう気持ちが一切湧かないのだ。 「分かんないよなあ。三山君の方はすっかり完成したみたいだね。自我が丁度良く溶けてしまっている。それに比べて、楢崎君はどうだろう」 「……っ、分からねえ、です……」 まただ。答えなくても良いと分かってるのに、応えてしまう。そうして全身を震わすような、快感が紋様から与えられる。また俺は勝手に果てていた。三山は犬のように何度も射精している。瞬く間に俺もああなるんだろうと他人事のように思う。 「簡単に言うと、君達には人間を辞めてもらって、僕の使い魔になってもらう。そのためには、人間としての理性を完全に捨ててもらわなければならない。だから、君達をケダモノに堕とす為、淫紋を与えた。それがそろそろ完成しそうなので、僕はここに来た」 冗談じゃない、という言葉はついに出ない。「ありがとうございますッ!!」と隣から怒鳴り声が聞こえる。三山はすっかりこの青年に心を奪われたようだった。そのことだけが、俺の心を暗くする。三山の瞳が赤く染まる。俺の瞳も、徐々に赤く染まっていく。「まるで自分がそうしようとしてしているかのように」俺は活動服を脱ぎ始めた。ばさっ、と無造作に床に落ちる。逞しい筋肉が、精液でどろどろに汚れた下半身が、一日の勤務で蒸れた靴下が、露わになっていく。青年の前で生まれたままの姿になった俺達は、二人とも勃起した息子を晒して立っていた。陰毛と竿に精液が絡みつき、糸を引いている。淫紋が俺達の腹筋を跨り、鳩尾まで成長している。 「それでは」 青年が言った。その途端、頭の中にやるべきことが流れ込んできた。隣の男と番いとなること。理性を捨てること。俺の自我はいらないこと。そう御主人様が言ったらそれが正しいこと。赤い瞳の者は、それに従わねばならないこと。全ての疑問が氷解していくようだった。俺が体を鍛え、消防士として生きてきたのは当然、御主人様に見初められるためだった。それすらも真実と感じられる──。 三山が俺の腕を掴んだ。向き合い、自然と舌を絡め合う。赤い瞳が交差する。恭順。服従。隷属。そんな言葉が思い浮かんでは消える。御主人様がお与えくださった淫紋は血のように赤く染まっていた。丁度、俺達の瞳のように。 三山が愛おしかった。同じくらい、三山が俺を愛していると分かった。どちらから交尾するかは、自ずと分かった。三山が床に寝転び、あられもなく両足を持ち上げて尻を広げる。ぱくぱくと呼吸するかのように開閉するアナルを見て、俺の息子は期待に震えていた。ゆっくりと、体重を少しずつ掛けていくようにして、三山の中に侵入していく。三山は大声で哭いた。正常位でまぐわい、キスを重ねる。俺が今まで女にしてきたように。 「…………ッ、中に射精すぞッ!!」 「あっ、先輩のが腹ン中にッ……すっげえ……あっちい…………」 俺は三山の中にたっぷりと種付けすると、三山もその余韻で吐精した。とろりとした顔で、三山はそれを受け入れる。完全な理性の喪失を確認し、俺が息子を引き抜くと、ごぼっ、と水音がして種汁が溢れ出た。みしっ、と骨の軋む音がする。三山の淫紋が一際赤く輝いた。 「おっ、があああっ?!」 手足の爪が鋭く尖り、真っ黒に染まる。陸上で鍛え上げた筋肉が、しなやかさを損なわないまま、さらに肉体がひしゃげるように屈曲していく。力強く、速く、それでいて静かに行動できる姿へと変わっていく。肌の表面を真っ黒で柔らかな獣毛が少しずつ、確実に覆っていく。淫紋だけがその侵食を免れ、御主人様の所有物であることをまざまざと見せつけている。ぷりっとした形の良いケツの真上から、長くしなやかで意志を持ったような尾が生える。マズルが伸び、顔の骨格が変わると、いよいよ三山は三山でなくなっていった。鼻がつぶれ、獰猛な牙が生える。目を見開けば赤い瞳。そこだけが野性の生き物とは異なっていた。すくっと二足で立ち上がる。そこには一匹の黒豹がいた。体躯は三山そのものだったが、もうそこに三山はいない。片膝を着き、御主人様に首を垂れる獣。 「○×※△!」 聞いたことの無い言葉でその黒豹は話した。転生とはこういうことなのだと思った。御主人様が何かを言うと、黒豹は頷き、俺を押し倒す。ざらりとした舌で、俺の頬を舐め、潤んだ瞳で俺を見た。俺は瞬時に、姿形が変わっても、この獣が俺を愛していることが分かった。押し倒されるまま、俺は三山がそうしたように自らアナルを差し出す。黒豹は深々と俺のアナルを獣の形をしたチンコで貫いた。痛みで意識が飛びそうになる。 「すげえっ……形がっ、全部分かるッ!!奥まで……」 黒豹が唸り、激しくピストンし始める。俺は壊れないように歯を食いしばることで必死だった。肌と肌が触れあい、えげつない音を立てる。淫紋が輝きを増し、最後に一際大きく輝いた。 「──────ッッッ!!!」 咆哮が聞こえた。下腹が破裂するのではないかと思う程の熱い塊が、俺の中に入り込んでくる。俺は真っ白になった。気付けば叫んでいる。咆哮している。射精している。骨が、肉が、音を立てて変形していく──。 ○ 気付けばオレはミヤマの隣で跪いていた。御主人様が祝福を下さる。尖ったペニスが脈打ち、特濃の精液を噴き零した。真っ黒な毛皮が濡れる。使い魔としてオレは、番いのミヤマと同じ黒豹に転生していた。逞しい筋肉、豊満な胸板、太く長い尾。どれも素晴らしい身体だった。 「ナラサキ」 ミヤマがオレの名を呼ぶ。オレはそれに応えて、また口づけを交わす。床に落ちている、紺色の服に目が移る。前は俺達がニンゲンだったことは憶えているが、詳しくは憶えていない。それはもう、どうだって良いことだった。むせ返るような獣の匂いの中で、俺達はまた淫欲に狂い始める。互いのペニスを舐め合い、獣毛で覆われた金玉を弄ぶ。御主人様はそれを嬉しそうにいつまでも見ていらっしゃった。


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