三下口調のネズミロリババアに初恋を奪われてしまったのでSSS級のデカ魔羅でハメ潰してお嫁さんになってもらうことにした件
Added 2023-10-21 13:55:14 +0000 UTC今ちょっと考えている小説です。 がんばって書き切れるよう応援してください! ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー バシウス・ロトルマイスは冒険者である。 農家の三男坊として産まれ育った彼はロマンと冒険を夢見てとある冒険者ギルドへ入り、今まさにその初陣を終えてきたばかりである。 ダンジョンの単独踏破。十重二十重に張り巡らされた罠を潜り抜け、迫りくる無数の魔物たちを次から次へと斬って捨てる。 多少……否、だいぶ誇張は入っているが、その成果を裏づけるように彼の手には光り輝く宝石が握られている。大人の握り拳よりも大きく、陽光を浴びて七色に煌めくそれは目を奪われるほどに美しい。 故に、そんな代物を手に入れた自分を誰もが称賛するはずだ。そんなことを夢想するだけで少年の胸は否応なく高まり自然と足も早まっていく。町一番と噂される鑑定所に殴り込み、意気揚々と品物を提出した。 ――けれど、返ってきたのは残酷な現実である。 「あー、こりゃ駄目ですわ」 「な……!? 嘘だ! ボクが子どもだからってバカにしてるだろ!」 あまりにも投げやりな店主の態度と言葉にバシウスは顔を真っ赤にして身を乗り出す。自尊心を深く傷つけられた少年は今にも殴り掛かりそうな勢いだった。 けれどカウンターの向こうにいる店主は頬杖を突きながら彼を半眼で見つめ、 「だってほら、よく見てごらんなさいよ」 手にした宝石を無造作にテーブルの上へとコロコロと転がし、当たるスレスレを狙ってハンマーを振り下ろした。するとそれは「キュピィッ!」と甲高い声を漏らして飛び上がり、コロコロと転がって部屋の隅まで逃げていく。 目を丸くしてあんぐりと口を開けるバシウスに、店主は肩を竦めながら目を眇める。 「ありゃ“宝石騙し”っていいやしてね? まぁ、別に悪さをする魔物じゃあないんですが見た目が綺麗だってんで素人さんがよく引っかかるんですわ」 「またか」とでも言いたげな口ぶりだった。おそらくカリヤ以外にも引っかかる者たちが大勢いたのだろう。不幸中の幸いというべきか鑑定所にはバシウス以外の客はいなかったため笑い者にはされなかったが、もしこれをギルドに提出していたらと思うとゾッとする。 「まぁ気を落とすことはありやせんよ。新米冒険者なら誰でも通る道でさぁ」 店主はにこやかに微笑みかけ、ポンポンとバシウスの肩を叩いた。 深く項垂れていた彼はギュッと唇をつぐみ、 「その……酷いこと言ってごめんなさい」 「別に気にしなくていいですよ。こういう商売ですから揉め事はしょっちゅうでさぁ」 カラカラと笑う店主を、バシウスは改めてジッと見据えた。 健康的な褐色肌の美少女であるが頭頂部には特徴的な大きい丸耳が二つ備わっており、尾てい骨のあたりからは細長い尻尾がひょろんと伸びている。いわゆる鼠獣人という奴だ。 見た目こそバシウスとそう変わらないあどけないように見えるがその実いつからこの街にいるのか誰も知らないという謎多き人物でもある。噂では数百歳とも言われているがあながち間違いでもなさそうだ。 「ま、いい勉強にはなったんじゃないんですかい? あぁ、それと。まだ名前を聞いてやせんでしたね」 「……バシウス。バシウス・ロトルマイス」 「あっしはレビィ。以後お見知りおきを」 芝居がかった口調の彼女に深々と頭を下げ、椅子から立ち上がる。帰り際宝石騙しが足元に擦り寄ってきたのでそっと抱きかかえた。金にはならなかったがいい経験にはなった。少なくとも収穫はゼロではなかったと信じよう。 そう結論づけてドアを潜ろうとしたその時、 「ちょいと、お兄さん」 ふと後ろから声がかかり、何かが投げられた。反射的に受け止めたそれを見てバシウスはギョッと目を丸くする。 ぴかぴかと輝くそれは一枚の金貨だ。戸惑う彼にレビィはニッと口角を吊り上げながら尻尾をゆらゆら揺らし、 「自慢じゃありやせんが人を見る目には自信がありやしてね。