XaiJu
クチバシ
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破滅的マゾ女子大生が囚人体験に参加した結果、S級潜在犯罪者として永久絶頂終身刑にされるまで

「渚は飲み会行かないの?」 「うん、ちょっと用事あるから」 当たり前、飲み会になんか行ってる場合じゃない。 今日は私が収監される大切な日なんだから。 「え~? 高木先輩も来るって言ってたよ? 渚、『ちょっとカッコいいかも』って言ってたじゃん」 「今日はどーしてもだめなの」 人が掃けていく7号館の304講義室で、私は友人に引き留められる。 高木先輩とか、今はもうどうでもいい。 あの人、ちょっとドSっぽい感じがしたから興味があっただけ。 「じゃあね、あ、来週はちょっと講義出れないかもだから」 「え? まじ?」 「うん、まじ」 「渚、もしかして彼氏でもできた?」 「ううん、できてない」 「じゃあ、なんでそんな楽しそうなの?」 「秘密。じゃあ、またね」 駆け足で講義室を出ていく私の背中に、恨み言がぶつけられる。 ごめんね、私は今日から刑務所行きなの。 すっごく楽しい休日が待ってるんだ。 *** 大学キャンパスの最寄駅から8駅ほど離れたところ、3年ほど前に出来た女子刑務所の門前に私は辿り着いていた。 刑務所なのに、お洒落さを感じる装飾がされた洋風の建物だった。 なんでこんなに綺麗なデザインにしたんだろう。 今から2日間、ここに閉じ込められる身としては喜ばしいことだけど。 「あの、体験収監に参りました、田宮渚と言います」 門守さんのおばあさんに話しかけた。 彼女はにっこりと笑って、門を開けてくれた。 「真っすぐ歩いていくと大きな建物があるから、そこの受付で案内してもらってね」 「はいっ、ありがとうございます」 言われた通りに歩いていく。 門から眺めていた綺麗な建物に入ると、受付に辿り着く間もなく、制服姿の女性がこちらに向かって歩いてきた。 「田宮渚さんですね? 体験収監の」 「あ、はい! そうです」 見惚れるほど綺麗なお姉さんだった。 看守さんなのかな。 「担当の北見です。よろしくね」 「よろしくお願いします……!」 北見さんに案内された部屋は、小さな更衣室だった。 服を入れるロッカーが2つと、コンパクトなべンチが置いてあるだけ。 「左側のロッカーに入っている服に着替えてね」 「はい」 「あとは、これ、目を通しておいて」 2枚のA4サイズの資料を手渡され、北見さんは部屋から出て行った。 「体験収監……」 私は資料の冒頭の一文を口に出してから読み始める。 今回の体験収監の内容が書かれている資料だった。 この女子刑務所のホームページで見たものと同じだ。 通常の囚人と同じような生活を体験できること、刑務所内の見学ができること、その他注意事項が事細かに書かれていた。 既に家で読んできたものなので、とりあえず着替えをする。 ロッカーには青色のツナギのような服が入っていた。 「あ、しましまのやつじゃないんだ……」 着替え終わったあたりで、北見さんが戻ってきた。 「資料、読んだ?」 「はい、家で読んできました」 「偉いね、質問はある?」 「本物の牢屋に入れられるんですよね?」 「そうだよ、空いてる独房を使うから、体験用のスペースはないの」 良かった。 体験用の牢屋とか、そんなの雰囲気に欠けすぎる。 「研究?」 「はい?」 「大学の研究のために来たのかな、って。そういう子、多いから」 「あ~……まあ、そんなところです」 本当は違うけど、説明するようなことじゃないので、適当に返事をした。 (拘束されたり、お仕置きされたいだけですけど) なんて言ったら、この美人の看守さんはどんな顔をするんだろう。 「本物の囚人と同じ扱いになるから、ちょっと嫌な思いするかもしれないよ」 「え?」 嫌な思いをする、という言葉に思わずときめく。 何でもいっぱいして欲しい。 「命令口調で指示されたりするし、明日は早起きしないとだからね。ルール違反したら怒られるから」 「あぁ……」 なんだ、そんなことか。 私はがっくりと肩を落とした。 「まあまあ、研究のためでしょ? 2日間だけだから大丈夫」 「はい……」 本当は分かってる、私が期待してることなんか、現実には無いってことぐらい。 それでも、体験収監なんて言葉を見せられたら、縋りつかずにはいられない。 ドMの人ならみんなそう言うはずだよね。 「じゃあ、独房行こうか」 「あの、手錠とかは?」 「手錠? いや、体験収監の人はしないよ」 えぇ?  さっき本物の囚人と同じ扱いって言ったじゃん。 いいの? 私がこのまま逃げ出しても。 「手錠、したいの?」 「や……う……」 したい。手錠、かけられたい。 逃げられないようにされたい。 でも、そんなことは言えない。 『私はドMの変態なので、手錠をかけられたいです』なんて、言えるわけがない。 「じゃあ、手を出して」 「え?」 「手錠するから。レポートとか、書かなきゃなんでしょ?」 「あ、あぁ……! ありがとうございます!」 北見さんがクスりと笑う。 「手錠をかけて感謝されたのは初めてだよ」 北見さんの腰から現れた銀色の鉄の輪が、私の手首にかけられた。 