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(先行)熱の白花 〜白花信仰の村を訪れた助手がパイズリでからからに絞られる話〜 前編

小型飛行機を降りると、ひどい酔いがぶり返した。


冷房のない旧型の機体は少しの乱流にまるで木の葉のように軋み、中の貨物と乗客をシェイクした。

熱と振動だけならまだしも、着陸点を発見できずジャングルの上空で何度も旋回を繰り返したセスナ。いつまで経っても眼下には鬱蒼とした木々と、爬行する大蛇の様な濁った流れが見えるだけだった。


助手はシートに深く腰掛けながら、悪夢のようなフライトが終わるのを祈るよう目をつぶる。

時折、乱気流で大きく翼が軋むと「ひっ」と小さく悲鳴をあげ、エンジンから異音がすれば両手を組んで天井を仰いだ。

その様子が隣に座っている博士には面白いと見えて、小馬鹿にした含み笑いを感じる。


それから小一時間程経ってようやくのこと、村の横に開かれた滑走路──もとい空き地へと飛行機は乱暴な着陸を済ませた。


セスナ脇の地面にて、うつむきゲホゲホとうなだれる青年。背丈は小さく、ともすれば少年のように見える。

その横で、さっそうと降り立つのは背の高い女性であった。肩口にブルーのシャツを回し引っ掛け、タンクトップとジーンズの出で立ちで大地に立つ。

ダークブラウンのセミロングの髪を片側で掻き上げ束ね、ミラーのサングラスを装着している。これで学者と言われても信じる者は少ない。


「おいおい、まだそんなに吐けるのかい? 酔い止めをもう一錠飲むように言ったじゃないか」


「全部飲んじゃってます… だって、あんなに揺れるなんて聞いていなかったから──」

とまで言いかけて、青年はまた胃液を戻した。セスナのパイロットは露骨に嫌な顔を見せたが関係ない。


「華奢なのは見た目だけにして欲しいなぁ、まったく」


青年を心配するでもなく長身の女性はこともなげに吐き捨てる。我慢していた煙草に火をつけ、フゥーっと紫煙を吐いた。

サングラスの端で青年を捉えながら、その視線は真っ直ぐ前に向けられていた。


「でもほらご覧。やっと着いたんだ」


胃液さえも吐き切ってとうとう何も出なくなったところで、少年がヨロヨロと顔を上げた。

深い緑の木々の中、開けた赤土の上にいくつもの家が見える。

ジャングルで採れる籐や葦の様な細い木で作られた家屋が、あちらこちらに寄り集まっている。

飛行機の着陸点から真っ直ぐ伸びる赤い道のその先に、集落はあった。


「ここが、フィメ村……」


ここ数ヶ月の間想い続けていた黄金郷が目の前にある。その高揚で青年の酔いは一息に覚めた。

数十メートル先の集落の様子がまざまざと少年の目に飛び込んで来る。

まるで蜘蛛の巣のように村全体に張り巡らされているのは植物の太いツタ。1年中白い花を咲かせるというその植物は、村の中央で絡まり隆起し、フィメ村全体を天蓋ドームのように覆い、日陰を作っている。


