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田原摩耶
田原摩耶

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【↑100】尾張ストーカー事件簿②※【5,100文字/能義×尾張/セクハラ/尾張総受け/女装/わちゃ】

前回(総集編版) https://t589423.fanbox.cc/posts/2297781 「……っ、……ふ……」  何故こんなことになってるのか。  背後に立った能義に腰を掴まれ、スカートを捲りあげられたまま腰を押し付けられる。  鼻息荒いし、何が楽しいんだよこれ。  嫌に硬いブツの感触を必死に脳内で別のもので変換しようとするが、難易度が高すぎる。 「能義、もう五分経っただろ?」 「いえ、あと三分ありますよ」 「本当かよ、……っ、ぅ、こ、すりつけんな、それ」 「おや? それとはなんのことでしょうか? 私はただ尾張さんの素敵な姿を触れて愛でてるだけだというのに」 「ぉ、お前な……っ、ぅ、ん……っ!」  腰の動かし方が悪意ありすぎるんだよ、と後ろ蹴りでも入れてやりたかったが、これも交渉のためだ。  仕方なく我慢していると、下着越しに尻を揉まれる。 「……っ、能義、二分経っただろ……っ!」 「まだ私の時計では三十秒残ってますよ」 「その時計ぶっ壊れてんだろ……ぉ、……っ、おい、どこ触って……ッ!」  ドサクサに紛れて下着の上からケツの穴を撫でられたとき、俺は能義の腕を掴んだ。間違いなく三十秒は経っている。  背後の能義を睨めば、「貴方の体内時計は正常なようで」と能義は悪びれた様子もなく笑うのだ。 「因みに、ここから先本番ありでもっと協力して差し上げますよ」 「俺がその条件飲むと思ってんのか?」 「おっと、流石尾張さん。しっかりと自分の価値を分かっていらっしゃるようだ、これ以上は安売りはしないと」 「名残惜しいですが、尾張さんがここまで譲歩して下さったのですから私も一肌……二肌は脱がなければなりませんね」言いながら脱ぐな。後やっぱワンチャン狙ってクソみたいな条件吹っかけてくんのもやめろ。 「いらねえから、終わったんならいい加減離れろって……っ!」 「やれやれ、仕方ありませんね」  まるで人をわがままか何かのように肩を竦める能義。一応はちゃんと離れるんだなと安心したのも束の間。 「では、私は今の内に尾張さんの女装を網膜に焼き付けて抜いてきますね」  言うな。言いながら取り出そうとするな。せめて便所に行ってから出せ。  ベルトガチャガチャ弄りながら「お花詰みに行ってまいります」と手を振る能義を追い出しつつ、俺はさっさと女子制服を脱いで元の制服へと着替える。  便所の方から『ああ、尾張さん……っ!その太腿で挟んで下さい!』と悍ましい声が聞こえてくるのを必死にシャットアウトしつつ、俺はシャツのボタンを付け直した。  なんだか、どっと疲れた。  それからなんか大事なものをいくつか失った気がしてならない。 「……」  これ以上深く考えるのはやめておこう。  それから暫くしない内に能義は「お待たせしました」とやけにスッキリした顔で戻ってきた。  早かったなとも遅かったなとも言うのがとてつもなく嫌だったので「おう」とだけ返す。 「じゃあ、約束通り説明してもらうからな」 「はて、説明……?」 「もしかして、すっとぼけるつもりじゃないだろうな」 「おやおや、ほんの可愛い冗談ではありませんか」  どこがだ。洒落にならないんだよ、お前の場合。 「で?中身は?」と撒かれないように能義に迫れば仕方ありませんねと肩を竦める能義。それから能義はすっと目を細める。 「中身ならばもう貴方がよくご存知でしょう」 「……は?」 「貴方が先程まで身に付けていたソレですよ。……五条に用意させていたのです、貴方に合うサイズのものを」  何故だかやや照れる能義。その口から飛び出す事実を受け入れるのにやや時間を要いた。  ……いやだとしてもなんでだ。想像つくが理解したくねえ。心が拒否してる。 「んなものを勝手に用意すんなよ……」 「先に言ってたら許諾していただけるんですか?」 「すると思うか?」 「いえ、ですので事後報告しようかと。今回は手間が省けて助かりましたが」  にこにこと満面の笑みを浮かべてやがる副会長様々。楽しそうで何よりだ。  なんのために俺は好き勝手触られていたんだ。承諾したのは俺だけどもだ。  