ロック機構が回る音と、鎖の音が心地いい。 ほんの少し不自由になった自分の手を見て、感動する。 プレイ相手にかけられる手錠とは違う。 ただ仕事をしているだけのお姉さんに手錠をかけられるのが、倒錯的で気持ちいい。 「うおぉ……」 「結構、重いでしょう」 「そうですね、これ、すごい……」 「うん、じゃあ、付いてきて。転ばないようにね」 北見さんの後について部屋を出る。 来た方向とは逆の方向へ歩いていく、つまり建物の奥側に行く形だ。 大きな鉄のドアを2度通り抜けて、格子の受付窓があるカウンターに辿り着いた。 北見さんは受付の中にいる制服の女性と二言三言、話をした後にまた歩き出した。 受付の奥の両開きの扉をあけると、左右に分かれている通路へとたどり着いた。 通路の左右の壁には、鉄の扉が並んでいた。4桁の番号がふってあって、扉の上部と下部に小さな窓がついていた。 多分、このドアの先が独居房になっているのだろう。 アニメとかでよく見る鉄格子で丸見えの牢屋ではない。 アパートの一室のようにも思える作りだった。 「ここが、独居房フロアね」 「はい……この中に、その、囚人さんが?」 「そう、受刑者って言い方をするけど」 「あ、すみません」 「いやいや、どっちでも。あ、ここだね」 北見さんが指さしたドアを見ると、1023と書かれていた。 ドアを開けると、コンクリートに囲まれた3畳ほどの空間にベッドとトイレがあるだけ部屋があった。 「ここが、独居房……」 「うん、じゃあ、中で少し説明するから」 「はい」 「ええと、田宮さんは今日と明日、ここで過ごしてもらうんだけど、実はあんまりこの中で過ごす時間は長くないの」 「あ、そうなんですか?」 「うん、食事は別の所で取るし、食事が終わったら基本的には刑務作業をしてもらったり、運動をしてもらったりするから。夜は消灯まで自室で待機だけどね」 北見さんは説明をしながら、私の手錠を外してくれた。 鉄の感触が名残惜しかったけど、まあ仕方ない。 「今日は、もう午前の作業は始まっちゃってるから、お昼ご飯まで待機、その後は刑務作業に参加してもらうからね」 「はい、わかりました」 その後や明日のことも北見さんは説明してくれたが、特に私が期待しているような内容はなかった。 拘束衣とか、懲罰とか、そういう体験はできないのかと問い掛けたくなったが、例外的に手錠をかけてくれただけ感謝しなければと思ったので、これ以上の要求は控えることにした。 *** その後は、北見さんとは別の看守に呼ばれて、食堂に移動した。ほかの受刑者と同じように列に並び、食事の乗ったトレイを受け取ってから適当な席に座った。病院食のようにヘルシーなメニューで、味はとても薄かった。 食べながら辺りを見回す。 食堂はかなり広く、100人以上は座れるであろう席が用意されていた。 気付いたことは、受刑者が着るツナギの色に種類があるということだった。 私と同じ青色が一番多い。その他に、オレンジ、赤、緑のツナギを着ている人がいて、一番少ないのが赤のツナギだった。 「ねえ、もしかして体験収監?」 「へぇっ!」 驚いて、ヘンな声が出た。 声の主を見ると、黒髪のボブカットで赤色のツナギを着た女の子が私を見下ろしていた。 「あ、そうです……体験収監です」 思わず小声になる。 いじめられるかもしれない。 いくらドMの私でも、陰湿ないじめを楽しむような性癖はない。 「隣座って良い?」 「え、はい、どうぞ……」 「めっちゃ可愛いね、何歳?」 肩に手を回されて、耳元で囁かれた。 怖くて、目を合わせられない。 「え……えっと、今年、20になりました」 「おー、じゃあ、一個下だ」 「あのう……ごはん、食べないと……」 顔を覗き込まれる。 黒髪が揺れて、彼女の瞳が近づいてくる。 瞳に反射した自分の顔が大きくなって、息が出来なくなった。 「むお……」 え? なにこれ? キスされていることに気づくのが遅れた。 肩を掴まれて、引きはがせない。 ツナギの隙間から、胸を掴まれる。 ウソでしょ? どういうこと? 彼女の顔が離れていく。 「いいね、変態っぽい味」 固まっている私の耳元で彼女が囁いた。 「え……え……?」 我に返る。 音が戻ってきた。 クスクスと笑われている気がする。 周りを見ると、こちらを見てニヤニヤしている人たちが何人かいた。 見て見ぬ振りをしている人もいる。 どういうこと? キスされた? なんで? 「おいっ! 片野!」 食堂の入り口の方から叫び声が聞こえて、私の唇を奪った女の子が立ち上がった。 走り寄ってきたのは北見さんだった。 「はいはい、すいませんでした。でも、こんなかわいい子をさ、一人で食堂に送り込むほうが悪くない?」 「黙れ。こっちにこい。もう食事は抜きだ。」 「ダイエット中だし、全然いいけど」 「ふざけるな、何度言ったら分かるんだ? 今回の懲罰は厳しくなるぞ」 北見さんの声は低かった。 さっき案内してくれた時とは別人のような形相で、片野と呼ばれた女の子の腕を掴んでどこかへと連れて行った。 すぐに別の看守が駆け寄ってきて、私は食堂から連れ出され、部屋へと戻された。 