生まれてこの方、ハロウィンというイベントに特別な感情を抱くことなんてなかった。仮装して騒いでいる人間側に行くこともなければ、それを遠巻きに眺めるだけ。 一日経てば、普段と変わらない日常が戻ってくる。その程度だったが、今この時を持ってハロウィンというイベントを憎んだ。 「十鳥君、今日はこれを着てもらうよ」 「……なんすか、これ」 「可愛い可愛い淫魔コスだよ。わざわざ今日のために取り寄せてもらったんだ」 いきなり八雲に呼び出されて人気のない通路まで連れてこられたと思えば、ご丁寧に紙袋に入ったそれを手渡してくる。 少なくとも旅行の土産なんてものではないと分かっていたが、それでもだ。紙袋から出てきた黒地のやたら際どい衣装を見た瞬間、俺は慌てて紙袋に戻した。 辺りに人がいなくて本当によかった。 「……まさか、これ着てご奉仕でもしろって言うんじゃあ……」 「おや、話が早くて助かるよ」 「じょ……冗談じゃない、どうせ脱がされるんだったら……」 こんなもの必要ないだろ、と言いかけた瞬間。にこりと微笑んだまま、八雲は俺の唇に人差し指を押し当てた。 「四軍君、君に拒否権は?」 薄く開いた目はじっとこちらを見下ろしていた。 本当に、この男のことは好きになれない。 「……っ、ない……です」 「良くできました」 わざとらしく手を叩いて見せる八雲。この腹黒野郎が、と腹の中で毒づくことしかできない自分が情けない。 「これ着ていつもの場所においで。四軍の君をわざわざ誘ってやるんだから、まさか逃げ出すなんて考えないよね」 いつもの場所、と言われて分かってしまう自分が嫌だった。 八雲曰くヤリ部屋、と呼ばれる一軍共の遊び場のことだろう。大抵、この男が他の役員たちに秘密で俺を呼びつけるときにはあの場所を利用するのだ。 それから、言いたいことを言うだけ言って八雲はさっさと廊下を後にした。 「……」 一人取り残された俺は、改めて恐る恐る中を覗き込む。 絶対これ、男用じゃないだろ。 最早女物の下着と言われても納得できるほどの上下分かれた布面積の小さな衣装。ショートパンツのお尻の部分にはご丁寧に尻尾が映えている。 そして、遊園地でいくら浮かれようがつける気にはなれないような小悪魔の耳。 「……最悪だ」 今まで受けてきたどんな仕打ちよりも、かなりきつい。 やはりあの性悪腹黒男には人を苦しめる才能があるようだ。俺は他のやつらに見つからないよう、そのままその場を後にした。 ◆ ◆ ◆ 放課後、言われた通りに悪趣味な衣装に着替え、八雲のお遊び部屋までやってきた。無論、あのとんちきな服の上からは上着を羽織って、しっかりと前を留めている。 扉の前には数人の一軍共が雑談するフリをして見張りをしてた。俺の姿を確認した連中はニタニタと笑い、そして俺を部屋に通したのだ。 扉の奥へと足を踏み込んだ瞬間頭が痛くなる。ラウンジに充満した酒と甘ったるい菓子の香り――それと、濃厚な性臭。 至る所で仮装した生徒たちが早速まぐわっているのをなるべく視界に入れないよう努力しながら、俺はあの男の姿を探した。 そして、すぐに見つける。 「八雲様、今夜の格好も素敵です。僕に悪戯して下さい」 「順番だって八雲様も仰っていただろ、今は僕がトリートしてもらうんです」 ラウンジの二階フロア、その所謂VIP席のような場所でやたら露出度の高い仮装をした小柄な美少年二人を両脇に侍らせ、この酒池肉林を体現したようなラウンジを見下ろしていた男は、俺の姿を見つけてにこりと微笑んだ。 まるで吸血鬼のようなきっちりとした洋装に身を包んだ八雲の手にはワイングラスもしっかりと握られてる。 この場に警察に通報したら全員逮捕されないだろうか、と思ってると、八雲は階段を降りて俺の前までやってきた。その後ろには先程喧嘩してたらしい一軍の美少年もいる。何故か美少年たちかこちらを睨んでるが、付き合ってられるかと思いながら無視する。 「やあ、ちゃんと来てくれたみたいだね。……無論、その下には着替えてくれてるのかな?」 言うや否や、上着の襟首を掴み胸元を覗き込んでくる八雲。ぎょっとし、「触んな」とつい八雲の頭を掴んだときだった。 「口の利き方には気をつけた方が良い。ここにいる子たちは皆耳聡い子ばかりだからね」 「……っ、……」 ぼそ、と耳元で囁かれる言葉に、唇をぎゅっと噛みしめる。そのまま八雲は俺の前から手を離した。 「似合わなさすぎて滑稽だな」 俺にだけ聞こえる声量で笑う八雲。 ならあんたも口の利き方考えろよ。なんて、言ったところで無駄なのだろうが。 無言で睨み返せば、くすくすと楽しげに笑いながら八雲は中央のテーブルへと歩み寄る。 「まあいいよ、今日はなんたって無礼講だ。……テーブルの上に用意されたお菓子は好きなだけ食べればいい。今夜は四軍である君も楽しめるように『特別なルール』を設けているんだ」 薄暗く、ハロウィンらしい派手な装飾が施されたラウンジ内。