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田原摩耶
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【↑500】アンハッピー・バレンタイン 前編※【6,100文字/阿賀松+裕斗×齋藤/3P】

 またこの憂鬱な季節がやってきた。きてしまった。  バレンタイン特集で盛り上がる朝のニュースを横目に俺はネクタイを締める。  そう、今日は二月十四日。なんならバレンタインデー当日だ。  本当だったらただの平日としてやり過ごす予定だったが、この学園にきてからはそういうわけにもいかなくなってしまっていた。取り敢えず渡さなければ後から文句を言ってきそうな志摩と阿賀松、それから一応恋人ということになってる芳川会長とお菓子が好きな阿佐美の分だけ予めチョコを用意してきた。  ベッドで阿佐美が抱き枕抱えて爆睡してるのを確認し、そっと阿佐美の机の上にチョコを置く。  朝の内にどうせ志摩は会うことになるだろうから志摩にはその時チョコを渡せばいいだろう。芳川会長には生徒会室に行けば会えるだろうし――問題はあの男だ。  神出鬼没、どこで何をしてるかもわからない自称俺の恋人・阿賀松伊織。  チョコを渡したところであの男の期待に添うことができるかどうかも怪しいが、何もしなければきっとろくなことにはならないだろう。それだけは分かったからこそ、この男のためのチョコを用意するには大分手間がかかってしまった。  ……またなにか言われる前に早めに渡さなければ。  学園内がバレンタインで浮足立つ中、何故俺だけがこんなに命の危険に怯えながらチョコを持ち歩かなければならないのか。……考えるだけで悲しくなってくるのでやめよう。  そんなこんなで始まったバレンタイン。  阿佐美、志摩、芳川会長には予定していた通りチョコを渡すことはできたものの、予め危惧していた通りの問題が起きた。  学園内、どこを探しても阿賀松の姿が見えないのだ。この時期だ、三年は会長のように学園に顔を出してる方が珍しいけどもまさか本当にb学園にいないのだろうか。  それならそれで願ったり叶ったりではあるが、念のため放課後に学生寮の方も確認することにした。  そしてやってきた放課後。  なにやら一緒に過ごしたそうな志摩をなんとか宥めるものの、ひと悶着があり気付けばだいぶ遅くなってしまった。  既に時計は二十一時を回っている。やってきた学生寮・三年のフロアはやはり普段よりも閑散としていた。  原則として三年生は二月いっぱいまでは在寮しなければならないということになっているが、授業は希望者のみ受けられる特別授業があるくらいだ。大体の三年は早めの春休みとして実家に帰省したり旅行に行ったり進学の準備やらしてるはずだが……。  こそこそと隠れるように阿賀松の部屋へと向かおうとしたときだった。いきなり背後から肩を掴まれ「ひっ」と飛び上がりそうになる。  何事かと振り返れば、そこには予想していなかった人物が立っていた。 「よっ。珍しいな、齋藤がここにいるなんて」 「ゆ、裕斗先輩……っ?」 「どうした? こんなところで」 「え、えと、その……」  しまった。ここで裕斗に鉢合わせることなんて予想だにしていなかった。  固まる俺の腕の中、阿賀松へのチョコ入りの紙袋を一瞥した裕斗は「ああ、なるほど」と笑う。 「なんだ、そういうことか」 「ゆ、裕斗先輩、これはその……」 「飯食った後だったけど甘いもんは別腹だ。齋藤からってんなら余計な」 「え、ええと……その……っ!」  薄々まずい予感はしていたが、どうやらそのまさかが的中してしまったようだ。  裕斗の分は用意してなかった。だって、裕斗が俺からのチョコを楽しみにしてると思ってなかったからだ。裕斗の笑顔に罪悪感を覚え、思わず手にしていた阿賀松宛のチョコを裕斗に渡してしまいそうになる。  が、待てよ。