先ほどよりも倍になった疲労感にソファーに座り込む。そして、俺はそういえばと玄関口へと目を向けた。 「……そういや来客、さっさと応えた方がいいんじゃないか?」 「ああ、すっかり忘れていました。尾張さんはそちらで好きにお寛ぎ下さいね」 「おー」  散々待たされている間に静かになっていた来客を憐れみつつ、玄関へと向かう能義を見送る。  それにしてもさっきの制服、五条のやつはどこ経由で仕入れたんだよ。……いや、やめよう。世の中には知らなくてもいいこともある。  なんて思いながら脱ぎ散らかしていた女子制服を畳んでそっとクッションの下に隠し封印していたときだった。  ドタバタと凄まじい足音ともに「尾張?!」と聞き慣れたクソデカ大声が響く。 「……って、政岡……?」 「無事か?! ま、まさかこいつに変なことされなかっただろうな?!」  言いながら、猫かなにかのように能義の首根っこを掴んだまま詰め寄ってくる政岡。  された。ちゃんと。しっかりと。……なんて口が裂けても言えない。  俺は笑って「ああ」とだけ誤魔化しておく。 「そ、そうか……ならよかったんだ。お前がこいつと会うって聞いて心配してきたんだ」 「いつまで人を猫ちゃんのように掴んでるんですか、いくら可愛い担当の私だとしてもその行為は不躾ですよ、零児」 「うるせえ! どこが可愛い担当だ?! 俺の許可無く尾張と二人きりになることが許されると思ってんのか、ああ?!」  お前は俺のなんなのだ、というツッコミはさておきだ。  確かにこいつと二人きりになってろくな目に遭った記憶がないので肝に命じておくしかない。 「政岡……それで、どうしたんだ? こうしてわざわざ探しに来たってことは、なんか分かったのか?」 「ん、ああ……そうだった。尾張、尾張の無くしていた体操着の上が見つかったんだよ!」 「本当か?」  もはや諦めきっていただけに政岡の言葉に驚く。「ほら、これだろ?」とごそごそと制服の上着から見覚えのある体操着上を取り出す政岡。  くしゃくしゃになったそれを広げれば、確かに俺の名前がしっかりと縫い付けられているではないか。 「それで、どこに……」 「え、えーっと……」 「そこで口籠るのかよ」 「だ、男子便所……」 「…………」 「ということは使用済みですね」  やめろ言うな能義。  どさくさに紛れて隣に腰をかけてきた能義はひょいと俺の手から体操着を取り上げる。 「しかもほんのりと温かい。……なんか湿ってませんか? 零児、貴方まさか……」 「は、はあ?! テメェ何いってんだよ、俺がまさか見つけた尾張の体操着を抱き締めたり嗅いだりするわけねえだろ!」 「落ち着け政岡。まだなんも言ってねえから」 「おわ、尾張、違うからな?! ただまた落とさねえようにしっかり握りしめてここまで走ってきただけだからな?! た、確かにもしかしたら尾張違いかもしれねえと思ってサイズや触り心地のためにちょっと着てみたりは確認したが……」 「政岡、色々漏れ出てるから」  あと着るなよ。サイズはラベルで見れるだろ。 「つか、上だけかよ。下はねえって……」 「尾張さんの仰っていた件のストーカーの仕業でしょうか、噂通り随分といい趣味……いえ、えっちな趣味をされているようですね」 「なんで言い直した?」 「恐らく今頃体操着の下で楽しまれてるのかも知れませんね」 「クソ、許せねえ……! 上だってまだ全然捨てるようなもんじゃねえだろ! なんだと思ってやがるんだクソ犯罪者が……ッ!!」 「それあんまフォローになってないかもな、政岡」  とはいえど、流石に何に使われたか分かんねえ体操着を着続けるほど強靭ではない。 「勿体ねえけど捨てるか」と能義から取り返した体操着を見つめていたとき、いきなり伸びてきた手に体操着を奪われた。 「……」 「……」 「……政岡?」 「……こいつは俺が保護する」 「いや、汚えからこっちに渡せ」 「駄目だ、尾張の頼みでも聞けねえ……! 大切にするから許してくれ……っ!」  なんで捨て犬を拾ったときと同じリアクションになってんだよ。大切にすんな。 「大切にすんじゃね……って力強えな……!」 「そうですよ、我儘はいけませんよ零児。ママを困らせないで下さい」 「誰がママだ誰が」 「お腹の子は元気でしょうか……っげほ! 尾張さん、いい一撃をお持ちではありませんか……」  こんなことをしてる場合ではないというのになんだ、なんなのだこれは。  嫌だ許してくれ頼む尾張と涙目でひしっと体操着を抱きしめる政岡の力が強すぎて、どんだけ引っ張っても寧ろ俺の方が後退していってんのなんなのだ。