XaiJu
クチバシ
クチバシ

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重罪人の身代わりとして永久終身絶頂刑に堕とされた潜入捜査官の末路

小さく、短く呼吸する。 息遣いが大きくならないように。 「状況報告。作戦は順調。犯人は私に取り付けられたGPSを追っているはずよ」 私は耳元に手を当てて囁く。 「了解した。位置はこちらでも確認済だ。あとは任せておけ」 無線先のからの言葉に、安堵した。 1年かけたこの潜入任務が、今終わる。 私は、新宿のとある街角にアジトを構える凶悪犯罪者集団に対する最終兵器だった。 リーダーに取り入り、潜入、長い時間をかけて信頼と情報を得て、逮捕の隙を伺う。 私にとっては、いつもとそう変わらない任務だが、今回の件は何かが違った。違和感の正体は判らないが、捜査が難航し過ぎていた。早い段階で情報は十分に本部に送っていたはずだ。私が潜入する期間も、1年も要らなかったはずだ。ここまで逮捕にてまねいていた理由が分からない。 ただ、それも今日で終わり。 リーダーの李に、自分の身体を差し出すのも、もううんざりだ。 「お疲れ様だったな、エージェント・レイア」 無線先からのねぎらいの言葉に、返事はしない。私にとってはその次の言葉の方が重要だからだ。 「李を逮捕した。任務完了だ」 大きなため息が出た。口元が自然に緩む。 良かった。本当に。 今回の潜入は骨が折れることばかりだった。あの時間が無駄にならなくて済んだのが、本当にうれしかった。 「帰還するわ。お迎えは?」 「ああ、ヘリを向かわせる」 *** 日本の本島から少し離れた場所、太平洋に浮かぶ小さな島に、私たちの本部がある。 ヘリから降りた私を、局長が出迎えてくれた。 所長に合うのも1年ぶりだった。高そうなベージュのスーツを着ている彼の顔に刻まれた皺は、これまでの人生が笑顔にあふれたものではないことを示しているように見えた。 こんな仕事をしているのだから無理もないことだが、彼の年代の人間としては珍しく、所帯を持っていない。 「おかえり、レイア」 「ええ」 「今回は少し長かったな」 「キャリアの中で、1番長い潜入捜査だったわ」 「疲れただろう」 「本当に。私、シャワーを浴びたいの、報告はその後でもいいかしら」 「もちろん構わんよ」 ヘリポートに立っていた所長の隣を通り抜けて、エレベーターに乗り、自分の部屋へと向かう。途中すれ違った同僚との世間話も手短に済ませ、なつかしさのある無機質な通路をひた歩く。 私はこの1年間で、随分と汚れてしまった。 シャワーで洗い流すことなど、到底できないぐらいに汚れた。 いや、汚されたのだ。 任務とはいえ、李の特殊な性癖に付き合うのは、私にとって容易ではなかった。 縛られ、殴られ、罵られ、嬲られた。 一味にいたほとんどの男の男根を咥えこんだ。 SMプレイなんてものが生ぬるく聞こえるぐらいの調教を施された。 彼らはみな、私のことを真性のマゾヒストだと思い込んでいた。 私はベッドの上で、李たちが喜ぶ言葉を覚え、ささやき、喘いだ。 それが、この1年間の主な任務だった。 熱いシャワーを浴びながら、自分の身体を見回す。 うっすらと、縄の跡が残っていた。 「よく頑張ったね」と、身体に刻まれたマゾヒストの証を右手で優しく撫でながら、つぶやいた。 股間が濡れていることに気づかないふりをして、しばらくの間、お湯を浴び続けた。 *** 「以上、報告を終了します」 パーティでもするのかと思うほど広い空間に、半月型の巨大なテーブルと6つの椅子が置かれているだけの部屋の中央で、私はこれまでの1年間で起こったこと、知り得たことを話した。 高そうな椅子の背もたれに身を預けていた6人の男たちは、聞いているのか聞いていないのか分からないような相槌を打っていた。 