「どうやら間違いないようだよ、外観もメモの内容に一致する。 来てみるもんだね……♪」


目的地を実際に目にして取り繕う反面、彼女──博士が内心で興奮しているのが青年にはわかった。

いつも冷静な博士がここまでウキウキと楽しそうなのは珍しかった。


「ほら早く行こう。 時間は限られているんだから」


村の方を真っ直ぐに見詰める博士は、疲労をおくびにも出さない。

強すぎる日差し、うだるような暑さに少しもひるむことなくテキパキと準備を進める。


飛行機のパイロットにチップを渡し、その胴体から荷物を下ろした。


博士は現地語を操り、パイロットと帰り便の約束を確認する。

1週間後再びセスナで迎えに来ること、旅費は最後に纏めて清算することを合意すると、飛行機は早速離陸して青空へ消えていった。

点粒ほどの大きさに消えていったセスナを見送ると、後には青年と博士の2人だけが残された。


ここで、村への道をこちらに来る人影に気が付いた、まっすぐこちらへ歩を進め来るのは、5人の女性であった。


白いローブに身を包み、柔らかな微笑みを湛えた美しい女性達。体を左右に揺らしながらあっという間に2人に近づいた。


冠に腕輪。村を覆うのと同じ白花で身を飾ったその姿は、森の奥に住む妖精と見紛う程の美しさだった。

だがそれだけではない。可憐な装いと対照的に、全身のスタイルの良さに思わず目を奪われる。


「博士様に、助手様ですね…♡ ようこそいらっしゃいました」


中央の女性が流暢な日本語を話し始めたので助手、それに博士も驚いた。

5人の中で最も位の高そうな女性で、穏やかな微笑みを湛えて2人と対峙する。


「長旅でお疲れでしょう。私はここの長のフィメ=ルクといいます…♡」


「ほほぅ…! これは驚きました。現地語はフィールドワークの際に最も大きな障壁になるので、ある程度覚悟していたのですが…」


「お二人が来ると連絡を受けた後、急いで日本語を勉強したのですよ…♡ あら助手様? 何か発音が可笑しかったでしょうか…」


「あぁ、いえっ何でもありません。とっても上手で驚いてしまって…」


長の真っ直ぐな瞳に射貫かれて、助手は咄嗟に言葉で取り繕った。

言葉の流暢さよりも、本当はフィメ=ルクの美貌と色気に目を奪われたとは言えなかった。


すらりと流線が弧を描いて、ただし胸元や腰元には溢れんばかりの膨らみ。大地の峰のように揺るぎなくどっしりとした長身の体が目を引いた。

手入れの行き届いた金色の艶髪が風に靡いて、その度に甘い香りが鼻腔をくすぐった。

ざわざわと胸騒ぎのする、嗅いだことのない芳香だった。


じっと瞳を反らさないルクの眼差し。それだけで助手の胸は高鳴り落ち着かなくなった。

驚く程に美しいのはルクだけではない。彼女の背後に控えたお付きの女性達もジャングルの奥地に住んでいるとはとても思えない程美しい

褐色肌の女性、白い絹肌の女性──肌の色こそ違えど、一様にキメの細かい肌と整った顔立ちだ。

その恐ろしいまでの美貌に微笑みが足されて、じっと助手の方を見ている。全身を隈なく観察される様な視線。だが敵意は感じられない。もっと、こう──。


「初めまして、フィメ=ルク。日本から来ました赤城と申します。 比較文化学の研究をやっているものです」


博士は手を差し出し、フィメ=ルクと握手を交わした。続いて助手も彼女の手を握る。

柔らかくしなやかな手。手首には白花で作ったブレスレットが巻かれ、鮮やかな芳香が鼻をついた。どうやら独特の芳香の出元はこの花のようだ。


「よ、よろしくお願いします。中村といいます」

「こいつは私の助手です。見ての通り、ひ弱な奴なんですが…まぁ荷物運びにでもと思いましてね」


「こちらこそよろしくお願いします♪ 私のことはルクとお呼びください♪

ふふ、とっても素敵な助手様ですね…、わからない事があればなんでも聞いてください♡」


「感謝いたしますルク。私たちの滞在の目的はこの村の学術調査です。

そのため、村のあちこちを見させて欲しいのです」


「はい、存じております♪ 私たちも村について学者様に取り上げていただけるのは、とても嬉しいのです。ただ見ての通りの辺鄙なところですから、ご期待に沿えるかどうか…」


