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肥満化催眠 美人エージェント潜入捜査物語 第三話

出撫理満久理学園 但書ノ三 「持病などで医薬品を使用する場合は、学園指定のモノを使う事」 翌朝、私達は暖房がしっかり焚かれた寮のエントランスのソファで目を覚ましました。 カチカチに膨らんだお腹も、少しだけ消化が進んだのか軽く押してやると僅かに凹み、そういう玩具のようにせりあがってきたガスをげふ、と吐き出せば立ち上がるのには不自由しない程度には落ち着いてきます。 「っふー……おはよう美波さん。昨日はその、凄かったわね。」 「ん、おはよ……っげぇっふ。うぅ~、お腹が重いよぉ……。」 ソファに手をかけてゆっくりと立ち上がれば、これまで気を使ってきた体型の中で急に膨らんだお腹は、互いにまるで妊娠しているかのよう。いえ、詰まっている食べ物の重さは実際に変わらない程なのでしょう。ですが今日が転入初日、『歓迎会で食べ過ぎたのでお休みします』などと言えばどれだけ悪評が立つことやら(この学園で悪評を言いふらすような方がいらっしゃるとは思いませんが、心象は大事ですからね)。歩くたびにずっしりと響く重さに脂汗を掻きながらも準備をしようとしていると――― 「おはよう、二人とも!」 「あ、立花先輩!おはよぅ――っぷ。」 元気よくドアを開けて入ってきた立花先輩は、パッと顔をほころばせて挨拶をしようとしてガスを口に含む美波の惨状に「あぁ、初日はそうなるよねぇ」と、懐かしむように苦笑を見せた。 「ほら、二人ともこれ奢ってあげるから飲んじゃいな。」 そういって、先輩が懐を漁って差し出してきたのは小さなカプセル錠剤。小指の先もない真っ白なカプセルには赤い字で細かく『D-アイドル錠』と書かれています。 「これは?」 「リリ学で売ってる整腸剤だよ。その名も『アイドルニナールEX』!効き目はバッチし保証するから、さっさと飲んで教室にいくよっ♪」 「は、はぁ……。頂きますね。 んく…っ」 見るからに怪しく、そもそも整腸剤程度でこの苦しさを同行できるとは思えません――思えませんが、先輩の好意を無為にするなどあり得ないことですので、一先ず飲み下します。すると―― ぐりゅ、ごりゅりゅるぐりゅるるる……っ!! 「ん”、っぷ、ぅっふ……!? っげふ、っごぇぇ……ッグェェエエエ~~ぇぇふ!……んっぷ…!」 数分もなく、雷雲の如くゴロゴロと鳴り出すお腹。しかしそれは腹痛を告げるものではなく、触れば分かるほどに激しく動く胃腸と、揉みほぐされて解けるように消化されていく"中身"の様子を伝えてくる。しかし、それらは大腸に送られて"実"になるのではなく、恐るべき(若しくは"異常な")勢いで完全に消化されているようで、堪え様のない猛烈な勢いでガスが逆流してくるのだ。今度こそ私はたたらを踏んで床に仰向けに座り込み、少しでも身体を真っすぐにしようと後ろ手をついて、足をがばりとはしたなく開いた格好で、顔を上にあげて喉から食道までを少しでも真っすぐに整えて、その煙突穴からげぇげぇと汚らしい音を撒き散らす。 「んぶぇっぷ…!! なに、っごッェエ"ェ~エふ!! とまぁ”ぁぁェエ”、っぐぇえぇっぷ!!」 当然同じように飲んでいた美波もまた、止まらないゲップに立つこともままならずに座り込んで、仲良く私たちは人間げっぷアロマとして据えた臭いを数分間絶えず吐き出し続けたのでした。 「――っはぁ、はぁ……ハァ……」 「っげふぅ……っと、止まったぁ……」 「はいお疲れ様~v二人とも、すっごいゲップだったね♪ ほら、お腹見てみて?」 息をつく間もないゲップ地獄の中で、酸欠になりかけながら必死に呼吸をしていた私たちはじっとりと汗をかいていて、立花先輩の言葉を聞くのがやっとでしたが―― 「はぁ、ふぅ、お腹……?