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田原摩耶
田原摩耶

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【↑300】ぜんぶ、きみのため。④※【5,200文字/√β裕斗×齋藤前提阿佐美×齋藤/睡眠導入セックス/セフレ未満】

 阿佐美に抱いてもらったあの日から、再び夜に眠ることができるようになった。それが正しいことなのか分からないが、多少鬱々とした気分は晴れ、眠れなかったときに比べると体が楽になったのは間違いない。  けれども、いい事ばかりではない。 「……」  病室のベッドの上。もうそろそろだろうか、と壁にかかった時計に目を向ける。  阿佐美は消灯時間後、いつも決まった時間に俺の元を訪れた。その時間が近くなるにつれソワソワと落ち着かない気分になり、気付けば阿佐美との行為のことで頭がいっぱいになってしまって何も手に付かなくなるのだ。  ……多分、これはよくないことなんだよな。  自分にこんなに性欲が残っていたなんて思っていなかった。それとも、連夜抱かれてる間に体質が変わったというのか。  ぐるぐると考えてる内に一人でに性器が熱を持ち始めることに気付いた。一人で触ったところで気持ちよくなれないと分かっていた。それでも、阿佐美が来るまでの間に少しだけシーツの下の膨らみに手を伸ばす。 「……っ、ふ……」  どうしようもない変態みたいだ。いや、その認識はもしかしたら間違っていないのかもしれないな。なんて考えながら、開けさせた入院着の下、下着の中に手を伸ばす。既に期待のあまり先走りを滲ませていたそこは触れるだけで恥ずかしい音が響くという有り様だ。  息を飲み、唇を噛んで、ちゅくちゅくと性器をゆっくり指で刺激する。……やはり、他人にしてもらえるような快感は得られない。  詩織、詩織、と頭の中で繰り返しながら、阿佐美の手だと想像して性器を扱いた。  そんなときだった。扉が開いた。 「……詩織」  名前を呼べば、ベッドの中でモゾモゾと動いていた俺に気付いたようだ。少しだけ驚いたような顔をして、それから阿佐美は「ごめんね、遅れて」と申し訳無さそうに口にした。  ベッドの側までやってきた阿佐美は、そのままそっとシーツを剥ぐ。ずらした下着の中から頭を出していたそこを見て、阿佐美は僅かに息を飲む。 「……ひとりでしてたの?」 「う、ん……だけど、やっぱり駄目だった」  詩織のじゃないと、なんて言ったら阿佐美に失望されるかもしれない。端ないやつと思われるかもしれない。  代わりに阿佐美を見上げれば、阿佐美は「そっか」と小さく呟く。前髪の下、こちらを見つめているであろう視線を感じてより全身の熱が上がっていくのがわかった。 「じゃあ、今度は二人で試してみようか」  普段と変わりない優しい声なだけに、余計してはいけないことをしてるような錯覚に陥る。  頬へと伸びてきた手を受け入れながら、俺は小さく頷き返した。 「少し顔色はよくなってきたね」 「ん、そうかな……」  頬を撫でるように前髪を掻き上げ、俺の顔を見つめてくる阿佐美。そっと目の舌の涙袋を触れられ、こそばゆさに目を細める。  俺と阿佐美がこうして触れ合うのは、もとより俺の安眠のためだった。 「……詩織……っ、ん……ぅ……っ」  そっと唇を重ねるだけのキスをされ、そのまま柔らかく唇を舐められる。  キス、したいのかな。なんて熱でぼうっとしてきた頭で口を開き、阿佐美の肉厚な舌を招き入れた。  普段はあまり感じなかったが、こうして阿佐美の腕の中にいると、より阿佐美が大きいことに気付いた。すっぽりと腕に抱かれたまま、舌を絡める。阿賀松と双子と聞けば確かにとも納得する自分もいた。絡みついてくる舌も、俺の腰に回される腕もがっしりとしてて、少し身を捩ったくらいでは緩まない。  けれど、阿賀松と圧倒的に違うのはその安心感だろう。阿佐美に抱かれていると、窮屈さよりも安心感の方が強かった。  言葉数少なに舌を絡め合ってる内に熱同様に意識はとろりと溶かされ、全身から力が抜けていくようだ。阿佐美の胸に体を寄せたまま、太腿に触れる阿佐美の手に腰を震わせた。 「……っ、は、んむ……っ、ぅ」 「ゆうき君……暖かいね」 「し、おりのが……熱いよ」 「……そうかな」  うん、と答えるよりも先に、腿から足の付け根まで這い上がってくる大きな掌に声が漏れる。  