お兄さんからはちょいと特別なモノを感じたんで……まぁ、早い話が先行投資でさぁ。その金で武器なり防具なり揃えりゃ次はもうちっとマシなダンジョンに潜れますぜ?」 屈託のない笑みを向けられた途端、心臓がドキリと跳ねた。 胸が熱くなったかと思ったら全身から汗が噴き出てきて、感謝を述べようにも言葉が詰まって上手く出てこない。首を傾げる彼女と目が合った瞬間反射的に背を向けてしまい、しまったと後悔しながらもグッと拳を握り締め、 「あ、あの……ありがとう!」 「またご贔屓に~!」 半ば逃げ出すように大股で鑑定所から遠ざかっていく。 握りしめたコインを見つめる度彼女の顔が脳裏にチラつく。すると胸がキュッと絞めつけられるように切なくなって息苦しさを覚えた。意識しないようにしても彼女のことが頭から離れない。 ……その時抱いた感情が“恋慕”であると気づいたのはそれから五年後のこと。 十三になり、精通を迎えた時であった。 *** 「おい見ろ! バシウスが帰ってきたぞ!」 英雄の帰還に町は騒然となり、一目拝もうと通りには溢れんばかりの人々が押し寄せていた。至る所から黄色い歓声が上がり、気の早い男たちはすでに酒瓶を片手に呑めや歌えやの大騒ぎに興じている。 民衆の喝采を一身に浴びるのは白銀のプレートアーマーに身を包んだ精悍な顔だちの男。今や世界に七人しかいないとされるSSS級冒険者へと成長したバシウスであった。王都に現れた神話級ドラゴンを討伐してきたばかりだというのに涼しい顔で悠然と歩を進める。 ギルドに入るや否や、待っていたのはさらなる喧騒だった。仲間たちがわっと押し寄せ、あっという間にもみくちゃにされる。 「よくやったぞ、バシウス。お前のおかげでこのギルドも安泰だ」 ドワーフ族のギルド長は自慢の長ひげを撫でながら目を細める。彼が加入した当時は一介の中小ギルドに過ぎなかったのだが彼の活躍を聞きつけてあらゆる腕利きや依頼が集まるようになり、今や国でもトップクラスの巨大ギルドへと成長を遂げていた。 「別に。やることをやっただけですよ」 その立役者とも言えるバシウスは小さく首を振る。謙遜しながらも嫌味に感じさせないのは本人の人柄だろう。 「バシウス!」 不意に、人込みを掻きわけて誰かがバシウスの腕に抱きついてきた。浅葱色の髪と豊満な胸が特徴的な、魔法使いの少女である。 「ねぇ、今日こそ一緒にデートしましょ!」 「おいズルいぞ! こいつは俺んだ!」 「あら。ひとり占めなんて野蛮人のすることですわよ」 競うように姿を現したのは狼獣人の少女と金髪を縦ロールにした美女である。彼女たちはバチバチと火花を散らし、バシウスの身体へ肢体を絡みつかせた。 ギルドの男たちは羨望の眼差しを送っているが、当のバシウスは彼女たちをそっと引き離しギルド長の元へと向かう。報酬として差し出された金貨の山を収納用スクロールに仕舞いこみ、足早にギルドを後にした。 「あ、待ってよバシウスーッ!」 少女たちは追いすがろうとするがバシウスは後ろを見ることなく一目散に立ち去ってしまった。残された面々はやれやれ、と呆れたように肩を竦める。 彼の偉業と実力は今やだれもが認めるところだ。 あらゆる高難度ダンジョンを単独で踏破した彼はいつしか“迷宮王(ダンジョンマスター)”と呼び崇められるようになっており、その実力は七人いるSSS級の中でも随一だと噂されている。パーティを組まずソロで戦い続ける彼に憧れる冒険者たちも多く、時には弟子入り志願で押し掛ける者もいる始末だ。 ……ただ。そんな群れないことで有名な彼が唯一懇意にしている相手がいる。 他でもない、レビィである。 鑑定所の扉を潜るなり、十年前となんら姿の変わらない店主はバシウスの姿を見るなりあからさまに疲れた顔をした。 「兄さん、また来たんですかい?」 「客に随分な物言いだな。贔屓にしてやってるのに」 「そりゃぁそうなんですが……で? 今日は何をお持ちで?」 のしのしとレビィの元まで歩み寄り、収納用スクロールを広げる。するとそこから溢れんばかりの黄金が溢れ出してきた。いずれも一級品ばかりであり、中には希少価値が高いモノさえ混じっている。 「またこんなにもらってきちまって……鑑定するのはあっしなんですからね? 