――『次のお題を行う男性を一人選んでください』―― 画面に表示された文章を読み、リトは「ん?」と首を傾げた。 「あれ、次の指示の内容は?」 これまでのパターンなら、先にお題が出され、その後それを校長とリト、どちらが凛と行うかを選んでいたのだが、今回はまだ出題が済んでいない。 不思議に思い聞き返してみるも、答えが返ってくることは無かった。 「どうせ後から何か指示されるんだろう。碌でもない指示がな」 うんざりした顔で凛が言う。 リトも同感だが、これ以上何をさせるつもりなのかは、あまり想像したくなかった。 「わしはどんなお題でもウェルカムですぞぉ~! できれば、溜まったモノをスッキリさせられるモノがいいですけどねぇ!」 リト達とは違い、校長だけは相変わらず次はどんなことが出来るのかと、期待に胸を膨らませている。 きっと校長にとっては、女体に触れることさえ出来れば脱出できるかなどどうでもいいのだろう。 「あのエロ親父……益々調子に乗ってやがる」 先ほど凛の身体を弄んだ男に怒りが湧き、リトは拳を握り込んだが、こんな所で喧嘩を吹っかけても仕方ない。 隣を見れば、凛が不安そうな顔でこちらを見つめている。 (先輩のためにも……これ以上校長に好き勝手させるわけには……) 凛を気遣い、何か声を掛けようかと思っていたリトだったが、その前に気づけば校長が箱からくじを引き、腕を高く翳していた。 「さぁ引きましたぞ~! 次もわしに当たりカモーンッ!」 「あっ! いつの間に!?」 急ぎ自分もくじを引こうと机へ駆け寄るが、間に合わない。 既に校長は手に取った紙を開き、その中身を確認していた。 「……おっ、おおおおおお!!!」 そして、大声を発して目を見開く。 「やったああああ!! また当たりましたぞ~~~~っっ!!!」 歓喜し、腕を振り上げる校長の手には、当たりと書かれた紙がしっかりと握られていた。 「う、嘘だろ……」 呆然とするリトの隣で、凛も同じように落胆の表情を浮かべている。 「また、やつの番か……」 「おっひょっひょ~っ、またわしに決まりましたぞ! 2連続とは運が良いですな~!」 校長は嬉々として凛の肩を掴む。そして、息を荒くしながら顔を寄せてくる。 荒い鼻息を間近で感じながら、凛は嫌悪を滲ませて校長を睨み付けた。 その眼光にも怯むことなく、校長は凛を抱く寄せる。 「さぁて、お題が何か分かりませんが、とりあえずベッドに行けばいいのですかな? なら早く行きましょうね九条さん!」 凛の背をぐいぐいと押しながら、ベッドの方は向かう校長。 リトは、今度はその背中をただ黙って見ているわけにはいかなかった。 「ま、待て! それ以上先輩に触るな!」 「およ?」 呼び止められ、校長が不思議そうにこちらを見る。 「どうかしましたか、結城くん? なにか問題が?」 「あるに決まってるだろ! 先輩が嫌がってるのが分からないのかよ!」 「ん~そうは言っても、ここから出るためには指示に従うしか無いんですよね? なら、早く済ませた方が皆のためにもなるのでは?」 それは正論ではあった。だが、卑劣でいやらしい魂胆が丸見えの状況で、はいそうですかと納得できる訳がない。 不満を顔に滲ませるリトを見て、校長は肩を竦めた。 「それに、結城くんだって良い思いしましたよね? ルールに従っているのに、わしだけダメなんて酷いじゃないですか」 「そ、それは……」 確かにリトも、凛と抱き合ったり、胸で奉仕して貰ったりと、校長が言うように良い思いはしている。 それはあくまでお題をクリアするためにやっただけとも言えるが、そこに役得を感じなかったと言えば嘘になる。 それでも嫌がる凛を無理やり襲うようなやり方は、とても許容出来るものではなかった。 しかし……。 「……いいんだ。キミは、そこで待っていてくれ」 凛が気丈に振る舞い、食い下がるリトを制した。 