発話の度にゆさと揺れる肉付きは助手の視線を嫌でも吸い込む。特に胸は大きく前方へ張り出し、服の胸部をパツパツに張らせている。

民族衣装だろう、女性達は上品な光沢のある絹のローブを纏い全身を覆っている。

その中にあってルクはただ1人だけ、ローブの上から銀織物の羽織を肩にかけており、位の高さが見て取れた。


頭には白い花冠を戴く。その花は村を天蓋のように覆う白い花と同じものであった。

他の女性も頭には花冠を装着し、どうやらそれが村の女性達の正装の様だった。


「では早速、滞在中の寝屋処へとご案内いたしましょう。こんな所でもなんでしょうし。

これから1週間の滞在の間はそちらで快適にお過ごしください」


ルクが微笑み、まぶたの隙間から茶色の瞳が覗いた時、助手はなぜかゾクと震えるような心地を覚えた。

だが、その理由が判明するのはもっとずっと後のことだった。



───。

──。

─。



その村はとにかく風変りだった。

ここにしか咲かないという白い花があちらこちらに咲いている。

道端や空地のみならず、その蔓が家の外壁に絡みついて掌大の花弁を開かせている。

その白花はフィメの花と呼ばれ、それが集落の名、そして民族の名にもなっていた。彼女達の生活は常にその花と共にあると言ってもよい。


村は遠巻きに目にしたとおり、フィメの花蔓が作る日除けの下に作られていた。

地上の支柱から隆起しパラソルのように放射状に広がるツタのその下に集落は抱かれている。

縦横複雑に絡み合って幅を取る天蓋屋根は、端々に満開の白い花をつけ、上空から集落を観察すれば、ジャングルの中に突如巨大な蜘蛛の巣が出現したかのように映るであろう。


「この村の空を覆うドームは先祖代々より一族が総出で維持してきたものです。フィメの花の蔓を時間をかけて伸ばし絡ませ作り上げてきました」


「これは凄い、天然の日除けというわけですね……、それで村の女性の肌が透き通るようにみずみずしいという訳だ」


「ふふ、お上手ですね♡」と笑いながら先導するルクとお付きの女性達。体を揺らしながら歩く女性達の後姿に助手の視線は吸い込まれた。

──全員が博士と同等かそれ以上の長身、そして途轍もない美人であった。目はぱっちと大きく顔は小さい。

身体を覆う白いシルクのローブ。体を揺らす歩様に合わせ布のスキマから弾けるような生肌と肉の膨らみが覗き、助手は会話に集中できない。


大きな腰元は小柄な助手の体幹よりも大きく力強い。おまけにクビレの出来た腰のラインもクッキリと浮き出ている。

左右に揺れる胸。背中側からでも体のラインをはみ出す乳房のラインが確認できる。

鎖骨辺りから急激に突き出し、丸みのある球を描く乳房。

突き出した大きな乳肉がユサユサと揺れ、目は自然とそれを追ってしまう。


「──助手様、どうかされましたか?」

とルクの問いかけにも気が付かない程に、助手の意識は目の前を行く女体に吸い込まれていた。


「あ、あぁすみません! 少し考え事をしてしまって…」とあわてて誤魔化す。

もしや視姦がバレただろうかと冷や汗をかいたが、どうやら大丈夫なようだ。助手はひとまず胸をなでおろす。


気が付くと一行は村の中心部にまで来ていた。赤土の道が開けて石畳で地面が舗装されている。

中央の広場を取り囲むように炊事場や洗濯場があって、地下水を引いた水路もあった。


「あちらの方には畑がありますし、川沿いには生け簀と罠があって魚には困りません。 食材は毎日こちらに運ばれ、すぐに調理されるんですよ」


「それは素晴らしい ジャングルの奥地でこれほど豊かな暮らしをしているとは全く思いませんでした」


博士の言う通り、綺麗な水に舗装された道、清掃は隅まで行き届いて生活に余裕を感じさせる。

フィメ族はジャングルで狩猟採集の生活を営んでいると聞いていたが、その実態については謎に包まれていた。それがこれほど洗練された生活を送っているとは思いもしなかった。


