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対魔忍オンリー・新刊サンプル(500円プラン支援者様限定公開)

 くちゃくちゃと。何かを咀嚼するような音がした。

 山の主と称され、時に魔獣さえも喰い殺すと言われる巨大熊――その頭蓋が叩き潰され、亡骸が無造作に打ち捨てられている。

 その向こうで響く咀嚼音と微かな悲鳴。やがてすべての音が消えた時、暗がりから巨大な何かがぬっと姿を現した。

 巨大熊に比肩するほどの巨躯を宿す異形の巨人。口元の血よりも紅く染まった単眼がぎょろりと蠢き眼前の女を捉える。

 並の女であれば恐怖のあまり腰を抜かし、涙を流して無駄な命乞いを繰り返していただろうが目の前の女は違う。

 山登りには似つかわしくないメイド服を身に纏った彼女は余裕の笑みさえ浮かべ、ジッと異形を睨みつけていた。それが気に障ったのか、丸太のような腕がメイドめがけて勢いよく振り下ろされる。

 轟音と爆風。地面が爆ぜ、衝撃によって木々がなぎ倒される。

「GUUU……?」

 しかし手ごたえはなかった。いつの間にか背後に回っていたメイドはスカートを摘まみ、優雅な礼を披露する。

「五車学園三年、出雲鶴と申します。早速で申し訳ありませんが――あなた方には消えていただきます」

 トン、と爪先が地面を打った直後両足のサイボーグレッグが鋭利なブレードへと変化する。

 その瞬間、彼女は異形にとっての“餌”から“敵”へと昇格した。

「GURUUOOOOOOOOOOOOOO!」

 雄たけびが上がると同時、無数の気配がこちらへと迫ってくるのを感じた。雲の隙間から月明かりが差し込んだ時、その正体が露わになる。

 背中から蜘蛛の脚を生やした虎の獣人。

 両腕だけが異常に肥大化しているトロール。

 全身が甲殻で包まれているオーク……などなど。

 いずれも人型であるということ以外特に共通点はない。

 強いて言うのであれば全員が敵意と殺意を鶴へと向けている――それだけだ。

 数の差は圧倒的であり、異形たちは鶴を完全に取り囲み威嚇している。しかし腕利きの対魔忍である彼女にとってはこの程度さしたる問題でもなかった。

「参ります」

 鶴の身体が弾かれたように異形たちの前から消えた。

「ハッ!」

 月下に白刃が煌めき、迫りくる異形たちの身体をバラバラに斬り刻んでいく。

 対魔忍の格闘術――“対魔殺法”の中には足技のみで戦う秘技が存在する。その使い手である鶴にとっては図体がデカいだけの異形などただのデカい的だ。彼らの一撃は驚異的な破壊力こそあるが動きは鈍重で、かつ頭も悪い。連携もまともに取れず、互いに邪魔し合っている有様だ。

「フッ!」

 対する鶴の動きはさながら舞踊を思わせるほどに流麗であり、月明かりを背にして宙を舞う姿は幻想的ですらあった。異形たちの首に彼女自慢のブレードが叩き込まれていき、鮮血の花火が次々と打ち上がる。

「GUOO!」

 本能のみで生きる異形たちにとって彼女は如何ほどの脅威であったのだろうか。敵わぬとみるや木々をなぎ倒し、一目散に逃走を図る。

 けれどそれは失策であった。彼女に背を向けることはすなわち死を意味する。

「機遁の術――“最期巖”!」

 ライフルと化した鶴の右腕が火を噴いた。異形たちは断末魔の悲鳴さえ上げることができないまま肉塊へと変貌し、とうとうその場に静寂が訪れる。

 ふぅ、と嘆息する鶴であったが――まだだ。

 同胞たちの亡骸を踏みしめるようにして現れたのは、今しがた屠った異形たちとは根本的に異なる存在であった。

 身の丈は5メートル近くあり、赤黒く膨れ上がった醜い身体は溺死体を連想させる。動きは先の異形たち以上に鈍重であるが右へ左へ揺れながらよたよたと歩み寄ってくる様にはどこか言い知れぬ不気味さがあった。

(オーガ……?)

