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田原摩耶
田原摩耶

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【↑100】飼い主不在⑧【4,000文字/四川+笹山×原田/三角関係】

▶ 前回 https://t589423.fanbox.cc/posts/8894403 ▶ 飼い主不在シリーズ https://x.gd/l3IwC  というわけで、流れに流されて気づいたときには再び笹山の部屋に上がり込んでいた。  前回と違う点を上げるのならば、隣に四川がいることだろうか。  笹山宅リビングにて。  右隣に四川、左隣に笹山。そしてそんな二人に挟まれ縮こまる哀れな俺。  三者面談にしてももっとこう、席順どうにかならなかったのか。 「……」 「……」 「……」  しかも、座るなり沈黙だ。  せめて何が言えよ。と、四川に睨むが、あいつは知らんぷりで電子タバコを吸おうとして普通に笹山に叩き落とされていた。そして俺はやや潰されていた。 「テメ、いいだろ少しくらい」 「お前の喫煙所として用意したわけじゃないんだけど」 「あー、はいはい。じゃ、さっさと本題入ったらどうだ? それとも、今更答え聞くのが怖くなって怖気付いたのかよ」 「……」  せめて俺を挟んで喧嘩するなよ、と思いつつも、珍しく四川の挑発に乗らずにこちらをじっと見つめてくる笹山に思わず背筋が伸びる。 「原田さん」  柔らかい、それでも少しだけ恐る恐るという感じで名前を呼ばれてなんだかくすぐったくなる。 「お、おう」と頷き、笹山を見つめ返せば、笹山はそのまま押し黙ってしまった。それから、深い溜息。……溜息?! 「……確かに、阿奈の言う通りかも」 「ようやく認めたかよ」 「けど、お前だって時間の問題だ」 「どうだかな」 「なあ」と伸びてきた四川の手に今度は四川の方へと無理矢理向かされる。  笹山の前でやめろよ、と慌てて顔を逸らそうとすれば、頬を潰す勢いでおもくそ前を向かされた。 「て、んめ……っ」 「で、決めたか?」 「決めたって……」  なにが、と問いかけること自体が愚問である。  散々、数日かけてこの二人に要求されたあれそれを思い出しては顔がじわじわと熱くなってきた。 「あー……」と、なんかそんな腑抜けた相槌が口から飛び出した。 「え、ええと……まあ、そのだな……」  なんとか口で誤魔化して時間稼ぎをしようにも、今度は笹山の方から伸びてきた手に無防備にわきわきしていた手ごと握り締められてしまえばもう逃れられない。 「……原田さん」 「さ、笹山……っ、待て、一旦落ち着いてくれ。俺にも心の準備とか、ほら、色々……」 「俺も、心の準備出来てないですよ。ちなみに」  一緒ですね、と握り締められた手を引っ張られ、笹山の胸まで持っていかれる。  手の甲を包み込むように重ねられる手。その掌越しに伝わってくる笹山の心音がドク、ドク、とあまりにも煩くてこっちにまで伝播するようだった。 「……っ、笹山……」 「原田さんがこいつと楽しそうに並んでるの見てからずっと……ここ、痛いんです。原田さん」  分かりますか、と握り締めてくるその手にぎゅっと力が籠る。  胸が痛くならないわけがないし、笹山の緊張も伝わってきてますます頭の中は大騒ぎ状態だ。 「騙されんなよ、原田。……こいつ、泣き落としのプロだから」 「え」 「聞かなくていいですから。……俺のことは貴方が一番分かってくれると俺、思ってます。……原田さん」 「え、お、おう……ありがとな」 「言ったそばから絆されてんじゃねえよ童貞!」 「ど、童貞童貞言うな! だからお前――」  お前がそんなんだから、俺は。  俺は――なんだ?  言いかけた矢先、頬に触れていた四川の手にそのまま顎を持ち上げられた。  やば、こいつ。まじか。  キスされると理解した瞬間、思わず背筋が伸びる。反射で目を瞑ったが、一向に想像していた感触はなかった。  それどころか。 「……いいから俺にしろよ」  ……なんでお前は、こういうときだけ素直なのだ。  耳元、俺にだけ聞こえる声で甘えられて全身の細胞が一気に活発になるような、そんな甘くゾワゾワとしたものが全身へと広がっていく。  顎から首の付け根、耳まで伸びてくる指に撫でられるだけで落ち着きかけていた熱が呼び起こされるのだ。 「う、ぁ……っ」  なんだ、なんなのだこの図はさっきから。  いや、俺が先延ばしにしまくったツケが今きたのか。そう思えばもうなんも言えねえ。  二人の目は真剣だ。もうミリも猶予を与えてくれる気もない、そんな目で俺を見つめてくる。  そもそも付き合うってなんだ。いや、あれだよな。二人と過ごした二日間を思い出しては目がぐるぐると回りだす。  駄目だ、色々あったはずなのにヤリまくった記憶で塗り潰されてる。 「原田さん?」 「な、なあ……もし、もしここで選ばなかったら?」  どうなんの、と恐る恐る二人を交互に見た。瞬間、笹山の顔がやや険しくなるのを見てひっと息を呑む。 「……それはつまり、俺たちを振るってことですか?」  怖えよ、笹山の低音。  首を縦に振ることも横に振ることもできずただ震えて動けなくなる俺に、笹山は手を繋いだまま俺の顔を覗き込んできた。 「振るということですか?」  この圧よ。 「ち、ちが……ええと、その、笹山怒った……?」 