同様、テーブルにはハロウィンモチーフの洋菓子やケーキが並べられてる。 こんなところになければ食欲は湧くのだろう。そのテーブルの上に盛られた一つのカップケーキを手に取った八雲はそれをひと齧りする。何故かその仕草だけできゃあ、と野次馬から黄色い悲鳴が漏れていた。本当に謎だ。 「……ルール?」 「簡単だ、合言葉は『トリックオアトリート』。その言葉とともにお菓子を渡されればそれを受け取り口移しで返す。そして、『この体を使った甘い褒美を与える』んだ」 「は……」 そう、近くにいた美少年の肩を抱き、「トリックオアトリート」とそのカップケーキの残りを唇に押し付ければ、呆けたように顔を真っ赤にした黒猫のコスプレをした少年はそのまま八雲の前に跪く。観衆の前、躊躇いなく取り出した八雲の性器を咥えだす美少年の頭を撫でながら、八雲はウエイターの格好をしたバニーボーイからワイングラスを受け取った。 「もう一つ、お菓子ではなくワインの入ったグラスを差し出されれば『相手にお仕置きをしてもらう』ということになる。……拒否権はない。そのグラスを受け取り、相手に口移しで飲ませる。それからお仕置きをしてもらうといい」 じゅぽじゅぽとフェラをさせながらも、涼しい顔をして『ルール』を説明を続ける八雲に俺は今度こそ言葉を失った。 何がハロウィンパーティーだ。結局、ただヤりたいだけだろ。そんな俺の心を呼んだかのように、「普通だったらつまらないからね」と八雲は小さく息を漏らす。 「……っ、は、因みにだけど、勿論この誘いはカースト下位の者にしか持ちかけることはできない。だから、君は必然的に皆から愛してもらう立場になるということだね」 「……っ、……」 喘ぎ声と吐息、水音が響く部屋の中。淡々と響くその柔らかな声が悪魔のようにしか聞こえなかった。 つまり、ただの変態集会だ。 「どうだい? 楽しそうだろ?」 「……如何にもアンタが好きそうなパーティーだ」 「……っ、ふふ、理解してくれて嬉しいよ」 そう小さく息を漏らし、少年の口の中に射精したらしい八雲はそのまま精液で濡れた精子を引き抜いた。そして、少年にその後処理をさせ、乱れた服を直させる。 「というわけで、だね」 息を整え、俺の前までやってきた八雲は、俺の頭の上、ワイングラスを傾ける。 中に入った液体がとろりと溢れ、前髪から顎の下、首筋、胸元を通って服の下まで染み込んでいった。 笑い声と興奮したような声、全身に絡みつくような観衆たちの視線の中、八雲は微笑むのだ。 「トリックオアトリート。……今すぐその上着を脱ぐんだ、この場でね」 何故、俺がこんな目に合わなければならないのか。 向けられた無数の視線の中、ただ立ち竦むことしかできない俺を見下ろしたまま「ねえ、聞こえなかった?」と八雲は笑う。 ポタポタと落ちるワインの雫。ベタつく体て辺りに充満するアルコールと葡萄の匂い、そして大衆たちに吐き気がした。 何も考えてはならない。 自分が人間だと思えば思うほど辛くなることを俺は知ってる。この男にも教えられたはずだ、嫌というほどに。 上着のファスナーを下ろす。そのままするりと脱いだ。最初、着用の仕方が分からず試行錯誤した。上下が別れたビキニタイプのそれを見て、馬鹿にしたような笑い声が各所から聞こえてきた。ああ、いっそのこと殺してくれ。 上着と下に履いていたスラックスを脱ぎ、畳む。八雲はそれを俺から受け取れば、そのまま近くにいた取り巻きの一人にそのまま渡した。 「サイズが丁度よさそうでよかったよ」 「……っ、もう、いいだろ」 「まだだよ」 ぴしゃりと言いのけた八雲。そのままゆっくりと歩み寄ってきた八雲は、俺の胸元に手を伸ばす。ぴっちりと肌に張り付く衣装はハロウィン用の仮装というよりも、よくあるそういうプレイ用のものに思えた。どこもかしこも生地が薄く、身に付けてるだけで乳首の形がくっきりと浮き出るクソ仕様になってる。 「君は可愛いものよりも、こういう際どいものがいいと思ったんだ。その凡庸な体型と顔に相まって滑稽だろうと思ったけど、ここまでくると一種の趣すら感じるね」 「……っ、そりゃ、どうも」 誇っていいよ、とどこまでも人を馬鹿にしたような態度で、八雲は俺の胸の乳首を指で挟み、刺激する。思わず腰を引きそうになれば、「背筋は伸ばしたままだよ」と耳打ちをされた。 条件反射で言われるがまま背筋をぴんと伸ばせば、そのまま八雲はもう片方の胸にキスをする。押し付けられる唇はゆっくりと皮膚の上を滑り、そのまま肌を濡らしたワインに這わされるのだ。 「……っ、ぅ……」 「下着はちゃんと用意したのを履いてくれたんだね」 こんなちっせえ服では、俺のパンツははみ出て余計間抜けになってしまう。 渋々小さく頷き返せば、ローライズからはみ出た下着の紐に指を絡め、「いい子だね」と囁いた。心にもないことを。 「ていうか、耳は?」 