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田原摩耶
田原摩耶

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慈光兄弟と美甘少年の攻防戦の記録【双子×美甘ほのぼの/↑100/3,200文字】

 いつだって、俺はあの二人から置いていかれていた。 「美甘、こっちだよ」 「おせーよ美甘! ノロマ〜!」 「ま、待ってよ……っ! 二人とも、ずるいよ、足早いよ……っ!」  物心ついたときには背は越されてたし、ただでさえ二人の成長期が早かったのがあるだろうが、幼い頃のその差はとてつもなく大きく感じた。  重たいランドセルを背負ったまま、二人においつこうとするけどどんどん差は開いていき、結局バス停の前で二人が待っててくれるのだ。 「美甘が足遅いからだろ」 「ご、ごめ……けほっ、はあ……」  ようやく追いついたは良いが、全力で走ったおかげで心臓が今にも破裂しそうになっていた。息苦しくなって胸を押さえ、とにかく酸素を送ろうとはっはっと呼吸を繰り返してると燕斗に「大丈夫?」と肩を撫でられる。 「う、うん……でも、ちょっと疲れた……」 「体力ねえもんな、美甘は」 「お前が体力馬鹿なだけだろ。……ほら、美甘、水は?」 「うん……飲む」 「そこのベンチに座ろう」  燕斗はそう言って、俺の手を引いてバス停の中に連れて行ってくれる。ベンチの上、雨を凌ぐ屋根だけが設置された簡易的なバス停だ。  それでも子供の頃は座って休める場所があるだけありがたかった。  俺のランドセルを肩から外した燕斗は、そのまま中から水筒を取り出して渡してくれた。 「飲めるか?」 「うん……ありがと、燕斗」 「そんくらい、俺だってできるけど?」 「なに張り合ってんだよ、宋都。……ほら、美甘。零すなよ」 「うん」  んくんく、と喉の奥に水を押し流せば、先程よりも呼吸がしやすくなる。 「じゃあ今日の荷物持ちは宋都だな」 「は? なんでだよ!」 「俺は美甘をおぶって帰る」 「なんだよそれ、それなら俺が美甘連れて帰るし!」 「お前はうるさいからだめだ」 「うるさくねーし!」 「さ、宋都……」  俺が具合が悪くなったとき、二人はこうしてすぐに助けてくれる。  嬉しくもあったけど、そんな自分が情けなくもあった。けど、こうやって燕斗と宋都に心配されるときは心がぽかぽかと暖かくなるのだ。  いつも追いつくので必死になってたぶん、二人が俺に歩調合わせてくれるのが嬉しくて、つい燕斗に撫でられると頬が綻んだ。 「ありがとう、燕斗、宋都」 「いいんだよ、俺達は友達だろ?」 「ふん、美甘は俺達がいなきゃ駄目だからな〜?」 「うん……っ!」 「馬鹿、なんで嬉しそうなんだよ」 「えへへ……」  ああ、懐かしき記憶。  そんなときもあったな、なんて思いたくなるほど遠い記憶だ。  何故、今になってそんなことを思い出したのだろうか。なんて思いながら目をぱちりと開いたとき、目の前にあった燕斗の顔にぎょっとした。  じっとこちらを見下ろしたまま俺の胸を撫でてた燕斗は、「あ、起きた」と小さく漏らした。 「え、燕斗……お前なんで人の部屋に……っ」 「なんでって、お前を遊びに誘いに来たんだよ。因みに宋都もいる」 「よ、お前俺より寝てんぞ美甘」 「………………」  あのまだ可愛げがあった記憶から数年後、さらにデカくなった二人は俺を囲んでいた。 「いつも言ってるけど、勝手に人の部屋に入んなよ……っ」 「おばさんはいいって言ってたぞ」 「俺はいいって言ってないっ」 「別に今更もったいぶるようなもんもないだろ。それともやべーもん隠してんのか?」 「久しぶりにPCの検索履歴チェックすっか?」なんて笑えないことを言い出す宋都に「わー!やめろ!」と慌ててベッドから起き上がる。 「その反応、またエロサイト見てんのか。……本当に懲りないな」 「たまには換気しねえとな、イカ臭えぞ美甘ん部屋。つーか童貞臭?」 「中学生らしくはあるかもな」 「う、や、やめろ……つかお前らだって中学生だろ!」  そうだそうだ!何故こうも偉そうなのだ! 