待機するように言われたので、ベッドに座って待っていると、ノックが聞こえてドアから北見さんが食事を持って現れた。 「ごめんなさい。こちらの管理不足です」 北見さんが頭を下げる 「あ、いえ……」 「その……なんかされた?」 「き、キスされただけです」 北見さんが頭を抱えた。 「ごめんなさい」 「いやっ! 全然、大丈夫です。別に減るもんじゃないので」 申し訳なさそうに頭を下げる北見さんが見ていられなくなったので、強がりを口にした。 本当はめちゃくちゃ怖かったけど。 まあ、減るもんじゃないのは確かだし。 「中止にもできるけど……」 「いやいや、本当にそんなに気にしてないので。続けさせてください」 北見さんは神妙な表情で頷いた。 「あいつは……本当に反省しないな……さっきの子、しばらく懲罰行きだから、安心して」 「片野って人、もしかして常習犯ですか?」 「そう、渋谷で女性が女性にレイプされた事件、知ってるよね」 「あ、ああ……ありましたね」 「片野雪って、実名報道されてたでしょ。あの子だよ」 「はぁ……なんか、イメージと違いましたね。もっと、なんか、怖い感じの人だと思ってました」 「うん、見た目はね、ただの女の子なんだけど……そうだ、赤色のツナギの子には注意して」 「あ、もしかして、赤色のツナギって……性犯罪者ですか?」 「ううん、赤色は要注意受刑者。監督官が常に監視してなきゃいけないんだけど、さっきは監督官の目を盗んで勝手に抜け出してたみたい」 「なるほど……」 「ああ、ごめんね。ご飯、冷めちゃうとアレだから、どうぞ召し上がって」 「はい。いただきます」 その後は、普通に刑務作業の体験が始まった。作業はミシンでの簡単な裁縫作業だった。さっきの事件があったからか、北見さんが付きっ切りで教えてくれたので、困ることもなく作業をすることができた。 休憩中、北見さんが言っていた『懲罰行き』という言葉を思い出していた。懲罰って、どんなことをするんだろう。拘束されて、どこか暗い部屋とかに放置とかされるんだろうか。  いいなあ。 私も懲罰されたい。 他の受刑者の抑止のために見世物にされたりとか、そういう扱いを受けたい。 さっきのキスと、被虐の妄想が、私の身体を火照らせていた。 私って、本当に変態なんだな。 大学の友達とかも、私みたいに性癖隠してたりするのかな。 特に何事もなく刑務作業が終わり、自室へと戻された。 時刻はちょうど午後6時を過ぎたところ。 消灯は10時で、起床は5時。 スマホの所持は許可されていないので、退屈だった。 申請すれば本の貸し出しなどは可能だと言われたが、本を読む気分にもなれない。 今の私は囚人なのだ。 狭い部屋に閉じ込められた、一匹のメスマゾ。 私は熱くなったら身体を布団に潜り込ませて、ひたすら自分を慰めた。 *** 翌日。 特に心躍るようなイベントはなく、点呼、食事、刑務作業、食事、刑務作業をこなして、体験収監が終了した。 昨日よりも早めに刑務作業が終了したのは、この後に見学時間を設けているからだと、北見さんから説明があった。 「昨日は怖い思いをさせてしまったけど……どうだった? 勉強にはなった?」 「はい、とても勉強になりました」 北見さんは、微笑んで頷いた。 「じゃあ、軽く所内を案内するから」 「お願いします」 どうやら地下にも独房フロアがあるようで、犯した罪によっては、地下の方に入れられるらしい。 「地下の独居房は、今回あなたが使っていた部屋よりも小さいんだよ」 「え、あれよりですか?」 「そう、より重い罪を犯すと、刑務所内での生活もより苦しくなるってこと」 「あぁ……」 「昨日の子。片野雪は、性犯罪者だから、普段拘束衣を着せられて、部屋で待機。食事やたまにある刑務作業の時だけ、監視付き」 「え、拘束衣!?」 「そう。まあ、部屋にいる時は反省の時間だね。何もできないから、苦しいと思うけど、それだけのことをあなたはしたんですよ、ってこと」 「苦しい……ですかね」 苦しいわけない。 絶対、気持ちいいじゃんそんなの。 「動けないって、かなりしんどいと思うよ。で、その片野雪は今、懲罰房にいるから、そっちもちょっとだけ見学しようか」 「ぜひ、お願いします」 やった、懲罰房だ。 魅惑の部屋を見学できる。 この見学のために私は体験収監をされているまである。 エレベーターで更に下のフロアに下りると、薄暗い通路に出た。 照明の明るさが、一段階下がった感じだ。 「ここは懲罰房専用フロアですか?」 「違うよ。独居房もあるけど、部屋っていうか……拘束箱、みたいな」 「拘束箱……」 「こっちの人たちはもうね、刑務作業もしないから。ずっと拘束されたままなんだ」 「えぇ……ずっとですか」 「うん、殺人犯とかだから。ちょっと怖いかな。大丈夫、付いておいで」 正直、興奮してる。 ずっと拘束されたままって、どんな感じなんだろう。 「あの、空き部屋とか見れたりしませんか?」 思い切って聞いてみる。 「え? ああ……」 「ダメなら大丈夫です!」 「いや、わかった。見せてあげる」 「え、本当ですか!」 「うん、珍しい申し出だしね。みんな、怖がって帰りたがるぐらいだから」 「勿体ないですね」 「ふふ、そうだね。