その表情は、もう既に覚悟は固まっていることを知らせていた。 「九条先輩……でも……」 その決意に、リトはそれ以上何も言えなくなってしまう。 本人がいいと言う以上、恋人でも無いリトが彼女を止める道理は無い。 「私は、平気だ。それに……何をされようと私は、結城……お前を……」 「え……?」 その言葉を最後まで言わぬまま凛は後ろは向き、ベッドへと向かってしまった。 そのままカーテンが締まり、二人の姿が薄いシルエットでしか分からなくなる。 「なんで、先輩……」 本当ならば、強引にでも凛を校長から引き剥がすべきだったのかもしれない。 だが、リトは凛の決意に水を差すことが出来なかった。 せめて盗み聞きのようなことはしないよう、リトは離れた距離で座り込み、暗い表情で俯いていた。 凛と校長がベッドの方へ行って数分。今頃、あの中ではどんなことが行われているのか……。 なぜか映像画面には今回のお題は表示されていない。凛達は何をすればいいのか分かっているのだろうか? そんな風に、リトがベッドから離れた位置で凛のことを案じていると……。 「んう゛ううううううっ!」 突然ベッドの方向から、そんな凛の発したと思われる声が聞こえてきた。 「えっ!?」 驚き、バッと顔を上げるリト。 離れていても聞こえる、凛の呻くような声。 それは一度で終わらず、何度も繰り返し部屋の端にいるリトの耳に届いた。 「はぐううううっ!? んきゅっ! くひぃぃいいい!」 悲鳴にも近いその声が部屋の中に響き、リトは尋常ではないことを予感する。 「な、なにしてるんだ……?」 あのカーテンの中、男と二人きりで、凛が何かをされている。 悲鳴じみた声はしかし、殴られたり、首を締められたりといった暴力によるモノともまた違うように思えた。 「まさか……あの校長、先輩に何か酷いことを……!」 止めるべきかリトは迷い、その場に立ち上がる。 だが今リトが邪魔をすれば、今までのことが無駄になってしまうかもしれない。 「くそ……でも、何してるのか分からないんじゃ……」 もしかすると、画面に今回のお題が表示されていないのは、それが理由なのかもしれなかった。 何をするのか分かっていては、リトは止めようとしてしまう。 それほどに、過激なことを行っている……ということなのかもしれない。 「やめっ、あ゛っ、あああああっ!!」 それを証明するように、ベッドからは凛の叫び声が続く。 この距離からでは、薄いカーテン越しにも二人の姿は見えない。 リトは二人の様子がどうしても気になってしまい、徐々にベッドの方へ歩み寄っていった。 だが、近寄るにつれ、凛の声にも変化が生じ始める。 「はあっ、ぅはああぁぁっ! やっ、んくぅうう」 どこか艷を帯びた、切ない声。 それに呼応するように、ギシギシとベッドの軋む音がリトの耳に入った。 考えたくはなかったが、これではまるで……。 (い、いや……九条先輩が、校長相手にそんなこと許すわけない……!) そんなことあり得ないと、リトは首を横に振る。だが、頭の中に浮かんだ映像はより鮮明になっていくばかりで……。 「……んあああっ! ふと、すぎ……っ。ん、んんん~~♥♥」 ベッドに近づけば、カーテンの奥でゆらゆらと揺れる2つのシルエットが薄っすらと見て取れる。 密着する2つの影は前後に大きく揺れ動き、その動きに合わせるように、凛の声のトーンは甘く高ぶっていった。 「そんなに大きな声を出していては、向こうにいる結城くんに聞こえてしまいますぞぉ? うひひっ!」 「だ、だってぇっ、こんなの初めてなんだあぁぁ♥ 耐えられるはず、ないだりょおおぉおお♥♥」 直ぐ側にリトがいることにも気づかず、凛が彼女らしからぬ舌足らずな口調で嬌声を上げている。 その声を聞けば聞くほど、リトは自分の中にある疑念が確信に変わっていくのを感じた。 (九条先輩の声……あんなにいやらしく……それに校長のやつ、あんなに嬉しそうにして……) 一つ前のお題の時とも違う、激しくぶつかり合うような雰囲気。 カーテンの奥で行われる情事を想起し、リトは己の股間が固くなっていくのを感じた。 「おんんっ♥ んう゛うぅ♥ ふ、深いところ、ごりごりするなあぁぁぁ♥♥ それ、すごすぎるかりゃあああああ♥♥♥」 「おおお、なるほどおおっ! 九条さんは奥を突かれるのが好きですか! これは才能ありますよぉ!」 ばちゅんっ、ばちゅんっ! と、肉と肉がぶつかる音が鳴り響く。 このカーテンをめくれば、その先に広がる光景はきっと……。 そう考えた途端、リトの陰茎はズボンの中で更に固く勃起してしまった。 (違うっ、先輩があんな奴と……する訳ないっ) その答えを確定させることを恐れ、リトはカーテンを捲ることが出来ず、その場に立ち尽くすことしか出来なかった。 その間にも、凛の嬌声は激しく、そして余裕無く乱れていく。 「ふぎぃいいっ!? だ、だめええぇっ! そこ弱いいぃぃ!! んああぁぁああ♥♥」 凛の上げる声から、彼女がどれだけ感じてしまっているのかが分かる。 リトも知らない、彼女の艷声。 あのスケベで、セクハラ三昧の校長相手に、凛が乱れた姿を晒すなんて信じられない。 だが、凛の嬌声が、校長の歓喜に染まった笑い声が、これが現実だと分からせてくる。 「いいんですかぁ? このままだと、結城くんにイキ声また聞かれてしまいますよぉ? それも、今度はわしに初めてを奪われたまま!」 「んおおっ♥ ゆ、結城に……聞かれてぇ、ああああっ♥♥ で、でもぉ、無理っ、もぉむりいいぃぃ♥♥」 凛の声が、限界だと示すように切羽詰まったモノへ変わっていく。 二人の影の揺れ動く速度が上がり、ベッドの軋みも一段と激しくなった。 そして……。 「うおおお出ますぞおおお! 九条さんのオマンコに、子種汁出るううううう!!!」 「いやっ!? そとにっ、外に出せッ! 中はだめだっ、なかは、なかはあああぁあぁぁあ♥♥♥」 立ち尽くすリトの前で、校長と凛の影がぶるりと震えた。 「イクッ、イクううぅうううううううう♥♥♥」 指による愛撫によるものよりも一際大きな、凛の絶頂の叫び。 それをただ聞いていることしか出来ない無力感に、リトは膝を付きそうになった。 「おっほぉ~~~っ! 出る出るぅぅぅ!」 「うはああああああ♥♥ びゅくびゅくって、きてるっ、うううぅぅ♥♥」 激しい交わりの果て、二人は揃って絶頂したらしい。 凛が力なくベッドに倒れ込み、今まで続いていたベッドの揺れが収まる。 それは、二人の行為を止めることが出来ないまま、終わりを迎えてしまったことを意味していた。 「だ……出されてしまった……。私の中に、いっぱい注ぎ込まれた……♥」 ベッドに身体を預けたまま、蕩けた声で凛が呟く。 それと同じタイミングで、後方からピコーンと電子音が響いた。 お題がクリアされたことを示す音だ。 そのお題がどんな内容だったかは、リトには知らされていない。 だが、それはきっとリトの想像通りの内容だった。 それから数分して、二人はベッドを降り、カーテンの奥から出てきた。 「いやぁ~お待たせしました結城くん! 一人だけ仲間外れにしてすみませんねえ!」 校長がえへへと後頭部を撫でながら言ってくる。 その横では、制服に皺を作った凛が顔を上気させ、羞恥に潤んだ瞳で気まずそうに視線を逸らしていた。 「結城……その、恥ずかしい声を、聞かれてしまったな……」 「先輩……」 「でも、私は大丈夫だ。こんなの……どうってことないから……」 そう言いながらも凛は、粘液の垂れる太腿をすり合わせ、股間を気にするようにぎゅっとスカートを掴んでいた。 何をされていたのか――その答えに思い至っていても、リトはそれを口にすることが出来なかった。