これを渡してしまったら阿賀松の分がなくなってしまう。 「どうした、齋藤」 「その、裕斗先輩……」  これは阿賀松先輩を鎮めるためのものなんです、と俺が事情を説明しようとしたときだった。 「おい、何ユウキ君虐めてんだ」  通路の奥、聞こえてきた声に全身がぎくりと硬直する。聞き間違えるはずのない、この不機嫌そうな声は間違いなく……。 「なんだよ人聞き悪いな、伊織」 「ああ? 馬鹿裕斗、お前見て分かんねえのか、ユウキ君こんなに震えてんじゃねえか」  言いながら俺たちのところにやってきた赤髪の男、もとい阿賀松伊織。どさくさに紛れて肩を抱き寄せられ、裕斗から引き剥がされる。  助かったような、助かってないような――なんだこの状況は。 「そりゃお前が大きな声出すからだろ。なあ?」 「い、いえ、そんな……」 「んだよ、いつもに増して煮え切らねえな。ユウキ君。そんなんだからこいつに着け入れられんだろうが……って、あ?」  そして、俺の手にしていた袋に気付いたらしい。当たり前のようにその袋ごと取り上げられてしまう。 「あ、そ、それは」と慌てる俺を無視し、そのまま中を覗いた阿賀松は中からチョコの入った箱を取り出し、笑う。 「へえ、なるほどなあ? ……俺のためにわざわざ届けに来たのか? 健気じゃねえか、ユウキ君」  不敵な笑みを浮かべ笑う阿賀松。肩を抱いていた手にそのままぐしゃりと頭を撫でられ、髪が一瞬でボサボサになった。が、今はそんなことを気にしてる場合ではない。 「は……」 「おいおい、なんでそうなるんだ? 俺宛かもしれないだろ?」  はい、そうです。そう頷こうとした矢先、口を挟んでくる裕斗によってそれは綺麗に遮られてしまう。 「あ? お前はどっからその自信が出てくるんだよ。……なあ、ユウキ君? 言ってやれよ」  そして、そんなご丁寧なフリとともに二人に挟まれることになるのだ。  裕斗にもお世話になってるのも事実だ。けど、これは阿賀松へのもので……。 「なんだ、そうなのか? 齋藤」  ――頼むから、そんな捨てられた犬のような目で俺を見ないでくれ。  裕斗へのチョコも用意しとけばよかったという後悔やら罪悪感やらでいっぱいいっぱいになり、必死に逃げ道を探す。が、見当たらない。  こうなったら、と俺は裕斗と阿賀松を見上げる。 「あ、あの、こ、このチョコは……お二人で食べてください……っ」  それでは、とそのまま二人の間を縫って逃げ出そうとしたときだった。そのままカーペットに足が引っかかり、転びそうになる。  そんな俺の首根っこ。伸びてきた手に思いっきり掴まれ、猫のように掴み上げられた。   「うぐっ」 「何やってんだ、お前は」 「あ、阿賀松先輩……っ」 「つか今ので逃げられると思ってんのか、ユウキ君」  覗き込まれる顔。やばい、さっきまで機嫌良かった阿賀松の顔がやや不機嫌になってる。  このまま適当に煙に巻いて誤魔化そうと思ったのにどうやらしくじってしまったようだ。そんな俺の横、心配そうに覗き込んでくるのは裕斗だ。 「おい、大丈夫か? 伊織の顔がこえーからビックリしたろ」 「テメェがしつけえからだろ、裕斗」 「けど本当君は優しいな、齋藤。……俺と伊織、傷つけないようにしてくれたんだろ?」  な?と優しい目で見つめられ、うりうりと顎の下を撫でられると揺らぎそうになる。が、目の前の阿賀松からの圧にすぐ現実に引き戻されるのだ。  これはなんだ、現代の北風と太陽か。なんて冗談言ってる場合ではない。こうなったら素直に話すしかない。 「そ、それは……っその、……ごめんなさい……裕斗先輩の分、用意、ちゃんとできてなくて……」  すみませんでした、と頭を下げれば、裕斗は「まあ仕方ねえよな」と少しだけ残念そうに笑った。 「でもま、こういうのは気持ちの問題だって言うよな。なあ? 伊織」 「気持ちなぁ? ……つまり俺宛のチョコをこいつにあげようとしたってことだよな、ユウキ君」  ひやり、と項の辺りに冷たいものが走る。  