勿体ないかも」 上のフロアと同じように、通路の左右に部屋が並んでいるようだった。 歩くごとに、扉に書かれている数字が増えていく。 ふと、北見さんが立ち止まった。視線の先のドアを見て、何かを考えているようだった。 「ここの人を見てみようか」 「え、人がいる部屋で大丈夫ですか?」 「大丈夫、関係ないから。見てみれば分かる」 北見さんが鍵束を取り出して、ドアを開ける。 部屋の中は暗くて何も見えない。中から何か音や声が聞こえることもなかった。 懐中電灯を手にした北見さんに後ろについて、私はその部屋に足を踏み入れた。 「ごめんね、このフロアの部屋には電気がないの」 「はい……」 人を入れる部屋なのに電気がない、というのがピンと来なかったが、質問はしないことにする。 「これ、見える?」 北見さんの持つ灯りが照らしている先を見ると、G109と書かれた鉄製の物体が見えた。取っ手のようなものがついている。 「ドアですか? あ、箱……?」 思ったことを口にしてみる。 「まあ、箱みたいなものだね。これが独房だよ」 「え? これ……?」 「そう。この箱の中に囚人が入ってる。人ひとりを寝かせて入れるだけのスペースに、身動きが取れないようにして、入れるんだよ」 「うそ……」 「暗闇の中、何も聞こえない、何も感じない状態で、刑期の終了まで待ち続ける人たちが、この箱の中にいる」 北見さんが灯りを広げて、上の方までみせてくれた。 アルファベットと番号が書かれた箱が積み上げられており、4×4の16個の鉄の棺桶たちがこの部屋に置かれているのが確認できた。 心臓が高鳴る。 ああ、こんなに進んでたんだ。 私のようなねじ曲がった人間を悦ばせるような刑務所が、ここにあった。 「後悔した? 見ないほうがよかったでしょ」 「いえ……」 「ここにいる人たちは、終身刑や死刑判決を待つ囚人たちだから。こういう扱いを受けてもおかしくない罪を犯した人たちなんだ」 「こんなこと、してもらえるんですね……」 「ん? もっとひどい目にあうべきだと思う?」 「いえ……まあ、そう……ですね」 「そっか。まあ、そういう考えの人もいるかもね。でも、私は十分な罰だと思うよ」 「その、どんな拘束をされているのですか?」 「ゴム製の……ええと……名前忘れちゃったけど、あの真空パックみたいにするやつ」 「バキュームベッド」 「それだ。それに入れられて。その上から鉄の輪っかで更に固定する感じ。解放しない前提だから。溶接もしちゃうんだよ」 「はあぁぁ」 思わず座り込む。 天国じゃん、パラダイスじゃん。 お願いだから私も固定してよ。一生、監禁して欲しい。 「ちょっと、大丈夫?」 「大丈夫です……」 「もう出よっか。長居するところじゃないからね」 *** 「そして、ここが懲罰室」 「ここが……」 通路の奥に、先ほどと同じようなドアがあった。異なるのは、書かれているのがアルファベットと数字ではなく、懲罰室と書かれていることだった。 「こっちは片野が使用中だから。あっちを見てみようか」 「あ、はい」 北見さんが懲罰室Bと書かれたドアを開けると、異様に狭い空間がそこにあった。例のごとく電気はないようだ。壁や床から鎖が伸びていて先には鉄の枷が付いていた。 動悸が激しくなる。 枷とか、拘束具や拷問具を見ると興奮してしまう病気を患っている私にとって、この部屋は刺激が強すぎる。 「何か問題を起こした囚人は、ここに大の字で拘束される。で、そこの真ん中の床からは、囚人の肛門を拘束するためのポールが伸びるようになってるんだよ」 「えっ、肛門ですか!?」 「そう。懲罰だからね。辛くないといけない。で、懲罰拘束中の囚人はこの真っ暗の部屋の中で、鞭で叩かれたり、水責めされたり、電気を流されたり、時には快楽責めにされたりするわけ。自動でね、そういうシステムがこの部屋に備わってるの」 「ぁ……」 体験したい。 という言葉が喉から出かける。 「かなりキツいみたいでね。一度、懲罰室に入った囚人はみんな大人しくなる。片野雪はもう3回目だけど」 「好きなんですかね」 「懲罰が? まさか。遊びでやるSMプレイなんかとは全然違うよ。苦痛を与えるための装置だからね」 「ですよね……」 「さ、もう上に戻ろうか。体調、悪くなってきたんじゃない?」 確かに、興奮でおかしくなりそうではある。 こんな楽園が存在したことが知れただけでも、収穫だった。 でも、欲を言えば体験がしたい。 「あのう……」 「うん?」 「こっちの囚人の体験はできませんか?」 「え? 終身刑とかの?」 「はい。あ、研究のために」 北見さんは顎に手を当てて考え込み始めた。 ダメで元々。期待はしていない。でも、聞かなければ後悔すると思った。 「こっちのフロアは無理だと思うなあ」 「ああ……」 「ひとつ上の、拘束衣の体験だったら、もしかしたらいけるかも」 「本当ですか!?」 「うん……あ、でも期待しないでね。要望があったとだけ、伝えておいてあげる」 「すみません。よろしくお願いします」 *** この日、私の心は奪われた。刑務所の地下に置いて来てしまったようだった。 体験が終了して家に帰るまでの道中、ずっと囚人になる妄想していた。 