「……邪魔だったから、つけてきてない」 「はあ、君は全く……。まあいいよ」 いいのか、と思わず顔をあげたとき。下腹部へと伸びてきた八雲の指がパンパンになったショートパンツの股の奥に触れた。 「……っ」 「着替えてて気付いた? ここが開閉式になってるの」 股の隙間に差し込まれた八雲の指は、そのままショートパンツの股にぶら下がっていたジッパーに触れる。 嫌でも気付いた。ご丁寧に肛門への挿入をしやすい造りとなってることに。 「ふふ、顔が真っ赤だ。ちゃんと気付いたんだね。君も四軍としての自覚がしっかりと出来てるようで感心したよ」 僕のお陰かな、なんてお門違いなことを抜かしながら摘みを下ろす八雲。その手を止めようとするが、すぐに拒まれる。 開いた穴の奥、服の中に入ってくる指に針金が入ったみたいに体はぴんと伸びた。このふざけた服と一緒に渡された、同じくふざけた穴の空いた下着。それのせいで八雲の指を止めることができなかった。 割れ目に這わされ、そのまま肛門に触れてくる指に思わず八雲から顔を逸らした。 「っ、ふ……っ」 「体が硬いね。人前だから緊張してる?」 「……っ、ぁ、たりまえ、だ」 「素直でよろしい」 そう呟けば、更に破れ目の奥へと這わされる指に「ぅ、」と声が漏れる。 「ん、ぅ……っ」 「まだ触れてるだけなのに反応してるの、健気で愛らしいね」 「……っ、く……」 「けど、君がただ気持ちよくなったらおしおきじゃなくなっちゃうね」 俺からしてみればこの状況自体が罰ゲームに等しい。これ以上何をするつもりなのかと戦々恐々としていた矢先だった。 一人ぶつくさ呟きながら左右に広げられる肛門。やめろ、と必死に尻穴に力を込めるが八雲は全く躊躇などしない。それどころか。 「そこの君たち、ちょっと手伝ってくれないかな」 呆けた顔をして俺たちのやり取りを見ていた生徒たちに声をかける八雲。 まるで食事にでも誘うかのような軽やかな口調でとんでもないことを言い出す八雲に俺は凍りついた。 「な……」 何を考えてるのだ、この男は。 下卑た笑みを浮かべる観衆たちの中、八雲に指名されたのは周りの空気に馴染めてなさそうな生徒だった。 青褪める俺に構わず、「よいしょ」と俺を抱き抱えた八雲はそのまま生徒の方に向かって人のケツの穴を晒すのだ。 「っ、ゃ、め」 「い、いいんですか。八雲様……」 「無論だよ。けど、ちょっとお転婆だからね。僕がこの子捕まえててあげるからそこ間に慣らしててあげて」 「は、はい」 明らかにこの淫蕩した空気に馴染みきったやつらよりは『マシ』。そう思ったのもつかの間だった。ボードの上に置いてあったボトルを手に取り、そのままベルトを緩める背後の男にぎょっとした。現れたパンパンに膨らんだ性器にもだが、それよりも躊躇なく取り出される凶器のような全長を誇る性器に。 てか、なに脱いで。 「彼はこの場で一番長いんだよ」 「ぉ゛、ま、え……っひ、ぃ゛……っ!」 八雲に抱き抱えられ浮いた下半身に充てがわれる性器。ローションでたっぷりと濡らされたそれを押し当てるように背後に立つ男にやめてくれ、と懇願する暇もなかった。 「ぅ、ふ、ぐ……っ、ぅ……っ!」 亀頭が中へと埋め込まれる。尻尾を捕まれ、尻を鷲掴みされ、穴を広げられ、揉みくちゃになったそこにローション濡れになった性器を挿入される。 逃れようとしても八雲はそれを許さなかった。 「ほら。ちゃんと、奥までしっかりと慣らしてもらわないと」 「ひっ、ぅ゛、んう゛……っ!」 まともそうだと思ったのに。 奥まで一気にずるりと入ってくる性器、その太い亀頭に中を抉られ目を見開く。恐ろしく長いストロークで粘膜を擦られ、更に奥まで突き進もうとする男に恐怖のあまり体が硬くなる。 「ぅ、っひ、く……っ」 「あーあ、駄目だよ十鳥君。処女じゃあるまいし、力の抜き方くらい覚えないと。……せっかくチンポ挿入してもらってるんだから礼儀だよね?」 「っ、ふ、ぅ、抜……ぃ……っ」 「なんだ、まだアルコールが足りなかったのかな」 違う、と拒否するよりも先に、側にいたウエイターからグラスを再び受け取った八雲はそれを口に含む。嫌な予感がして顔を逸らそうとするが、一歩遅かった。 顎を掴まれ、そのまま深く喉奥まで酒を流し込まれるのだ。匂いだけでも具合が悪くなるほどの濃厚な芳香とアルコールを直に口内へと流し込まれ、そのまま舌を絡め取られる。口の中のものを腹の奥まで流し込まれて空になった口内、残った八雲の舌は構わず俺の舌を絡め取った。 「っ、んんぅ……っ、ん、ぅ……っ!」 「……っ、ん……ふふ、おいしい?」 こんな状況でまともな味なんて分かるわけないだろ。そう睨む俺に、八雲は「それはよかった」と微笑む。 酒を呑まされたところで最悪な状況なんて変わるわけがない。ただまずいジュースを飲まされただけだ。そう思っていたのに、変化はすぐに訪れた。 視野が狭くなっていく。