「ご苦労だったな、今日はゆっくり休みたまえ」 あくびをされるほどに長くなった私の報告とは真逆で、所長の返しの言葉は短かった。 もちろん、性的な暴力を振るわれ続けたことも報告したが、特になんの言及もなかった。これについてはあらかじめ計画のうちに含まれていたので、なんらおかしいことはない。 これが、私の仕事だ。 必要であれば、身体も使う。 私は足早に自室に戻ると、ベッドに身を投げた。 しばらくの間は、休みになるはずだ。 明日は本島にある自分のマンションに帰ろう。街に出て、ショッピングをするのもいいかもしれない。映画でも見て、昼間から酒でも飲もうか。 そんなことを考えているうちに、眠気がやってきた。 久しぶりの、穏やかな睡眠である。 つい先日までは、膣内とアナルにバイブを入れられながら眠りについていたので、こうしてベッドに横たわっているだけで気持ちいい。 ただただ早く、普通の生活に戻りたい。 どれだけの時間を使ったら、この1年を忘れられるのだろうか……。 *** 目が覚めると、時刻は午前10時を回っていた。眠りについたのが、たしか午後10時頃だったので、約12時間の睡眠を取ったことになる。 連絡用の端末にメッセージが届いた音で起床したので、それがなければもっと眠っていたかもしれない。 送信主は所長だった。 急ぎヘリポートに来るように、と書いてあったのを見て舌打ちする。 シャワーを浴びる暇もないだろう。 また新たな任務だろうか? 今日ぐらいはゆっくりさせてほしかったが、仕方がない。 ボディ用のウェットシートで軽く身体を拭いた後、制服に着替えて自室を後にした。 *** 「急にすまないね」所長が申し訳なさそうな顔を向けてくる。 「任務?」 「いや、まあ、任務といえば任務だが……」 「内容を教えて」 「李の収監を見届けて来て欲しい」 「は……?」 「君が捕らえた李だよ。李は終身刑になるのだが、念のため、立ち合いをお願いしたいと要請があったのだ」 「何のために立ち会いが必要なのか分からないけど?」 「大物中の大物だ。有事に備えて、腕の立つ人間を傍に置いておきたいのだろう」 私は判りやすく顔をしかめてみせた。 それは私でなければならないのか、と言いたくなったが、不満気な私の顔を見て察した所長がその疑問に答えてくれた。 「すまないが、彼らからのご指名なんだ。李についてよく知っている君がいい、とね」 「あいつの顔は、もう見たくないのだけど」 「これが終わったら、長期の休暇を約束する」 そう言って深々とお辞儀をする所長の頭を見て、思わずため息が漏れる 「いいわ、行ってくる」 所長は顔を上げて、頷いた。 「李は今、新東京地下刑務所にいる。そこから、監獄島に移送される手筈になっている。監獄島への収監が確認できれば任務完了だ」 「一体何を恐れているのかしらね」 「残党による李奪還を目的とした襲撃が予想される」 「だから? それすらも退けられないほど無能なの? 我が国の警察様は」 「先ほども言ったように、念のためだ。彼らはただ、安心材料を増やしておきたいだけだろう。つまらない任務だが万が一も考えられる、用心してくれ」 「はいはい」 所長との会話を切り上げて、ヘリに乗り込む。 「ボーナス、よろしくね」 下らないジョークのつもりだったが、所長は神妙な顔をして頷いた。 「は、言ってみるものね」 勢いよくヘリのスライドドアを閉めると、プロペラの回転数が上がる。 また李の顔を拝まなければならないことを考えると、気が滅入る思いだった。 どうやらあいつを忘れることは、まだできないらしい。 *** 刑務所についてからは、とんとん拍子に事が進んだ。 私の受付と案内を担当してくれた警官は何も知らされていない様子だったので心配になったが、すぐに李が拘置されている場所に案内されたので杞憂だった。 李は白い革の袋のようなものに包まれていて、顔すら分からないほどに全身厳重に拘束されていた。 