裕斗は許してくれたが、阿賀松はまだ納得している様子はない。それどころか、阿賀松は「なるほどなあ?」と俺の頭から爪先までじろりと視線を向けた。  まるでこれからどうしてやろうか、とでもいうかのような目である。俺は処刑を待つ罪人のようにそのまま動けなくなった。 「ご、めんなさ……んむ……っ!」  とにかく誠意を持って謝るしかない。そう頭を下げようとした矢先、むに、と両頬を潰すように顔を掴まれた。 「む、ぐ……っ」 「気持ちの問題だっけか? 裕斗」 「ああ、そうだな。お前の大好きな誠意ってやつな」 「ああ……それ、いいな」  むにむにとゴムボールかなにかのように人の頬を潰し、そのままぐい、と顔を上げさせた阿賀松はにぃ、と気味の悪い笑みを浮かべた。 「ってことで、誠意見せろよ。ユウキ君」  ひっと息を飲むことしかできなかった。逃げ出すことなど言語道断。肩をしっかりと抱かれた俺は“死”を覚悟した。  ◆ ◆ ◆  確かに、確かに俺が悪かった。阿賀松宛のチョコを二人に押し付けて逃げようとした俺が。  けれど、だからってこんなことあるのか。  逃げる隙もなく、阿賀松に担ぎ上げられやってきたのは阿賀松の部屋だ。以前よりも少しは片付いているその部屋の奥、寝室の扉を足で蹴り開けた阿賀松はそのまま俺をベッドへと放り投げた。 「ゃ、ま、待ってくださ……っ! ぅ、ぶ」  顔面からベッドへ突っ込み、慌てて起き上がろうとしたときだった。側でベッドが微かに沈む。そこに座るのは裕斗だった。 「相変わらずお前の部屋のベッドは広いな」 「寝返りは打てねえとな」 「寝相が悪すぎるんじゃないか?」  そんな談笑を交えつつ、「なあ、齋藤」と俺の体を抱き抱えた裕斗はそのまま俺を自分の膝へと座らせるのだ。まるで背後から抱き竦められるような体勢に狼狽える暇もなかった。 「あの、ゆ、うと、先輩」 「どうした? 齋藤」 「な、なんで……こんな……」 「嫌か?」 「ぃ、いえ、そういうわけでは」 「3P、したいんだってよ伊織」 「人聞き悪いこと言ってんじゃねえよ。……ユウキ君が言い出したんだろ、俺とこいつ、決めらんねえって」 「ぁ、そ、それは……」  言った、というか似たようなことをしたけれどもだ。  肩を撫でるようにニットをずらされ、そのまま胸へと這わされる大きな裕斗の手にぷち、ぷち、と手慣れた手付きでシャツのボタンを外されていく。  ――3P。  阿賀松と裕斗と?想像したくもない。  ないのに、二人とも何故乗り気なのかが分からない。 「ご、めんなさ、あ、謝りますので……んっ、ゆ、許して……くださ……っ、ぁ……」 「だってよ、伊織。見ろよ、齋藤がぶるぶる震えてんじゃん」 「こいつは毎回これ言うんだよ。俺が『嫌がってるのが好き』って知ってるからな」 「へ……っ」 「なるほど、そういうプレイなわけ」  違う、と言いたいのに、それよりも先にぺろりと裕斗に唇を舐められ、顔が熱くなる。そのままじっと見つめられたままキスをされながらシャツの上から胸を弄られ、「んんっ」とくぐもった声が漏れた。 「っ、は、んむ、……っ、ゅ、うと先輩……」 「なあ、齋藤。チョコ、今度は伊織とは別に用意してくれよ。こいつも食うから半分こじゃ足りねえんだよな」 「ん、ぅ……っ」  頼むよ、と重ねられた唇の中、囁かれる言葉に頭の奥がじんわりと熱くなっていく。  裕斗の触れ方は激しいが優しくて、硬い指で勃起し始めていた乳首を柔らかく揉まれれば腰が震えた。 「ようやく本音出やがったな……ったく、わかっただろ? こいつに優しくする必要ねえからな、ユウキ君。こうやって、図々しく付け上がるぞ」  ベッドの上。裕斗に抱き竦められ、体を触れられている俺を眺めながら阿賀松はタバコを咥える。そして、そのままベルトをガチャガチャと外す阿賀松。その動作だけで次に自分が何をされるのか理解してしまう。 「口、開けろ」  ユウキ君、と俺の前、膝立ちになった阿賀松は俺の頭を撫でた。すぐ顔の前、既に勃ち始めていたそれを前に俺は言われるがまま口を開く。  