体が火照ったような気がしてきたときには手足に思うように力が入らなくなっていた。 「ぁ、……っ、ふ、ぅ……っ、う、んん……っ!」 頭が、視界が、体が揺れる。 腹の中が熱い。気持ち悪くてたまらないはずなのに、悪感情ごと真綿で包み込まれるみたいに何も考えられなかった。 「と、十鳥君……っ」 「っ、ん、ぅ……っ」 背後からは興奮したような男の声が聞こえた。顎を掴まれたと思えば、そのまま唇を食われそうになる。違う、キスか?これ。 「……っ、ん、んっ、ぅ……っ、ふ……」 なんでキスをされてるのか。触るな、と逃げようとするが手足にはろくに力は入らない。それどころか、何度も奥を突き上げられる度に電流が走っては眼の前が点滅した。 「ん、……っ、ん、ぅ、……う……っ!」 眼球の奥が熱い。頭に血が昇っていっては余計頭がふわふわして、舌を絡められ、付け根から裏顎までねっとりと舐め上げられながら奥をぐぷ、と押し上げられれば背筋が震えた。 入ってくる。嫌だ。嫌なのに、喋れねえし動けねえし。周りのやつらがニヤニヤしながらこっち見て笑ってる。なんで俺、こんなところにいるんだ。 「っ、は……っ、ぁ、ん、……っ、ぅ、……ゃ……っ」 「驚いた、君酒弱いんだね」 「や、くも……っ、ゃ、いやだ、やめ、させろ」 「駄目だよ、君の役目はここで僕たちを楽しませることなんだから。まだ君はただ気持ちよくなってるだけじゃないか、ちゃんとこの体を使って『お勤め』しないとねえ」 「ひ、ぅ……っ!」 伸びてきた八雲の手に胸を揉まれる。突かれながら乳首を捏ねられれば、奥を亀頭で抉られる度に乳首の先っぽがじんじんと痺れる。気持ちよくなんてないのに、開いた口からは声を抑えることができなかった。 「っ、ぁ、や、やくも、やだ、いやだ……っ、ぁ……っ! っ、と、とめ、させ……っ」 「酒を飲んで幼児退行する子、初めて見たな。……ああ、大丈夫だよ。駄々こねてるだけだから、君のチンポで黙らせてあげなよ」 「なに、いって、ぇ゛……っ!」 次の瞬間、内壁の粘膜ごと引っ張り天井をぶち抜かれた。ような気がした。一瞬何が起きたのか分からなくて、性器の形にぽっかりと膨らんだ自分の腹を見つめたまま青ざめる俺を無視し、そのままぴったりと背中を抱きしめるようにくっついてきた男は「十鳥君」と熱っぽい声で俺の名前を呼んだ。そして。 「っ、く、ひ……っ! ぃ゛、っ、う゛ぐ」 文字通り、チンポで殴られる。酔いのお陰で痛みは和らいでいるようだが、それでも内臓から焼かれるような熱と痒いところまで悠々と届くその性器はあまりにも凶悪だった。 否応無しに前立腺を責め立てられ、届いちゃいけない場所を掻き回され、犯され、注ぎ込まれる熱に目の前が白く塗りつぶされていく。 加速する己の心音と相手の鼓動が混ざり合ったと思えば、中で熱が爆ぜた。 特濃生クリームでも注いでんのかと思うほど重たい精液とその量に、逃げ道などなかった。 「う、うぁ……っ!」 ずるりと一気に引き抜かれる性器。その摩擦でビクビクと痙攣した下半身、性器という栓を失ったそこからは品のない音を立てて出されたばかりの精液が溢れ出した。 「はぁ……っ、や、八雲様……終わりました……」 「うん、たくさん出してあげたみたいだね。ほら十鳥君、精子ありがとうございましたってちゃんといった?」 「ぁ、は、ぅ……」 「ありがとうございました、は?」 余韻の抜けきれない中、八雲に乳首を抓られる。下半身に力が入った拍子に残っていた精液が汚い音を立てて溢れるのを見て、八雲は笑った。 そして、 「十鳥君」 やつの掌が胸から下腹部へと降り、そのままぐっと掌に力が込もる。前立腺ごと内臓を圧された瞬間、性器に痺れるような熱が溜まった。 あ、やばい。これ。まじで。 「ぃ゛……っ、ぅ、ぐ、ぁ、あり、がと……ぉ゛、ご、ざいます……っ!」 上擦る声を誤魔化すこともできず、情けない声を張り上げる俺に「あはっ、ちゃん言えたね」と俺の頭を撫でる八雲。そのまま優しくお腹を撫でられるだけで腹の奥が重たくなる。鈍痛にも似た快感に身を攀じれば、しっかりと俺を抱き抱え直した八雲はそのまま近くのテーブルまで歩いていく。 そして、そのまま俺をテーブルの上に座らせる八雲。足を閉じろうにも、伸びてきた八雲の手にそのまま腿を掴まれて閉じるどころか大きく開脚させられてしまうのだ。 「っ、なに、ゃ、め」 「うん、これならいい感じだね。……けど、ちょっと汚し過ぎかな。この後には僕、挿れたくないかな」 ふざけんな、お前が言い出したせいでこんなことになってるんだろうが。そう言い返したいのに、この口と舌は俺の体の癖に言うことをまるで聞いてはくれやしない。 好き勝手言いながら拡がった穴から溢れ出す精液をぷっくりと捲れあがった肛門のふちに塗り込む八雲は、近くにいた野次馬の生徒に微笑みかける。そして、 「君、舐めて綺麗にしてあげなよ」 俺の太腿を大きく掴んだまま、そんなことを言い出す八雲に否定する暇もなかった。