その白い革袋を輸送機に乗せ、私と、2人の武装兵が共に乗り込んだ。 監獄島までは40分ほどで到着し、道中、李の仲間に襲われるなどということもなかった。 監獄島は終身刑の重犯罪者のみが収監されるところで、罪人を厳重に閉じ込めておく施設だった。 監獄島の存在は一般には公開されておらず、警察関係者の中でもトップクラスの権限を持つ人間にしかその存在を知らされない。 終身刑になった重犯罪者は、人知れず、島流しにされるのだ。 監獄島は通常の刑務所のように罪人が生活するようには作られておらず、ここに送られた者は死ぬまで全身拘束されたまま生涯を終える。 李の入った革袋は、監獄島の職員によって運ばれていった。彼女はこれから、ここで物言わぬ肉の塊になり、全ての自由を奪われたまま死ぬまで過ごすことになる。 李はそれだけのことをしてきた大罪人だ。同情すべき余地はない。 特殊捜査官になってから、もう5年ほどになるが、監獄島の内部に足を踏み入れるのはこれが初めてだった。 獄吏とでもいうのだろうか。正装と作業着の中間のような奇妙な出で立ちの服装をした職員の後ろについて、明かりの少ない通路をしばらく歩いていると、大きなガラス窓のある通りに辿り着いた。 ガラス窓から外を見ると、通路の下に大部屋があり、部屋の至る所に四方がガラスで囲まれた箱型の物体が置かれているのが確認できた。 そのガラスケースの中には、ラバーで覆われた手足のないトルソ―のような形のオブジェが吊られている。 そのオブジェを見た瞬間、自分の股間が疼いたのが分かり、嫌な記憶がフラッシュバックして思わず座り込む。 あれはおそらく、終身刑になった重罪人の成れの果てだ。 動悸がする。 淫獄にいたころの自分と、あの真っ黒なオブジェが重なる。 きつく拘束されて、性感帯を責め抜かれる毎日を過ごしていた頃は、全身を締め付けるラバーの感触だけで絶頂できるようになっていた。 すっかり変えられてしまった自分の身体が忌まわしい。 「大丈夫ですか?」 前を歩いていた獄吏が、私の異変に気付いて近寄ってきたので、片手をあげて問題ないことを伝える。 かろうじて息を整えて、立ち上がる。 不思議そうな顔で私を見ている獄吏に対して頷いてみせると、彼は踵を返して歩き出した。 なるべく周りを見ないようにして歩こう。 ここにあるものは全て、私の奥底に刻みつけられた淫猥な記憶を呼び起こすトリガーになってしまう。 小さな会議室のような場所に案内され、しばらく座って待っていると、紺色のスーツを着た男が部屋に入ってきた。 「エージェント・レイアさんですね?」男は、私の顔と手に持っている書類を交互に確認している。 「ええ」 私の返事を聞いて、彼は微笑んだ。 「お待ちしておりました」 「歓迎は必要ないわ。護送任務はこれで終わりでいいかしら?」 私の態度に驚いたのか、男は目を丸くして、その後に張り付つけたような薄ら笑いを浮かべながら何度も首を縦に振っていた。 「ああ、でも、李の収監作業はご覧いただかないのですか?」 愚鈍な質問に答える気にもならなかった私は、男の顔を睨みつけた。 「すみません……」 「いいわ、李の収監を見届けるまでが任務だって言いたいんでしょう?」 「そういうわけでは……」 「さっさと案内して」 怯え切った男はお辞儀をして、部屋のドアの方を手のひらで示した。 「こちらです」 私は疲れていたし、苛立っていた。 普段ならこんなミスはしない。 部屋を出ようとした私の首元に、電撃が走る。 意識を手放す瞬間に見たのは、先ほどまで肩を丸めて恐縮していた男の不気味な笑顔だった。 *** 天井。 蛍光灯が古いのか、明るさが一定でなく、ノイズが走っている。 気付くと、拘束台の上に乗せられていた。 首、腰、腕、足、指までベルトで拘束されていて、全く動けない。 口には開口具が装着されていて、喋ることすら不可能だ。 「目が覚めました」 目だけで声の先を確認する。 