大体、鑑定なら王都にもっと腕のいい奴がいるでしょうに」 「……アンタの腕を見込んでるんだ」 「はいはい。褒めたってなにも出やしませんよ。ったくもう……」 ぶつくさ言いながらも慣れた様子で鑑定を次々こなしていく。一級品揃いであるのは疑いようがないが稀に呪いが付与されている物も存在するため、それらは厳重に保管して破棄する。 およそ二時間かけてやっと鑑定が終わった時、宝の山は二つに分けられていた。全体の約一割ほど、呪いが付与されていた曰く付きだったのである。 「鑑定終わりやしたよ。じゃ、換金はいつものところで……」 「誤魔化すな。いくつかちょろまかしてるだろ」 図星だったのだろう。レビィはグッと言葉に詰まり、諦めたように首を振って宝の山を崩した。呪い付きであったのはわずかに二、三のみ。油断も隙もない奴だと唇を尖らせる。 「ったく。自分でわかるならどうしてあっしに頼むんですかねぇ?」 「お前の目利きを信頼してるんだよ。いい意味でも、悪い意味でもな」 「か~ッ! ずいぶんと偉そうなこと言ってくれちまってまぁ! ……昔はもっとかわいかったのにどうしてこうスれちまったんですかねぇ? あの頃の嬉々として宝石騙しを持ち込んできた兄さんはどこに……」 「昔話をするのは年寄りの証拠だぞ」 べ~っと舌を突き出す彼女に背を向け、鑑定所を後にして家へと向かう。町から外れた場所にある小さな一軒家だ。道中落とし穴から誰かの悲鳴が聞こえた。おそらくいつも言い寄ってくる三人のうち誰かだろう。 自力で脱出できるだけの実力はあるはずなので見なかったことにし、部屋に入る――と同時、バシウスは膝から崩れ落ちた。 「俺の馬鹿……! どうしてあんな物言いしかできないんだッ!」 後悔に塗れながらじたばたとその場を転がる。椅子や机をなぎ倒そうがお構いなしだ。 「せっかくチャンスがあったのに! あぁ、クソッ! 今日も渡しそびれたクソがぁああああああああッ!」 武骨で不愛想な孤高の武人……と言うのはあくまでも表の姿。本来の姿はこっちである。 レビィと出会ってからすでに十年近くが経過しているが初恋は冷めるどころか年々重篤化している。元々不器用であった上、時には半年近くダンジョンに潜り続けていたこともあって完全に人との接し方がわからなくなっていた。図体こそデカくなったものの精神的には当時からほとんど変わっていない。今でも純粋な子どものままだ。 ひとしきり暴れ終えると、上階からコロコロと何かが転がってきた。あの時拾った宝石騙しである。懐かれてしまった上、自分への戒めも兼ねて飼うことにしたのだがこいつとももう十年近い付き合いだ。今や唯一本音を打ち明けられる無二の親友である。 「ルビィ……今日もダメだったよ俺はなんでいつもこうなんだ……」 ルビィ、というのは宝石騙しの名である。想い人にちなんだ名をつけるという割と重篤な症状を見せているが当人は気にした素振りもなく手の中の宝石騙しを愛で続ける。 「今日こそは行けると思ったんだけどなぁ……せっかくいいモノ見繕ってきたのに」 先ほどレビィに渡した収納用スクロールとは別に、彼の懐には厳重に保管された筒が仕舞われている。その中にあるスクロールにはこれまで彼女のために掻き集めてきた一点物のお宝が山のように詰め込まれているのだが、それはすなわちその分だけ機会を失してきたという証でもある。 深く項垂れるバシウスを励ますようにルビィは華麗なタップダンスをその場で披露した。相棒の可愛らしい姿を前に頬を緩ませ、のそりと立ち上がる。 「本当どうしたらいいんだろうな……このままじゃ俺爺さんになっちまうよ」 ルビィは考え込むように右へ左へぐらぐら揺れた後、何かを思いついたようにポンッと飛び跳ねた。その意図を察したバシウスはすぐさま文字の描かれた紙を取り出し、その上にルビィを乗せる。 コロコロ……ピタッ。 転がっては止まるを繰り返すルビィ。そこから伝わってくる意図に思わず目を丸くする。 「なるほど……そっか! その手があったか! ありがとう流石は俺の相棒だ!」 思わず抱きしめて頬ずりしようとすると全力でタックルをかまされた。大してダメージはないが心が痛い。 否、それよりもまず優先すべきは作戦の決行だ。