 潰れた梅干しじみた頭頂部からは二本の角のようなモノが飛び出していた。しかしそれは角と呼べるほどに硬くはなく、まるでウサギの耳かのようにひょこひょこと動いている。

 気味の悪い相手だがいずれにせよ葬るだけだ。そう判断した鶴はライフルと化した腕を構え、どてっぱらに銃弾の雨を叩き込む。

 ――が、

「効いてない⁉」

 膨れ上がった身体は異常なまでの柔軟性と弾性を宿しており、銃弾をほぼ無効化していた。そもそも痛覚自体存在していないのか、腹を撃たれたにもかかわらず気にした素振りもなくのそのそと歩み寄ってくる。

 弾丸を一転に集中させようと頭蓋を狙おうと結果は同じであった。おそらく衝撃に強い耐性がある。

 しかし、鶴の表情は依然として穏やかだ。銃での攻撃が無駄だと悟るやサイボーグレッグを再びブレードへと変化させ、目にも止まらぬスピードで駆けだす。

「――ッ!」

 鶴の姿を見失った異形はきょろきょろと辺りを見渡していたが、その動きが不意に止まる。

 気づけば、鶴は異形の頭を両足で抱き込むように背後から挟んでいた。肉に埋もれてほとんど隠れていた単眼が、薄く微笑む彼女を映す。

「ごきげんよう」

 ふわりと身を翻すと同時異形の首にうっすらと切れ目が入り、大きな頭がゴトッと地面に転がった。頭をなくした異形はしばし蠢いていたがやがて膝をつき、そのまま動かなくなる。

 殲滅にかかった時間は10分にも満たない。一仕事終えた鶴はやっと一息つき、ややあって地面に転がった異形の頭へと視線を落とした。

 角のように見えていたのは触覚であったようで、奇妙な縞々模様のそれは助けを求めるようにビチビチと跳ね回っていた。本能的な忌避感を覚えた彼女は両足のブレードでそれらを完膚なきまでに細切れにする。破片はそれでも動いていたがついには活動を停止した。

「……嫌な相手でしたね」

 身体に付着した体液をハンカチで拭いつつ周囲を見渡す。報告のあった異形たちに関してはこれで全部のはずだ。

 任務完了の報を入れると、程なくして待機していた回収部隊が到着した。状況の引継ぎを行い、事後処理を任せる。

「では、私はこれで」

 そう言って、そそくさとその場を後にする。部隊長は車を回すと言っていたがそれを待っていると帰る時間が遅くなってしまうため拒否した。彼女には一刻も早く帰らなければならない理由がある。

(小太郎さま……)

 自分を暗闇から救い出してくれた大切な主君。彼のことを考えるだけで胸がキュンと切なくなり、自然と頬が綻んでしまう。

 キッチリと任務を果たしたことを報告したら彼はきっと褒めてくれるだろう。もちろんそれ以上のこともしてくれるに違いない。それを考えると子宮が疼いて身体がポッと熱くなる。

 ここから五車学園まではかなりの距離があり、交通機関を利用したならば到着は明け方になってしまうが走って帰れば少なくとも数時間以内には着けるはずだ。

 愛しい主人に会いたい気持ちを滾らせ、先ほど以上に真剣な面立ちで全力疾走を続ける鶴。

 ――けれどその時彼女は気づいていなかった。

 異形の体液に紛れていた極小の生物が太ももで蠢いていることに。

 わずか数ミリほどの大きさしかないそれを触覚のみで察知することは不可能。まして主君のことを考えて浮かれ気分である鶴が違和感に気づけるはずもない。

 黒い芋虫のようなそれは蛇行しながらゆっくりと時間をかけて太ももを登っていき、ついに付け根へと到着すると細い身体をさらに薄くして下着の中へと潜り込んだ。茂った陰毛を掻き分けて進んでいき、


 ――つぷっ。


 淫裂へと身体を潜り込ませ、さらに奥を目指す。硬く閉ざされた子宮口も髪の毛より細いそれを阻むことはできず、容易く侵入を許してしまう。

 ついに目当ての場所へと到着したそれは歓喜のダンスを踊るように身をくねらせ、全身から細かな糸のようなモノを分泌させ子宮の中へとしっかりと根を張る。

「嗚呼、ご主人様……早くお会いしとうございます……」

 この期に及んで主君への想いに胸を躍らせる愚かなメイドは我が物顔で子宮を占拠するそれの正体さえ知らぬまま夜行列車に揺られていく。

 その末路が如何なるモノとなるのかさえもわからずに――。


 ***


「くっ、ぁぁぁ……っ」

 布団の中から鶴の切なそうな声が響く。彼女は衣服をはだけさせ、胸を揉みしだきながら自慰に耽っていた。

 白磁の肌はじっとりと汗ばみ、朱に染まっている。すでに幾度の絶頂に達しているのだろう。布団はバケツの水をひっくり返したように水浸しになっており、指は愛液でふやけてしまっている。

 それでも自慰をやめようとしない様はまるで何かに取り憑かれているかのようですらあった。

「ん、ぅぅぅ……ッ♡」

 つま先までもピンと突っ張り、わずかに身体を反り上げる。より強い快感を得るためか特に敏感な乳頭を千切れんばかりに抓り、手首まで捻じ込まんばかりの勢いで指を秘裂へと潜り込ませていた。

 絶頂の余韻に浸りビクビクと痙攣を続けていた彼女であったが、しばらくするとまた自分を慰め始める。

(身体が、熱い……ッ)

 身体が火照り、狂おしいほどに子宮が疼く感覚――これには覚えがあった。

 かつて斉藤半次郎という男に監禁されていた際致死量ギリギリの媚薬を注ぎ込まれたことがあったが今回もその時とよく似ていた。快楽のことしか頭になくなり、どれだけ絶頂しても決してそれからは解放されない。

 だが、なぜ――?