一軍の男は八雲の思いつきに狼狽えることすらなかった。 「はい、八雲様」と微笑み返し、八雲と入れ替わるように俺の足の間に立った。八雲と雰囲気の似た、一軍特有の育ちの良さそうで人を見下した目。それでいて、品性の欠片も感じさせない淫蕩しきった顔。 躊躇なくそのまま下半身へと顔を埋める男の肩越し、こちらを見下ろしていた元凶の男を見上げた。 ――八雲は楽しそうにするわけでもなく、ただ俺を見ていた。俺から離れる隙を狙ったかのように群がる男たちを抱き、キスをしながらこちらを見ていた。 君もさっさとこっちにおいで。 そう言うかのような目で。 「さあ、十鳥君が準備してる間、僕も少し遊んでくるよ。……それじゃあ、またね。十鳥君」 「っ、待……っ」 「また様子見にくるよ」 ふざけるな、俺を置いていくつもりか。こんなクソみたいな場所に。 呼び止めようとした矢先、剥き出しになった肛門に這わされる舌に意識を奪われる。 ――嫌だ。置いていくな。 垂れる精液を丹念に舐め取られ、柔らかくなった肛門の中に捩じ込まれる指に中に残った精液を掻き出され、広げられ、指と舌を受け入れさせられながら俺はテーブルの上で跳ね上がる。男の頭を掴み必死に引き離そうとしても、酒のせいで力は入らない。 気付けばテーブルの周りには男たちが集まっていた。噎せ返るほどの酒の匂いに混ざる性臭に目眩すらも覚える。 顔面の上、濃い影を浮かべて翳される性器。口移しされる甘い飴玉。クリームと酒。赤。オレンジと黒、紫が混ざり合う。口から漏れるものが自分の喘ぎ声と認識できぬまま、俺は唇に押し付けられる亀頭に舌を這わせ、受け入れることしかできなかった。 地獄のような時間だった。 入れ代わり立ち代わりでやってくる野郎どもに体中を好き勝手扱われる。穴という穴を塞がれ、デコレーションでも施すかのようにぶちまけられる精液。 甘いクリームの匂い、アルコールとイカ臭さが混ざり合い、呼吸をするだけで肺が苦しくなる。至る所から聞こえてくる喘ぎ声、水音。ここは地獄か何かだといわれても納得できるだろう。 「ぅ、ひ、ぁ……っ!」 ケツに深々と刺さった性器で散々摩擦され腫れあがった内壁をさらに擦られながら、別の男たちの性器を握らされる。さっさと終われと頭の中で繰り返しながら、ただ俺は手の中の性器を無心で扱く。 手持無沙汰を誤魔化すかのように人の体を弄る順番待ちの男に途中邪魔されながらもなんとか手コキで射精させる。体にぶっかけられる精液に、体も服もひどい有様になっていた。 「は、ん、ゃめ、……っ、んむ゛ぅ……っ!」 変態が、と口の中で吐き捨てながら、今度は頭を無理やり押さえつけられ、また別の性器を鼻先へと突きつけられる。生クリームでデコレーションされた性器にぎょっとするのも束の間、そのまま唇へと押し付けられるそれに堪らずえずく。 拍子に開いた口の中にねじ込まれる性器に粘膜内カウパー交じりのクリームを塗りたくられ、目の前が真っ暗になった。 「ふ、ぅ、むぐ……っ、ふー……っ、ぅ、……っ」 「……ぅ、は、十鳥……っ」 頭を撫でられ、耳を塞がれる。音が籠もり口と脳味噌で響き混ざる粘りついた音。馴れ馴れしく呼ぶな、と睨めば、口の中で更に大きくなるそれに気が遠くなる。 「ぅ゛、ぐぷ、……っ、ぅ゛、んむ゛……っ!」 舌の上を這いずり、喉の奥へ亀頭がぶつかる。逃げようとする頭を抱き込まれたまま、人の口を性器かなにかに見立てて男は呼吸荒く腰を打ち付けた。 「ぉ゛、ん゛む、ぅ゛ぐぷ……っ! ふ、ぅ゛、んんぅ゛……っ!」 息苦しさ、唾液やら何やらあらゆるものがピストンの度に音を立てて口の中で混ざり合い、逆流したものが鼻から溢れそうになるその痛みで余計泣きそうになった。 最悪だ、最悪だ。こんなことなら、ハロウィンなんてない方がましだ。 必死にちんぽしゃぶらされてる脇からビキニタイプの衣装をずらされ、現れた乳首を捏ねられながらも取り敢えず呼吸するための器官を確保するのが精一杯だった。 気の遠くなるような狂乱はひたすら続く。こいつらの性欲は底なしか、と思ってると、一際高い喘ぎ声が聞こえてきた。 「ぁ、っ、ゃ、八雲様……っ!」 悲鳴のようなその声に釣られて視線を逸らせば、少し離れたボックス席で中でも愛らしい容姿の男子生徒を犯している八雲がいた。 普段やってるとき俺には絶対見せないような完璧な王子様面ぶら下げて、なにかどうせセクハラおっさんみたいなことを囁いてるのだろう。男子生徒を抱きしめ、優しく抱いてるやつを見て恨めしさがより一層深くなる。 俺とやるのではなかったのか。そのための前座ではなかったのか、これは。 喉の奥にぶち当たりそうになる性器を舌で押さえながら、俺は呻く。随分と楽しそうなあいつを睨んでると、ふと男子生徒の肩越しに八雲と視線があった。 前後左右男に囲まれた俺を見て、やつは確かにいつものあの嫌な笑顔を浮かべた。