「お褒めいただき光栄です♡ 見てのとおり村には女性しかおりませんが、狩りから炊事まで皆で助け合って暮らしているのです」


「村に男性がいないというのは知っていました。ですがどうやって生活を成り立たせているのでしょうか?」


確かに村に男性はおらず、すれ違い村人も皆が女性であった。

しかし女性だけでどのように生活を成り立たせているのかは大きな謎であった。それを調べることが今回のフィールドワークの目的の一つである。


「ふふ、それは追々…♡ ひとまずは博士様と助手様の宿坊へとご案内いたしましょう♪」


囁くようにクスリと笑うルク。とらえどころのない女性だ。

所作の一つ一つが助手の意識を刺激し、かき乱す。


宿坊への道を歩く際も博士と助手は女性達からにこやかな挨拶を振り撒かれる。

やはり男が珍しいのだろう。熱い視線が明らかに助手に注がれて、えも言えないドキドキとした高揚感を覚えた。

長身のフィメ族はローブのような純白の民族衣装を纏い、道端でのおしゃべりや炊事に追われていた。


「今日は博士様、それに助手様をおもてなしする宴なんです♪ みなとても心待ちにしていたのですよ…♡」


確かに村人たちは料理を拵えている様子だった。フルーツや魚が並べられ、調理の真っ最中だ。


「こちらがお二人の宿坊でございます」


通されたのは、広場から少し先へ進んだところにある籐葺屋根の家だった。

決して広くはないが、頑強な木材で作られた快適そうな寝床だ。地上から持ち上がる高床のつくりになっており、地面からの湿気や害虫を遮る工夫がなされていた。

ベッドが2台並べられているだけの簡素な居室。だが調査には必要十分だ。


「お、よかったね助手君。 ベッドが2つだ、それともこの前みたいに1つの方がよかったかな?ふふっ♡」


「ちょ、ちょっと博士何言ってるんですか!」


「まぁまぁ♡ 博士様と助手様は仲がよろしいのですね…♡ 1つのベッドにするよう係に申しつけましょうか?」


「る、ルクさんも、博士の冗談なので、気にしないでください!」


「ふふ、それはさておいて。早速村を回ってみたいのですが、ルク、案内をしていただけますか?」


「はい、もちろんでございます。夕餉までの時間にはなりますが、簡単にご紹介いたしましょう」


博士と助手は荷物を簡素な宿坊へ置くと、カメラとノートをもってフィールドワークへと飛び出した。

広場に戻って辺りを散策したり、枝分かれした道を方々へ進んだ。


ルクの案内は適切で丁寧だった。建築から風習のことまで、外部の人間が興味のありそうな物事を逐一提示してくれる。

現地人にとっては当たり前であっても、ヨソから見ると学術的に目を引くものが多いことを彼女は理解していた。


博士はルクや村人と話しながら、どんどんと先へ進む。

助手はそのあとを必死に追いかけ、写真を撮り、文章で記録を残した。

「ここを撮れ」「あれをメモしろ」と矢継ぎ早に指示を出す博士について行くので精一杯だ。


若い女性が共同で暮らす長屋の様な建物。澄んだ水の流れる用水路。白花で飾り立てられた家々。天蓋ドームの支柱。

次から次へと目に映る興味深い物の概要をチェックして一行は村の更に奥へと進む。


村域を離れジャングルに拓かれた道をしばらく歩くと、広い空間に出た。

鬱蒼とした木々の奥にぽっかりと空洞のような平地が現れる。フィメの花が咲き乱れた白い花畑のその中に木造りの建物が見えた。


「ほぅ、これはフィメの村の神様だ、こんな村奥にあるとはね」


頑健な作りの木造の社のなかに木彫りの偶像が置かれている。


「ルクさん、これはこの村で信仰の対象となっているという花の精霊の像でしょうか? 」


「えぇその通り。助手様はよくご存知ですね…♡ 村には白花信仰、すなわちフィメの花の精霊を祀る風習があります。

村のあちこちで花が大切に扱われているのを見たでしょう。例えばアクセサリーもそうですね♪」


ルクは頭の花冠や手首のブレスレット。豊かな胸元の飾りを示した。


「フィメの花は1年中花をつけ、食料や薬になります。それにどこまでも伸びる強靭なツタはご覧の通りの日陰を村につくり、繁栄をもたらしてくれるのです…♪

この村とは切っても切り離せない花。それを祀っているのがこの祠ということになります」


花について話す時。ルクはまるで自分の事を話すように楽しそうに話した。


博士と助手は祠の周りを散策し始める。

木像の御前には石の祭壇が置かれ、その上には色とりどりの果物や宝石、それにフィメの花弁が供えられていた。

像は白くツヤツヤとした堅木で作られており、見上げると数メートルの大きさがある。

名のある職人の手で削られたであろう木の表面はなめらかで、彫られた曲線のラインが縦横に走っている。