 思い当たるとすれば先日の任務だがすでに一週間が経過しようとしている。念のため検査は受けておいたが特に異常は見当たらなかった。そも、いくら遅効性の毒を浴びていたとしても発症が遅すぎる。

 だが日に日に症状は悪化していくばかりなのもまた事実で――

「あ、また……ッ♡ イ、くぅぅ……ッ♡」

 悩ましげな声を上げ、身をくねらせながら枕を噛みしめる。そうでもしないと無様な嬌声を屋敷中に響かせてしまいかねなかった。

 思考回路さえも快楽によって蕩けてしまい使い物にならない。ふーふーと荒い息を吐きながら尻を浮かせ、また秘裂へと指を走らせようとしたまさにその時。

「鶴。大丈夫か?」

 敬愛する主君の優しげな声が襖の向こうから聞こえてきた。

「ご、ごしゅじん、さま……?」

「さっきからずっとうなされてるみたいだけど具合でも悪いのか? 夕飯も食べてないみたいだが……」

「い、いえ……ただ、ちょっと……体調、が、ぁ……っ♡」

 彼に見られるかもしれない背徳と興奮に駆られ、ゆっくりと秘裂をなぞる。敏感になった身体はただそれだけで絶頂へと導かれてしまったがやはりやめることはできない。

 枕に顔を埋めながらガチガチに硬く尖った陰核へと指を這わせる。ツン、と軽くつつくだけでも頭が真っ白になり強めに押し潰すとブシィッと勢いよく潮が噴き上がった。布団の中は雌臭で充満し、それを嗅ぐだけでまた興奮が掻き立てられていく。

(申し訳ございません、ご主人様……鶴は、はしたないメイドにございます……♡)

 胸中で謝罪をしながらもやめる素振りはないどころかますます激しさを増していく。

 もし、彼がこの姿を見たらどう思うだろうか?

 きっと幻滅するに違いない。いや、それでも構わないとさえ結論づけるほど彼女の思考はピンク色に染め上げられていた。

 被虐願望を剥き出しにした鶴はもはや自慰を隠そうとする努力さえ忘れ、陰核や乳頭を執拗にカリカリと指で引っ掻き続ける。痛み交じりの快感に脳内でバチバチと火花が炸裂し、ついにそれが頂点へと達した。

「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ♡♡」

 布団を跳ね除けんばかりの勢いで腰が浮き、間欠泉のような勢いで潮が布団へと叩きつけられる。枕を噛みしめながら白目を剥く様は娼婦以下の浅ましさであった。

「鶴⁉」

 襖が開け放たれると同時、ふうまが息を呑む気配が伝わってきた。

 当然である。なにせ当の鶴はもはや裸も同然の格好で自慰に耽り、その上あろうことか自分のことをオカズにしていたのである。

「う、おぉッ⁉」

 あまりに予想外な出来事を前にフリーズしていたふうまの足首をサイボーグアームが鷲掴みにし、強引に布団へと引きずり込んだ。ふうまは逃れようと手を伸ばしていたが、やがて完全に布団の中へと収納され見えなくなってしまう。

「ふふ……♡」

 雌の匂いが充満する布団の中で、鶴は舌なめずりをしていた。普段の彼女らしからぬ雰囲気に戸惑うふうまであるがこの状況下での脱出は不可能に等しい。手首を鷲掴みにされ、腰はガッチリと足で挟み込まれている。さながらまな板の上のコイも同然だ。

「鶴、お前何を……⁉」

「申し訳、ございません……ですが、もう……♡」

 ゴクッと。鶴の喉が大きく鳴った。

 荒々しい手つきでふうまの衣服をはだけさせ、首筋に鼻を埋めながらキスの雨を降らせる。舌に広がる男の味を堪能するべくだらしなく舌を突き出してはふうまの身体へ舌を這わせ、細かに腰を揺すってズボンの上から逸物を刺激した。

 困惑と抵抗を見せるふうまではあったがやはり快感には抗えないらしい。あっという間に最大膨張にまで達した逸物に悦びの眼差しを向けるや否や、豊かな乳房でふうまの顔を挟み込む。