「怒ってませんよ。元々こういう感じですよ」 「それは嘘すぎるだろ」 「……話を詳しく聞いてもいいですか? 原田さん」  にぎにぎと手を掴まれたまま促され、逃げ場などなかった。四川も擁護する気もねえよという顔で俺を見てるし、怖えよ。なんだよこいつら。さっきまでどこぞの少女漫画です?ってくらい優しかったくせに。 「お、怒るなよ……何言っても」 「内容による」 「お、怒るやつじゃねえか……!」 「……原田さんが本気で選んだ選択なら受け入れる努力はしますよ。もちろん」  努力なんだよな、受け入れるとは言ってないんだよな。怖えよ。  室内温度がやや下がったのを感じながらも、逆に優しくされるよりも今くらいの温度感の方が話しやすくもあるような気がしないでもないのだから変なものだ。  俺は必死に脳の普段使ってない部分の引き出しまで開き、適切且つこの場を穏便に切り抜けられるであろう言葉を探した。……けれど、ない。  ならばもうヤケクソだ。ええいどうにでもなれという気持ちで「俺は」と声を振り絞る。笹山に握られてない方の震える拳を握り締め。 「俺は……確かに童貞だ」 「そんな導入あるか?」  うるせえぞ四川。 「二日間、二人とも確かに俺を恋人として扱ってくれた」 「ええ、そうですね」  大分こえーくらい。多少のオーバータイムはあったものの、二日間とは思えない密度と疲弊はあった。  そして付き合うということはそれが続き、この先慣れるかどうかなるまで耐えるということになるのだ。 「た、単刀直入に言うぞ……」 「はい、どうぞ」 「さっさと言え」  急かすなバカ、と言い返す余裕もわりと、ない。  手汗やべえ。笹山に繋がれてる方もやべえ。  けど、ここまできて日和るわけにはいかない。二人だってそれなりに緊張してるのは分かったし、そう思えば勇気が出てきた。  深く息を吸い、吐く。そして、よし、と心の中で呟いた。 「あのな」と絞り出したとき、二人の視線が同時に細められた。触れる二人の指先に力が籠る。 「……俺にはその、刺激が強すぎる」 「…………」 「あ、阿奈、まだ耐えて。まだ原田さんが言いかけてるから……!」  なんだよ、人が頑張って言葉を選んだのにそんなにガンつけやがって。  笹山に止められ、四川はこめかみを抑えたまま無理矢理笑顔を作った。今にも人殺しそうな凶悪な笑顔を。 「……………………刺激っつーのは、なに、どういうことだよ?」 「だ、だから! 笹山は優しいけど……その、そこまで優しくされるとドキドキするし……」 「それで?」 「し、四川も……お前に優しくされんの、調子狂うっていうか……」  こうして本人たちを前に言葉にすることほど恥ずかしいことはない。  そうもじもじしつつ言葉を絞り出した瞬間、四川が目の前のローテーブルに踵を乗せる。 「阿奈」と咎める目を向ける笹山だが、本気で止めるつもりもなさそうだ。それよりも「それで?」とこちらへと問い詰めてくる笹山に俺は息を呑む。 「そ、それでって……以上、です……?」 「…………」 「…………笹山、俺が普段言ってる意味がわかったか?」 「…………少なくとも、俺はそれは原田さんの美点だと思っていたよ」  か、過去形……?!  てか普段言ってるってどれのこと指してるんだ。心当たりしかねえよ。  と明らかに落胆色濃厚な二人を前にどう声をかければいいのかともごついていたとき。 「つまり」と四川の指が唇に触れる。むに、と唇の柔らかさを確かめるように柔らかく潰され、「やへろひょ」と声をあげるも束の間、今度は笹山の手が太腿に触れ、ぎょっとする。 「ん、っ、ちょ」 「つまり? 優しくされんのが嫌だから付き合いたくねえって?」 「そ、そこまでは言ってね……っ、ん、ちょ、お、おい……っ?!」  お前ら、と二人を交互に見ようとすれば、それを邪魔するみたいに口の中に四川の指が捩じ込まれた。 「ん、んむ゛……っ?!」 「……都合良いことばっか言いやがってよーーテメェは。おいコラ笹山、言っとくけどお前が甘やかしてばっかのせいだからな」 「……そのつもりはなかったけど。でも、そうですよね。……やっぱりちゃんと原田さんに合わせて段階踏んで行くべきだったのかなって反省してます」 「む、ぅ゛……」  良いこと言ってる風なのに、なんだ。  申し訳なさそうな顔をする笹山に、イラついたような顔をして人の口の中掻き回す四川に、とてつもなく嫌な予感がする。  指おしゃぶりさせられたまま、とにかく二人の間から逃げようとしたが普通に無理だった。そのまま笹山の指が太腿から付け根まで登ってきて、朝方まで四川のを咥えられていたそこを服の上から撫でられる。 「……っむ、ぅ……っ!」 「これから、少しずつでいいので俺たちの愛に慣れていってください。原田さん」 「愛とかキッショいこと言ってんじゃねーよ。……一人で満足できねえからキープしようとしてんだろ、こいつ」 「一丁前に俺らを弄びやがって」そう硬い指先に舌を捕らえられ、そのまま引っ張り出されたと思えば四川に舌ごと甘く噛まれる。  なんだ、待て。何が起きてるんだ。  確か俺は二人を頑張って振って現状維持しようとしたはず――だったよな?  なんで俺、キスされながら下半身弄られてんの? 【続く】

【↑100】飼い主不在⑧【4,000文字/四川+笹山×原田/三角関係】

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