その形や装飾の意味はこれっぽちも分からなくても、村人から大切にされているということはわかった。


「──このテントは何だろうね、儀式か何かで使うんだろうか」

「像の方向を向いて置かれているので、たぶん儀式用じゃないでしょうか」

2人の関心は像の周りに設置された布製の大きなテントのようなものに注がれた。


同型のものが2つ。それぞれ離れて置かれている。像の隣に三角錐の布幕が立ち上がり、何人も入れそうなほどの大きさがある。

だが入口には幕が下りて肝心の中は見えない。これは一体何に使うものであろうか。


そうこうしているうちに、時間は夕方になっている。像や信仰について、本当はもっと色々と調べたかったのだが、夕食の時間が近づいていたため切り上げることにした。

特に博士はまだ調査を続けたい様子だった。

だが、2人のために用意された夕餉を無下にするほど頑なな人ではなかった。


「ルク。明日以降ですが、我々が自由に村の中を調査してもよろしいでしょうか? もちろん生活のお邪魔はいたしませんので」


「はい。基本的にはどちらを見ていただいてもかまいませんよ♪

本当はご一緒したいのですが… 私も明日以降、不在にしている時間もありますから」


「おお!ルクさんありがとうございます! それはとっても助かります!」


「はい、助手様もどうぞご自由にご覧くださいね♪ 村の皆には伝えておきます」


調査が自由かつ容易に行えることに2人は安堵した。過去に行ったフィールドワークでは、村人はよそ者に必ずしも好意的ではなかったからだ。


「ただ、ひとつだけ──」と、神妙な面持ちでルクが話しはじめる。

初めて見せるような真剣な表情で、常時浮かんでいた笑みは消えていた。


「ひとつだけお願いがございます。 夜間、このあたりに近寄ってはいけません。

昼間は問題ないのですが、ここでは夜に一族の大切な儀式が行われているのです

信仰に関わる重要な儀式のため、決して興味本位で来てはいけません。約束していただけますか?」


まっすぐ揺るぎない視線が2人を射抜く。彼女の迫力に気圧されるようだ。


「もちろんです。我々も神聖な儀式にまで踏み込むつもりはありません」

博士の言葉に合わせ、助手もコクコクと首を振った。


「ありがとうございます♡ では広場へと戻りましょう♪ 夕食の用意もできているはずです♡」


ニコリと微笑むいつもの柔和なルクに戻り、一行は広場へと戻った。



───。

──。

─。



広場に戻ると、宴席が設けられていた。

人々は楕円形の輪になって腰を下ろし、その中央には大きな葉に盛られた数々の料理が並んでいる。

博士と助手の2人は一段高い席に腰を下ろし、別格の待遇を受けていた。


ルクが村人に向け、何かを話す。

現地の言葉は助手には全く分からない。恐らく「遠方から来た研究者とその助手」くらいの紹介を受けたのだろう。

村の長であるルクが話し終えると、村人は笑顔を2人の宴席へ向けて拍手をした。


それが宴の始まりだったらしい。

積まれた食事が手に取られ、俄にガヤガヤとした賑やかな喧騒に包まれた。


博士と助手にも料理が運ばれた。

異文化の食という事で、初め恐る恐る口にした料理は、どれも洗練されていた。

魚や肉は新鮮で臭みなど微塵も感じられない。付け合わせに並んだフルーツや根菜の皿にも手が止まらなかった。


「すごい歓迎ムードですね博士、ご飯は美味しいし、村の人がみんな優しくてよかったです」


「ふふ、気に入ったなら調査の後もしばらく居ていいんだぞ、こんな美人揃いの村で過ごすなんて素敵な休暇じゃないか」


「いやぁ…、みんな美人すぎて僕には吊り合いませんよ」


「──うふふ、私達は大歓迎ですわ♡」


声のする方を見るとルクが立っていた。優雅な足取りでテーブルに近付く。

手に持ったグラスを2人に差し出した。


「博士様、助手様。 一緒にお飲み物はいかがでしょう♪ これはフィメ花の蜜で作ったリキュールでございます。

花の蜜を蒸留酒で割っています。村の特産ですので是非召し上がってみてください」


グラスの底で琥珀色の綺麗な液体が揺れていた。


「ほほう! これは珍しい。是非いただきましょう」


まずは博士がグイと杯を干した。

「わ、すごいこれ…♡」


助手もそれに合わせてグラスをゆっくりと傾ける。


一口含むと、華やかな香りが鼻腔に抜けた。

トロンと重たい蜜が織布のように舌の表面をふわっと覆う。直後粘度のある雫がゆっくりと口内を下りて胃袋に落ちた。

全身が身震いするような多幸感に溢れ、全身の余計な力が抜けていく様だ。


「すごい…!とっても美味しいです」


「それはよかった♡ 今朝採取したばかりの蜜なので香りがいいんです♪ お二人とも好きなだけおかわりしてくださいね♡」


