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田原摩耶
田原摩耶

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【↑300】ぜんぶ、きみのため。②※【5,700文字/√β軸裕斗+阿佐美×齋藤/ビッチ齋藤/誘い受け】

 薄暗い病室内、ぬちぬちと湿った音が響く。  ベッドの上、座る裕斗の上に跨るように身を寄せる。 「……っ、ん、ぅ……っ、先輩……」 「お前の体、どこもかしこも熱いな」 「すみませ……っ、ふ、ぅ……っ」  唇と唇を重ね合わせながら、その下、裕斗の入院着をゆるめ下着の下から取り出した性器を手で愛撫する。手の中のそれは俺の拙い愛撫でもしっかりと反応してくれるのがただ不思議だった。  撫でれば反応するし、とろとろと先走りが溢れてくる。これを挿れられたときの快感を思い出し、腰が震えた。  ――挿入はしない。そういったのは裕斗だった。 「ぁ、あの、本当に……これだけで……」 「いい、てか……一応、怪我人だし無理させるわけにはいかないだろ」 「…………先輩は、優しいですね」  思わずぽつりと呟けば、俺を見つめていた裕斗は小さく笑った。 「こんなことさせてる時点で優しくはないぞ、齋藤」  それはいつもの太陽のような笑顔ではなく、どこか自嘲したような笑顔だった。志摩の面影を見つけてしまい、不意に心臓が弾んだ。  それは、そうかもしれない。そんなことを思いながら、顔を寄せてくる裕斗の唇を受け入れる。  小さなリップ音と手の中の水音は混ざり合い、裕斗に体を抱きしめられ、腰から臀部を柔らかく撫でられると抱かれてるような感覚に陥った。  否、挿入の有無の違いだけでこれはセックスのようなものだ。  まるで恋人同士のように唇を交わし、二人だけの空間に心身浸っていく。  こうしてる間だけは、現実が夢で、この時間だけが現実のような気がしてならなかった。 「……っは、……齋藤」 「……ん、っ、む……っ、ぅと……さ……っ」 「上手くなったな。……お前の手、柔らかくてすぐにイキそうだ」  吐息混じり、俺の目を覗き込み裕斗は微笑む。その笑顔に、囁かれる声に、どうしても下腹部に熱が溜まってしまった。  下着の中、腹の奥が重たくなっていく。裕斗の性器をちらりと盗み見ながら、こっそりと自分の性器を裕斗の体に押し付けて刺激する。バレないように、息を殺す。 「……っ、は……ッ、裕斗先輩……っ、ん、む……っ」  甘えてるように裕斗の目には映ったのかもしれない。僅かに頬を紅潮させた裕斗は、そのまま俺の顎を掴み、唇に噛み付いてくる。  ああ、性器の刺激だけでは物足りない、なんて。  腰を抱く大きな掌に乱暴に尻を掴まれたい。谷間を拡げ、肛門をその長い指でぐちゃぐちゃに掻き回されたい。 「っん、む……っ、ふ……っ、ぅ……っ」 「……っ、は、齋藤……」  我慢なんてしないでください。俺のことを気遣わないでください。  裕斗に大事に触れられる度に、自分の無価値さと分不相応な愛情に喉を掻き毟りたくなる。 「っ、先輩、もっと……キス……」 「……齋藤」 「っ、ん、む……っ」  性器から伝わってくる鼓動が増していく。カリの凹凸から尿道までそっと亀頭を撫でれば、裕斗の胸が上下するのが伝わってきた。  ――イく。  そう思った次の瞬間、這わせた掌に勢いよく精液が吹きかかる。その量と勢いに精液は俺の太腿にまで掛かっていた。 「わ……っ、るい、かかっちまったな」 「い、いえ……」  サイドボードに置いていたティッシュの箱を掴んだ裕斗は、そのまま俺の太腿に触れた。剥き出しになっていた太腿を掴まれたまま、どろりとまとわりつく精液を拭っていく。その間、俺は裕斗にされるがままになっていた。  視界の端、ちらちらと裕斗の裾の下から覗く裕斗のものが未だ萎えきっていないことに気づく。 「そ、その……それ、もういいんですか?」 「え?」  そう、再び裕斗の性器をちょんと触れたとき、射精直後で過敏になっていたらしい裕斗の性器がびくりと反応する。 「こら、齋藤」とやんわりと肩を掴まれるが、そのまま指に絡んだ精液を竿に塗りたくるように伸ばせば、肩を掴む指に力が加わっていく。 「……っ、は、齋藤……」 「……先輩」  そのままゆっくりと腰をあげる。恥ずかしくないわけではない。それ以上の熱が思考を麻痺させてるのだ。  片手で裾を持ち上げ、そのまま裕斗の性器の上に跨がる。にゅる、と濡れた裕斗の亀頭が下半身に擦れ、「ん」と小さな声が漏れた。 「齋藤お前、いつからそんな真似覚えたんだ?」 「……ごっ、ごめ、んなさ……お、おれ……っ、ん、ぅ……っ」  上手く挿入できず手間取っていたとき、腿を掴んでいた裕斗の手が腰へと伸びる。