電車の中で濡れた股間や大きくなった乳首を触ってしまいそうになって、我に返るのを繰り返していた。 犯罪が減らないのは、あんな魅力的な罰を設けているからじゃないの?  なんて、私ほどのマゾが珍しいだけだよね。 分かってる。 でも、流石に殺人とか、そういう他人に迷惑がかかるのは無理。 もっと、簡単にあの刑務所に入る方法はないのかな……。 スマホに「刑務所 入る方法」と入力する。大したことは書かれていない。基本的には犯罪を犯すしかないようだ。 恋に苦戦する女子のようなため息をつきながら、帰路を過ごす。 自宅にたどりつくと、すぐに自縛オナニーを開始した。 麻縄を手に取るだけで、股間が濡れ始める。 片野雪、だっけ。 いいなあ。 暗い部屋の中で、拷問みたいなことされて過ごしてるんだろうな。 犯罪を犯した彼女がご褒美を貰えて、普通に生きてる私に与えられるのがこんなささやかな自縛だけだなんて、あんまりじゃない? あの時のキスで、入れ替わってたら良かったのに。 *** 体験した日から2週間後。 北見さんからメールがあった。 『拘束囚人の体験について特別に承認がおりました。希望するなら返信をください』といった内容のメールだった。 私はすぐに返信をして、午後の講義の出席を諦めてあの刑務所へと向かった。 受付に用件を伝えてエントランスで待っていると、北見さんがやってきた。 「田宮さん、今日から体験は出来ないよ。準備があるから」 「あぁ、ですよね……すみません。なんか、急がないとって思って」 「特別な体験だから、急がなくても大丈夫。定員とか無いから」 「はい。その、よく許可が下りましたね。実はあまり期待してなかったんですけど」 「何事も言ってみるもんだってことだね」 「勇気を出してよかったです」 「うん。内容の説明をするから、応接室に行こっか」 「お願いします」 「付いて来て」 エントランスの入退場ゲートを抜けた先、前に着替えに使った部屋の向かい側に応接室はあった。 「この契約書に目を通しながら聞いてね」 「契約……」 「拘束衣を着るレベルの囚人体験をしてもらうのは初めてだから、よく読んで、わからないところとか懸念とかあったら言って」 「わかりました」 「拘束囚人。私たちはAクラス囚人って呼ぶんだけど……基本的には何もしない。というか、させてもらえない。部屋で静かにしてる時間がほとんどだから、正直、あんまり面白くないと思う」 「どれくらいの拘束なんですか?」 「上半身は拘束衣。下半身は枷で繋がれる。口枷もつけてもらう感じだね」 「うわぁ……」 「あ、今からでも辞められるから。そこは心配しないで、いつでも言って」 「絶対やります」 「あ、そう……? 熱心だね」 「食事の時は外してもらえるんですよね?」 「そうだね。みんなと同じように食堂で食べられるよ。監視付きだけどね」 「部屋で食べさせないのには理由があるんですか?」 「更生の機会を与えてるらしいよ。食堂での立ち振る舞いとか、拘束を外された時の態度とかが良好であれば、運動とかに参加させてもらえるようになるの」 「なるほど」 「田宮さんの体験の時も、ご飯の時間になったら食堂に行ってもらうよ。それ以外はずっと拘束されてままだから、体験は1日だけ」 「あれ、それだけですか?」 「ただじっとしてるだけだから。ほかに体験させることないんだよね」 「あのぅ、懲罰の体験とか……」 「懲罰室? あんなの体験させられないよ。こっちが罪に問われちゃう」 「我慢しますので、どうか」 「……田宮さん、そういう人?」 「う……いや……」 「いや、いいんだよ。結構いるから」 「そうなんですか?」 「いるね。でも、田宮さんぐらいぐいぐい来る人は初めてかな」 「うあ……すみません」 「責めてないよ。こっちも貴重なサンプルになるからって、許可が出たぐらいだから。でも、流石に懲罰室は無理かなぁ」 「そうですよね……諦めます」 「一応、聞いてくる?」 「本当ですか!?」 「無理だって言われると思うから、期待しないで待ってて」 *** 「北見さん、遅いな……」 北見さんが部屋を出て行ってから、既に30分が経過していた。 もしかして、自分のせいで何か揉めているのではないかと心配になってきたところで、ノックが聞こえたので返事をする。 部屋に入ってきたのは北見さんではなく、スーツを着た男だった。 「田宮渚さんですね?」 「は、はい」 「警視庁、捜査共助課の恒元と申します」 警察手帳を見せられる。 恒元徹。名前の上にプロファイラーと書かれていた。 え、なんで? 私、まだ何もやってないのに捕まるの? 「安心してください。ただ、お話を聞きに来ただけですから」 「はい……」 「田宮さんは、拘束囚の体験収監を希望されていますね?」 「し、希望してます」 「そのうえで、懲罰体験の希望も?」 「はい、しました……」 「なるほど。次の質問です、先日、地下フロアの独房の見学をしましたよね?」 「しました」 「懲罰室の説明も受けた?」 「受けました」 「その上で、体験を希望すると?」 「え、はい……体験はぜひしてみたいな、と思ってます」 「わかりました。体験を許可します」 「ええ!?」 