冬優子はずっと風呂場で自慰行為に耽っていた。 両手で二本の角を握りしめ、 男性がシンボルを扱く行為さながらの歪んだ自慰行為。 「ギヒ♡・・ギヒ♡・・ギッ!!」 そして冬優子は何度目かの絶頂を迎えた。 それに応えるかのように角の先端から謎の白い粘液が噴き出す。 「ア・・アハ♡アーーーッ♡」 冬優子はその樣子をうっとりとした眼で見上げ垂れ落ちてくる粘液を長く変化してしまった舌で受け止め舐めずった。 「ギヒッ!!」 何度目かの強烈な快感が舌の先から全身へと突き抜ける。 冬優子は落雷を受けたような衝撃と共に仰け反った。 すると全身に浮き出た紋様が妖しく光る。 たちまち快楽と同時に押し寄せる強烈な力と充足感が冬優子を満たす。 「ア・・・ア♡・・アハ・・・♡」 快楽に身を浸しだらしない声を漏らす冬優子。 そしている間も、湧き上がる力は冬優子の身体をじわじわと変質させていった。 体躯はメキメキと不快な音をたてて強靭な肉体へと作り替えられた。肌は赤みを帯びた浅黒い色になり、浮き出た紋様がその身体を彩った。角は逞しく成長し、爪や牙が生え、舌が長く変質した。 両の眼は白目が黒く濁り、瞳は妖しい光を放っていた。 既に日は落ち浴室内は真っ暗になっていたが、 冬優子の瞳には真昼のように映っていた。 (ちょっト・・コレいったイどういうことナのよ・・キモチいい・・けど、このままじゃ・・やバい・・なんなのコのからダ・・角・・?あれ、もしかシてホンモの?・・妖怪?・・そんなバカなこト・・) 絶頂を迎えて少しだけ正気を取り戻した冬優子は何度目かの状況考察を始める。 (とにかク、ここからラ出てだれかにシラセテたすケて・・) (助けをっテ、誰に?こんな姿をダレにサラすの?) (だいたいナンなのヨ!こノいまイマしい角!!ふユから離れナさイよ!!) 冬優子はもたれ掛かる浴槽の縁を憤りに任せて握り締める。するとそれはまるで紙細工のようにいとも簡単に砕け散った。しかし冬優子はそんな事など気にも留めず、既に己のモノとなってしまった角の存在にありったけの憎悪の念を向けた。 「コの!離レロ!!」 冬優子は再び両手で角を握りしめた。角は即座に反応して冬優子に強い快感を伝える。しかし今度のそれは先ほどのような仰け反るほどの快楽とは少し違っていた。明らかに快感の度合いが弱くなっていた。 「ンギ!?・・アれ?・・なんなノ・・こレ?」 憎惡しながらも、のたうつような快感にどこか期待し備えていた冬優子にとってそれは途轍もなく拍子抜けだった。心構えを裏切られた事で動搖した冬優子は慌てて角をしごいてみた。角から分泌された白い粘液がニチャニチャと淫らな音を立てる。 「あ・・ん・・フ・・フヒ♡・・ンヒ!!」 冬優子が絶頂を迎えると、身体の紋様が鈍く光り角から一層の粘液が噴き出した。 その量は先ほどよりも少なく、絶頂の度合いも弱く鈍くなっている。 先ほどまで劇的に感じられていた身体の変化も、ひと段落したかのようにほぼ見られなくなってきていた。 「ナンデ・・チョット・・まってヨ・・マサカ・・?」 粘液に塗れた両手を見つめながら、 冬優子は絶頂後の冴えた頭で一つの結論に辿り着いた。 「コノつノカラフキデタものッテ・・モシカシテふゆノ・・ヒトトシテのヨウソ・・人間性・・?」 冬優子の両手が小刻みに震える。 もしかして自分は快楽に流されとんでもない過ちを犯してしまったのではないか?こんなに出してしまったのだとしたら、もう元に戻れずこの人を超越した鬼としての素敵な姿で生きていくしかないのではないか? 「エ?」 いま自分は何を考えた?冬優子の脳は混乱した。この姿が素敵? 誰がそんな心にもない事を?太古に滅ぼされし鬼の一員として新しい生と身体を与えられた己が人の精を喰らって生きる素晴らしい 「チョット、ふゆ!シッカリシナサイ!」 何か変だ。新しい何かが自分の中にいる。このままではマズい。 冬優子の中で微かに警鐘が鳴った。 「ハヤクナントカシナキャ・・ダレデモイイカラハヤクタベナイト・・」 冬優子はのろのろと浴室を出て、テーブルの上に置かれたスマートフォンを握りつぶさないようにそっと掴んだ。 長く伸びた爪に苛立ちながらもなんとかスマートフォンを操作し、 チェイン画面を開きメッセージを入れる。相手は選ぶまでもない。 入力が終わるや否や、冬優子は興味が失せたといわんばかりにスマートフォンを投げ捨てた。そして床に転がり込んで自慰行為に耽り始める。 「ハヤクキナサイヨネ。ふゆ、オナカガスイテシカタガナイワ」 暗闇の中、己の角と秘所を愛撫する鬼は涎を垂らしながら邪な笑みを浮かべ、餌の到来を待ち焦がれた。 片隅には放置されたスマートフォンのチェイン画面が淋しく光っていた。 【プロデューサー、たすけて】