今から準備にかかれば少なくとも来月には間に合うはずである。 「よし、やるぞ……覚悟を決めろ!」 バンバンッと頬を叩いて気合を入れる。 その時の表情は神話級ドラゴンの討伐に挑む時の何十倍も真剣みを帯びていた。 *** その一か月後。バシウスは自宅でジッとその時を待っていた。眼前には転移用魔法陣が描かれた大型のスクロールが置かれている。落ち着かない様子の彼は貧乏ゆすりを繰り返しながら柱時計に目を向けた。 時計の秒針はこち、こちと規則的な音を刻み続けている。日付が変わるまで後十秒だというのにまるで永遠のようにさえ感じられた。 三、二、一……日付が変わると同時魔法陣が淡く発光しだし、そこから誰かが姿を現した。 「毎度おなじみレビィの小道具屋でございやす! 金品珍品なんでも鑑定! いつでもどこでも即断即決……って、なんだ兄さんじゃないですか。どうしたんですかい? わざわざ呼び出すなんて」 レビィの店は遠方の客向けに出張鑑定サービスも行っている。流石に自分で買いに行くとバレるため、以前成り行きで助けたことのあるエルフの男に土下座をして頼み込んだ。 『まさか稀代の英雄様が女にビビる腰抜けだったとは。しばらく酒の肴には困らなそうだ』 などと嫌味を言われたがどうでもいい。大事なのは今だ。 レビィは首を傾げながらもリュックサックを下ろし、きょろきょろと辺りを見渡す。 「宝石騙しがいやせんが、まさか逃がしたんで?」 「いや。今日はちょっと友人に預かってもらっている。事情があってな」 「ふぅん……それで? 品物はどこにあるんですかい? ……まさか冷やかしってんじゃないでしょう?」 「……あぁ。これなんだが……」 震える手で胸元から筒を取り出そうとするも、手汗で滑って落としてしまった。慌てて拾おうとした時、ごちんッと彼女と頭をぶつけてしまう。 「いつっ!?」 「わ、悪い! 怪我ないか!?」 思わずその場で尻もちをついてしまった彼女の頭を掴んでよく眺める。出血はないし腫れてもいない。ひとまずは無事なようだ。安堵からかホッとため息が漏れる。 ――と、顎の下からクスクスと笑い声が聞こえた。レビィはニヤニヤ笑いながら上目づかいでこちらを見つめている。 「相変わらず心配性ですねぇ。あっしはこう見えて頑丈ですからこのくらい屁でもありませんよ」 揶揄うようにぺちぺちと頬を叩かれ、慌てて身を離す。身長では大きく勝っているが精神的な余裕がまるで違う。彼女の前ではいつだって子ども扱いされてしまうのだ。 視線を逸らすバシウスを一瞥し、筒からスクロールを取り出したレビィはテーブルの上にそれを広げる。すると次の瞬間、机からあふれ出すほどのお宝が飛び出してきた。 「おうぇあっ!? な、なんですかいこりゃぁ!? 神龍の宝玉!? 不死鳥の血液!? エルフの霊薬……ど、どれもこれも神話級の品ばっかじゃねえですか! え、しかもこれ……オリハルコンZ!? ドワーフ族の職人がどっかのダンジョンに格下って言うあの!? う、売れば二千年は遊んで暮らせる品だって聞きやすがまさか実在したとは……」 普段の彼女らしからぬハイテンションにバシウスも少しばかり誇らしげである。今まで渡せずじまいだった品もいい意味でサプライズになったようだ。 「いやぁ……あっしも長くこの商売やってやすがこんな品物見たのは初めてですぜ。文句なし、正真正銘の本物揃い。にしてもこんなに大量に締まっておいてどうするんで? 収集癖がある……てぇわけじゃあないでしょう?」 バシウスの部屋は年頃の男にしては随分簡素である。最低限の生活と冒険に必要な道具しかないし、そもそもほとんどダンジョンに籠りきりであるため家に物を置いておく習慣があまりないとも言える。 伊達に長い付き合いではない。見透かしたような彼女の言葉にグッと言葉に詰まった。 (言え! 言うんだ!) こんなに緊張しているのは未踏ダンジョンで邪神とやり合った時くらいだろう。いや、あっちはまだ勝機があったのでマシかもしれない。玉砕を考えると心臓がキュッと縮み上がり、足が震えた。 けれども彼は大きく息を吸い込み、 「じ、じちゅは!」 盛大に、噛んだ。 羞恥心で消え入りそうになる彼を前にレビィは腹を抱えて大笑いしている。 