先ほどの男がそこにいて、無線のようなもので話していた。 ほどなくして男は部屋から出ていき、入れ替わりで別の誰かが入ってきた。 「久しぶり、麗奈」 聞き覚えのある女の声だった。 白い拘束袋の中にいたはずの李が、私を見下ろしていた。 「む!? う!」 驚いて声を上げるが、言葉にはならない。 真っ白なチャイナドレス。長身で、真っ白な肌、切れ長だが、幼げのある瞳。流水のように整えられたショートカットヘア。忘れることはない、私のことを1年間、卑猥な檻に閉じ込めていた女だ。 「麗奈、本当はエージェント・レイアだったんだね」李が私の頬を撫でながら言う。「なんで裏切ったの? 嫌だった?」 李は悲しげな表情を浮かべていた。 どういうことだ? なぜ李が解放されている? 逮捕したのは李ではなかった? 監獄島が制圧されたのか? 色々な可能性が浮かび上がってくるが、どれを取っても最悪だ。 「麗奈、悦んでくれていたと思ってた」 こちらの動揺に気もくれない様子の李が立て続けに語り掛けてくる。 私は李を裏切ったわけではない、初めから潜入任務だったのだ。李に取り入ったのもその一環というだけだ。 女性と恋仲になるというのが、当初の私には難しく思えたのだが、存外上手くいった。私は李のサディスティックな趣味に全力で応えようとした。ただそれだけだったのだが、それが功を奏した結果だ。 李は私のことを都合のいい性玩具としてしか考えてないと思っていたが、今の李の反応を見ると、違ったのかもしれない。だったらもう少し、上手く愛情表現をしてほしかったものだ。 「麗奈、これから君、どうなるか教えて欲しい?」 そうだ、まずはこの状況の打開策を考えなければならない。 李が自由になっているということは、監獄島は既に制圧されている可能性が高い。 外部に助けを呼ぶにも、手段がない。 隙を見て自力で脱出するしか方法はなさそうだ。 「麗奈、私の代わりに終身刑になってもらうね」 「う……?」 ――代わりに終身刑になってもらう。 李の言葉が反芻する。 「むぐぅぅぅぅ!」 「暴れても無駄」 まずい。 李の身代わりとして刑を受けさせられることになる? 拘束されて、あのガラスケースの中に入れられてしまったら最後、永久に助け出されることはないだろう。 それだけは避けなくてはならない。 「麗奈が悪いんだよ。麗奈、私の元から逃げ出すから、こんなことになった。言ったでしょ、麗奈は私が一生飼ってあげるって。それなのに、なんで裏切ったの」 李の瞳が潤んでいる。 まさか、泣いているのか? 私をあんな地獄に叩き落しておいて、どうしてそんな表情ができるのか。 「麗奈、拘束されるの好きだよね。拘束されて、快楽漬けにされるの好きでしょ」 違う。全く以て好きではない。 今は李に投与された薬や、数々の調教のせいで、身体が反応するようになっているだけで、もともと私にそんな趣味はない。 「だから、麗奈には最高の環境を用意してあげる。もう会えなくなるのは悲しい……けど、麗奈には幸せになって欲しいから」 さっきからこの女は何を言っているのだろう。幸せ、という日本語をしっかり理解できているのだろうか? 本当に私に幸せになって欲しいなら、さっさと解放して欲しいものだが、今の私にはそんな要求すら出来ない。 「麗奈はここで、事故死したことになる。でも実際には死なない。私の代わりに、終身刑になって永久に絶頂し続けるだけの肉の塊になるの。嬉しい?」 冗談ではない。嬉しいわけがないだろう。 首を振ろうとして身体を捩ったが、全く動かなかった。 助けを呼ばなければ……。 私の人生が終わってしまう。 自然と涙があふれてくる。 「うぁ……う……」 私の絶望と裏腹に、身体は疼き続けていた。 股間の部分に染みができている。 倒錯的な性感に囚われた女の蜜が、服の上からでも分かるぐらいの水溜まりを作っていた。 「麗奈、可愛いね。