「……はしたないメイドはお嫌いですか?」

 潤んだ瞳と甘い声のコンボは効果覿面であった。ふうまの目つきが明らかに変わり、華奢な肩をがしりと力強く掴まれる。

「まったく、お前って奴は……!」

「ひぃ、んぅううッ♡」

 乳頭を強く噛み締められ、思わず達してしまった。びちゃびちゃと潮が撒き散らされ彼の下半身を濡らす。

 やはり自分で致すのと彼に触れられるのとでは大きく異なっていた。頭がおかしくなるほどの多幸感によって意識が幾度となく飛びかける。

 だがまだだ。まだ物足りない。

 彼のズボンへと手をかけ、パンツもろともにずり下ろす。雄々しく屹立した逸物はバネ仕掛けのようにびょいんッと勢いよく跳ね、先走りを散らした。

(嗚呼……っ♡)

 待ちに待った剛直を前に生唾が溢れて止まらない。愛液を垂れ流す秘裂はまるで餌をねだる雛のように陰唇をヒクつかせていた。

(入れたい入れたい入れたいちんぽちんぽちんぽご主人様のおちんぽ――♡)

 もはや我慢などできるはずもない。布団を跳ね除け、逸物の上へと跨った鶴は勢いよく腰を下ろす。

 待ちに待った剛直――激しい絶頂を予想し、頬を緩ませる。

(……え?)

 けれど結果は彼女の予想から大きく外れた。

 確かに挿入はしているのに快感がまるで伝わってこない。

 否、むしろ奇妙な異物感と不快感だけが込み上げてくる。これまで幾度となく受け入れてきた男の男根が気持ち悪くて仕方がないのだ。

(どうして……?)

 考えても答えなど出るわけもない。試しに軽く腰を動かしてみたが違和感は消えるどころかますます膨らむばかりでついには吐き気さえ覚えてきた。

「鶴……?」

 不安げなふうまの眼差しにハッとし、ぶんぶんと首を横に振る。

「なんでもございません……今日は、私めに全てを委ねてくださいまし……っ♡」

 疑念を思考の片隅へと追いやり、不快感をごまかすように唇を重ねた。胸が潰れるほどに身体を密着させ、肌を擦り合わせる。彼の匂いや体温を感じていると胸の奥がぽかぽかと温かくなってきた。

 そうだ。やはり自分は彼を愛している。その気持ちに偽りはない。

 ――なのに、どうしても不快感だけは拭えなかった。かつて斉藤に犯されていた時よりもさらにひどい嫌悪感に見舞われてしまう。心ではなく身体が途轍もない拒否反応を示しているのだ。

 訳がわからない。発情状態は依然として続いているというのにイくことはおろかまともに動く気さえ起きないのだ。

 思考回路がぐちゃぐちゃに混線し、彼への愛が不快感で塗り固められていく。そんなことがあってはならないと躍起になって求めれば求めるほどそれは強まっていき、

「――ッ」

 そしてついに、鶴の中で何かがぷつっと音を立てて切れた。視界がぐらりと傾き、涙で歪んでいく。ふうまが何かを言っているがもはや聞こえない。

 最後に見えたのは心配そうな彼の顔――謝罪の言葉さえ口にできないまま、ついに彼女の意識は途切れてしまった。


 ***


「……え?」

 ハッと目を覚ました鶴は、思わず我が目を疑った。

 視界に移りこんできたのは屋敷の天井ではなく鬱蒼と茂った森――先日訪れた山であることに気づいたのは未だ異形たちと戦った際の爪痕が色濃く残されていたからだ。

 一瞬夢かと思ったが夜の森の肌寒さが否応なくこれが現実であると訴えかけてくる。

「私は、確か……」

 ふうま家の屋敷にいたはずだがそれ以降の記憶が曖昧である。ここに至るまでの記憶が意図的に切り取られたかのようにぽっかりと欠落しているのだ。それでも必死に記憶を辿ろうとすると激しい頭痛に見舞われ、思わず顔をしかめてしまう

「う、ぐ……!」

 いったい自分に何が起こっているのか。困惑しながらもひとまずはふうまに連絡しようとした時、次なる異変に気がついた。

「か、身体……がッ!」

 意識はハッキリとしているのに身体とのリンクが断ち切られている。

 感覚がないわけではない。夜風の冷たさも草木の匂いも服の衣擦れさえも感じるというのに首から下を動かすことができないのだ。

 困惑している間にも足はひとりでに動いていく。どこへ向かうかは彼女もわからない。

(まずい、ですね)