肛門に押し当てられる亀頭に息を飲んだとき、そのまま裕斗は俺の腰をゆっくりと落とさせるのだ。  ずぷ、と肛門を口を大きくこじ開けたと思えば、そのまま滑るように一気に奥まで入ってくる裕斗の性器に背筋がぴんと伸びる。 「はー……っ、ぁ……っ! ぅ、…っ、ゆ、と……せんぱ……っ、んん……っ!」  一気に奥まで入ってきた性器に下半身が、脳の奥までも痺れるようだった。 「痛くないか?」と優しく耳元で囁かれ、朦朧とした頭の中、俺は小さく頷き返した。  欠けていたピースがハマったような充足感に視界が揺れる。 「動くぞ」 「は……っ、は、ぃ……っ!」  角度を探るように下から裕斗の性器に突き上げられた瞬間、脳の奥で熱が滲む。  最初は慣らすようにゆっくりだったが、気付けば裕斗にがっちりと抱き締められていた。裕斗の体にしがみついたまま動けない体を何度も何度も突き上げられていく。 「っ、は……っ、ぁ、……っ、んんっ! ぅ、あ……っ! せ、んぱ……っ、ぁ゛ッ、う゛……ッ!」 「そんなにしたかったのか? ……っ、これが」 「っん、せ、んぱ……っ、ぁ、ふ……っ、う、く……っ!」  煽ったのも誘ったのも俺だ。裕斗にただひたすら性欲をぶつけるだけの性行為をしてもらいたかったのも、俺だ。  何も考えられなくなるくらい腹の奥まで穿られ、膨らんだ下腹部を撫でるように掌で前立腺ごとやんわりと押しつぶされる。その度により性器の形が鮮明に脳と粘膜に焼き付き、頭が真っ白になるのだ。 「っ、せ、んぱ……っ、ぅ、んんぅ……っ!」  裕斗に入院着の下の体を弄られながら奥を突かれ続け、呆気なくイッた。それは射精を伴わない絶頂だった。  びりびりと手足が痺れるような感覚とともに、重ねがけされていく快感に思考回路は既に焼ききれていた。  ――これだ、やはりこれだったのだ。俺が求めていたものは。 「っ、く、ひ……ッ!」 「は、齋藤……っ」  肌越しに伝わってくる震動に揺さぶられながら、俺は何度目かの絶頂を迎える。止まることを知らず、ただひたすら亀頭からカウパーを垂れ流しながら俺は裕斗にしがみついていた。  自我と肉体は乖離していく。それなのに、与えられ続ける快感は増していくのだから恐ろしい。  やがて脳と肉体のキャパを越え、遠のいていく意識の中、俺は離れてしまわないように裕斗の広い背中に手を回した。そのまま筋肉質なその背中に必死にしがみついたまま、俺は意識を手放した。  性行為だけが、俺の安眠剤だった。 「体は平気か」 「……はい」  気がつけば俺はベッドの上に寝転んでいた。  この病室には裕斗や阿佐美、サイトウ以外人間は来ない。次にやってくるときは、俺が俺でなくなるその日だろう。  それをいいことに、半日ほど裕斗に抱かれていた気がする。流石に入院着は着替えなければならないほどドロドロになっていて、眠ってる間に裕斗にベッドシーツも変えられていたらしい。清潔なベッドの上、俺は裕斗から水の入ったペットボトルを受け取った。 「悪い、怪我人相手に……」 「いえ、あの……お陰で、ゆっくり眠れたので」 「あれは眠るってよりも気絶だろ。……やっぱ、暫くは控えよう。俺も、自制する努力はする」  そんなこと、しなくてもいいです。なんて言ったらきっと裕斗には逆効果なのだろうと分かってた。  性行為の余韻に浸りながら、俺は「分かりました」とだけ頷いた。  その日から、裕斗と会う機会がめっきり減った。  とはいえど、俺も裕斗もこの病院に軟禁状態だ。会おうと思えばいつでも会える。  つまり、裕斗に意図的に避けられていたのだ。  ……俺の方から会いに行けばいいと分かっていたし、会えない時間が多くなるほど何もしない時間が増えていく。基本ベッドの上に横になってるだけなのだから疲れることもないけれど、だからこそか、あの日以来ぐっすりと眠れることはなくなっていた。  そして今日も一時間ほどで目は覚まし、それからぼんやりと天井を眺めてる内に阿佐美が食事を持って病室へとやってきた。  裕斗に避けられている今、阿佐美だけが俺の話し相手だった。 「……ご馳走さまでした」  そう、半分以上残ってる皿を前に呟けば、阿佐美は心配そうな顔をしてこちらを見た。 「ゆうき君、ご飯、あまり入らなかった?」 「……うん、お腹あんまり減ってなくて」 「そっか。……睡眠はちゃんと取れてる?」 「……まあまあかな」 「……」 「詩織……?」 「ああ、ごめん。……ちょっと考え事してたんだ。……やっぱり、この病室から出られないと退屈だよね」 「……そうだね」  違うとは言い切れない。退屈、というよりも、時間の経過が遅いと感じるくらいだろうか。  そう感じるようになった要因は明らかだ。最近裕斗が部屋に来てくれないからだ。  