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幼なじみが俺で、俺が俺の妹で(7)

「俺、小遣いで問題集なんて買ったことないぞ……  入れ替わり生活ももう三日目。俺たちは、『兄妹』で外に出た。 「『俺』じゃ駄目だよ、光莉」 「……あたし、お小遣いは問題集なんかに使いたくないなー、お兄ちゃん」 「でも、勉強の習慣はなるべく早く身に着けて欲しいんだ」  瑠璃は俺に諭すように言う。『俺』なのに、知的なお兄ちゃんみたいに見えた。 「け、けど、あたし二度目の一年生だよ? 去年勉強したんだし……」 「『僕』の三学期の通知表、改めて確認したよ? 思った以上に悪かった」  証拠を押さえられていると、ぐうの音も出ない。 「そんな『僕』も問題集は持ってない。『僕』の教科書で教えるだけよりも、やっぱり何問も解いてみる方が効果があると思うんだ。だから光莉の分は光莉に買ってもらいたい。光莉ちゃんに確認したら必要経費だってことで渋々ながら了承してくれたしね」  あいつ、今は東京で瑠璃の小遣いで好き勝手できるからって……! 「それにしても」  少しすると、瑠璃がおかしそうに笑った。 「『僕』視点だと、光莉ちゃんってああいう子に思えるんだね。二人がしょっちゅう仲良く喧嘩してる理由、ようやく理解できた気がするよ」 「そ、そんなの……!」  お兄ちゃんにわかったように言われて、あたしは頭に血が上る。 「お兄ちゃんが無神経で鈍感でがさつだからじゃないの! 知らない!」  俺に言われたお兄ちゃんはなぜか予想外の攻撃を受けたような顔をした。 「ええと、今のは『わたし』になってる光莉ちゃんと少し話した時に思ったことだよ。光莉ちゃんになってるみっくんのことじゃなくて」 「あ……」  勘違いに気づいて、俺は別の意味で顔に血が上った。  この関係、複雑すぎる……。  それにしても、と本屋からの帰り道に思う。  瑠璃は『俺』の記憶から『光莉』についてのイメージを形作れる。俺は光莉について隠そうとしていないから当然だ。  俺は『光莉』の記憶から、『俺』と『瑠璃』、それぞれについてのイメージもできる。  けど……  俺は『俺と瑠璃』についてのイメージは、うまくできずにいた。  光莉の奴、なんでこれに関しては俺に記憶を伏せているんだろう。  いや、俺だって瑠璃に『瑠璃』の記憶を伏せているし、人のことはあまり言えないけれどさ。 *  帰宅してからの勉強は、思いの外に捗った。  瑠璃が『俺』の記憶から俺の理解度を把握して、適切に教えてくれるからというのもあるだろう。『光莉』の頭がいいというのも大きな理由だと思う。  けどそれら以上に、俺が瑠璃に素直に教わることができたからというのが、一番重要な気がした。  これまでにも、瑠璃が俺に勉強を教えようかと申し出てくれることはあった。でも同い年に教わるなんて恥ずかしいと、変なプライドが邪魔をした。  だけど今、俺は一歳下の妹で、瑠璃はお兄ちゃんだ。 「お兄ちゃん、これどういう意味?」 「それはね、……」  こんな勉強なら、二年間ずっとやり続けられるかもと思った。  瑠璃は瑠璃で自分の学年の勉強もしなければいけない(今日は中二の問題集も買っていた)から、自力でもやれるようにしなければならないけど。 *  勉強が終わり、夕食も終えると、俺たちはお風呂に入った。  今夜、母さんと父さんは家にいない。だから気兼ねなく二人で入れる。 「そ、それじゃ、みっくん、お願いね」 「お、おう……」  瑠璃にねだられて、手コキの態勢になるが……瑠璃はもうチンポをガチガチに硬くしていた。 「お、お兄ちゃん、そんなに溜まってたの?」  こういう会話自体、瑠璃とあまり重ねたくない。すればするほど瑠璃を男子に近づけてしまう気がする。そうは思いつつも、訊かずにいられなかった。呼び方は変えて、訊いている相手は瑠璃ではなくて『お兄ちゃん』だということにした。 「溜まるって何のこと?」 「え、ええと……その、昼間とか、色んな女の人を見たり妄想したりして、何度も勃起してたのかなって。そういう時、すぐに抜きたくなるのか後からでも簡単に勃起するから」 「抜くって、昨日の朝も言ってたけどどういう意味? あの、何となくニュアンスはわかるつもりだけど、わかったつもりじゃなくて確認した方がいいかなと思って――」 「っ……射精のこと!」  妹にそんなことばっかり言わせないでよ! 理不尽かもしれないが、そんな風にも考えてしまう。 「ありがと」  俺に背を向けて座っている瑠璃は、柔らかい声音で礼を言うと続けた。 「自分であんまり興奮してた記憶はないけど、今夜のことはちょっと楽しみにしてたかも」 「なんで?」 「だって、昨夜と今朝はちょっと忙しなかったから」  それは、そうだった。昨夜は両親が帰ってきて家族四人で夕食を取り、今朝もちょっとのんびりしてて……つまり、瑠璃の射精は俺がお兄ちゃんの部屋へ出向いた短時間の間に慌ただしく済まさざるを得なかったのだ。  なお、父さんも母さんも俺たちの変化には気づいた様子がなかった。それは当然だよな。俺たちはただ入れ替わったわけじゃなくて、身体の記憶もかなりの部分読み取れて、身体にふさわしく振る舞ってるんだから。きっと『瑠璃』になった光莉も同様だろう。これについて見抜けない親を責める気にはなれない。  さらに付け足すと、俺一人で眠らざるを得なかった昨夜だが、光莉の部屋にあった大きめのぬいぐるみ何体かを活用することで、どうにか怖くならずに寝ることができた。 「射精って、しちゃったら波が引くように気持ちよさもなくなっちゃうよね?」 「う……うん」  経験者として、初心者の素直な感想には肯くしかない。 「だから今夜は、するまでの時間をもっと長く伸ばすような感じでして欲しいんだけど……ダメかな?」  そんな風に射精初心者に頼まれると。 「……しょうがないな」  つい言ってしまった。 「でもでも、こういう時だけだからな。父さんたちがいる時は簡単に済ませるぞ」 「わかってるよ」  四月からの両親の仕事がどれくらい忙しくなるかなんて、俺には予想もできない。一緒に風呂に入るのがほんのたまにだとしたら、その時くらいはと思って言った。  この先数年間、両親の忙しさが絶頂を迎えてほとんど家に帰れないくらいの勢いになったというのは、後になって振り返ってからわかったことである。  ともあれ、そんな未来など知る由もない俺は、後ろから瑠璃の勃起チンポに手を伸ばす。早く射精しろと強くしごき立てるのではなく、小さな手で柔らかく刺激していく。 「うん……っ、みっくん、気持ちいい!」  瑠璃が雄の快感に身を震わせた。


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