「その代わり、後日送る書類をよく読んで、内容に同意できる場合のみ体験の許可を出します、いいですね?」 「わかりました! ありがとうございます!」 「お話は以上です。では、今日の所はお帰りください」 スーツの男が立ち上がって、ドアに向かって腕を広げた。 懲罰室の体験ともなると、警視庁の人間が対応するようになるのだろうか。 北見さんからは何の説明も無かったので、少し驚いた。 ともあれ、懲罰室に入ることができるのが何よりうれしかった。 後日書類を送ると言っていたが、いつになるのだろうか。 できるだけ早めが良い。私の身体の火照りが、限界に達する前に、懲罰室に閉じ込めて欲しい。 刑務所から出て、門の方へと歩いていると、後ろから声が聞こえた。 振り向くと北見さんが走ってこちらに向かってきていた。 「田宮さーん!! ちょっと待って」 「あ、北見さん、本当にありがとうございます。おかげさまで……」 「待って。誰に、なんて言われたの?」 「え? 許可するって。警視庁の人が来て、そう言ってくれましたよ」 「懲罰室の体験を?」 「はい」 「う~ん……」 「北見さん?」 「いや……変な話になったね」 「北見さんが交渉してくれたんじゃないんですか?」 「交渉しようと思って話を持っていったら、『後は警視庁が預かる』とか言われてそれっきりだったんだよ」 「そうだったんですか……でも、せっかく体験できるなら、してみようと思います」 「はっきり言って、やめておいた方がいいと思う」 「どうしてですか?」 「話が早すぎる。まるで、もともとそういうフローがあったみたいな……とにかく、違和感を感じる」 「管轄が違うっていうだけかと思ってました」 「だとしても、私たちに一切説明がないのは変でしょう。もともとはBクラス囚人の体験だけだったのに、急に懲罰の体験まで許可されるなんて……」 「ありがとうございます。心配してくれてるんですね。でも警視庁の人なら信用できますから」 「信用ねぇ……私たちからしたら、隠し事が大好きな怪しいお役人なんだけど」 「大丈夫です。後日、誓約書かなんかが送られてくるみたいなので、しっかり読んでハンコ押しますから」 「……何かあったら相談してね。メールでいいから」 「わかりました」 懲罰室って、そんなに危ないのかな? 別にただ体験するだけなら何の心配もないよね。 いや、もう決めてる。 絶対に体験する。 きっと、真っ当に生きてる北見さんにはマゾの気持ちがわからないんだ。 マゾが『懲罰室』だなんて甘美な響きに逆らえるわけないんだから。 辛ければ辛いほどいい。 楽しみだなぁ……。 *** それから一か月。 何の音沙汰もない日々を、私は悶々とした気持ちで過ごしていた。 一度、北見さんにメールを送った。 『私にはわからない。進捗は降りてこない』といった内容の返信があった。 やはり、中止になったのだろうか。 冷静に考えてみれば、例外的に体験させてもらえるなんておかしな話だ。 こうなるなら、拘束囚人の体験だけで満足しておけばよかった。 懲罰室に入れられたいなんて、浅はかな変態願望を口にしたからだ。 もうこうなったら適当な犯罪にでも手を出してみようか。 なんてね。 馬鹿なことを考えるのはやめて、もうちょっと待ってみよう。 私を閉じ込めてくれる檻を用意してくれてるのかもしれないしね。 *** 更に一か月後。 警視庁から、書留の封筒が届いた。最初は驚いたが、すぐに刑務所体験のことだと気付いた。 急いで封を切り、中を確認すると、製本された同意書が入っていた。そこそこの厚みがあり、ざっと10ページ以上あるようだった。 細かい字がびっしりと書き連なっており、読みだすのも躊躇するほどだったが、流し読みでなんとか内容を頭をに入れた。 体験内容に関する同意と免責事項がほとんどだったが、気になった箇所を挙げるなら、『一時的に一部人権を放棄することに同意する』という一文だった。 少し調べてみると、Aクラス以上の囚人は一部人権を放棄させられているようで、そのおかげで厳しい拘束や懲罰をすることが可能になっているらしいことが分かった。 つまり、本物のAクラス囚人と同じように一部人権の凍結を承諾しなければ、体験は不可能だということだろう。 人権凍結とか、いくらでもしてくださいって感じだし。 ぜんぜん気にする必要ないよね。 私は朱肉と実印をタンスから取り出して、既定の場所に押印した。 今の私は、ご主人様と奴隷契約を結ぶ雌豚のような表情をしていることだろう。 ハンコを押す、という行為だけでこんなにも性感を感じることができるなんて、やっぱりマゾって最高だと思う。 *** 体験当日。 刑務所につくと、警視庁の人が門で待っていた。 確か、恒元さんだ。 「田宮さん、こちらへ」 恒元さんに促されるまま、門から建物の裏へと回った。 「裏にも出入口があるんですね」 「ええ。こちらはAランク以上の犯罪者を収容する際に使うところです。マスコミ避けもかねて、普段は隠されています」 「へぇ~……」 裏口からエレベーターに乗る。 あの日にも見た、薄暗い通路が私を向か入れてくれた。 「このフロアには更衣室が無いので、そちらのトイレでこの服に着替えてきてください」 「わかりました」 渡されたのは赤色のツナギだった。 