よかったね」 李が私の股間をまさぐりながら、耳元で囁く。 「麗奈が望んでいる姿にしてあげるからね」 李の手によって甘い絶頂を迎えた私の頭を、彼女は撫でてくれた。 私はこの女に変えられた。 破滅するぐらいに、変えられてしまったのだ。 *** 服を破かれ、裸になった私の身体は、これでもかというぐらいに李に弄ばれた。 開口具を着けられたままのディープキスは、不思議な感覚だった。キスというよりも、舌を責められているように感じた。 指先まで動けなくされたまま、膣とアナルにバイブを挿れられた。 乳首の周りには、李の噛み跡が残っている。 李に出会うまでは乳首だけ絶頂するようなことなどなかったのだが、この女は乳首責めの達人で、何度も脳が痺れるような快楽を押し付けられた。 この1年で私が変態のマゾ女になってしまったことを再認識させられた。 拘束されるのが気持ちいい。 叩かれるのが気持ちいい。 罵られるのが気持ちいい。 無理やり犯されるのが気持ちいい。 つまるところ、今の私はそういう人間なのだ。 苦痛を感じるほどの連続絶頂をさせられた後、李は無線で仲間を呼んでいた。 数名の獄吏達が入ってきて、私を終身刑にするために何やら話し合っている。 どうやら、監獄島には李の息がかかった職員が何名かいたらしい。 「麗奈、手足を外すからね」李が囁いてきた。 手足を外す、の意味がよく理解できなかったが、もはやどうでもいい。 助けが来る希望を捨ててはいなかったが、いずれにしても厳重に拘束されている私に出来ることは何もない。 イかされ過ぎて疲れたというのもある。あとはただ、流れに身を任せようと思う。 獄吏が持ってきたリングが、二の腕と太ももの付け根の辺りに付けられた。 そのリングから甲高いビープ音が聞こえた瞬間、腕と脚の感覚がなくなる。 腕と脚、指の拘束ベルトが解かれるが、依然として四肢を動かすことはできなかった。 獄吏の一人が、濡れた雑巾を絞るようにして私の右腕を回す。乾いた機械音が部屋に響いて、私の身体から右腕が離れていった。 「う……!?」 痛くはないが、目の前に自分の腕が現れたことに恐怖を感じた。 「四肢分断リングだよ。これで分断された四肢は、腐ることはないし、いつでも戻せるから。中国の医療現場でも使われている、知らなかった?」 右腕と同じように、左腕、両脚が外されて、私の物ではなくなった。 「麗奈の四肢はもういらないから、私が処分しておくね」李がダルマになった私の身体をさすりながら囁いてきた。 「うぐ……! む……!」 処分される……? 私はこの先の人生、このダルマ姿で生きていかなければならないということ……? 李の言う通り、身代わりとして終身刑になるなら腕や脚などあっても仕方がない。しかし、処分されてしまえば一切の希望が失われる。 それは避けたい。まだ、一縷の望みを諦めたくはない。 「麗奈、まだ勘違いしてる? 助けなんて来ないよ。絶対に」 「む……」 「最後だから、教えておいてあげるね。麗奈は売られたの」 ああ……。 うすうす気づいていた。 潜入捜査が不自然に長引いたこと。 満を持して行われた逮捕劇があっさり過ぎたこと。 私がこの監獄島に送り込まれたこと。 国か、所長か、あるいは別の誰かかが李の組織と内通していたと考えれば、すべての説明がつく。 「麗奈は上手くやり過ぎた。スパイであることを忘れ、性欲に溺れ、あのまま私のそばで色欲に狂い続けていれば、こんなことにはならなかったのにね」 身体から力が抜ける。 最初から、こうなることが決まっていたんだ。 唯一の2択、李の物として生きていくか、終身刑になるか。どちらかだった。 そして私は、終身刑になるルートを選んでしまった。 私の中に燃えていた正義感がこの結末を引き寄せた。 わずかにあった希望を打ち砕かれて、ゆっくりと瞼を閉じた私を見て、李は作業を再開した。 獄吏の一人が、キャスター付きの台座を部屋に運んできた。 