それから、わざわざ人に見せつけるように男子生徒にキスをする。 「っ、ふ、……っ、……っ、」 クソ野郎、と俺は顔を反らした。嫉妬心などではない、あの男の下半身のガバガバさと性根のねじれっぷりに腹立ったのだ。 乳首を中心に胸に塗りたくられるクリームを舐め取られながら、俺は腹の中に吐き出される精液に震えた。俺はなんでこんなことをしてるのか。 引き抜かれる性器、栓を失い溢れる精液を掻き出されながら、俺は八雲への文句をひたすら繰り返していた。 人間には限界がある。 ハロウィンパーティーは零時、時計の針が十二を跨げば自然とそのままお開きとなった。 何人か気の合うやつらは抱き合いながら、そしてお持ち帰りされる三軍もちらほらといた。 それで、俺はというと。 「おかしいな、僕は確か綺麗にしてくれって頼んだはずだったんだけど。……なんか、前より悪化してるね。四軍君」 ぐったりと床の上から動けなくなっていた俺の前、上裸の八雲は座り込んではこちらを覗き込んでくる。 人払いをしたあとのラウンジはまさに祭りの後というやつだった。 俺が最後に犯されてたやつらに抱き抱えられ、そのまま連れ帰られそうになったところを呼び止めたのはこの男だった。「彼には用事があるからそのまま置いておいてね」なんて言って他の奴らを帰した八雲。俺には薄々分かっていた、この男に取ってはここからがお楽しみなのだろうと。 「たくさん可愛がられたようで安心したよ。皆見た目だけがいい玩具には飽きてたんだろう。君みたいに叩けば良く鳴る感度の良い玩具は貴重だからね」 普段猫被っているこの男が気遣いも遠慮なく抱け、ヤリ捨てられるのは俺だけだというのは日頃の態度から嫌という程分からせられてきた。 そんなクソみてえな信頼関係求めていないし、嬉しくもないが。 そのまま動けない人の体を抱きかかえようとしてくる八雲。「さ、わるな」となけなしの力でその手を振り払おうとすれば、「触らないとセックスができないだろ」とやつはぴしゃりと言いのける。そしてそのまま俺を近くのボックスソファーに転がした。――パーティーの最中、こいつが他のやつらを抱いていたあの席だ。 「ゃ、めろ、したくない……っ、ん、ぅ」 「ずっと物欲しそうな顔をして見てきたくせに、よく今更そんなことが言えるな。それともいっちょ前に拗ねてんのか?」 「可愛くねえから」と顔を歪めるように笑い、そのまま八雲は俺の唇に噛みついた。たっぷりと濡らした舌で唇を開かれ、舌を絡み取られる。 舌に意識を奪われている間に胸を揉まれ、ずれた衣装の下から覗いていた乳首を指先で擽られれば体が震えた。 「ゃ、くも……っ」 「ベタベタだな。……今度からは食べ物は禁止させよう。俺の手も汚れる」 くにくにと柔らかく突起を押し潰しながら八雲は呟いた。誰のせいだと思ってるのだと睨めば、八雲は目を細め、笑った。 「散々輪姦されて疲れたのか? しおらしいな、今日は」 「……っ、ち、が、ぁ……っ、別に……」 「それじゃあ、さっさと俺に抱かれたくて堪らなかったとか?」 どう育てられたらここまで自己愛が増長されるのか興味すら覚えた。 押し倒され、胸に顔を寄せる八雲。濡れた舌先が直接片方の乳首に触れ、背筋に甘い感覚が広がる。掠める前髪。熱い舌先で突起を舐られ、声が漏れそうになるのを息を吐いて誤魔化す。 「ん、んぅ……っぉ、お前だって……」 「俺だって、なんだよ」 「……散々、やっただろ……なら」 もういいだろ、と半ば諦めたような気持ちで吐き捨てれば、やつは人の胸元で笑った。 「口直しは必要だろ? 砂糖とクリームでデコレーションされたデザートに飽きたあとは、ラーメンが食いたくなるんだよ」 食い合わせ最悪じゃねえか。 言いたいことだけ言ってそのまま今度は乳首を咥えられ、甘く吸い上げられる。もう片方の乳首も指で捏ねられ、固く凝った先っぽをすりすりと指の先っぽで撫でられるだけで腰が震えた。 「っ、く、ぅ、んん……っ、ゃ、くも……っ」 「他の男に抱かれて気持ちよかったか? お前の声、よく響いていたぞ」 「……っ、……ん、ぅ……っ」 それはお前の席のやつじゃないのか、と思ったが、返事をしようとすれば変な声まで出てしまいそうで怖かった。 音を立てて吸い上げられ、唇と舌先両方でたっぷりと愛撫されればあっという間に下半身に熱が溜まっていく。 それを見て八雲は鼻で笑う。押し倒されたまま、股の間に割り入ってくる膝頭にぐり、と下半身を押し上げられれば圧迫されるような刺激にぞわりと熱が増す。 「ん、ぅ、う、く……っ」 「声、我慢するなんて真似すんなよ。もっと喘がせてやりたくなるだろ」 「……っ、へ、んた……っ、ぁ、っふ、ぅ……っ、ゃ、め……っ!」 「滑舌も甘くなってんなぁ、お前、たくさん飲まされてたもんな。美味かったか? 他の男にもらった酒は」 「っは、ん、……っ、ふ、う……っ!」 