確か赤色は、問題の囚人に着せる色だった気がする。 この色なのは、懲罰体験をするからだろうけれど、着ただけ悪い人間になってしまった気がした。 「着替えました」 「はい、では。こちらで待っていてください」 「わかりました」 去っていく恒元の背中を見送ると、途端に心細くなった。 北見さんが恋しくなる。今日は会えないのだろうか。 数分ほど大人しく待っていると、看守がこちらに近づいてくるのが見えた。 北見さんではない、別の女性看守たちだった。 「田宮渚、手を腰の横に置いて、動かないように」 「え?」 「あなたは懲罰対象です。拘束します」 「いやあの……あがっ!」 「足と腕を拘束しなさい」 強引に口枷を咬ませられ、みるみるうちに両腕と両足に枷を付けられた。 首輪をつけられて、伸びている鎖と手枷を繋げられた。 ウソでしょ? いきなり? こんな本格的なの? 「抵抗しないように」 この看守のリーダーみたいな人、すっごいドSっぽいなあ。 変なスイッチ入っちゃうじゃん。 抵抗したら、もっとひどいことしてくれるのかな。 本気で怒られたら怖いからやらないけど。 「連行します」 看守に背中を押されて歩き出す。 足枷どうしが繋がれていて、普段と同じスピードでは歩けない。 「ふぅっ……ぐぅ……」 「早く歩きなさい」 「むぅ……」 すごい。 これでも精一杯歩いてるのに。 その調子でもっと罵って欲しいな。 見学の時に見た懲罰室Bに辿り着いた。 Aは誰かが使用中のようだ。 「脱がします」 「ふっ!?」 あまり気にしていなかったが、この赤色のツナギは拘束された状態からでも脱げるようになっているようだった。 あっという間に身ぐるみをはがされてしまう。 やばいやばいやばい。 濡れてるのバレるじゃん。 「……ふん」 絶対見られた。 鼻で笑われた。 「ごへぇんああい……」 「喋るな」 謝っただけなのにぃ……。 もうイキそうなんだから、そんな興奮させるような態度で接しないでよ。 「懲罰拘束を始めます」 重たそうな扉が開かれて、真っ暗な部屋の中に押し込まれる。 中は異様な匂いが漂っていて、思わず顔を顰めた。 まずは足を開いた状態で床の金具に繋がれる。次に左右の壁に付いている金具に、両腕が拘束された。私は大の字になって、淫汁が零れ落ち続けていた股間をさらけ出すしかない状態に固定された。 看守の手によって、床や壁から伸びている鎖の長さが調整されると、更に動けなくなった。 「次、肛門拘束」 来たっ! 本当にするんだ。 いいのかな。 懲罰とか言ってるくせに、私にはただのご褒美だけど? 看守が何やらリモコンを操作し始める。 すると、床から凶悪な形をしたディルドが私の肛門めがけて伸びてくる。 「むうっ!?」 いや、流石にデカすぎない? ちょっと怖いんだけど、大丈夫かな。 「う……ぁ!」 思ったよりも奥まで入ってきた。 かなりキツい……けど、今はもう何でも気持ちよく感じる。 最高。 「肛門拘束完了。次、口枷」 付けていた口枷が外されてすぐに、新たな口枷が口に詰め込まれた。 男性器を模したような形状で、尿道のような穴があいているタイプだった。 更に上から、鼻までを覆う黒いマスクを取り付けられる。 黒マスクには呼吸制御機能がついているようで、一気に息苦しくなった。 「う……」 「呼吸制御のレベルはどうしますか?」 「最大レベルにしておきなさい。これは懲罰です」 「はい」 「む……!?」 窒息寸前まで追い込まれて、やっと酸素がわずかに供給される。 ウソでしょ?  これもう拷問じゃん。 体験しに来ただけの女の子に、最大レベルの呼吸制御させるの? なんで? なんで、そんな幸せを与えてくれるの? 「あとは……膣内の器具の挿入もやっておきましょうか」 「ぅ……」 床から新たなポールが伸びて来て、先っぽに取り付けられた極太のバイブが私の膣内を貫いた。 「むぐううううう!」 「静かにしなさい」 「むぁ……」 「以上、拘束完了です。排泄や食事の心配ありません。懲罰期間は未定です、あなたが反省するまでそこにいてもらいます。では、懲罰開始」 簡素な言葉の後、なんの余韻もなく、重たい音を立てて扉が閉められた。 真っ暗になる。 目が暗闇に慣れてくる前に、膣内と肛門内の淫具が動き出した。 「うがぁぁ……!!」 イク。 やばい、死ぬかも。 イキ死ぬ。 人生で一番気持ちいいやつだ、これは。 「ふうううううううううううううううぅっっ!」 白目を剥く。 身体はわずかに揺れただけ。 身体に力が入らないが、倒れることもできない。 暗い狭い、助けを呼んでも誰にも聞こえない部屋。 私はただひとりでイキ続ける。 「むがああああっ!」 意識が遠くなる。 酸素が無いのが気持ちいい。 動けないのが気持ちいい。 膣とアナルを掻き回されるのが気持ちいい。 最高だ。 もうずっと、このままでいさせて欲しい。 *** またイク。 辛い、苦しい、イク。 その後、様々な責めが行われた。 鞭を打たれて、マスクを外された後に水責め、それが終わったと思ったら、今度は部屋の温度を上げられての灼熱責め。おまけに電流まで流された。 それの繰り返し。 