台座の中央には太い鉄製のポールが溶接されており、ポールの先に女の身体を責め立てる形をした突起が3本ある椅子が取り付けられている。 先ほど見たガラスケースの中の黒いトルソー達が乗せられていたものと概ね同じだろう。 拘束ベルトを外された私の身体が持ち上げられ、椅子に付いた責め具の位置に合わせてゆっくりと降ろされた。 膣、肛門、尿道の穴が突起によってゆっくりと開かれていく。 「ぐぅ……」 こんな状況なのに、私はまた快楽を感じていた。 ゆっくりと、具合を確かめながら初めてのセックスする10代の女の子のように、太く固い責め具達を受け入れようとしていた私の身体が突如重く沈み込んだ。 「むぐうううううううううううう!」 私の身体を支えていた獄吏達が、手を離したのだ。 重力を思い出した私の身体を、3本の責め具が貫いた。 子宮の奥を叩かれて、絶頂する。 先ほどの李の責めが優しく、甘いものだった分、無機質な張り型による乱暴な快楽がより一層強く感じた。 「ふぐ……! ふああああ……」 手足のないマネキンのようになった私は、腰を回してみたり、首を振ってみたり、動くところを使って深い絶頂に耐えようとした。 「麗奈って、本当にマゾだよね」 違う。 私がこうなったのは、李の調教の結果だ。 「薬とか何も使ってないのに、よがり狂ってたよね」 「うぇ……?」 薬を使ってない? 私はこの1年間、媚薬漬けにされていた。はずだ。 「自分がマゾなことに気づいてないふりをしてたところも、好きだったよ。薬のせいだと思ってるんだよね?」 違う。 そんなはずはない。 私は、変えられたんだ。 「麗奈はね、最初からマゾなんだよ」 「うぅ……!」 違う。違う。違う。違う。違う。 「思い出してごらん。麗奈は、最初から私の調教を悦んでたよね」 黙れ。 「本当は、こうなることを望んでたんじゃない? だから、私は麗奈を助けないの。麗奈が幸せならそれでいいと思ってるから。そうじゃなかったら、今頃麗奈を連れて、国に帰ってるよ」 頼むから黙ってくれ。 これ以上、私を堕とさないで。 お願い。 首振って、必死に否定する。 「麗奈は、マゾなの。媚薬を使ってたっていうのは、嘘。毎日麗奈が飲んでたのは、ただの栄養剤。なんであんな嘘をついてたと思う? 今、この瞬間のためだよ。こうでもしないと、麗奈、気づかないでしょ? 薬を入れられたと思い込んで、悦んで調教を受けてたよね? あれが麗奈の本性」 私の中で、何かが崩れた。 自尊心が、壊れていく。 「うぁ……あぁ……」 涙が溢れてくる。 そう、私の正義感は嘘っぱちだった。 爛れた性欲に溺れるために、仕事をしていた。 潜入捜査官、正義のヒロイン。なんて、馬鹿げた呼び方だ。 気付かないふりをしていたのだ。 長い間自分を騙し続けていたが、それもここで終わり。 私はただの変態マゾ女だ。 これは潜入任務の一環だと言い聞かせながら李の調教を受けるのが、多分、嬉しかったんだ。 長い間、厳しい性暴力に耐え続けることが出来たのは、私がマゾだったからだ。 堕ちるための口実が欲しかった。 悪事を律したいという、私の中にある正義感はきっと本物だ。本物だったからこそ、心の奥底にあった倒錯的な欲求を隠すことが出来ていただけだ。自分を騙すことが出来るくらいに、本物の正義感を持っていた。 「本当の自分、分かった?」李が優しい笑みを向けてくる。 私は涙を流しながら、ゆっくりと頷いた。 「いい子だね。あとは任せてね。叶えてあげるからね」 獄吏達に、股間の部分と胸の部分が空いているラバースーツを着せられた。 李の手によって、乳首とクリトリスにバイブの付いたピアスを付けられて、また絶頂する。 ぽっかりと空いた口にペニスギャグのついた栓を入れられて、完全に喋ることができなくなった。 「耳塞ぐからね。愛してるよ、麗奈」 私の額にキスをする李。 鼻と耳に、粘液性の高い液体を流し込まれて、固まる。 