そう言うとルクは村人の輪の中に消えていった。

豪華な食事に驚くほど美味な蜜酒。特に酒の方は博士が大いに気に入って、グラスを先程から何杯も開けている。


だがそれ以上に助手の心を昂らせたのは、目に映る村の女性の姿だった。


村人達は皆極上の美貌を備え、溢れんばかりの肉付きを欲しいままにしている。

ローブ一枚を隔てた先では胸がたわわに実り、腰元が妖しく流れている。


特に「ゆさ、ゆさ」と彼女達が歩く度に大きく弾む胸元は目に毒だ。

料理や酒をサーブする係の女性達が助手の前を通るたび、自然とそれを目で追う自分がいた。

いけない。そうは思いながらも村人たちの肉付きに心を奪われてしまっていた。


「あんまりジロジロとみているとバレるぞ…今日ずっと彼女たちに釘付けじゃないか…♪」


そう博士に耳打ちされたとき、助手は必死に冷静さを取り繕うので精一杯だった。


「い、いや、そんなことないですよ〜!」

誤魔化すようにグラスを飲み干す。

村人達の蠱惑的な肉体はもちろん。辺りに充満する香りも、助手の心をかき乱す原因の1つだった。

それはフィメの花の香りである。ユリの花のように甘ったるくジャコウのように野趣のある。心をザワつかせる香が周囲に充満しているのだ。

上空を覆う天蓋のツタが、風で香りが流れるのを妨げ、おかげで辺り一帯は花蜜の香りがムンムンと立ち込める特異な空間となっている。


「なんだか、クラクラするな…」

甘い独特の芳香と花蜜の酒がゆっくりと感覚を浸潤して、助手は幸福感に包まれる。


食事中も村人はこちらが気になるようで、若い女性たちは助手の方を頻りにチラチラと見て、目が合うとニコリとほほ笑んでくる。


年頃の娘たちは耳打ちで何かを話し、助手の方を見て笑った。どうやら意識され、話題にされているようだ。その視線から逃げるように助手は杯を乾かした。


宴もたけなわ。

食べきれない程の料理を平らげ、いささか苦しくなった助手は腹ごなしに村の中を散歩することにした。

「はいはい行ってきなさい」と上機嫌の博士を宴に残し、助手は席を立った。


「あんまり飲み過ぎないでくださいよ」と耳打ちしても、シッシと手の甲で追い払われてしまった。


すっかり日も落ちて、村には灯りがともる。


宴が続く中央の広場を離れると、すぐに喧騒が小さくなって、静かな夜の森が顔を見せる。

虫の鳴き声や河が流れる音が聞こえて、夜風が涼しい。


「とりあえずグルっと回って来ようかな」


助手は中央の広場から放射状に延びる道を進み、畑や生け簀のあるという川の方へ赴いた。

幸い月が明るく、道中には松明が煌々と輝いていたので夜道にも不安はなかった。


フラフラと歩いていくうちに、助手はいつしか村の最奥に到着していた。


昼間に村の神様の像を見た場所だ。

「ハッ」と息を呑む。


夜近付くなと言われたこの場所にたどり着いてしまったことに、助手はまず焦った。だがそれよりも神秘的な雰囲気を放つその場所に呑まれていた。

社の周りに咲くフィメの花が月光を受けて揺れ、むせるような芳香が辺りに立ち込めている。


村の者にとって聖域だというその場所は、とりわけ静かだ。

目の前には硬木で彫られた神の像。花の精霊の像だという。

日中は細部まで見えなかったその像は、月の光を受け、隠していた秘密を詳らかにしていた。


これは女性の像なのだ。

胸の膨らみにクビレ、そして腰元から脚のラインまでが艶っぽく。女体を象っているのがわかった。

単に「花の精霊」とだけ言うにはあまりにも蠱惑的だ。


この村に女性しかいない事実と何か関係があるのだろうか──。

助手が思索を始めたその時であった。


──誰か来る。

足音を立てて、複数人がこちらへと近づいて来る。助手の心臓は高鳴った。禁忌を侵したことを見つかれば、ただでは済まされない。

助手は咄嗟に近くの茂みに隠れ、息を殺した。

こちらへと近づいてくるのは10人ほど。ヒタヒタとした足音が急ぐ。

松明を持ち先導するリーダー役の女性の後ろを村人が1列になって。最後尾にはあどけない少年の姿がが。


──少年!?

助手は確かに少年、即ち男を見た。パッチリとした二重で可愛らしい外見の。まだ10代かそこらの年齢だろう。幼いと言い換えても良かった。

村には当然女性しかいないと聞いていたのでとても驚いた。


数人の女性達が少年を手を引いて歩いていた。宴にはいなかった女性達だ。


皆笑みを湛えて楽しそうにしている。だがその反面、少年の表情は暗く見えた。

助手の隠れている茂みの目の前を通り過ぎ、社のさらに奥へと向かう。


そこには昼間目にしたテントがあり、一行はその前に立ち止まった。

一体何をしているのだろう──?