 かつて拉致された経験を鑑みてか鶴のメイド服にはGPSが取りつけられている。しかし助けがすぐに来るとは限らない。そも、完全に身体の自由を奪われている状態だ。敵に襲われでもしたらひとたまりもない。

 せめて誰とも出くわさぬように――そして、一刻も早く救援が来るようにと祈ることしか彼女には許されていなかった。

「アレは……」

 やがて歩を進めていくと見えてきたのは打ち捨てられた研究所――異形たちが生み出された場所である。

 かつて米連の施設であったそこは実験体の暴走をきっかけに破棄された、と聞いていたが実際建物は今にも倒壊しそうなほどにボロボロであり中も相当に荒れている。少なくとも人が入り込んだ形跡はない。

 そのはずだが、またしても鶴の足は勝手に動いていた。研究所の裏手にある井戸へ身を投げたかと思うとふわりと着地し、井戸の石と見分けがつかぬようカムフラージュされていたテンキーにパスコードを打ち込んでいく。

(私に、何が……?)

 そも、こんな場所があるなど事前に提示されていた資料にも記載はなかったのになぜ自分はそこに至る道を知っていたのか、なぜパスコードがわかるのかなど疑問は尽きない。

「――ッ」

 プシュッと言う音を立てて井戸を構成していた石が左右に開いていき、新たな道が現れた。驚愕に目を見開く鶴はまたしても何かに導かれるように奥へ奥へと進んでいく。

(何やらきな臭くなってきましたね)

 地上にあった建物とは違い、この通路は最近人が使用した形跡があった。しかも造りはかなり頑丈である。おそらく地上の建物はダミーでこちらが本命だったのだろう。

 そのまま進んでいくとやがて開けた場所に出た。巨大な円形のホールには無数の器具が並べられており、連立する培養槽には先日倒した異形たちと似た姿の怪物たちが収められている。

「う、ぐッ!」

 すぐに壊さなければと機遁の術を発動させようとしたが腹部に鋭い痛みを覚え、顔をしかめて蹲る。子宮にマグマを流し込まれたような痛みと熱に全身の毛穴がぶわっと開き、だらだらと脂汗が流れ出した。

(やはり、これは……!)

 催眠か、あるいは洗脳か。いずれにせよ自分を操っている何者かがいる。おそらくここ数日続いていた強制的な発情状態もそれによるモノだろう。

 だがいつ、どのタイミングで術をかけられたかは不明だ。少なくとも異形たちの中にそのような使い手がいなかったし、何よりその気配さえも感じさせないのがひどく不気味だ。

 しかしそれがわかったところでどうしようもない。手足の自由は奪われ、挙句に術の発動さえも封じられているのだ。今の彼女は非力で無力な雌でしかない。

 ギリッと憎々しげに歯噛みをする鶴――その耳に、コツコツと床を踏みしめる靴の音が届いた。

「やぁ、よく来たね」

 穏やかな声とともに姿を現したのは白衣を纏った痩せぎすの男だ。おそらく米連の関係者なのであろうが身体には拭いきれないほどの死臭がこびりついている。異形たちを解き放ったのも間違いなく彼の仕業だろう。

「君の戦いぶりは見ていたよ。実に見事だった。でも残念。詰めが甘かったね」

「私に、何をしたのですか……!」

「そう焦らなくてもいい。すぐにわかる。――ほら、出ておいで」

 直後――鶴は思わず自分の目を疑った。

 股座から生えた黒々とした物体。一見すると逸物のように見えたが違う。

 先端にはぎょろりとした目玉がついており、ニィィ……と笑うかのように形を変えた。驚愕のあまり言葉を失う鶴の前でビチビチと跳ねるように揺れる姿に、ある種の既視感を覚える。