あと能義はどさくさに紛れて人の肩を抱くのをやめろ。 「……っ、はあ、……クソ、……もう勝手にしろ、変なバイ菌もらっても知らねえからな」 「尾張……俺の心配してくれてたんだな」  うりゅ、じゃないんだよ。ああ駄目だツッコミ疲れてどうでもよくなってきた。知るかもう。 「それにしても、犯人の手がかりはそれだけですか」 「……今のところはそうだな」 「いけませんね、尾張さんはもっと早く生徒会の右脳と呼ばれた私を頼るべきでした」 「なに……?」  なんか駄目そうな右脳ではあるが、能義があまりにも自信たっぷりに言うので少しだけ構えてしまう。  そんな俺に得意げに微笑みながら能義は手を叩いた。 「ストーカーにはストーカー、変質者には変質者。そして……変態には変態ですよ」 「何を言ってるのか分かんねえけど、お前が変態なのは確かにそうだな」 「そう焦らないで下さい、尾張さん」  焦ってねえよ。 「まず魚釣りには何が必要ですか? ……撒き餌です。誘き寄せたところを網で一網打尽にする――これが最大効率です」 「なに……? 撒き餌だと……?」 「ええ、この変態会長が釣れたように、逆に変態ストーカーを一本釣りにしてしまえばよろしいのです」  不敵に笑う能義。  なんかそこはかとなく嫌な予感しかしねえんだが。  言いながら、能義は制服の胸ポケットからするりと何かを取り出した。それは最早毒々しさすらあるショッキングピンクの薄っぺらい布――ではなく、布面積が設計ミスみたいな女性モノの下着だった。 「おまっ、有人テメェ尾張になんてもの見せてんだ!!」 「それより胸ポケットにそんなものを仕舞うな」 「まあまあお二人とも落ち着いて下さい。これを撒にするのですよ。……ね、尾張さん」 「絶対やだからな」 「尾張さん」 「嫌だ……って力強え……ッ!」  肩を抱いてくる能義の手をみちみちと剥がそうとするが全然離れねえ、なんだこいつ。 「何、簡単なことです。貴方がこれを着用したところを写真撮影し、それをバラ撒く。その次にこのドスケベ即ハメパンツをチラつかせて出てきたところを取っ捕まえてやればいいのですよ」 「ぜってー第一工程と第二工程いらねえだろそれ……!」 「分かってませんね、大切なことですよ」 「ふざけ……おい、政岡もこいつになにか言って――」  やれ、と政岡の方を振り返ったときだった。能義に抱かれてる反対側の肩をがっしりと掴まれる。近。 「って、政岡……?」 「尾張……許してくれ……」 「お、おい……お前まさか……」  俺を裏切るつもりか?  そう顔を上げれば、断腸でもするみたいな顔してる政岡に俺まで青ざめる。  ――こいつ、下心に負けやがった。 「政岡……お前……」 「う、やめろ、頼むそんな目で俺を見ないでくれ、尾張……っ! 俺だって本当はこんな、こんな即物的で低俗で下半身でしか考えてねえような馬鹿丸出しの作成は反対なんだ!」 「言い過ぎですよ、貴方」 「けど、確かにこのクソ変態陰険野郎の言い分もある……! これ以上被害を出すなら手っ取り早く尻尾を掴んで引きずり出すのがお前のためではあるんだ、尾張……っ!」 「……」 「た、頼む、分かってくれ……」 「…………」  ぐす、と鼻を啜る政岡。震えながら声を振り絞る政岡の肩をぽんと叩く。 「で、本音は?」 「エロい格好した尾張を見たい」 「……」 「あ、ち、違う、違うんだこれは! 俺の口が勝手に……!」 「今までありがとうな、政岡」 「尾張、尾張捨てないでくれ……! 冗談だ、全部この変態クソ陰険野郎に唆されたせいなんだ!」 「人のせいにするなんて人としてどうかと思います。ただでさえ尾張さんは傷付いてるというのに本当デリカシーがない方ですね」 「テメェ! 掌返しやがったな能義ィ゛!!」 「尾張さんこっちですよ、おーよしよし。男はケダモノで怖いですね、近寄らない方がいいですよ」 「能義ィイ゛ッ!!」  俺は体操着と能義の即ハメパンツをまとめて燃えるゴミ袋にぶち込み窓から捨てた。政岡が窓から飛び降りそうだったがなんとか捕縛することによりなんとかなった。  いや、なんともなってねえよ。スタートラインに戻るどころかマイナスに行ってるぞこれ。  というわけで一度能義を迎え、俺達は他の役員、そして岩片と合流することとなった。 【続く】

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