聴覚と嗅覚が奪われて、イク。 私は奪われるのが大好きなのだ。やっと正直になれた。 ふと、鼻をふさがれたのに呼吸が出来ていることに気が付いた。 どうやら、口に入れられたペニスギャグが全て呼吸を管理してくれているようだった。 自分で呼吸するよりも、少し息苦しい。でも、苦しいのが気持ちいい。もっと酸素を絞って欲しいとすら思えた。 李に私の要求が伝わったのか、口枷のダイヤルを少し回してくれた。 酸素の供給が止まる。 「……!」 窒息寸前になりパニックになったが、その瞬間、酸素の供給が始まった。まるで拷問である。 これが永久に続くと思うと、嬉しくなって絶頂する。 変態のマゾヒストであると自認したおかげで、トランス状態になっているかもしれない。 私から少し離れて、獄吏達と何かを話し終えた李が、こちらに寄ってきて悲しげな表情を浮かべたのを見て、私は悟る。 ああ……。 終わりなんだ。 最後の処置、顔の拘束は李がやってくれるようだ。彼女の手には、私を深い闇へと永久に封印するための全頭マスクが握られていた。 李は名残を惜しそうな表情で、私の頬を撫で、頭を撫で、髪を弄った。 最後に私の涙を指で拭って、全頭マスクを被せてくれた。 *** *** 私は麗奈を愛していた。 彼女がスパイであると発覚した時も、それは変わらなかった。 仲間は麗奈を殺そうとしたが、私がそれを許さなかった。 私は1年間の期間を設けて、麗奈を自分のものしようとした。彼女がマゾであることは見抜いていたので、ありったけの調教を彼女に施した。それでも、彼女は堕ちなかった。 最後まで彼女は潜入捜査官として、私を捕まえようとしていた。そういう正義に満ち溢れているところも、好きだった。そのせいで自分がマゾだと気づいていないところも、大好きだった。 しかし、私はまだ捕まるわけにはいかない。 麗奈を諦めるのは、苦渋の選択だった。 最後にせめて、彼女の望むものを与えてから、お別れすることにした。 それがこの終身刑だ。 ただの終身刑ではない。彼女は他の薄汚い罪人とは違い、幸せに、全てを奪われたまま、絶頂の中で永久に生きなければならない。 破滅的なマゾヒストである彼女に対するプレゼントだ。 手足を失い、全身責め具を取り付けられた黒い塊。 ほんの少し前まで麗奈だった”それ”は、は監獄島の地下へと運ばれた。 私の身代わりとして刑を受けてもらうことになるので、麗奈の存在が表にバレることのないように地下深くに、麗奈を運んだ。 監獄島の地下には、もう既に使われていない区画がある。 その区画の奥の奥、電気すら通っていない部屋に麗奈を設置して、出入り口を溶接し、塞いだ。地震や環境変化が発生して、この監獄島がなくなって、海も藻屑と化しても、麗奈のいる部屋だけは状態が維持できるように、最大限の補強をした。 麗奈の生体管理はすべて自動で行われる。終身刑の罪人は年齢でいえば大体90歳ぐらいで生命活動を終了させられるのだが、麗奈に取り付けた生命維持装置はそれとは違う。 中国の裏社会での流通している特別製で、老化を止め、永久に生きることが出来るものを使用した。エネルギーも、人体熱によって生成されるものを使うので、稼働限界が来ない。デメリットとしては、麗奈のように手足を外して五感を封印した状態の人間でなければ老化防止や生命維持の循環を維持することが出来ないということだった。 麗奈この先、何百何千何万年と、あの部屋の中で絶頂し続けるだろう。 性感帯への刺激はもちろん、くすぐり、窒息、痛み、麗奈が悦びそうな責め具は全てそろえた。ほどなくして、耳や鼻の穴まで性感帯になるだろう。 麗奈が苦しくないように、長い長い時間の中でも幸せなマゾヒズムの中で過ごせるようにした。 私が愛した人。 どうか永遠に、幸せで。 さようなら。


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