「あの時の!」

「察しがよくて助かるよ。君が最後に倒した実験体――アレに寄生させていたのがそいつさ」

 男はコーヒーの入ったカップを啜り、

「そいつは魔界に生息する蝸牛蟲と言う寄生虫でね。女の胎に住み着いて、最終的に宿主を乗っ取るんだ。繁殖するにあたってもっとも都合のいい形にね」

「まさ、か……」

 ふうまと交わった際に感じた途轍もない不快感が寄生虫によるモノであり、それが望まぬ交配相手だったからだとしたら――。

「き、さまぁ――ッ!」

 その事実に思い至った瞬間、かつてないほどの憤怒が湧きあがってきた。こいつだけは自分の手で始末しなければならない。

 射殺さんばかりの視線を向ける鶴を一瞥し、男はやれやれとばかりに肩を竦める。

「悪いけどもう手遅れだよ。君の身体はもう寄生虫の制御下にある」

 その言葉を裏づけるように、両手が勝手に動いてスカートを捲り上げていた。オープンショーツと愛液を垂れ流す秘裂が露わになり、羞恥のあまり耳まで赤く染まっていく。

「ハリガネムシを知っているかい? カマキリに寄生する寄生虫なんだが、君に宿っている蝸牛蟲はそれによく似た性質を持っていてね」

 ハリガネムシは特殊なたんぱく質を宿主であるカマキリの脳へ注入することで操り、水辺へと飛びこませることで有名な寄生虫だが蝸牛蟲はさらに凶悪である。

 子宮への侵入を果たすと中に巣を張り、卵管にまで根を伸ばすことで排卵を完全にコントロールする。3日ほど経つと根が完全に癒着して除去が不可能となり、その時期になると次は神経を乗っ取り始めるのだ。

 疑似的な妊娠を行わせることで強制的に発情させて正常な思考能力を奪い、神経さえも掌握すると今度はハリガネムシ同様生殖するにあたってふさわしい場所へと宿主をするのだ。

 ――だが、蝸牛蟲の恐ろしさはそれだけではない。

 最終フェイズに達した場合、宿主は確実に死ぬ。

 その残酷な事実を知らない鶴は未だ強気な姿勢を崩さず、全身から殺意を滲ませていた。

「さて、少し遅れたが君の交配相手を紹介しよう」

 男がリモコンを弄ると背後の扉が開き、ひたひたと不気味な足音が聞こえてくる。

 やがてその全容が露わになった時、鶴の口元は自然と笑みを形作っていた。

 身の丈3メートルはあろうかという屈強な怪物――全身が濡れ、鱗も見えることから魚人をベースとしているのは間違いない。だが背中からは4本の丸太のような腕が生え、頭はワニのように前へと突き出ていた。口腔から伸びる舌は大蛇のように太く、長く、それ自体が意志を持っているかのように蠢いている。

「UGUUUUUU」

 低く唸る怪物が鶴の眼前へと迫る。身動きもできない状況でありながら、不思議と恐怖はない。

 そして怪物のどす黒く濁った虚ろな瞳で見据えられた瞬間、

(――あッ♡)

 プシャッと音を立てて潮が噴き上がる。心臓が飛び出んばかりに早鐘を打つ。その姿から目を逸らすことができなくなる。

 一目見た瞬間本能で理解してしまった。

 自分は彼と番う運命にあるのだと。

 そして、それは彼も同様であったらしい。股間から大きく突き出した逸物がその証左であった。太く長い逸物はオークのそれと比べてもはるかに大きく、血管をびっしりと浮き上がらせる様はグロテスクな怪蟲を思わせる。

「フー……ッ♡ フー……ッ♡」

 なのに当の鶴は寄り目がちになってそれに見入っていた。

 いくら嚥下しても唾液が口内へと溢れ出し、子宮が痛いほどに疼きだす。無意識だろうが鼻をひくひくさせて匂いまで堪能している始末だ。

(こんな、モノ……♡)

 否定の感情を抱きながらも目がとろりと潤んでいる。

 気づけば彼女は唇を尖らせ、剛直へとむしゃぶりついていた。

「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ♡♡♡♡」

 味蕾と脳髄にビリリとした刺激が走り、ぐりんっと黒目が裏返った。ただ逸物を咥えただけで絶頂へと導かれたのである。愛液の量は留まることを知らず、ついには黄色い液体さえも漏れ始める。

「ん、じゅるっ♡ じゅるるっ♡ じゅぽぽっ♡ じゅろろろろろろっ♡」

 歓喜に打ち震える彼女は半ば意識を飛ばしながら、蹲踞とも呼べないカエルのような姿勢で一心不乱に逸物を貪り喰らう。頬が窪み、鼻の下がみっともなく伸びきるほどの無様すぎるひょっとこフェラだ。

 生臭くエグみのあるそれは本来ならば唾棄すべき代物であったが寄生虫により味覚までも作り替えられた彼女にとっては最高の美味へと昇華されている。これまで食べてきた何よりも甘くかぐわしく、天にも昇るような心地であった。

「ははは! 気に入ってくれて嬉しいよ!」

(誰が好き好んで……っ♡ こんな化け物のちんぽなんか……っ♡)

 これはあくまでも寄生虫に身体を操られているだけ。そう言いたげなまなざしだ。

 実際のところ操られているわけではないが、彼女の意志で動いているというわけでもない。

 強いて言うのであれば“運命の相手とも呼べる男に奉仕する”という雌としての本能が彼女を突き動かしているのである。

「んぶぶっ♡ じゅるぷっ♡ れろれろっ♡ じゅるるっ♡ ちゅっ♡ ちゅっ♡」

 ただ舐めしゃぶるだけでなく舌を蠢かせて亀頭をピカピカに磨き上げ、根元から先端に至るまでにキスマークを付けまくる。それはさながら自分の所有物であることを示すマーキングにも似ていた。

