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ハッピーバースデイめぐる

日本を震撼させた飛行機事故で、めぐるは全てを失った。 ひょんなことから突如イルミネーションスターズに舞い込んだ海外ロケ、すっかり浮かれ気分ではしゃぎながら機上の人となっためぐるは真乃、灯織と楽しく機内で談笑していた。灯織にもう少し静かにするように窘められるが、溢れ出る興奮にわが身を抑えきれずにすぐいつもの調子で捲し立てながら二人に話しかけてしまう。そんなめぐるを見やって灯織はもう、と少し困った顔で微笑む。そんな二人を見て真乃もふふっといつもの愛らしいしぐさで微笑んだ。めぐるの心は溢れ出んばかりに満たされていた。 (ずっとこんな時間がつづけばいいな) ふと形容し難いぼんやりとした不安を感じためぐるは心の中でそうつぶやいた。しかし現実は即座にそれを否定してきた。 がくん。 機体がそう聞きなれない音をたてて激しく揺れた。 めぐるがその現実を受け入れる間もなく窓の外から炎が見えた。 ジェットコースターでしか体験したことのないあの独特な落ちる感覚、機内に響き渡る悲鳴、弾け出す酸素吸入器、散乱する荷物、非現実的な光景が次々と押し寄せるがめぐるの脳は処理しきれない。 めぐるは考えるのを止め大切な二人を見やる。 二人とも見たことも無い恐怖の表情を浮かべていた。 二人の間に座っていためぐるは咄嗟に二人へ手を伸ばし、その手をぎゅっと握りしめた。二人もそれに応え強く握り返してくる。 めぐるは未だ現実を受け入れられないでいたが、これから訪れるであろう結末は理解できた。 (それは仕方がないとしても、一人はいやだ。) めぐるは頬をつたう大粒の涙を感じながら二人の手を一層強く握りしめ、到来するであろう結末に備えた。 「ずっと!・・・いっしょだよ!」 めぐるがそう叫んだと同時に一層激しい轟音が全てを飲み込んだ。 「〇〇航空事故、邦人含む死者、行方不明者多数」 「未曽有の大事故、救助活動難航」 「人気アイドルグループ搭乗か」 「奇跡的生存、八宮めぐるさん救助。他二人は以前行方不明」 「〇〇航空事故、捜索一時打ち切り」 めぐるはようやく帰宅した自室で明かりも点けずに一人うずくまってぼんやりと虚空を眺めていた。 めぐるは漂流物に引っ掛かっていたところを奇跡的に助けれられていた。 酷い傷を負ってはいたが命に別状は無く、救助後国内に回送され回復とリハビリに長い時間を掛けて無事社会復帰していた。それからは大惨事から生還した数少ない生存者として、唯一生存していたアイドルとしてマスコミから追求される事を避けるために一日中家に籠る日々が続いていた。 プロデューサーや事務所の仲間たちが連日気を遣いめぐるの元を訪れたが、めぐるは以前のめぐるでは無くなっていた。 何を話しかけてもぼんやりと現実感が無く、ふと真乃や灯織の事を語りだしたかと思うと突然泣き叫んで収集が付かなくなる。 PTSD、医者の見立てはかなり重く、完全な社会復帰にはかなり時間がかかるとの事だった。 もう少し病院で治療すべきと医者は判断していたが、めぐるが虚空を見つめながらしきりに「帰らせて」と言い出したため、めぐるを尊重したプロデューサーは彼女を家に帰してやってくれと医者に請願し帰宅と相成った。 帰宅してからめぐるは虚空を見つめながら、何故自分が頑なに帰宅を望んだのだろうとずっと考えていた。事故後の喪失感はかなりのもので、今こそ持ち直してはいるがめぐるの生への執著はほぼ完全に喪われてしまっていた。 「灯織・・真乃・・会いたい・・あいだいよお゛・・」 大粒の涙が零れめぐるの頬を濡らす。 するとめぐるの脳裏に一冊の本が思い起こされた。 母の家に伝わる先祖伝来の本であり黒魔術の本だと言っていた代物。