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田原摩耶
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【↑100】志摩の機嫌が悪い【2,200文字/志摩×齋藤/ほのぼの】

「齋藤って結構占いチェックしてるよね。あんなのよく信じられるね」 「別に、本気で信じてるわけじゃないよ」 「へえ?」 「……何?」 「保険が欲しいんでしょ。何かよくない時に言い訳に使える保険が。齋藤らしいっちゃらしいけどね」 「志摩、拗ねてるの?」 「そんなまさか。赤の他人の言葉よりも俺からの一日のアドバイス聞いた方がよっぽど有意義なのにって思っただけ」  拗ねてるじゃないか、と言いかけてやめた。  原因は分かっていた。いつものやつだ。  昨夜、志摩とちょっとしたことで揉めたのだ。意見の相違というかいつもの事故みたいな八つ当たりに近いが。  朝起きて俺が志摩に「おはよう」と言わなかったのも燃料となってまたじわじわと不機嫌になっていく志摩を横目にさてどうしたものかと取り敢えず水で喉を湿らせる。そして少しの沈黙。 「…………そうだね」 「何その間。今面倒臭いって顔しなかった?」 「し、してないよ。……志摩も喉乾いたんじゃないの?」 「ほら、水」とついでにミネラルウォーターを注いだグラスをソファーに腰を掛けた志摩に渡せば、「俺、常温じゃないとやだから」と言い出した。受け取リハするのか、と思いつつそのまま志摩の隣に腰を下ろす。 「齋藤、近い」 「え……いつも志摩これくらいの距離だよ」 「……」  そこで黙るのか。あと、思ってたよりもちゃんとしっかりと臍を曲げてるらしい。無言でそっぽ向く志摩を尻目に俺は朝の占いを眺める。 「……あ、志摩。占い一位だって」 「だから………………」 「ラッキーアイテム、赤の服だって」 「俺、赤嫌いだから」 「……まあ、そうだね」  どうしてもあの男を思い出してしまうので俺も赤い物は忌避してしまう。これは恐らく本能的なものに近いだろう。  そのままぼんやりとテレビを眺めてると、また最下位だった。そっぽ向いていた志摩がちらりとこちらを見てくる。 「……まあ、占いだから」 「今日はなるべく家で大人しくしていた方がいいでしょう、ってよ。齋藤」  先程まで占いは信じないだとか非科学的だとか言ってたくせに、こういうときばかりはここぞという顔で突いてくるのだ。しかもやや嬉しそうだし。本当にいい性格をしている。 「無理だよ。これ以上無断欠勤したら怒られるよ。それに、もうすぐテストだってあるんだから」 「俺と一緒に補習受けたらいいじゃん」  志摩はもう補習受ける気らしい。こういうときの潔さだけはいいのはなんだ。  けどさっきよりも少しは機嫌が直ったようだ。水だけで直る機嫌で助かったが、このままでは本当にズル休みをさせられそうだ。どうしたものかと考える。こういうとき阿佐美がいたら「帰れよ」と一蹴してくれるのだろうが、生憎阿佐美は外泊中だった。  ちらりと志摩を横目に見れば、じーっとこちらを見ていた志摩と視線がぶつかる。 「何、その目」 「……志摩。一緒にテスト勉強、する?」 「……」  あ、黙った。  そのままグラスの中の水を一気に喉に流し込む志摩。常温云々はどうしたというのか。 「志摩」 「……そしたらここに連泊していいの?」 「志摩、また言ってる」 「だってせっかく阿佐美のやつがいないっていうのに、一泊で帰れとか……おかしいでしょ。他にやましいことなかったらそんなこと言わないよ普通」  デジャヴ。まさに昨夜同じ流れで不機嫌になったときの志摩のことを思い出す。  確かに阿佐美はいないが、多分今日中には帰ってくることになっているし、阿佐美と鉢合わせして険悪になるのは志摩だというのに何故こうも渋るのだろうか。 「……でも志摩、阿佐美がいると嫌がるじゃん」 「そりゃ普通でしょ」  即答である。そういうところだよ、と思わず突っ込みそうになって堪えた。阿佐美と俺の間にやましいことなどないというのに変に勘ぐられるのも面倒だ。  阿佐美に迷惑かけないならいいよ――いや、この言い方はまずい。火に油どころか燃料を足してる。  ならば、どれが一番『まし』か。 「……いいよ。泊まっても」 「……! 齋藤……」 「けど、赤点回避するために付き合ってくれるならね」 「……」 「志摩」 「はあ……齋藤ってムードとかそういうの、本当考えないよね」 「テスト前だからね」 「……ま、いいよ。齋藤がそう言うなら」  好きにしたらいいよ、なんて言いながらそのままごろんとソファーの背もたれに凭れ掛かる志摩。  正直以外だった。てっきり面倒臭がって早々に帰る準備をするものだと思ったから。 「で、どの教科触るの?」 「え、今から?」 「あいつが帰ってくるまで時間ないでしょ。少しでも齋藤の自由時間確保しないと」 「し、志摩……」  少しでも感動したオレが間違いだったようだ。  言いながらそそくさと勉強道具一式用意してくる志摩になんとも言えない気持ちになりつつ、まあ志摩が前向きになってるのならいいのか?とも思えてくる。  やっぱり、志摩……少し変わったな。  ちょっと前なら颯爽と帰ってたのに。……寄り添ってくれる、というかなんというか。 「何?」  不機嫌そうに細められた目がこちらを睨む。  なんだか出会ったばかりのときの志摩が帰ってきてくれたみたいで嬉しい、なんて言ったらまたチクチク刺されるだろう。俺は「ううん、なんてもない」と首を横に振る。  たまにはただの学友に戻るのも悪くはない。  その後、帰ってきた阿佐美のトレーナーが真っ赤で志摩が露骨に嫌そうな顔していたが、俺は何も言わなかった。結局そのまま阿佐美に家庭教師してもらうことになり、テストも俺も志摩もギリギリ赤点回避できたので案外占いも当たってるのかもしれない……なんて。一緒に補習受けたがってた志摩は暫く不機嫌だったが。  おしまい

【↑100】志摩の機嫌が悪い【2,200文字/志摩×齋藤/ほのぼの】

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