 献身的な雌の奉仕に感動しているのか怪物の口から心地よさげな呻きが上がった。意図せず口元を緩めた鶴は再び逸物を咥え込む。

「お……ぼぉっ♡」

 顎が外れるほどに大きく口を開け、ゆっくりと顔を前後させる。剛直によって喉を穿たれる痛みさえも今の彼女にとっては至上の快感であった。

「ん、んぅぅッ♡」

 不意に、鶴の身体が持ち上げられる。怪物は4本の腕を使ってメイド服をビリビリに破り捨てると彼女をしっかりとホールドし、そのまま力任せに腰を動かし始めた。

「おぶっ♡ げべぇえええええええッ♡」

 地面と垂直に持ち上げられた結果、口腔から気管まで一直線に剛直が刺し貫く。並の女であれば痛みと快感でショック死していたかもしれないが極めて頑丈な対魔忍であり、かつ寄生虫によって身体を作り替えられた彼女にとっては甘受すべき痛みであった。

「がぶっ♡ がぼろろろっ♡ おぼっ、オ゛ォオオオオオオッ!」

 現にオナホのように乱暴な抽挿を受けながらもケダモノのような嬌声を上げ、四肢をバタつかせては潮を撒き散らしている。それに気をよくした怪物は一層腰の動きを激しくし、ついには叩きつけるような動きへと変化した。

 喉が剛直の形に膨らみ、気道が完全に潰されて呼吸困難へと陥る。脳内でバチバチと弾ける火花は死の予兆か、はたまた快感によるオーバーフローか。

「ん、ぉぉぉッ♡」

 力を失いつつあった鶴の身体がビクンッと跳ねる。異形の大蛇じみた舌が秘裂へと捻じ込まれていた。

 それは文字通り舐めるような動きで膣内をまさぐり、ついに最奥へと到達するや尖った先端で子宮口を狙い穿つ。

「んッ、ぶぅうううううううううううううッ♡」

 無遠慮なまでの動きで膣内を蹂躙され、子宮を滅多打ちにされる。怪物の動きはどこまでも自分本位で鶴のことなどまるで目に入っていない。

 否、それも無理からぬことである。

 これまでも数多の女を用意されたが、誰一人として彼との性交に耐えられる者はいなかった。人間はおろか魔族の女でさえも、少し激しくしただけで壊れてしまう。

 だが目の前にいる女だけは違った。自分の本気を初めて受け止めてくれる女を前に歓喜の雄たけびを上げ、これまでの鬱憤を晴らすかのようにひたすら鶴を犯し抜く。

「ん゛ぉおおおおおおおッ♡ お゛ん゛おぉおおおおおおおおおおおッ♡」

 彼女は心身ともに屈強な対魔忍だ。猟奇的な殺人鬼に囚われ、四肢を落とされてなお屈することがなかった。

 そんな彼女であればこそ怪物による暴力的な性交にも耐えられる。仮に寄生虫が身体を作り替えていなくても壊れることはなかったであろうが、ここまでの快感が得られることもなかっただろう。

(い、イくッ♡ また、イかされるッ♡)

 大切な宿主を守るため、子宮に巣食った寄生虫が脳内麻薬を大量に分泌させる。すでに彼女の感度は飛躍的に増大し、今や全身がクリトリスと同等の性感帯へと変化していた。直接的な刺激はおろか空気が肌を撫でる感覚だけでも快感を覚えてしまう。

 何回イったかわからないほど絶頂へと導かれた結果、すっかりイキ癖がついてしまった雑魚まんこは狂ったように潮を噴いている。涙はおろか鼻水さえ垂れ流しの無様な表情であったがいまだ目の光は失われていない。

「――お゛ぉッ♡ お゛ッ♡ お゛ッ♡」

 互いの身体が痙攣をはじめ、抽挿が早まっていく。射精の瞬間が訪れようとしていることを悟ったのか、鶴は無意識のうちにキュッと唇を窄めていた。

「GUOOOOOOO!」

 ――ドクンッ!