「あははははっ! なんですかい、そりゃ! 鼠の真似ですかい!?」 正直ぶっ飛ばしてやろうかと思った……が、おかげで少し緊張が解れた。 ごほんっと咳払いを寄越し、 「実は今日、俺の誕生日なんだ……」 「おや、まぁ! そいつぁめでたい! 確か今年で……十八になるんでしたっけ? いよいよ兄さんも一人前の男になったんですねぇ。じゃあ、そろそろ結婚も考えてたり?」 ぎくりと身を強張らせたのをレビィは見逃さなかった。ニマニマと笑いながらズイッと身を寄せてくる。 「ほほう? その反応は図星ですね? てぇことは候補に挙がるのは……あの娘っ子たちですかねぇ? 魔法使いの嬢ちゃんは気立てもいいし世話焼きですからいい女房になるでしょうし狼の嬢ちゃんは気性はちと荒いがああいうタイプは押せばコロッと落ちるもんでさ。キャンキャン強気な女が夜は激しく……てぇのもむしろご愛敬。カリヤのお嬢様なら実家も太いし何より胸もでけぇと来てる。男に取っちゃぁたまんねぇでしょ。んで? どの子がタイプなんです?」 この顔である。自分が恋愛対象であるなどとは微塵も考えていない顔。その上色々と無防備なせいでタンクトップからチラチラと胸元が見えている。当然のごとくノーブラ。褐色肌に咲く薄紅色の乳頭が男心を狂わせる。 こちらの気持ちなど知らないくせによくもまぁ、と内心ひとりごちつつ呼吸を整え――震える指で彼女を指さした。 「……へ?」 完全に予想外だったのだろう。レビィは目を丸くして後ろを振り返り、真っ赤になった顔を手うちわでパタパタ仰ぎながら尻尾を揺らす。 「じょ、冗談が上手いねぇ兄さん! こんなババアを揶揄っても何も出やしないってのに! あ、それともアレかい? 今流行りのドッキリって奴だろう? どっかで撮影でも……」 「冗談なんかじゃねえよ。本気だ」 すでに覚悟は決まっていた。口にしてしまった以上後戻りはできない。 この日のために買っておいた最高級の婚約指輪。ドワーフ族のギルド長に頼み込み作ってもらった特注品だ。魔除け厄除け、その他諸々の効果がこれでもかと組みこまれている。ダイヤの指輪は目がくらむほどに輝き、堂々とした風情さえ醸していた。 平時であれば目を輝かせて鑑定していたであろうレビィもこの時ばかりは完全に硬直してしまう。まさか自分なんかに惚れる男がいるなど夢にも思わなかったからだ。 レビィは鼠獣人であるが、何もすべての同族が彼女のように小柄なわけではない。むしろ平均的な鼠獣人なら人間よりも少し背が低い程度だが彼女は完全な幼児体型である。胸のふくらみなど皆無であるし、尻も薄くて女性的な魅力に欠けている。 何より顔にはそばかすだってあるし、三白眼でチビのちんちくりんだ。事実数百年近く生きてきたがこれまで言い寄ってくる男はいなかったし、本人も半ばあきらめかけていた。けれども目の前の男はこれ以上ないほどに真剣な目を向けてくる。 無論、バシウスも正直限界だ。口から心臓が飛び出るほどに緊張している。そしてそれはレビィも同様だった。 「や、やーっ! あっしみたいな女が好きだなんて兄さんもずいぶんと酔狂なお方ですね! いやはや、参った参った! じゃ、今日はこの辺で……あれ?」 適当にはぐらかして逃げようとドアノブに手をかける。が、ビクともしない。思いっきり力を入れても体当たりを食らわしても結果は同じだった。 「残念だったな。知り合いの術師に頼み込んでこの家に結界を張らせてもらった。条件を満たさない限り絶対に外には出られないぞ」 「……一応聞いときやすが、条件って?」 「…………セックス」 「ですよねー……」 お互い蚊の鳴くような声であった。恋愛経験ゼロの二人にとってそれはあまりにも縁遠いモノである。 「ちなみにあっしが嫌だって言ったら? やっぱり無理矢理犯すんで?」 「いや、それはない。こういうのはお互いの気持ちが大事だろ?」 「……わざわざ結界まで張っておきながら何言ってんですかねぇ、この兄さんは」 「だってどうすればいいかわかんなかったから……」 救いようのない馬鹿である。ダンジョンに潜り過ぎて脳味噌にまでカビが生えているのではなかろうか。 ――ただ、まぁ。そこまで悪い気はしない。