助手が疑問を抱いたとき、テントの入口が開かれ、女性達はするすると中へ入っていく。


1人、2人と順番にテントの中へ消える。ぽっかりと開いた暗闇のような入口から奥の空間へと女体が消える。


そして最後、少年の手を引きテントの中へ押し込もうとする女性達。

だが少年は首を振って抵抗しているように見える。手を振りほどこうと暴れ、泣きそうな声をあげた。

だがその抵抗も実らず、少年は結局テントの中に押し込まれてしまった。


──いまのはなんだ。

助手は目の前で起きたことを整理できなかった。


男性のいないはずの村に少年がいる。

それも夜来てはいけないと伝えられた神聖な区画に。状況を整理する間もなく、彼はテントの中に呑み込まれてしまったのだ。


──では、あのテントの中で何が行われているのだろうか。


昼間ルクが言っていたのは「信仰に関する儀式」が夜に行われるということだ。であればきっと今見たのも儀式に関することだろう。


ここで引き返せば無事だったかもしれない。だが助手の体は自然とテントの方向へと向かっていた。

純粋な好奇心、学者の卵としての性分が顔を覗かせ、足取りはまっすぐテントにのびる。


息を殺し、テントに相対する。

生唾を飲み込み、覚悟を決め入口の布の隙間に出来た穴に顔を近づけ中を覗く──。


「!?」

出そうになった悲鳴を助手は寸でのところで押し留めた。


裸、裸体が視界一杯に映る。全裸、花冠以外には何も身に付けていない

無数の女体が立ち上がり、座り、血色よく朱に染まって中央へ向いている。

テントの中には少年と、それを取り囲む十数人の女性達がいた。


目の眩むような、妖艶な肉体が押し寄せているのは先程の少年の体だ。小さな体で1人で女肉の波を受け止めている。


少年は左右から大柄の女性に脇を抱えられるようにして直立させられ、仁王立ちした股座の間には女が膝をついている。


『じゅっぷ♡ じゅっぷ♡ じゅっぷ♡』


軽妙なリズムで前後する美しい顔。

少年のペニスを含んで口を前後に動かす。

口内粘膜がペニスにピッチリと絡んでいると見えて、ストロークの度に『ぐぽっ…♡』と粘音があがる。


「んあっ… んふぅ…」

目を閉じ、切なそうに鳴く少年。小柄な体はしっかりと左右から抱えられて逃げることも出来ない。腰が引けそうになっても腕を持ち直されて無理やり立たされている。


『じゅぷ♡ じゅぷ♡ じゅぷ♡』


ピストンの間隔が短くなる。頬を窪ませたバキューム口淫があどけないペニスに降り注ぎ、少年の身が左右に捩れる。


『じゅぷ♡じゅぷ♡じゅる♡』

上目遣いで少年の表情を確認し、何かを感じ取った女性はフェラチオのペースをさらにあげた。


『じゅぷ♡ジュル♡ ぐぽっ♡ぐぽ♡』


一心不乱に顔を振り乱し、暴れる細腰を両腕で抱き締めた。少年の背後に手を回し、しっかりホールドする。

──瞬間、少年の膝がカクカクと震え出す。


「んあっ…! んンくっ、あっ」


少年は泣きそうな嬌声漏らし、周囲のギャラリーはその様子を楽しそうに見ている。

現地語で射精を煽るような言葉が飛び交って、少年は一層高く喘いだ。


「んぁ、んんっ♡〜〜♡」

──『じゅぼ♡じゅぼ♡ジュ゛〜〜♡じゅる〜♡』


──びゅるぐ゛ びゅぐん゛ぶりゅりゅ。

『ぐっ、ぽん…♡ じゅるるっぅ…♡』