すりすりと撫でられるだけなのに、既に熱くなっていた下腹部は反応してしまうのだ。肛門から睾丸へと山なりの部分を撫で、そのまま性器の形に浮かびあがった山を指の腹でつうっと辿られるだけで汗が吹き出すようだった。腰が揺れ、膝を擦り合わせて耐える。 「は、……っ、ん、ぅ……」 「下着、後で着替えないとね」 「ふ……っ、う、ん……っ」  下着越し、亀頭の裏側を指先で擽られる。先端部に溜まった熱が更にとろとろと溢れ出し、堪えられず俺は阿佐美にしがみついた。  もどかしいのに、心地良い。もっと、と無意識に腰を阿佐美の手に擦り付けてしまっていたらしい。阿佐美は小さく息を吐き、そのままカウパーで汚れていた性器に直接触れた。 「……っ、ぅ、んん……っ」 「ゆうき君、触ってほしいところがあったら言ってね」 「ん……っ、ぃ、えない……っ」 「言えない?」 「は、はず、かし……っ、く、んん……っ!」 「……大丈夫だよ、恥ずかしいことじゃないよ」  抱き寄せられたまま、俺の性器を握った阿佐美の大きな手はゆっくりと上下する。絡みついてくる骨太な指先に、混ざり合うカウパーに、ぬちぬちと下半身に響く水音に、なけなしの理性までもが湯煎されていくようだった。いや、もしかしたら既に手遅れなのかもしれない。  それでもいい、と思えるほど阿佐美の愛撫は優しくて、心地が良い。脳を焼き尽くすような苦痛に近い刺激でなくとも人は気持ちよくなれるのだということを知った。  顔を埋めた阿佐美の胸元、トクトクと流れ込んでくる阿佐美の心音の間隔が短くなっていくのを感じながら俺はただ身を預ける。  大きな手から想像しにくい労るような、包み込むような手コキは丁寧に俺の快感を拾い上げていく。あっという間に呼吸は浅くなり、自分では到達できなかった程射精が近くなるのを身をもって感じた。  滲む体液。ちゅくちゅくと響く水音は先程よりも大きくなり、滑りのよくなった指先はそれを根本から先っぽまで塗り込んでいく。ごつごつとした指で作った輪で根本からカリの部分を扱かれながら、俺は無意識の内に阿佐美に顔を寄せていた。口を開いて舌を出せば、阿佐美は俺の意図に気付いてくれたらしい。何も言わず、その舌先を咥える。阿佐美の大きな口に舌を咥えられながら、性器と舌、両方を優しくねっとりと扱かれるのだ。 「っ、ふ……っ、う、んん……っ」 「……っ、ん……」 「ん、っ、ぅ、ふ……っ!」  舌の表面を擦り合わせるように絡め、口の中を犯される。滲む唾液ごと吸い上げられ、頭の奥に熱が広がった瞬間、張り詰めていた緊張の糸がぷつりと切れた。  噴き出す精液を掌で受け止め、俺の下半身を一瞥した阿佐美は「たくさん出たね」と小さく笑った。それから、汚れた手を近くのウエットティッシュで拭う阿佐美。射精の余韻の中、阿佐美にもたれかかったまま俺は目を瞑る。  そのまま抱きかかえられ、俺は阿佐美の膝の上に座らせられる。そのまま背後から抱きすくめるような形で回される手は胸元に伸びた。 「ん……っ」 「……ゆうき君、眠たくなったら眠っていいからね」 「でも……まだ詩織が」 「俺はいいんだよ。……後でどうとでもできるから」  開けた入院着の下、差し込まれた手に平らな胸元を撫でられ、ぴくりと体が震えた。熱い掌の感触を無意識に辿ってしまう。そのまま硬い指先で乳輪を撫でられると、それだけで声が漏れそうになるのを唇を噛んで耐えた。 「怒ってるとか、そういうわけじゃないんだ……その、逆効果になっちゃうから……」 「んっ、しお、り……」 「ゆうき君の負担になるって意味だよ」  ……そんなこと気にしなくていいのに。  そう言っても、阿佐美は気にするのだろう。短い間ではあるが、阿佐美の性格は少しだけ分かってきた。何故ここまで自分に尽くしてくれるのかと申し訳無さもあったが、それもすぐ快感に掻き消される。 「ん、は……っ、ぅ……っ!」  耳朶を甘く構え、その凹凸に舌を這わせながら阿佐美は俺の乳首を弄るのだ。射精により心地の良い疲弊感に包まれた意識の中、電流のような甘い刺激が流れる度に身悶える。  汗ばむ肌の上、硬くなった両胸の先端部を優しく摘まれ、そのまま根本から先を柔らかく伸ばすように扱かれるだけで呼吸が乱れた。先程出したばかりの性器にあっという間に熱が溜まり、腰が震える。 「は、ぁ、し、しおり……っ、ん……っ、ぅ……っ」  もっと、と無意識に胸を反らしてたらしい。阿佐美は何も言わず、限界まで尖ったそこを指で弾き、柔らかく潰し、転がす。