私の身体は傷つけられるたびに絶頂し、性感を感じる度に絶頂し、苦しむたびに絶頂した。 イキ死ぬんじゃないかと思うような深い絶頂を何度も経験した。 どれくらいの時間を責めら続けているのか、もはやわからなかった。 *** 「恒元さん。田宮渚の懲罰室への拘束が完了しました」 「お疲れ様」 「こちらが田宮渚のレポートです」 「脳波データは?」 「今渡した資料に入ってます」 「そうか、ありがとう」 「彼女は明確な要収容者です」 「わかってる。一応、目を通させてくれ」 「……あのレベルになると、収容してあげるのがむしろ救いでしょう。不純な目的で犯罪を犯されても困りますから」 「まあ……そうだな」 「命令をお願いします」 「……現在、懲罰室体験中の田宮渚を、潜在的凶悪犯罪者と認定。ただいまよりS級囚人へ格上げを行う。懲罰室の使用は無期限、その後は、S級拘束処置を用いて、所定の収容箱へ封入しておくように」 「承知しました」 「ああ、あと、北見刑務官を呼んでくれ」 「はい?」 「話がある」 *** 「北見刑務官、すまないな。急に呼び出して」 「警視庁の恒元課長ですよね。挨拶が遅れて申し訳ありません」 「挨拶などはいいんだ。我々で預かっていた田宮渚についてだが、彼女は懲罰体験には来ないことになった」 「え? 本当ですか?」 「ああ、内容が内容だからな。気軽に体験するようなものではないと、考え直したのだろう」 「そうですか……あんなに興味を持っていたのに」 「それと、今後、拘束囚人体験がしたいなどといった体験者が来た場合は、すぐに我々に知らせるように」 「なぜです?」 「必要なことだからだ」 「……承知しました」 「以上だ、仕事の邪魔をしてすまなかったね」 「いえ……では、失礼します」 北見は違和感を感じながら、恒元のいる応接室を後にした。 すぐに田宮渚宛にメールを送ってみたが、返信が来ることはなかった。 それから間もなくして、地下の特定フロアへの立ち入りは、刑務官であっても禁止になった。S級以上の囚人の収容室、および懲罰室の管理は、警視庁の管轄になったからだった。 北見は連絡の取れなくなった田宮の行方について調べることにしたのだが、どの調査も徒労に終わり、田宮渚が懲罰体験を希望していた事実すらなかったことにされていた。 *** **** ***** ****** ******* 「S2032の収容室の鍵、ある?」 「え? ああ~……ちょっと待っていてください」 北見は手渡された鍵を見つめている。 「北見副所長、それ、15年前に満員になった旧収容室の鍵ですよ?」 「ええ、分かってる」 「ほこりとか、すごいと思うのでマスクをしていくのをおすすめします」 「ありがとう」 北見はエレベータに乗り込み、B3階のボタンを押した後、右手に持っていた古いレポートを眺め始めた。 「田宮渚……懲罰体験に申し出たため調査開始。結果、潜在的凶悪犯罪者に指定。すべての人権剥奪後、特級拘束B2032室にて、収容完了」 ため息をつく北見。エレベーターを降りて、薄暗い廊下を歩く。 廊下の両壁には、アルファベットと4桁の数字が書かれた鉄の扉が並んでいる。 その中から『S2032』を見つけて、鍵を開けた。 「ここかな?」 北見は暗い収容室の中で、積み上げられた鉄の箱たちをみつめている。 「G124……この箱か」 固く閉ざされたこの棺桶の中に田宮渚はいる。 「だからやめとけって言ったのに……」 北見は重厚な棺桶のドアさすりながらつぶやいた。 「副所長になった今なら、あなたを助け出すことができるかもしれないけど。きっとそれは望んでないんだろうね……」 北見は思いを馳せる。 田宮渚が破滅的なマゾヒストなのは分かっていた。そのために体験に来ているのも分かっていた。だから、懲罰体験を志望した時も、それほど本気で止めるようなことをしなかった。 その結果、田宮渚は潜在的S級犯罪者とみなされ、永久に拘束されてしまった。北見はこの15年間、罪悪感と共に生きてきた。 「今日、ここに来てよかったよ」 北見は、触れている鉄のドアからわずかな振動を感じ取っている。 「きっと、気持ちいいんだよね」 数年前に絶頂電力が開発されて以来、S級囚人たちはこの箱の中で絶頂電池に変えられた。田宮渚を含む、S級囚人として永久拘束になった犯罪者は、世のエネルギーのために絶頂させ続けられているのだ。 「田宮さん、せめてもの償いとして、絶頂レベルを上げといてあげるよ」 北見は『G124』と書かれたプレートの裏にある、タッチ式のコントロールパネルを操作する。絶頂レベル、懲罰レベルを最大にして、プレートをかけ直した。 鉄から伝わる振動が強くなり、中からかすかに呻き声が聞こえたような気がした。 「さようなら、田宮さん。もう来ないからね。あとは……どうぞ楽しんで」

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こう言う自分から苦痛に走るシチュエーション最高!次回作もあるなら楽しみにしてます

あああ


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