そしてそれは決して開いて読んではいけないと。 幼少期のめぐるは当然興味をそそられ、それを見せてくれと母によくせがんだ。しかし母は「あなたが大人になれば全て詳しく話し譲り渡す」と告げたきり、現物さえついぞ見ることが出来なかった本。それが何故かくっきりとした形で思い起こされた。そしてそれがどこに有るのかも。めぐるはすっかりそれが気になってしまい、確かめずにはいられなくなっていた。めぐるは地下の物置に下り、知るはずの無い隠し場所にたどり着いた。地下室の積み上げられた本の山を丁寧にどかすとそれは現れた。黒く黴臭い羊皮紙のような紙で出来た歪な装丁が施された分厚い本。不思議とめぐるにはそれが母が言っていた先祖伝来の本だと理解出来ていた。そしてそれを開き読み上げねばと何かが囃し立てる。めぐるの心が、それは開いてはいけないと不思議な警鐘を鳴らす。しかし本を開くと真乃や灯織が戻ってくるような根拠の無い希望がめぐるを支配し、警鐘はめぐるを動かすことはできなかった。めぐるがゆっくりと本を開くと不気味な風が本から吹き上げた。腐った食物のような黒い臭い。めぐるがそれにむせる間もなく、気味の悪い誰かの思念がめぐるの脳内に流れ込んだ。 本を  読み上げねば めぐるは見たことも無い文字と図形の羅列を知らない言語で流暢に読み上げる。すると本から吹き上げる風と共に臓物のような色をした何かが吹き出してきた。 (なに・・?これ・・蛸・・?) めぐるが蛸と形容したそれは形容しがたい色で蠢く無数の触手だった。それが瞬く間に地下室全体に広がり、理解できずに唖然とするめぐるを瞬く間に絡め取った。するとめぐるの服がざらざらと砂のように風化して崩れ落ちてしまった。 「ひっ・・!?」 めぐるが恐怖を認識し悲鳴を上げかけると、触手は素早くめぐるの耳や乳首、臍、秘所、肛門に触手を突き挿した。 「ぎぅ!!」 そのショックでめぐるは絞り出すようなうめき声を上げた。 瞬時に到来するであろう激痛を覚悟したが、それは訪れなかった。それどころか不思議な快感が訪れた。触手から何かがどんどんと身体に流れ込み、満たされていくような不思議な感覚。めぐるは安堵し、手放しでそれを受け入れた。すると再び脳内に誰かの思念が流れ込んできた。言葉では言い表せない言葉。 「うん、・・うん・・」 めぐるは誰かの言葉に耳を傾けているかのように相槌を打ち続ける。 その間にも触手からはどんどんと何かが送り込まれていた。 めぐるの身体がどんどんと触手と同じような色へと変わっていく。 それと共にめぐるの身体は別の変調を迎えていた。角、牙、爪、尻尾、めぐるは徐々に人ならざる者へと変化していった。 そしてすべてが終わった時、触手と本は何処かへと消えてしまった。 後に残されたのは淫靡に笑う元人間の魔物だけだった。 「えへへ♡わかったよ!プロデューサーの魂で真乃と灯織を取り戻せるんだね♡まかせて!」 元人間のめぐるはうっとりとした眼で自身の身体を眺めながらそう呟いた。 「まっててねプロデューサー♡灯織と真乃が戻って来るんならプロデューサーもイイよね♡」

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Comments

感想ありがとうございます!妄想で突っ走って描いてしまいましたが、ここまでくると侵蝕後の姿も描いてみたいですねー。突然迫りくる謂れのない危機、プロデューサーはどうなってしまうのか!

囚人六号

テイストの異なる感じで良いですね! 侵食が完了した後の姿も妄想が捗ります! プロデューサーの魂を得た後にどうなるのかなどなどこの後の展開がすごく気になる感じですね!

中将


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