……!??」 「ふーっ、ふーっ……っへぇ?!へ、へこんでる……?」 そう、そこには中身を全部消化しきって風船のように膨らんでいたお腹が、空気が抜けたかのように凹んでいるではありませんか。そうして凹んだお腹には、伸びきった皮が弛んだように"てろん"と弛んでぴったりとくっついた浮き輪の様な贅肉がくっついていた。                   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「効果、すっごいでしょ?お腹の中身をどんどん消化して、どんどん吸収させるから一度飲むと一日中お腹空いちゃうかもしれないけど、副作用はないから安心して♪」 そう、にっこりと笑みを浮かべる先輩の言葉を理解するよりも早く ぐうぅううぅうぅううぅうぅぅうぅ……きゅるるる……ごりゅるぐるるるる……!!! 「ぅ、ぁ、あ、あぁうあ」 「な”、ぁ”、すびゅ、じゅるりゅっ…!」 猛烈な空腹感に、膝をついてもだもだと力の入らない手足を振り回す私。 強烈な飢餓感に、僅かな口の隙間からだくだくと涎をこぼす美波。 食べたい、食べたい、食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい!!!!! 何でもいい、お腹が空っぽなのが耐えられない、食べたくて食べたくて仕方がない!!あぁぁああ食べたい食べたい食べたい食べたい!!! あたまがおかしくなるっ!! もうやだ!! あぁぁ食べたい食べたい!!! たべなきゃしんじゃう!! 死ぬ!!死ぬなら食べたい!! 食べてから食べたい!!! ――その時、不意に差し出された香ばしい小麦の香り。 それが、バターをたっぷりと塗りたくった1斤の食パンだと認識する間もなく私は大口を開けて齧りつき、口の中に食べ物がある事、広がるパンの甘みとバター塩気、味わうという行為に一つ一つに一々感激して涙を流しました。この時私は生まれて一番真剣に神に感謝していましたし、どんな大作映画を見るよりもこの時にパンを食べたときの方が泣けたと思いますし、その……お下品な話ですけれど、もっと後で気づきましたが、ちょっと濡れてもいましたの。 もし、アレが小麦の匂いのする粘土だとしても同じように齧りつき、感動で泣いていたと思います。 「さて、もっと食べててもらいたいけど始業の時間が始まっちゃうから学校に行きましょ♪」 「「はいっ!!」」 食べ終わった頃には感激は感謝に変わり、極まった感謝は信仰に限りない近いナニカになっていました。 そう、私たちはあの時間違いなく”ペット”でした。もう1斤の食パンを千切っては私たちの口に交互に入れてくれる”ご主人様”のいう事を全て聞く忠実なペット。陶酔のままに先輩に教えて貰った「つかみ」の挨拶を頭に叩き込んで、言われるがままに挨拶をしていたので――実は何を言っていたのかも覚えておりません。 まぁ、我に返った時に変な目で見られても居ませんでしたし、問題なかったのだと思いますが……。 「――本日よりお世話になる美貌院秀子と申します。これまで美貌院家のくっだらない家訓の元、栄養バランスにばかり気を配り、脂肪1g分でも痩せようとしてきたお間抜け勘違い女でしたが目が覚めましたの。好きなことはお腹がはち切れそうになるまで食べる事、嫌いなことは1食でも食べない事ですの。最近の趣味は食器を使わずに口の中がぎっちぎちになるまで詰め込んで食べる事ですわね。未だ至らぬ浮き輪肉共々、どうぞでっぷりたっぷり、デブデブになるまで末永くよろしくお願いいたしますわね♪」 私、どんな自己紹介をしていたのかしら……?


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