体を揺らすように下半身を摩擦され、意味を成していない下着の中でぐちゃぐちゃと性器が擦れる。 気持ちよくない。こんなの。 そう思いたいのに、散々この男に慣らされていたこの体は反応するように叩き込まれてしまっていた。 直接触ってほしい。開いたままのジッパーの中にまた指をねじ込んでほしい。なんて、思うわけがない。ないはずなのに。 もどかしさとともに迫り上がる熱を抑えきれず、そのまま八雲の体の下、びくんと大きく跳ね上がる俺を見て八雲は「は」と笑った。人を小馬鹿にしたような笑み。 八雲の手のひらはビクビクと小刻みに痙攣する胸へと這わされ、そのままゆっくりと腹部、鼠径部へと落ちていく。剥き出しになっていた臍を擽られ、それだけで俺の体は反応してしまいそうになるのだ。 「っ、ゃ、やるなら……さっさと、済ませろ……ねちねちすんな……っ」 「随分と偉そうな物言いだな。そうじゃないだろ、四軍」 耳元へと顔を寄せてくる八雲に耳朶を甘く舐められ、たっぷりと吹き掛けられる吐息に顔を逸らす。そのままわざと音を立ててキスをやつを睨みつけた。 「っ、性悪……ぅ、ん、……っ」 「こういうのは情緒って言うんだよ。お前には分かんねえかな、童貞君」 「っぅ、乳首、ばっか触んな……っ、ぅ、や」 「ほら、さっさと言え」 股を開かされ、そのままセックスするみたいに下着腰に腰を押し付けられる。そう急かして来る八雲の性器も既に硬くなり、押し付けられるその重みに腰が動いた。 「はー……っ、ぁ、い、挿れろ……っ、挿れて、早く、終わらせろ……っ」 こいつが何を望んでるのか知らないが、こちらは散々イカされた上の焦らしだ。最早理性など残り滓ほどもない。 半ばイラつきながら八雲の下着に手を伸ばし、そのままぼろりと顔を出すそれを握り、剥き出しになった肛門へと誘導する。先走りで濡れた亀頭がぬちりと音を立てて肛門を掠めれば、それだけで呼吸は浅くなった。 「は……色気がねえ、情緒も余韻もクソもねえ」 「っ、ん、む、ゃ、くも」 「……っ、けど、悪かねえな」 股の間、びくんと大きく脈打つそれに目を見開いたのも束の間、俺の腿を掴んだ八雲は更に俺の腰を持ち上げた。下半身を引っ張られたと思いきやそのまま腰を沈めてくる八雲に堪らず俺は体を捩り、ソファーの皮に爪を立てる。 「ぁ、っ、ん、う、ゃ、やくも……っ」 「は、ゆるゆるじゃねえか。何本咥え込んだ?」 「ぉ、おまえの、せいで……っ、ひ、ぅ゛」 言いかけた矢先だった。呼吸を無視して腰を動かす八雲。俺の意思なんて関係なく奥まで一気にねじ込まれるそれに目の前が真っ白に染まる。 「ぁ、あ゛、くひ……っ!!」 開いた喉奥から声が漏れそうになっているところ、八雲はそのまま俺の体を抱えて隙間なく腰を密着させる。ぐぷ、と音を立ててすでに緩くなっていたそこに亀頭を押し込まれ、目の前が熱くなった。視界が滲み、汗が流れる。目を見開き口をパクパクと開閉させる俺の顔を覗き込んだまま、「ひでぇ顔だな」と八雲は低く囁いた。 「ぅ、ゃ、くも、ぉ゛……っ!」 「ぁ゛ー……っ、これこれ、このきったねえ声……っ、腹に響く……っ」 「ぅ、ぉ゛ぐ、ゃ゛、抜け、ぇ゛……っ! ひ、ぅ゛……っ!」 逃げようと仰け反った腰を掴まれたまま、更に抽挿をされる度に亀頭の凹凸が前立腺を引っ掻く。ストロークの度に性器で引っかかれ、ただでさえ腫れ上がっていたそこを八雲のもので犯されるだけで頭が真っ白になった。 「ぁ、っ、う゛、ゃ、あ゛……っ! くひ……っ!」 「オラ逃げんな」 「っひ、ぅ゛……っ!」 「お前の好きな乳首も弄ってやるからしっかりケツ締めろよ。……っ、そうそう、ほら、気持ちいいところ擦ってやるよ、淫魔ちゃん」 「ぅ、あ、ふ、ぅう゛ーー〜〜……っ!」 変なプレイ始めんなと言いたいのに、腿を束ねるように抱えられたままぐっと腰を沈められれば更に深くなる挿入に喉の奥から声が溢れる。蕩けたように茹だる脳みそ、そのまま激しさを増すピストン。 「……っいい加減慣れろ、チンポに」 「さ、いてぇ……っ! くそ、やろ、ぉ゛……っ!」 「あ? アンアン言って聞こえねえよ。メスみてえな顔してケツマン締めて何真人間ぶってんだ、大人しくチンポ締め付けてろ」 「っ、ぁ、ん、ひ……っ! ふざ、ぁ、ふざけ、んんっ、ひ、……っ、ゃ、そこ、っ、ぅ、あ゛……っ!」 リズミカルに腰を突かれる度に衣装から溢れた性器は揺れ、壊れた蛇口みたいにどろどろにあふれる体液で気付けば臍の下は濡れていた。 気持ちよくない、最低、こんなの求めてないのに。 ハロウィンパーティー中アンアン鳴いてた男子生徒と自分が重なる。あんな無様な姿見せたくない、なりたくない、落ちたくない。そう思うのに、長いストロークで何度も深く腰を打ち付けられてる間にその意志もグズグズに溶かされるのだ。 「つうかさ……アホみてえな格好して、大股おっ広げて、ハロウィンも終わったってのに……悪くねえな、馬鹿みたいで」 「っ、ぁ、あ゛、ぅひ……っ!」 