舌を伸ばし、必死に阿賀松のモノを口いっぱいに頬張ろうとし、唾液をたっぷり塗り込むようにせっせと舌を絡めた。 「っ、ん、くぷ……ッ! ふ、ぅ゛……」 「齋藤の口ちっせえのに、伊織のはキツイだろ。無理させんなよ」 「大丈夫だよ。こいつ、喉もイケるから」 「なあ、ユウキ君」と俺の横髪を耳にかけながら、そのまま俺の喉の奥までずる、と性器を挿入させてくる阿賀松にひたすら嘔吐く。  理由も分からぬまま、同意を求められるがままに俺は頷く代わりに喉を開き、奥まで阿賀松を受け入れた。口から鼻まで阿賀松でいっぱいに鳴る咥内、酸欠と熱で意識がふわふわしてきた。  ……あれ、俺なんで二人に挟まってんだ。 「は……っ俺も、齋藤にしゃぶってもらいて……」 「こいつなら喜んでやるぞ」 「まじ?」 「興味あるなら後でやってもらえばいい。……なあ、ユウキ君」  鼻腔いっぱいに広がる性の匂いに脳の奥まで侵されながら、俺はただ阿賀松の問いに促されるがまま頷く。尻の下、裕斗のものが当たるのを感じ、俺は阿賀松のものをしゃぶりながら少しだけ腰を浮かせ、手を伸ばした。 「ん、っ、む……っ」 「齋藤? ……なに、手でしてくれるんだ?」 「……っ、ん、ぅ……」  カリカリと裕斗の下半身、膨らんだそれを取り出そうと指を動かせば、そのまま俺の手を握り締めた裕斗は「ありがとな」と笑い、そのまま自ら寛げたパンツの下から性器を取り出した。手の中、熱く硬くなったそれを握らせられ、俺は恐る恐るそれに手を這わせる。 「……っん、……俺のこと慰めてくれてんだ? ……優しいな、齋藤」 「ユウキ君、こいつのこと甘やかし過ぎんなよ。……お前は俺の恋人だろ?」 「……っ! ふ、ぅ゛――」 「伊織なんてやめて、俺にしろよ。齋藤」 「ん、ぅ゛、ごぷ……ッ!」  こっちを向けと言わんばかりに天井のざりざりから突き当りまで性器で擦られ、そのまま舌の上を滑るように喉奥まで犯していく阿賀松。耳を塞ぐように頭を掴まれ口の中を出入りされれば、粘ついた水音が脳味噌全体まで響き渡り、阿賀松でいっぱいいっぱいになる。  そんな状態で、抱き着いてくる裕斗に乳首を優しく刺激され、腰を押し付けられる。まずい、これは。多分、そろそろ。 「ん、んん゛う……っ!」  唾液と精液が口の中で混ざり合い、ろくに舌を這わせることもできないが阿賀松は最初からそんなものを求めてなどいなかった。  人の喉を性器に見立て、乱暴に犯してくる阿賀松は俺が嘔吐く度に気持ちよくなるのだ。  そして、汗やらなんやらで張り付いた俺の前髪を掻き上げ、酷いことになってるであろう俺の顔を見下ろして「いい顔だ」と笑うのだ。つくづく悪趣味な男だと思う。  この一年弱でそんな阿賀松に慣らされてしまった俺も、人のことはもう言えないのかもしれない。 「いいぜ、ユウキ君。……お前の喉、相変わらず締め付けがいいな」 「ご、ぅぷ……ッ!」 「……っ、そのまま、しっかり飲めよ」  俺の頭を掴み、根本までしっかり咥えさせた阿賀松は笑う。喉の奥の奥までみっちりと詰まった性器。その鼓動まで俺の粘膜から伝わってきた。そして、頭を掴む阿賀松の指に力が加わったと思った次の瞬間、喉の奥、粘膜に絡みつく熱に俺は噎せることも吐き出すことも許されなかった。 「が、は……ッ! っ、ん、ぷ……ッ!」 「……ああ、そうだ。ちゃーんと飲み干せ……残ったのも吸い出すんだぞ」  ユウキ君、と俺の耳にそっと指を這わせながら、阿賀松は心地よさそうに目を細める。  何故バレンタインに精液を味わわなければならないのか、と思いながらも俺は舌の上のそれを唾液とまとめて文句ごと喉の奥へと押しやった。  ……無論、すっきりするはずなどなかった。 【続く】

【↑500】アンハッピー・バレンタイン 前編※【6,100文字/阿賀松+裕斗×齋藤/3P】

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