怪物の腰が大きく跳ねた直後、灼熱の粘弾が放たれた。

「がぶっ♡ げっ♡ オ゛ッ、ォ……ッ♡」

 鶴は四肢を暴れさせたものの次第に力なく脱力し、それに伴って薄い胎が丸く大きく膨れ上がっていく。それでも収まりきらなかった分が口から、あるいは鼻から逆流した。完全に白目を剥き、口からぶくぶくと泡を吹く彼女はぴくぴくと小さな痙攣を繰り返すのみ。

 ぼたぼたと零れ落ちる精液は生コンのようにどろりとしており、ほとんど固形に近かった。口腔から剛直が引き抜かれると同時、どぽっと勢いをつけて精液の塊が吐き出される。

 虚ろな瞳で呆ける彼女の顔面に、大量の精液が放たれた。全身精液まみれになり、表情さえうかがえなくなった彼女はそれでもなお喜悦の震えを隠せない。

(こん、な、の……っ♡)

 人間が耐えられるわけがない。気持ちよすぎて頭がどうにかなってしまいそうだ。

 ぶぷっ、ぶぷっと精液の泡を膨らませながらじょぼじょぼと股座から液体を漏らす鶴。それは紛れもなく潮であったが勢いはなく、彼女の身体が完全に弛緩しきっていることを意味していた。

 鋼鉄とも言える彼女の心に生まれたわずかな隙――それこそが、寄生虫の狙いであった。

「うぐ、あぁああああああああああッ⁉」

胎に巣食った寄生虫が暴れ出す。全身を激しい掻痒感と赤熱感に包まれ、たまらず絶叫を上げた。頭が割れるような激しい頭痛に見舞われ、精液交じりの吐瀉物を撒き散らして悶絶する。

「あぁ、やっとか。意外と早かったね」

「な、にを……⁉」

「その寄生虫は宿主を作り替えるんだ。繁殖するため、最も効率的な姿にね」

 まさかこの程度で終わりだと思ったかい、と呟く男の口元には嘲りの笑みが浮かんでいた。

「ヒッ⁉」

 股座からどろりとした黒い液体が流れ出てきたかと思ったのも束の間、それらはアメーバのように形を変えて鶴の身体に纏わりついていく。必死に抵抗を見せようとするが首をぶんぶんと振ることしかできない。

 それらは徐々に浸食を進めていき、とうとう下半身が完全に黒く染まる。端から見ればラバースーツのように見えるが股間部分だけは手つかずであり、愛液垂れ流しの淫裂と真っ赤に充血した陰核が丸見えになっていた。

(こんな辱めを受けるなんて……!)

 いっそ舌でも噛み切ってやろうと思ったがもはやそれさえ叶わない。生殺与奪の権はとうの昔に寄生虫へと奪われてしまったのだ。

「ふ、ぎぃッ⁉」

(また……⁉ 次は何が……ッ!)

 胸と陰核が異常なまでの熱を宿し、内側から何かが込み上げてくるような感覚を覚える。これ以上好きにさせてたまるかと最後の意地を見せようとする鶴の顔は、お世辞にも美麗とは言い難い。

 半ば白目を剥き、涎を口端から垂らしながら歯を食いしばっている。時には唇を尖らせ、鼻息を荒くしてまで快楽から逃れようとする様はあまりにも滑稽であった。

 が、結局はそれも無駄な抵抗である。

「おひへっ♡」

 間の抜けた声と共に双眸がだらりと歪み、大きく開けた口から舌が垂れ落ちる。汗や涙でぐちゃどろになった惨めなアヘ顔を晒す彼女は、滲む視界の先で信じられない物を目の当たりにした。

 控えめだった乳房が大玉スイカほどに肥大化し、乳輪もぷっくりと膨れ上がっている。乳首も親指ほどの大きさになっており、特に目立つのは細長く変質した陰核だ。ガチガチに硬く尖ったそれはまるで陰茎のように切なげに震えている。

 これも蝸牛蟲による肉体改造の効果である。彼女の身体はあらゆる生物との子を孕めるようになり、かつ雄を誘うにふさわしい淫らで卑猥な形へと作り替えられているのだ。

 現にそれを目の当たりにした怪物は催淫され、ますます鼻息を荒くしている。仮に男が制止していなければ今にも襲い掛かっていたことであろう。

(こんな身体では、もう……)

 四肢を落とされてなお屈しなかった凪の心に絶望が去来していた。

 寄生虫に身体を乗っ取られ、挙句だらしなく醜い姿へと変えられてしまった。愛する主人に仕えるどころか、おそらくもう帰ることさえできない。機遁の術を発動しようにも脳まで侵されていてはもはや手遅れだ。

「い、いや……いやぁッ!」

 うぞうぞと黒い液体が顔を這いあがってくる。口元を塞がれ、鼻を塞がれついに目元に達しようとしていた。

(たす、け……ご主人、様……小太郎、様ぁ……)

 目尻から流れる涙さえも身体を覆う黒い膜によって覆い隠され、ついには意識までも闇に呑みこまれてしまう。

 ぐちゅぐちゅぐちゅ――プチッ。

 それが、鶴が聞いた生涯最後の音であった。


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