脇の下から差し込まれた手に胸を揉まれ、その指で挟まれ擦られれば、段々全身の筋肉が弛緩していくのがわかった。甘い快感に身を委ねているうちに力が抜け、阿佐美にもたれされるがままになりながらも俺は阿佐美にすり寄る。そんな俺を抱きかかえたまま、阿佐美は「おやすみ、ゆうき君」と小さくリップ音を立てて俺の耳にキスをした。心地の良い低く、柔らかい声。それが引き金になったかのようにとろんと瞼は重たくなっていき、呼吸もなだらかになっていく。快感はしっかりと神経で感じながら、俺は自分の意識を手放した。  最後に見たのは、憐れむような阿佐美の目だった。  目を覚ますと、昨夜の行為などなにもなかったかのように毎回俺の体は綺麗に整えられていた。そして、阿佐美の姿はなかった。  当たり前だ。阿佐美が俺を抱いてくれるのは俺を寝かしつけるためだけなのだから。ただ、それだけだ。そう分かっていても、冷たくなったベッドに寂しさを覚える自分も確かにいた。  今度もゆっくりと眠れたようだ。少し気分転換に病院内でも歩こうかと病室を出たとき、丁度通路の奥、ベンチに座ってる人影を見つけた。  その人も病室から出てくる俺に気付いたらしい。「齋藤」とその唇が動く。 「……裕斗先輩」 「なんだよ、もっと嬉しそうな顔してくれたっていいのに」 「す、すみません……なんだか久し振りな感じがして」  どんな顔をすればいいのかわからなかった。そう項垂れる俺に、裕斗は「確かにそうだな」と朗らかに笑う。俺はなんだかその笑顔を直視できなかった。なんだか喧嘩別れのような変な感じになっていたのもあるだろう。けれど、裕斗の方は気にしていないようだ。  ベンチから腰を上げた裕斗は、そのまま俺の前までやってきた。そして、伸びてきた手に頬を触れられる。 「……っ!」  ほんの一瞬、昨夜の阿佐美とだぶってしまい、体が反応しそうになった。固まる俺に構わず、裕斗はじっくりと俺の顔を見つめるのだ。 「けど。この前より隈、薄くなってるな」 「せ、んぱい」 「ちゃんと眠れてるのか?」  そういう意図はないと分かっていても、反応しそうになってしまう自分がいた。そっと裕斗の手から逃げるように身を引いた俺は、小さく頷き返した。 「……はい」 「……そうか、それならいいんだ」  ほんの少しの裕斗の言葉の間に、どくんと鼓動が早くなった。向けられる目が、俺の違和感に気付かれるのではないかと少し怖くなる。  別に、俺と裕斗は付き合っているわけでもない。後ろめたさを感じる必要はないと分かってても、唇、首筋、そして胸元へと落ちていく裕斗の視線に、全身にじんわりと嫌な汗が滲むのだ。    変なところ、ないよな。  そう胸の奥にざらりとした不安が過ったとき、裕斗の目が細められる。そして、 「――齋藤」  伸びてきた裕斗の手に入院着の胸元を大きく引っ張られ、息を飲んだ。  照明の下。俺たち以外に入院患者はいないとはいえど、こんな場所で突然脱がしてくる裕斗に凍り付く。 「……っ! な、なに……」 「跡」 「え……」 「これ、この間まではこんなところについてなかったよな」  そう、入院着の下から覗く乳首に触れる裕斗。乾いた指先でぐに、と乳輪を伸ばされ、慌てて俺は身を引いた。そして、乱れた前を慌てて戻す。 「こ、れは、その……ぶつけただけです」 「随分と器用なぶつけ方だな」 「……っ、……」  普段と変わらない裕斗の声がなんだか怖くて、俺は何も言い返すことはできなかった。黙りこくる俺に、先に折れたのは裕斗だった。 「……そうか、ならいいんだ」  本当に俺の言葉を信じたのか。それとも呆れたのか。どちらかは分からないが、裕斗はそれ以上追求してくることはなかった。  一先ずほっとしたが、あの目。鋭い裕斗の視線が未だじっとりと全身に絡みついてくるようだっま。  居心地悪さに耐えきれず、俺は「すみません、俺はこれで」と慌てて俺はトイレに行くふりをして裕斗から逃げ出した。  ……やましいことなんて、何一つないはずなのに。  まだ裕斗の指が胸に残ってるような感じがした。便所の個室に逃げ込んだ俺はそのまま下着の中を覗き込み、硬くなり始めていた自分自身に息を吐いた。  熱は暫くは落ち着かなさそうだ。  そんなことを考えながら、俺は下着の中に手を滑り込ませた。 【続く】

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