射精。

ビュービューと女性の口内に白濁が放出される音が響き、追いかけるように口唇がペニスを吸い上げる音がそれを上書きした。


少年を口内射精に追い込んだ女性は、うっとりした表情を浮かべる。だがフェラチオは終わらない。口先を目いっぱい尖らせながら亀頭を啜りあげている。尿道を徹底的に濾して取るような唇の陰圧に、少年が全身を震わせ崩れ落ちた。


仰向けの少年。ハァハァと息を弾ませ、目には涙を溜めている。『ちゅぽん♡』と音がして引き抜かれたペニスはヒクヒクと痙攣している。

女性は少年に近づき口を開ける。

そうして彼の成果を見せつけた後で、恭しく飲み込んだ。


「───!」


何事かを懇願する少年。だが願いは届かない。場所を交代するように今度は2人の女性が少年に近づき、青ざめた。


「──幸せそうなお顔ですよね」


透き通る声がして助手が振り向くと、フィメ=ルクが立っていた。


彼女の背後には、お付きの女性達が4人ほど立っていて、軽蔑と期待の混じった視線を助手へ向けている。


「見てしまわれたのですね…♡」


「あ、ち違うんです!散歩していたら道に迷って!」


「聡明な助手様であれば、お約束はお守りいただけるかと。そう思っていたのですが…」


ふー、とルクが溜息をつく。


「あまり、こうしたくはなかったのですが、仕方ありませんね…♡」


その言葉を合図にその背後の女性達が進み出る。異様な雰囲気、月光を受けて輝く長身の肢体が立ち塞がって少年はすぐに取り囲まれる。


「あ、あの、ご、ごめんなさい! 覗くつもりはなかったんです!」


「お話は後で聞きますね…、では……♡」


従者が腰に提げたボトルを取り出し、中身を口に含む。口の端から雫が1本線を引いた。


次の行動が読めず狼狽える助手。

従者が近づき、助手の顎をクイと持ち上げ、くちづけをした。

大きく熱い女性の舌が助手の口蓋に割って入り、同時に液体が押し込まれる。


「んぷっ、なにっ、んんっ!」

『れろ♡ んちゅう♡ ぁぇれろん♡』

「んっ、、んっんっ、、」


顔を固定され、舌を絡ませられる。

質量もテクニックも天地の差がある2人のキス。助手の舌は一瞬のうちに組み伏せられ、言いなりになった。


遅れて流れ込んでくるのは甘く重たい粘液。


それは宴で饗応されたフィメの花蜜の味だった。しかし風味・甘味は比較にならないほど鮮烈で、原液のようだ。


「んあっ…♡ んあふっ…♡なに、コレぇ」


蜜が喉を伝うや否や、酩酊するような感覚を覚える。脳が痺れ、思考や恐怖は薄れる。

あとに残るのは多幸感と、体の熱だけだった。


──足が震えて、天地が回る。上も下もわからないままに気が付けば、助手は女性の身体にクタリと寄りかかっていた。


助手は陶酔した思考の中で自分からキスを求め、相手もそれを受け入れる。舌の根深くに侵入した舌先が追加の蜜を置いて、まもなく胃袋に流れ落ちた。


そうして助手の意識は失われた。

夢の中、覚えているのは体を抱えあげられる感覚。そしてくすくすと嗤う女達の声であった。


(続く)

(先行)熱の白花 〜白花信仰の村を訪れた助手がパイズリでからからに絞られる話〜 前編

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