裕斗がいるときはリハビリを手伝ってくれたし、話し相手にもなってくれた。裕斗と一緒にいて時間を気にすることもなかったからこそ余計、一人の時間が長く感じる。 「あの、詩織……裕斗先輩はどうしてる?」 「裕斗君? ……ああ、リハビリ頑張ってるみたいだよ。さっきも大分運動できるようになったって喜んでた」 「……そっか、それなら良かったよ」  ……本来ならば、これが健全な関係なのだ。  そう言い聞かせるものの、やはり裕斗のことが気になった。別に『二度と顔も見たくない』と言われたわけではないし、俺が会いに行けば裕斗は受け入れてくれる気もした。けれど、そうしないのは今度こそ拒絶されるのが怖いからかもしれない。  会話が途切れ、病室内に重たい沈黙が流れる。  何か言いたげに俺を見ていた阿佐美だったが、やがて、「あの、ゆうき君」と声を絞り出した。 「答えにくかったら答えなくていいんだけど。……最近、裕斗君と何かあった?」  やけに改まると思いきや、核心を突いてくる阿佐美に少しだけ驚いた。顔を上げれば、阿佐美は慌てて首を横に振る。 「あ……いや、責めてるとはそんなじゃないんだ。ただ、最近一緒にいるところ見てないから」  阿佐美は優しい。言葉を選んでくれているのだろうというのが伝わってくる。  ちゃんと改めて裕斗との関係を阿佐美には伝えていなかったが、俺と裕斗の関係性は阿佐美も知ってると思っていた。……ここまで俺と裕斗に手を貸してくれたのは阿佐美なのだから。  そんな阿佐美相手に、なんて答えるのが正解なのだろうか。 「……詩織は、俺と裕斗先輩の関係、知ってるの?」  考えた末、そっと尋ねれば、阿佐美は小さく頷き返した。 「別に裕斗君に教えてもらったとかじゃないんだ。……二人の感じからして、“そう”なのかなって」 「……そっか」 「その、何かあったの?」 「裕斗先輩に、暫く距離置こうって」 「……え?」 「俺と一緒にいると、無理させてしまうからだって」 「ゆ、うき君、それは……その、」 「……けど俺は、無理させてもらえた方が“調子がいい”んだ」  別にそこまで言うつもりはなかったのだけど、相手が阿佐美だからだろうか。つい、口が緩んでしまう。俺の言葉の意味を理解したのだろう、「えっと」と気まずそうに視線を右往左往させる阿佐美。 「あの、ゆうき君。君は裕斗君と――」 「付き合ってないよ」 「そっか……じゃなくて、あの……もしかしてそれが原因で調子悪いの?」  多分、と頷けば、「そっか」と阿佐美は視線を逸した。 「……詩織、変なこと言ってごめん」 「いや、言いにくいこと教えてくれてありがとう。……別に俺はそういう偏見はないし、それこそ個人の自由だと思ってるよ」  阿佐美らしい真面目な答えだと思う。けれど、なんでだろうか。阿佐美のその言葉にじれったさを覚えてしまうのは。  俺を慰めるよう、そっと握られる大きくて硬めの掌の感触に下半身が疼き出すのは。 「……っ、詩織」 「ゆうき君?」  慢性的な寝不足気味の頭では思考回路が正常に働いていないようだ。そのまま、ベッドの側に座る阿佐美に顔を寄せる。鼻先がぶつかりそうな距離、まともに見つめ合ってからそこで阿佐美も気付いたらしい。俺の意図に。 「……っ、待って、ゆうき君」 「……うん」 「っ、ゆうき、君……っ」  背を伸ばし、そっと阿佐美に唇を寄せる。こんな大胆な真似、今までの俺はできなかった。けど、行き場を失った性欲を自分で発散する方法など俺には『これ』しか思いつかなかったのだ。 「俺……おかしいみたいなんだ」 「……っ、ゆうき君……」  誰かに必要にされてないと不安になる。  触れられて、掴まれて、玩具のように扱われて――腹の中に射精されることによって不安は掻き消され、満たされるのだ。 「詩織……俺のことを助けてくれたお礼、まだだったよね」 「……っ、……」 「……好きにして、いいよ」  阿佐美の手を取り、自分の胸に寄せた。ああ、俺、最低なことをしてる。分かっていたけど、椅子に座る阿佐美の膝の上に跨がれば、太腿に当たるその感触にぞくぞくと甘いものが走った。  阿佐美が反応してくれている事実が俺にとっては何よりも嬉しかった。 「今の俺には、これくらいしか……できないから」  前髪の下、見開かれた阿佐美の目に映る自分の浅ましい姿を直視することはできなかった。  自己嫌悪は高揚感によって溶かされていく。阿佐美に唇を寄せたとき、背中に回された阿佐美の腕に体を強く抱き締められた。 【続く】

【↑300】ぜんぶ、きみのため。②※【5,700文字/√β軸裕斗+阿佐美×齋藤/ビッチ齋藤/誘い受け】

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