「まあでも俺ら、お前みたいに毎晩猿みたいにヘコヘコオナってないし」 「俺だって……っ、俺だって毎晩してない!」 「宋都やめろ、可哀想だろ美甘が。それに、適度な自慰行為は集中力を高めることに効果的だと言われてる。……頻度多すぎると逆効果らしいけどな」 「だってよ美甘、お前手遅れかもな」 「う、うう……」  散々だ。言いたい放題言い過ぎだ。確かに週五で休みの日は一晩中ずっと触ってしまうときもあるけど。 「まあいいじゃないか、俺は嫌いじゃないぞ。美甘のそういう自堕落でだらしないところ」  言いながら肩を組んでくる燕斗に上半身を抱き寄せられ、ぎょっとした。  肩のラインを撫でられ、息を飲む。 「燕斗、ぉ、お前……ん……っ」 「どうした? 美甘」 「ち、近い……離れろ……あと勝手にベッドに上がってくるなって……ッ、んん……っ!」  言い終わるよりも先にそのままパジャマの上から胸を揉まれ、「おい」と燕斗を見た。 「着替えるんだろ? 手伝ってやるよ」 「よかったな美甘、燕斗が手伝ってやるって」 「い、いらねえって! んっ、や、やめろ……っ!」 「遠慮するな、美甘」 「え、遠慮じゃないって……っ、ん、う……っ!」  そのままぷちぷちとパジャマのボタンを外され、徐にベッドへと押し倒される。  やっぱ、最初からそのつもりだったんじゃないか。だから嫌なのだ、この二人を部屋にあげるのは。  こちらを見下ろしてくる慈光双子の視線を感じながら、俺はもうすでに諦めていた。  ◆ ◆ ◆  何故俺なのだ、と考えたことはある。  今まで家族以外でこいつらと長い間過ごしてきた人間と言われたら俺だと名乗る自信はあったが、それでもだ。彼女だってすぐできるだろうし、そうじゃなくてもだ。ムカつくが、こいつらなら顔だけしか見てない女子は相手してくれるだろう。ムカつくが。 「美甘、喉渇いてない?」  ベッドの上、着替えさせると言っておきながら全裸に剥かれたまま放置されていた俺に向かって燕斗は声をかけてきた。因みに本人はシャツのシワ一つない。本当になんなんだこいつ。 「渇いた」と答えれば、俺の横で寝転がっていた宋都は「燕斗、俺も」と手を挙げる。  そして「お前は自分で取りにいけ」と断られていた。ざまあみろ、と鼻で笑ったら尻を抓られる。 「いでっ! おい、なにすんだよ!」 「お前が笑ってんじゃねえよ」 「個人の自由! 人権!」 「はいはい。あ〜あ、燕斗様々は美甘にだけは甘いよな」 「美甘は可愛いからな」 「俺は可愛くねえのかよ」 「ないな」 「ないだろ。……いででっ!!」  宋都の野郎、起き上がるついでに人のケツ抓っていきやがって。  部屋から出ていく二人を見送り、俺はそのまま宋都がいなくなって広くなったベッドの上、手足を広げて大きく伸びをした。……ケツが痛い。  ……二人が戻ってくるまで、もう少し休んでおくか。  あの調子じゃまた俺を帰らせる気はないらしいし。  ◇ ◇ ◇ 「そーいや燕斗お前、この前美甘用に買ってたやつ。あれやったのか?」 「ああ、あの紅茶か。……」 「はっ、その顔。あいつ紅茶駄目だったろ?」 「美甘の子供舌を舐めてた。砂糖入れても駄目だったから結局俺が飲んだ」 「だから言ったろ。美甘にお土産なんてジュースで十分だって」 「そういうお前こそ、美甘にちゃんと渡したのか?」 「…………」 「おい、あれナマモノだったろ」 「うるせーな、いいんだよ。おばさんに渡したから」 「そこで照れる意味がわからない」 「照れてねえ。つか、いちいち土産とかいらねえって。たかだか二、三日の旅行くらいで」 「本当、お前って……」 「……なんだよ」 「いや、お前って本当に俺の弟か? って思ってな」 「残念ながらそうなんだよな、オニイチャン」 「う゛……っわ、美甘で口直しするか」 「気が合うな。俺もそうしようと思ったところだよ。次は俺の番な」 「ここは公平にじゃんけんだろ」 「お前のじゃんけんは公平じゃねえよ」  おしまい

慈光兄弟と美甘少年の攻防戦の記録【双子×美甘ほのぼの/↑100/3,200文字】

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