「なあ、ケツん中すげえグズグズになってんだけど何発出してもらった? ……っ、ふ、お前がほかのチンポ独り占めするせいで、ケツ掘られて〜ってやつらが嫉妬してたぞ」 「し、らな……っ、ぅ、ん……っ! ぁ、や、くも……っ!」 「はー……っ、皆の前で犯してやってもよかったな……っ、お前のここは俺のチンポケースになってますってなぁ? ……っ、は、抱けば抱くほど締め付けやがる、もう女相手に満足できねえかもな、童貞君」 朦朧とした頭の中、逃げようとする俺の体を抱き締め、更に腰を密着させる。八雲のものをぐっぽりと飲み込んだままやつにキスをされ、もう全てどうでもよくなってきた。 汚れた体は嫌だとか散々好き勝手しておきながらこの男は、どこまでも自分勝手だ。 乳首を抓られて拍子に痙攣する体。八雲は熱い吐息を吐き出し、そのまま俺の舌ごとしゃぶりついた。 「っん、は、ふ、んむ……っ! っぷは、ゃ、八雲……っ」 「一番ヶ瀬のやつも、招待してやりゃ良かった……っ」 ピストンで結腸ごと押し潰されそうになる中、やつの口から出てきた名前に堪らず睨みつければ、八雲は楽しそうに顔を歪める。人前では見せないような蕩けきった、下半身に支配された男の目だ。 「……っ、ホント、分かりやすいやつだなお前は……っ、なあ、他所のチンポは平気でしゃぶれるくせに、今更純愛ぶってんのか。……堪んねえな……っ、なあ、十鳥」 ばちゅんと大きく根本までチンポ咥え込まされたまま、溜まった息を吐き出した八雲。どくどく流れ込んでくる鼓動は加速し、それに合わせるように八雲の動きも性急になる。それでいて的確に人の弱いところは狙い撃ちしてカリと竿で責め立ててくるもんだから最悪だった。 呼吸する暇もなく声を殺すのが精一杯だった俺の口をこじ開け、溜まっていた唾液を舌伝いに流し込んでくる八雲に青ざめる。顔を逸らそうとしてもやつは手を離してくれなかった。 「ん、んん……む゛、ぅ……っ!!」 「……っ、飲めよ、ワインよりもうめえだろ」 「んごほ、……っ! ふざ、け――! っ、ぐぷ、ぉ゛ご……けぽ……っ、んむ゛ぅう……っ!」 もうワケわかんねえ。どろどろにお互いの体液で汚れたままひたすら心身を八雲に犯される。 それなのに、あんなクソみたいなパーティーよりもまだマシだと思えるのはなぜなのか。相手がこいつ一人だけだから?それもあるだろうが、俺はその理由を考えたくなかった。 舌を絡められ、唾液でぬるぬるになった粘膜を犯される。最早理性などない。最悪でクソみたいな男のくせに、あのパーティーで他のやつを抱いていたときよりもよっぽど楽しそうな男を前にして俺はあろうことか優越感のようなものを持っていた。これは認めたくなかった、けれど。盛った猿みたいに興奮して腰を打ちつけるやつの姿などあの場にいたやつらは見たことではないのではないか――そんなことを考えながら、俺は腹の奥にたっぷりと注がれる精液に下半身を震わせた。 「っは、ぁ、あ……っ、く、ひゅ……っ」 「……っ、はー……っ、ん、クソ、収まんねえな……全然だわ、おいブス、何勝手に休んでんだ」 「は、んむ……っ」 テーブルの上、中身の残っていたワインをラッパ飲みする八雲。こいつも酔いが回ってるのだろう、開けた胸元からシャツまでびしゃびしゃに溢れようがお構いなしに口にワインを含めたまま八雲は俺にぬるくなったワインを口移しする。またもや溢れ、お互いの服を汚す。王子様もここまで来たら型無どころではない。 「は、ゃ、くも……っ」 「……っ、は、不細工な顔だな、十鳥」 それをお前が言うのか、普段の気品さもクソもないお前が。 茹だる頭の中、そんなことを思いながら再び勃起し始めるそれで中を掻き混ぜられる。不満もクソみたいな気持ちも全部精液で混ぜられ、どうでもよくなってくる。とっくにハロウィンなんて終わってて、多分手配されてた清掃のやつらがそのうち来るんじゃねえかとも思ったが、八雲は止める素振りもなかった。まだ足りねえと呟きながら人の唇を舐り、腹を抉り、腰を打ち付ける。 「ぉ゛、ひ……っ、く、ゃ、……っ、あ……っ!」 「ブスのくせに可愛い声出せるようになってきたじゃねえか、少しは自覚出てきたらしいな。便器としての自覚が……っ」 ふざけんな、という言葉をキスで飲み込まれ、何度目かの絶頂を迎える。もう色もついてない汁しか出なかった。ひりつく痛みすら覚えるほどの性器。やつのものの形に作り変えられ、馴染み、一突きされるだけ快感を得られるようになったのが俺にとって幸せなことなのかわからなかった。 「もっと覚えて学んでけ……っ、そんで、俺の玩具になれよ――十鳥」 それにしても、最悪な告白であることは間違いないというのだけはわかった。 少しはついたと思っていた体力もあっさりと底付き、遠のいていく意識。その底で、俺は八雲の楽しそうな笑顔だけを見ていた。 おしまい